INTERVIEW
the Art of Mankind
2018.01.15UPDATE
2018年01月号掲載
Member:sawacy(Vo) Wooming(Gt)
Interviewer:増田 勇一
元Kissing the Mirrorのメンバーを中心に結成されたメロディック・デス・メタル・バンド、the Art of Mankindが、1月24日にリリースする記念すべき1stアルバム『Distant Light』。"とにかくメロディック・デス・メタルとしか言いようのないものができた"とWoomingが語るとおり、まさに徹頭徹尾、躊躇のない激音が詰め込まれたデビュー・アルバムとなった。激ロック初登場となるthe Art of Mankindから、sawacyとWoomingに今作の手応えやバンドの目指す音楽性について話を訊いた。
-記念すべき1stアルバムが完成。まずはその手応えから訊かせてください。
Wooming:とにかくメロディック・デス・メタルとしか言いようのないものができたな、と。メロディック・デス・メタルにこだわり続けてきたし、それ以外のものは作りたくなかったし、もともとそれをやるために集めたメンバーでもあって。それぞれ作曲もできて、このメンバーやったらメロディック・デス・メタルにならないはずはない、と。
-この数十秒の回答の中に、メロディック・デス・メタルという言葉が実に3回も!
Wooming:何回でも言います。なるべく略さないでくださいね(笑)。
sawacy:ははは! たしかに狙ったとおりのものができたと思います。僕らは今まで各々、同人(同人サークル)の方で何枚かアルバムを作ってきてたんですけど、クオリティの面でもそのころよりも一歩深いところまで踏み込んで追求できたかな、と思いますし。
Wooming:僕自身、普段からひたすら曲を生産してしまうタイプなんですね。だからこのアルバムを作るにあたって、自分だけで40曲は持ってた。ただ、僕の曲は基本的に暗いというのがあるんですね。だから自分に足りない要素を補ってもらううえで、キャッチーな部分はみんなに任せて、自分では好き放題作っちゃおうという感じでした。
sawacy:メロデス(メロディック・デス・メタル)とひと口に言っても、キャッチーなのも暗いのも、雰囲気重視のものもあるじゃないですか。そこで今回、自分の出番は雰囲気系かなと思って。役割分担と言うほどじゃないけども、そういうことを意識しつつの曲作りではありました。
Wooming:とはいえ個々のルーツもわりと近かったりするんで、それでもバラバラにはならず、それなりに統一感は出てくることになるというか。
-共通のルーツ。例えばTHE BLACK DAHLIA MURDERとかですか?
Wooming:それ、活字にしちゃいます(笑)? でも実際、そうですね。そういうスタイルで作っていこうとしたし、僕にはそれしか作れないんで(笑)。個人的に、"いろんなことをやるアルバム"というのがあまり好きじゃなくて。むしろ最初から最後までスルッと一気にイケてしまうものこそ名盤だと思ってるんです。SLAYERの『Reign In Blood』とか、最高じゃないですか。金太郎飴とか言われてしまうかもしれないけど、1曲目が最高だとそのまま最後までイケちゃう、みたいな。そういうのが好きなんです。
-実際、今作にも単調な印象はありません。展開がドラマチックというよりは、曲同士の繋がりや全体の流れが気持ちいいからこそだと思うんですが。
Wooming:曲間とかの問題でもありますよね。そういうのを考えるの、結構好きなんです。今まで個人プロジェクトで30枚ぐらいアルバムを出してきてるんですけど、そうやって自分の曲をアルバム1枚にまとめるときにも常にそこにこだわってきたし。
-今、アルバム何枚って言いました? こちらの聞き間違いじゃないですよね?
