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INTERVIEW

FEAR NO EMPIRE

2020.10.27UPDATE

2020年11月号掲載

FEAR NO EMPIRE

Member:Ali Tabatabaee(Vo)

Interviewer:山本 真由

ここ日本でも高い人気を誇るZEBRAHEADのメンバーでもある、Ali Tabatabaee、Ben Ozz、Dan Palmer、そしてDEATH BY STEREOやTHE ADOLESCENTSで活躍するMike Cambraによるスーパー・パンク・バンド FEAR NO EMPIREが誕生した。音楽性はZEBRAHEADともDEATH BY STEREOとも異なるものだが、同郷で昔から交流のあるメンバー、さらに両バンドを兼任するDan Palmerもいるので、その相性は抜群だ! パンデミックで一変したこの世界情勢の中浮き彫りとなった社会問題を題材に、力強いラップとアグレッシヴなロック・サウンドを展開する、これまでと違った彼らの活動について、アイディアの発起人でもあるAli Tabatabaeeに詳しく語ってもらった。

-アメリカの中でもカリフォルニア州は特に、まだ様々な面で規制が厳しい状況で、他の州への移住者も増えているというニュースを見ました。メンバーのみなさんはどのように過ごされているのでしょうか?

コロナがアメリカに上陸したとき、幸運にも俺の家族や周りの人々はシリアスな問題として受け止めたんだ。俺たちの多くは自宅に潜伏して、不要不急の場所に行くことをやめた。他のことと同じで、段々慣れてくるよね。クレイジーな状況だけど、今も世界中の人たちと主にFaceTimeやZoomでコミュニケートできている。すごく助かっているよ。......そう、俺と親しい人たちはみんなシリアスに受け止めているから、医者や科学者たちが作ってくれたガイドラインを遵守することの大切さをわかっているんだ。俺はロサンゼルス郡のパサデナに住んでいて、友人たちはロサンゼルス市内やハリウッドに住んでいる。今はそこら中を引っ越しのトラックが走っているよ。たくさんの人が移住してしまったから、空き家が増えている。エンタメ業界に入ったり、仕事を探したりするためにロサンゼルスに来た人たちの多くが、パンデミックの影響で地元に帰ってしまったんだ。なかなか奇妙な状況だよ。君はどこにいるの? 東京?

-はい。東京です。

そうなんだ。そっちの状況はどう?

-そうですね......感染者数は大幅に増えもせず減りもせず、横ばいといったところでしょうか。激ロックのスタッフ、関係者はみんな無事ですが、もちろん私たちもこの状況をシリアスに受け止めていますよ。日本でもリモートで仕事をしている人々が増えていますね。

シリアスに受け止めるってことが大事だと思うよ。そうじゃない地域は結構あるからね。日本はみんなそうやってシリアスに受け止めているんだね、良かった。

-ありがとうございます。まぁ、日本はもともと冬になるとマスクをすることに慣れていましたから、わりとスムーズに移行できたのではないかと思います。それでも、やはり大変ではありますし、こういう音楽で心を奮い立たせてもらえるのを待っていました。様々な制限がある時期ではあったかもしれませんが、その時間を最大限に生かしてEPを作ってくださって良かったです。

ありがとう。

-FEAR NO EMPIREは、ZEBRAHEADとDEATH BY STEREOのメンバーによる新バンドですが、このメンバーで新しいプロジェクトを始めようということになったきっかけは? また、COVID-19によって世の中が変わる以前から計画されていたものなのでしょうか。

Ben(Ozz/Ba)とDan(Palmer/Gt)と俺はZEBRAHEADで、SUM 41とのヨーロッパ・ツアーを1ヶ月やって帰ってきて、数週間後にコロナ禍がアメリカにやってきたんだ。すべてがクローズ・ダウンしてしまって、俺たちも自宅にこもっていた。そこにジョージ・フロイドの事件が起こったんだ。自宅にいてその一部始終をリアルタイムで、ニュースで知って、SNSでも大問題になって......そうこうしているうちに俺は考えを書き留めるようになった。いろんな考えがごっちゃになっていた自分の頭を整理するためにね。それを歌詞にしてBenとDanに送った。"今起こっているいろんなことから、お前たちもインスピレーションを受けていると思うけど、自分たちだけのために2、3曲作ってみるってのはどう?"って言ったんだ。

