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INTERVIEW

BARONESS

2019.10.01UPDATE

2019年10月号掲載

BARONESS

Member:John Dyer Baizley(Vo/Gt)

Interviewer:山本 真由

俺は大胆になりたいし、みんなを振り向かせたい。今まで誰もやらなかったようなことをやりたい。そうやってオリジナリティを追求しているんだ


-アルバム・リリースに先駆けて公開された楽曲「Borderlines」のミュージック・ビデオも、あなたが監督を務めたものですね。カバー・アートワークとはまた違った雰囲気のヴィジュアル・イメージですが、複雑なサウンドが絡み合いながらも、歌のパワーが強い楽曲のイメージにぴったりの映像だと思います。映像とカバー・イラストではインスピレーションを得ているものが違うのでしょうか?

いや、インスピレーションの元はだいたい似たようなところじゃないかな。何か作りたいという原動力はいつも同じ感覚なんだ。ワクワクして心が鼓舞されるようなエネルギーを感じると、何か作らずにはいられなくなる。このアルバムは、普段の自分たちより高いレベルを目指したらどんな感じになるかのいい例だと思う。ビデオを作ることになったとき......ビデオを作るっていうのは、時としてイライラさせられることがある。マーケティング・ツールを作っているような気分になるからね。でも才能のある人たちと一緒に組むことができて、彼らとは固い絆があるから......フォトグラファーもビデオグラファーも友達で、俺たちのビデオに進んで手を貸してくれるんだ。で、みんなで話し合って、シンプルなアイディアに行き着いた。それが音楽に一番合っていると思ったんだ。ビデオを作るのは"プロジェクト"だよね。ただ曲を書いて演奏すればいいだけじゃない。それぞれがエネルギーを注がなければならない側面がいろいろあるんだ。

-今作は、新ギタリストのGina Gleasonが参加した初めてのアルバムでもあります。こういうジャンルでは、女性ギタリストは珍しいですが、彼女は世界的なエンターテイメント集団"シルク・ドゥ・ソレイユ"のクリエイション・キャストだったこともあり、かなりの実力派ですね。彼女は作品にどのような変化をもたらしましたか?

今、君も彼女の経歴書に少し触れていたけど、彼女は本当にハイレベルな能力の持ち主なんだ。それが一番目に見えてわかるものだよね。その能力は間違いなく存在する。あんな素晴らしい才能と仕事ができるなんて贅沢だし、光栄なことだよ。しかも彼女は俺たちの方向性、この手の音楽に理解があるんだ。この方向性に必要なクリエイティヴィティを人知れず持っている。それを俺たちの音楽に合わせるテクニックもね。俺たちの音楽は、密度の濃い音楽的なアイディアと、より感情に訴えてくるポエティックな叙情性のバランスが肝なんだ。ふたつのものをただ一緒にするだけじゃダメなんだよね。そういう意味でもGinaの存在はとても素晴らしいと思う。俺たちの音楽を本質的なところで理解してくれているからね。それはNickもSebastianも持っている素質なんだ。ありがたいことだよ。というのも、それまで俺が一緒にやってきたギタリストは全員一緒に育ってきたやつらだったんだ。長年の友人たちばかりでさ。そうじゃない彼女とこうして音楽的な絆を築くことができたのは俺自身にとっても驚きだった。

-そんな4人が集まってものすごい量のクリエイティヴなエネルギーが生まれたからかも知れませんが、今作は全17曲を収録、60分超えというボリューム感のある作品ですね。

ほんとだよね(笑)。

-こんな大作になることは最初から予定されていたのでしょうか?

(笑)まぁ、壮大になるかもしれないなという予感はあったよ。というかある意味ずっとそう思っていたような。常にモンスター的なものを目指すようなアプローチと言えるからね。それが一番......顕著に表れているのがこのアルバムだと思う。クリエイティヴィティの限界まで挑戦した感があるからね。テクニカルな限界ではなくて。そのふたつの限界はまったく違うものなんだ。長い間バンド活動をやってきてそう思う。いつも能力の100パーセント以上を目指してやっているよ。いつも自分の能力以上のものを作ろうとする。そうすれば、時間が経てばそれが自分の標準になるはずだから。このバンドの場合は、思いついたアイディアを曲というコンテクストの中でどう実現するかをみんなで編み出す。やらなかったものは思いつかなかったもの、あるいはやっている姿が想像できなかったものと言えるくらいあらゆるものを試したよ。だから俺にとってこのアルバムは、自分たちがどこまでやれるか、クリエイティヴィティの限界線までたどり着けた作品なんだ。自分たちがどのくらいまで何かを推し進めることができるかだね。

-また、インストゥルメンタル・ナンバーを要所要所に入れたことで、ストーリーの章が変わるような気分的な切り替えができて、長いアルバムでも飽きさせない構成になっていると感じました。

そうだね、俺たちが曲を書くときというのはいつも、なんらかのストーリーや映画に伴ってもおかしくないような形なんだ。どのアルバムにもエネルギーやダイナミクスのarc(弧)があって、俺にとってはそれがストーリーや物語のように感じられるんだよね。それの持つ壮大さが聴き手を惹き込むんだ。今回も緩急をできるだけ作ってそういう流れを作ることがとても重要だと思ったよ。アルバム作りに関しては、地に足をつけておく必要はないと思うんだよね。何が一番クレイジーなアプローチになるのか、常に探っていきたいんだ。罪悪感を覚えることなくやりたいことをやりたいね。制作プロセスはものすごく楽しかったよ。自分たちを引き留めるものなんてまるでないかのように、とにかく前へ前へという感じだったんだ。ただ、こんなに壮大なアルバムになったのは結果だね。自分でも気づかないうちにこうなっていて、"いったいどうやって?"と思うよ(笑)。でも心から誇りに思っている。だけど誇りに思っているのは、その成り立ちに自分にとってミステリアスな部分があって、今も聴いていてワクワクできるから。この楽曲を作ったソングライターのひとりとして、ひとりの人間として、それはとても胸が躍ることなんだ。

