INTERVIEW
FEAR NO EMPIRE
2020.10.27UPDATE
2020年11月号掲載
Member:Ali Tabatabaee(Vo)
Interviewer:山本 真由
-そして、EPに収録される「Feed The Pressure」は、RAGE AGAINST THE MACHINEを彷彿とさせるようなラップ・ロックで、ギター・エフェクトにもTom Morelloを意識したのかなと感じるところがあったのですが、実際意識して表現している部分はありますか? 彼らも政治的な主張のあるバンドですよね。
最初に書いたのが「Feed The Pressure」だったんだ。俺たちは全員RAGE AGAINST THE MACHINEの大ファンで、Zack de la Rocha(Vo)はアーバイン出身なんだけど、俺もアーバインの大学(カリフォルニア大学アーバイン校)に行っていたから、青春時代の俺に大きな影響を与えた人なんだ。今も影響を受けているよ。俺の大好きなバンドのひとつだ。でも......時々"君の歌はZackっぽく聞こえるね"と言われて、嬉しい褒め言葉だととらえているけど、別に"このバンドみたいな音にしよう、あのバンドみたいな音にしよう"とか、話し合って決めているわけじゃないんだ。誰かに似ていると言われないような要素をプラスできるように努力している。でも、あの曲に限って言えば、彼らの曲になぞらえて考えられる理由がわかる気がするよ。ともあれ、あれは最初に書いた曲で、その当時は書いてどうするのかまだわかっていなかったんだ。でも、すごくエネルギーのある曲だったから――内容は今のアメリカ政府が、マイノリティをアメリカ人から文字通りdivide(分離)しようとしていることについてだった。壁を立てたりしてね。助けを求めている移民たちがアメリカに来るのを遮断しようとしているんだ。俺自身移民だから、歌詞の内容はとても身近なものだよ。
-なるほど。この曲を書いたことで、EPの方向性というか、ムードが決まったのかもしれませんね。
そうだね。曲ができあがった時点ではそれをどうするかわかっていなかったけど、そのあとどんなことが可能か、方向性を見せてくれた気がする。
-RAGE AGAINST THE MACHINEになぞらえて考えられるというのは、どちらのバンドも強力なメッセージを持っていて、しかも、それが伝わりやすい形で表現されているからというのもあると思います。
ありがとう。本当にありがとう。俺にとってRAGE AGAINST THE MACHINEは、彼らの信じることに関してきちんと声を上げるバンドなんだ。彼らが、考えていることを行動に移すためのインスピレーションを人々に与えてくれた。そういう意味でも彼らのことをものすごく尊敬しているし、俺自身もFEAR NO EMPIREでそれを目指したいね。
-「Feed The Pressure」はすぐにできたのでしょうか。
早かったよ。アイディアはすごく早くまとまって、デモを作ってから完成させるまでに1週間くらい。
-ものすごい勢いだったんですね。
うん。今もみんな家に足止めになっているけど、あの当時はまだ新鮮な感覚だったしね。みんな、まだ自主隔離生活やソーシャル・ディスタンシングに慣れていなかったこともあって、自宅でじっくり音楽に取り組むのに拍車がかかったんだ。
-集中できるものがあったおかげで心の強さを保つことができたのかもしれませんね。
そう! それは間違いないね。夜中でも朝10時でも、メンバーにメッセージを送るとすぐに返事が来たよ。みんな自宅にいたからね。エネルギーを集中させてやりたいことをやることができた。
-EPの最後に収録される「On Fire America」も、シングルになっておかしくないようなパワフルなナンバーですが、今作は本当にどの楽曲にも強いメッセージがあり、一曲一曲に存在感がありますね。実は、他にも作ったけれどテーマが合わないなどで、今作に入らなかった楽曲があったりするのでしょうか。
最初は5曲あったんだ。EPを作り終わって家に帰って......夜テレビを観たら、マスクをすることを政治的にとらえているやつらのニュースが出ていた。"今観てるか?"とメンバーにメッセージしたよ。"観てるよ"と返事が来たから、"こいつで1曲書かないか? マスクをすることを政治的にとらえているやつらのことを曲にしよう"と提案した。その晩はそうやってアイディアを交換し合って、翌日、文字通り1日で「Super Spreader」を書いたんだ。
-1日!