-内輪な感じで。

そう、内輪な感じでね。というか、やつらが何を考えているか、どんな心境にいるか知りたかったんだ。俺自身は一部の人々のパンデミックの扱い方がひどく頭にきていたし......君もマスクの話をしていたけど、マスクをしたがらないやつらがいるんだ。それからこの国で起こっている社会的不公正にも。隔離とかソーシャル・ディスタンシングがあったから、顔を合わせることはできなかったけどね。そんな感じで、3人でアイディアを送り合っているうちにふたつ曲ができたんだ。「Revolt」と「Feed The Pressure」。その2曲ができたときに"これをレコーディングしてみたらいいんじゃないか"という話になった。それで、THE ADOLESCENTSやDEATH BY STEREOをやっているMike(Cambra/Dr)に声を掛けたんだ。あいつとは1年前にDanを通じて出会ったんだけど、ものすごく興味を持ってくれた。それで、ZEBRAHEADの近作ふたつ(2019年リリースのアルバム『Brain Invaders』、2015年リリースのアルバム『Walk The Plank』)を手掛けてくれたPaul Minerと一緒にレコーディングすることにしたんだ。

-たしか彼も元DEATH BY STEREOですよね。

元DEATH BY STEREOだよ。NEW FOUND GLORYのプロデュースも手掛けているんだ。すごく才能があるよね。優れたミュージシャンでもあるんだ。ともあれその2曲を書いてレコーディングしたんだけど、インスピレーションのもとになる出来事がどんどん起こって、それらについてメールでアイディアを交換し合って、最終的に6曲できた。その間もみんな自宅にいたけど、"とりあえずリリースしてみて様子を見てみよう"という話になったんだ。その目的は、他の人たちにインスピレーションを与えること。それぞれのプラットフォームで......先生だろうと医療従事者だろうと、そういう人たちがどんな形でも声を上げて、それが聴いてもらえるように、そしてより良い状態になるようにね。特に社会的不公正に対して、俺たちは変化を起こしたいと心から思っているんだ。自分たちのプラットフォームを使って、自分たちにとって大切なことにスポットライトを当てられればと思ってね。そんな感じでFEAR NO EMPIREはスタートしたんだ。

-いろいろネガティヴなことが起こってきましたが、それがようやくポジティヴに転じるのですね。FEAR NO EMPIREというバンド名はどのようにして決まったのですか? とても力強い、インパクトのある名前ですが。

いくつか名前を考えていて、その中でFEAR NO EMPIREが際立っていていいなと思ったのは......ほら、アメリカってすごくパワフルな国だって思われていて、ここに移住したいって人も多いだろう? いろんなグレイトなものがあるって思われている。でも、歴史を振り返ってみると、"未来永劫住むのに素晴らしい場所であり続けるだろう"と思われていたEMPIRE(帝国)でも、そこに住んでいる人全員をちゃんとケアしないと......金持ちや権力者たちだけじゃなくて、あらゆる人種や社会経済階級の人たちをケアしないと、最終的にはそのEMPIREは崩壊してしまうんだ。だから、この名前のコンセプトとしては、EMPIREというのはそれを支える人たちの分しか強くならない。支えられているという実感を得ることができなかったら、そのEMPIREは存在できないということなんだ。今の俺たちが経験していることがバンド名に表れていると思うね。

-FEAR NO EMPIREの活動は、社会に対するメッセージ性が強いものですが、話を最初に持ち掛けた相手はZEBRAHEADのメンバーであるBenやDanでしたよね。こういったテーマでの活動をZEBRAHEADやDEATH BY STEREOとして行うことは、やはり難しいのでしょうか?

これがバンドになるとは俺たちも思っていなかったんだよね。BenやDanとはよくテキスト・メッセージを送り合っていて"あのさ、俺はこう思うんだけど"なんて言っていた。それが勢いづいてこうなったわけだけど、何か活動に繋がるものになるとは思っていなかったんだ。

-内輪のものだったという話でしたね。

そう。単に友達にメールを送って"この出来事についてこう考えたら歌詞ができたんだ。どう思う?"、"ギターのパートを思いついたんだけど、これって曲にできるかな?"なんて言い合っているだけだったからね。そこから(プロジェクトが)ひとり歩きを始めたんだ。別に"バンドを始めよう"なんて言い出したわけじゃなかった。今もそれぞれZEBRAHEADとDEATH BY STEREOの一員だからね。MikeはTHE ADOLESCENTSにもいる。ただ、コミュニケーションの自然な流れでこうなったんだ。

-また、ZEBRAHEADとDEATH BY STEREOの他のメンバーからは、この活動についてどういった反応がありましたか? "俺も参加したかった"とか? 応援はしてくれているのですよね?