-今作も前作『Purple』(2015年リリースの4thアルバム)同様、Dave Fridmannがプロデューサーを務めていますね。彼は必ずしもメタル畑の人ではありません。MERCURY REVのオリジナル・メンバーで、THE FLAMING LIPSやMGMT、OK GOなどアーティスティックで個性的なバンドの作品を多く手掛けているプロデューサーですが、あなたのバンドの素晴らしい面を引き出すことに長けていると思います。2作品続けて彼を採用した理由は?

その前のプロデューサーだったJohn Congletonもそうだったけど、Daveは俺たちがよく関連づけられるタイプの音楽とはあまり縁がなかったんだよね。どちらのプロデューサーもこの手の音楽の経歴はあまりない。でも、音楽的にものすごくクリエイティヴな人なんだ。変じゃないかと思ってしまうレベルでね。Daveの知的レベルは度を超えているよ。同時にすごく変な人で、俺たちと一緒にものごとを限界まで推し進めることに意欲的なんだ。俺たちのアルバム作りに彼が与えた影響は間違いなく絶大だね。今回のアルバムに限って言えば......ほら、過去にも一緒にやっているからさ、彼の前回のアプローチが今回の俺たちの曲の書き方に影響を与えたと思う。そういうことを認めるのは、バンドとしては従来なかなかできないことだったけど、Daveは本当に俺たちからいろんなものを引き出してくれたから。しかもものすごく、ものすごく興味深い形でね。

-あなたも言っていたように、『Blue Record』(2009年リリースの2ndアルバム)と『Yellow & Green』(2012年リリースの3rdアルバム)を手掛けた、John Congletonもまた、個性的なインディー・ロック系のバンドを数多く手掛けているプロデューサーでした。メタル畑のプロデューサーを選ばない、という背景には、メタルに求められるサウンドの激しさよりもメロディや緻密な音作りに重きを置いているということでしょうか?

そうだね。メタル歴のない人たちと仕事することの意義のひとつは、新しいやり方を発明してくれるかもしれないということなんだ。

-たしかに。

もしかしたら彼らは、違ったものの見方をするかもしれない。そう考えるとワクワクするんだ。と同時に、俺たちみたいなバンドと一緒にやるのは彼らにとってクリエイティヴな意味での試練にもなる。ここまでやらなくても......と思うこともあるだろうからね。俺にとっては、"今までこう表現していたものを別の形で表したらどうなるだろう"と探る作業なんだ。俺は大胆になりたいし、みんなを振り向かせたい。今まで誰もやらなかったようなことをやりたい。そうやってオリジナリティを追求しているんだ。曲作りも上達させたいし、もっといい曲、もっとユニークな曲を書いていきたい。そうしながら、今まで他の誰もやらなかったような新しいスタイルを模索している感じかな。

-要になってくるのはケミストリーのような気がします。自分の畑ではないプロデューサー、新しいメンバー、新しいタイプの音楽......このアルバムでは、それらがいい具合に化学反応を起こしてミックスしているのだと思います。

そう! 俺もそう思うよ。Daveもそういう意味でとてもワクワクしながら取り組んでくれた。俺たち全員が現状に甘んじないで熱心に取り組んでいたからね。俺たちが究極的にやれるところまでやりたいということを理解してくれて、奇怪なアイディアに満ちた部屋の中でうまくいくものを一緒に練ってくれた。ヴォーカリストとして俺が唯一望んでいたのは、パワーのある歌を作ることだった。ここまでうまくいったのは初めてだよ。今でもどうしてこうできたんだろうと思うけど、あれは間違いなくエキサイティングな過程だった。

-バンドはもうすぐ全米ツアーを締めくくるところですが、今作収録の新曲を中心としたセットリストになっているのでしょうか? ファンの反応はいかがでしょう。実際に演奏してみて変化を感じたところはありますか?

間違いなく最高だね。サウンドに広がりができたし、心を掴むセットにできていると思う。オーディエンスも気に入ってくれているしね。1時間半のセットというコンセプトは俺にとっていつも興味深いものなんだ。全体の流れの中でバランスが必要だしね。曲も俺たち自身も。で、新曲は本当にいろんな形のプレイの仕方があるってわかったんだ。すごくエキサイティングだよ。ステージ上でのインプロヴィゼーションも増えているし、ある意味以前よりゆとりがあるんだ。でもユニットとしては以前よりずっとタイトになっている。すごく楽しいよ。

-10月に日本盤が出るということで、今後来日ライヴも計画されているのでしょうか?

絶対的な全力を尽くしてトライするから、イエスであると仮定したいね。まだ実現できていないことで、日本を再訪することほど熱望していることは他にないから。今は100パーセント"イエス"とは言えないけど、いつかは絶対に実現させるよ。

-年内はヨーロッパ・ツアーが長いですし、来年のどこかの時点で来日できることを願っています。最後にバンドの長期的な目標や日本のファンへメッセージをお願いします。

BARONESSのJohn Baizleyだ。今日はこうやってインタビューに答えることができて本当に嬉しかったよ。心から没頭して話すことができたんだ。新作『Gold & Grey』の長いツアー・サイクルの中で日本に行ける可能性が出てきたことに、メンバー全員とてもワクワクしている。できるだけ早く、できるだけ長いツアーを日本でやりたいね!