で、すぐレコーディングしてできあがりだよ。だから、6曲きっかりなんだ。最初は5曲だったところに「Super Spreader」を作ったからね。今はもっと曲を作り始めているよ。今すごくインスピレーションを得ているから、引き続き新曲を書き続けるつもりなんだ。
-それがフル・アルバムに結実するかもしれませんね。
それを目指しているんだ。できれば来年にはリリースしたいと考えているよ。
-今後の活動について教えてください。たしかZEBRAHEADの今年のツアーは来年に延期されたんですよね。
あぁ。
-まだまだ大規模なツアーやライヴ・イベントを行うのは難しいかと思いますが、FEAR NO EMPIREとしてのライヴ活動はどう考えていますか。
ZEBRAHEADとしてもFEAR NO EMPIREとしても、早くライヴがしたくて待ちきれないよ。こんなに長い間ショーをやらないなんて俺たち始まって以来だからね(苦笑)。早く安全な状態でショーがしたいね。生のオーディエンスの前で。すべての状況が好転したら、両方のバンドで一度にツアーをするのが目標なんだ。
-メンバーが重なっていますしね。いいと思います。
楽だしね。"ほら、次の出番だよ"って言えばいいだけだし(笑)。
-そういうツアーに出る前に、ストリーミングのライヴなどは考えていますか?
実はまだちゃんと話し合っていないんだ。可能性は高いと思うけどね。今はまだ曲作りに専念しているから、そこにエネルギーを注ぎたいけど、他のメンバーと話しているとやっぱりまたツアーをやりたくてウズウズしているし、せめてショーだけでもやりたいと考えているんだ。ヴァーチャル・コンサートをするのもいいかもな。
-そうすれば世界中のファンに聴いてもらえますしね。
そうだね。ZEBRAHEADでもやったことがないけど。他のバンドがやっているのを観たことはあるし、すごくクールだなとは思った。可能性を探るのもいいかもしれないね。
-FEAR NO EMPIREは、来年にはアルバムを出したいということでしたが、今回限りのプロジェクトとなる予定ですか? それとも、他のバンドと並行して活動を続けていくのでしょうか?
今はとにかくインスピレーションをたくさん得ているから、アルバムを完成させたい、それだけなんだ。今の状態がまだまだ続くのであればきっとこれも続くと思うね。でも、今は本当にクレイジーな時期だから、まずはアルバムに専念したい。それがうまくいったら次のアルバムを考えてもいいかもしれないね。
-今回の作品を作ってもらえてありがたいです。ZEBRAHEADのツアーがキャンセルされてしまったなか、次にあなた方がすることにファンは飢えていたと思います。そうしたらこうやって新たな面を見ることができて......。以前の(ZEBRAHEADの)インタビューでは、コロナ禍の前だったので、パーティー三昧だとかビールを飲むとかそういう話が多かったんです(笑)。
(笑)
-今回はシリアスな話題をあなたと話すことができて、みなさんの別の面も見ることができてとても嬉しかったです。もちろんこれまでのインタビューで、あなた方が楽しいパーティー・バンドでありつつも、音楽に対してはとても真面目で世の中のことにも注目していることはわかっていました。でも、今回シリアスな面にフォーカスしたお話を聞けたので、それをきちんと読者の方々に届けたいと思います。
本当にありがとう。こういう大切なときに大切な行動を起こして変化を起こそうとするのは、とても重要なことだと考えているんだ。こんなことが起こるなんて思ってもみなかった人がとても多いけど、こういうときこそどんな形でも自分の声を使って、ポジティヴな変化のために自分が必要だと信じていることをやるのがいいことだと思う。激ロックは今までずっとZEBRAHEADをサポートしてくれてきた。心から感謝しているよ。FEAR NO EMPIREを聴いてくれて、俺たちのメッセージを読者のみんなに伝えてくれてありがとう。
-ありがとうございます。ちなみに、ZEBRAHEADを再開するとき、今回の経験はどう生かされると思いますか?
うーん、メンバーは同じだけど、音楽は全然違うからね。ZEBRAHEADは正直言ってそんなに変わらないんじゃないかな。今までと近いと思うよ。FEAR NO EMPIREがどうなるかもわからないしね。こういうのは今までやったことがなかったし。このプロジェクトでツアーやショーをやるのがどんな感じかもわからないよ(笑)。だから、どう答えていいかちょっとわからないなぁ。シームレスに両方やれて、両方受け入れてもらえることを願っているよ。
-あなた方の楽しい面とシリアスな面の両方を楽しむ人はたくさんいると思います。今までもZEBRAHEADで両方楽しんできましたし、今度はFEAR NO EMPIREもありますからね。楽しみです。これからも応援していきます! 最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。
日本のファンと友達のみんな、俺たちをずっと応援してくれていてありがとう。いつもZEBRAHEADのショーに来てくれてありがとう。コロナ禍が終わってノーマルな状態に戻ったら、ZEBRAHEADとFEAR NO EMPIREの両方でみんなのためにショーをやりたいね。とにかくみんなには、俺たちがみんなを愛しているとわかってほしい。みんなが安全で健康でいることを願っているよ。