うん。ZEBRAHEADのドラマーのEd(Udhus)は自宅でビジネスをやっているから、そっちで忙しいんだよね。でも、あいつがとても応援してくれているのはわかってるよ。Matty (Lewis/Vo/Gt)はここからかなり離れたネブラスカ州に住んでいるから、ツアー以外ではあまり会えないんだよね。今みたいなメンバーになったのは、シチュエーション的な理由もあると思う。

-いずれにせよどちらのバンドも、他のメンバーは応援してくれているんですね。

俺の理解している限りではそうだね。

-作品のテーマを決めるにあたって、どのようなコミュニケーションが行われたのでしょうか? テキスト・メッセージ以外に、政治的な意見を交換し合うミーティングのような場は設けられましたか?

うーん、顔を合わせたのはレコーディングのときくらいかな。自主隔離するべきという話だったから、できるだけそばにいないようにしたんだ。アイディアの95パーセントはDropboxとかにファイルを送ることで交換していたね。最終的には"よし、この日に集まって3曲録音しよう"みたいな話になって、それをPaulが編集/ミキシング/マスタリングして俺たちに送ってくれたんだ。

-メッセージの内容という意味では、みなさん同じスタンスだったのでしょうか。どうやって歌詞を煮詰めていったのですか?

俺が歌詞を書いてみんなに送って、みんなの感想を聞いたんだけど、最高の気分だったよ。みんな同じスタンスだったからね。だから、こういうプロジェクトになったんだ。同じようなことを信じていて、自分たちにとって重要な問題に対して、応援の声を上げていこうというメッセージを打ち出すことにフォーカスしていた。自宅にいたということで、他のバンドをやっているときとはまったく違う形で内容を見ることができたんだ。

-ZEBRAHEADではツアー中に曲を書くんですか?

いや(笑)、ZEBRAHEADはそうじゃないね。ツアー中のZEBRAHEADはクレイジーなんだ。みんなあちこちとっ散らかってるし。みんなすぐにいなくなってしまうんだ。朝起きたら誰もいない(笑)。どこにいるかもわからないんだ。

-(笑)想像できますね。

(笑)夜にならないと会えないんだ。ショーをプレイし終わったらみんなどこかに行ってしまう。ツアー中に曲を書くことにかけては、俺たちは最悪だね。でも、ZEBRAHEADが曲を書いたのはコロナ前だったから、集まって書くことができたんだ。ジャムしながらアイディアを出したりしてね。でも、今回はまったく違う経験だった。自宅でパソコンの前に座って"うーん、俺はクールだと思うけど、他のやつらはどう思うんだろうな~?"なんて考えてるんだ。"最高じゃん"とか、"ここはもっと良くなるんじゃないか?"なんて返事が来るまでは、すごく変な断絶感があったね......。顔が見えないから、リアクションが見えない。座って待っているしかないんだ。不思議な感じだよ。今も慣れようとしている途中なんだ(笑)。

-最初はぎこちなかったのでしょうね。でも、みなさん同じスタンスであることがわかって、慣れてもきたのでしょうか。

まぁ、そうだね。少しは楽になってきたかな。今も一緒に曲を書き続けているし、少しずつこのプロセスにも慣れ始めているよ。

-FEAR NO EMPIREの音楽性は、ZEBRAHEADともDEATH BY STEREOとも少しずつ違いますね。言葉としてメッセージを伝えやすいラップをメインに、シリアスで激しい楽曲が多いのは、作品のテーマにマッチした方向性ですが、こういったサウンドにしようというのは自然に決まっていったのでしょうか?

そうだね。ZEBRAHEADの場合はもっとパンクなスタイルで、パンクのテンポというのは、FEAR NO EMPIREのしようとしていたロックよりも速いことが多いんだ。俺自身のことで言えば、テンポについていこうとするためにものすごく速くラップしていたよ(笑)。

-たしかに。

FEAR NO EMPIREの場合はメッセージと歌詞にフォーカスして、より理解しやすいものにしたいと思ったんだ。それで、自分のラインや歌詞をラップするときはゆっくりめにした。そうしたら曲が少しスローになって、グルーヴが増すようになったんだ。それに、バンドをやるなら、ZEBRAHEADともDEATH BY STEREOとも違うふうにしたかったしね。俺たちにとってはそれが大事なことだった。それから、エレクトロニカの要素を取り入れるのもやりたかったんだ。今までとは違うスタイルの音楽を書いたり、探索したりするのは楽しいよ。