FEATURE
FEAR NO EMPIRE
2020.10.23UPDATE
2020年10月号掲載
Writer 山本 真由
ZEBRAHEADよりAli Tabatabaee(Vo/Rap)とBen Ozz(Ba)、DEATH BY STEREOよりMike Cambra(Dr)、そして両バンドでリード・ギターを務めるDan Palmerが参加する、スーパー・パンク・バンド FEAR NO EMPIREが誕生した。両バンドの音楽性は少し違うが、同郷で昔から交流のあるバンド同士なうえに、兼任するDan Palmerもいるので相性は抜群。すでにミュージック・ビデオが公開されている、リード・シングルの「Revolt」や「Amplifier」を観てもらえばよくわかるだろう。
そして、今回このバンドで注目すべきなのは、そのメッセージ性だ。ここ日本でも人気の高いZEBRAHEADと言えば、みんな大好きパーティー・パンク・バンドの代名詞のような"超絶ハッピー"な存在だが、今回の彼らはひと味違う。音楽的な方向性としては、ZEBRAHEADのマシンガン・ラップと、よりハードコア/メタルの要素が強いDEATH BY STEREOを合体させた、アグレッシヴなスタイルだ。
もちろん、それには理由がある。このバンドのモチベーションは"怒り"なのだ。今、世界はCOVID-19という未知のウィルスの脅威の中にある。しかし、私たちが生きづらさや、憤りを感じる原因は、残念ながらウィルスそのものだけではない。現在私たちには、困難な状況において如実になった格差や差別、そういったものと闘う勇気が求められているのだ。そして、FEAR NO EMPIREは、音楽の力によってその勇気を持つことの大切さを説き、パワーを与えてくれる。
フロントマンのAli Tabatabaeeは、イラン系アメリカ人だ。彼は差別や迫害、そして武力や権威の乱用の恐ろしさをよく知っている。だからこそ、今作のリリックはシンプルでありながらも、説得力があり、聴く者の心を動かすのだろう。
政治的なメッセージとロック・バンドと言えば、90年代のRAGE AGAINST THE MACHINEを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。このFEAR NO EMPIREにも少し近いものがある。そもそもラップは、言葉で強いメッセージを伝えるのに適しているし、メタルやハードコアは怒りの感情を表現するのに最適な音楽だ。しかし、めちゃくちゃ過激な存在であったRAGE AGAINST THE MACHINEの、カリスマ的に扇動していくスタイルとは違い、彼らには聴き手ひとりひとりに深く考えるきっかけを作るような、どこか親しみやすい雰囲気がある。もちろん、他のポリティカルなメッセージ性の強いパンク・バンド、RISE AGAINSTのTim Mcilrath(Vo/Gt)のように滔々と歌い上げることもないだろう。
彼らは攻撃的だが理性的なラップとシャウト、エッジーなギター、ヘヴィでグルーヴ感のあるリズム・セクションというシンプルな武器で闘う。そして、テクニックのあるDanのギターは荒々しいようで楽曲ごとに繊細な表現力も見せ、このバンドが一時的なノリと勢いだけで走っているのではないという説得力を与えている。また、アラブ音楽をサンプリングした楽曲「Destroyer」など、音楽的なチャレンジとメッセージ性をリンクさせるような巧みな演出もある。楽曲のクオリティにも妥協がないからこそ、彼らの発信する言葉には真実を感じるのだ。
アメリカは今、大統領選を控えている。彼らはミュージック・ビデオの中で有権者の武器としての投票の大切さを訴えている。私たちには何ができるだろうか。もちろん、選挙へ行くことも大切。そして、まずは公平で寛大な心を持ち、差別にNoと言える自分になることが重要なのではないだろうか。FEAR NO EMPIREは、テンションの上がるクールなパンク・ロックで、私たちにその強さをくれる。
▼リリース情報
FEAR NO EMPIRE
1st EP
『Fear No Empire』
2020.10.28 ON SALE!!
※配信リリース
4thデジタル・シングル
「Destroyer feat.Zebrahead」
NOW ON SALE!!
配信はこちら
3rdデジタル・シングル
「Super Spreader」
NOW ON SALE!!
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2ndデジタル・シングル
「Amplifier」
NOW ON SALE!!
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1st デジタル・シングル
「Revolt」
NOW ON SALE!!
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