Wooming:はい。30枚ぐらい(笑)。20歳ぐらいのころから、同人とかでずっとやってきて。そうやってずっと"ひとりプロジェクト"でやってきたんで、実はこれまでバンドというものの経験がなかったんです。そこでsawacyに歌ってもらったり、Kenkawa(Gt)さんに弾いてもらったり。そうやってわりと長いこと一緒にやってきたなかで、そろそろバンドらしいバンドをやってみようか、ということになって。普段からいろんなメロディック・デス・メタルを聴きつつ"自分ならここはもっとこうするな"とか"ここがちょっとアカンな"とか考えながら、常に自分の理想のメロデスを追い求めてしまうようなところがあったんですよ。だったらそろそろ、ちょっと自分試しをしてみるべきか、と。
-以前は、ゲーム・ミュージックのメロデス・バージョンを作ったりしていたとか。
Woomimg:ええ。メロデスに興味のない人にも聴いてもらえる、という意図もそこにはあって。ただ、そういうのって評価されるプラットフォームがちょっと違うというか。その分野ではもう長いことやってきて、ある程度の達成感が得られてたんですね。ちょっとここで、普段からライヴハウスにメロデス系のバンドを観に来るような人たちに自分たちの音楽がどれくらい響くものなのかを試してみたくなったというか。
sawacy:僕は僕で、基本的にはオリジナルのメロデスをやってきたんですけど、ひとりでやるには限界があって。でもこのバンドには、自分の曲を安心して投げられるギタリストがふたりもいる。そういう形でやれたらいいなって、実はずっと思ってたんです。あと、個人としてアルバムを1枚作ってみたことで、逆に自分だけで全部やることへのこだわりがなくなって。ひとりだと徹底的に突き詰められる代わりに広がりが求めにくいじゃないですか。
Wooming:そう、個人でやってると終わりがないんですよね。日常的にCDを作るということに取り組んでると、作るたびに毎回"あぁ、今回はこういう部分で成長できたかな"というのが実感できて、それが気持ちいいんですね。そもそもギターを始めたのも、同人CDを作ろうと思ったからだったんです。その半年後には、もう自分でCDをプレスするようになっていて、多いときには年に5枚ぐらい作ってた(笑)。それをあとから聴き返してみても"あぁ、ひとつ前のよりイケてる。だから次も頑張ってみよう"みたいな気持ちになれた。ただ、今回はあえてそういう環境から離れて作ってみようとしたわけです。
-そこにはある種の覚悟も感じられます。ちなみに、このバンド名にはどんな意味が?
sawacy:あんまりメタル・バンドっぽくない名前にしたいというのがまずあって。"Art"という言葉にはいろんな意味が含まれてるので、そこに自分のいろんな気持ち、ちょっと意地悪な気持ちまで含めてみたりしてるんです。意味はもう、場合によって変わってくる感じでいいと思っていて。
Wooming:まぁ基本的には"我々によって作られたメロディック・デス・メタルというアート"という解釈でいいんじゃないかと思います。
sawacy:そういう意味では全然ないんですけどね(笑)。もともと、バンド名を決める前からすでに曲がいくつかあったので、そこから触発されて出てきた言葉でもあるんです。基本的には曲調に合わせて、暗いこと、苦しいことを歌ってるんです。すべては"人"のことでもある。そこで逆説的に"光は遠いところにあるな"というところからイメージしていって、アルバム・タイトルも"Distant Light"になって。その光を求めていく、というか。
Wooming:ジャケットのデザインも"遠くにある光"をイメージしたものなんですけど、いざ完成してみたら、むしろ燃え盛ってますよね。つまり、メロディック・デス・メタルの炎は燃え盛っているんです。この光がメロデスの未来を照らしてるんです。
-この取材中、何度メロデスという言葉が出てきたことか。ホントに大好きなんですね!
Wooming:口癖なんです。というか、それ以外に英単語を知らないんです(笑)。僕にとっては日常ですから、メロディック・デス・メタルが。空気を吸って生きているのと同じような次元で、僕はそれを摂取しながら生きてるんです。同時にこれって、狭そうでありながら実は無限大の可能性を持った音楽なんじゃないかと自分では思っているんで。僕らみたいな不愛想でブラストビートが入ってるようなスタイルのメロデスもあれば、昔のCHILDREN OF BODOMみたいな、メロスピにデス・ヴォイスを載せた形態のものもある。実はいろいろなスタイルのものがあるのに、どれもやっぱりメロディック・デス・メタルとしか言いようがないというか。そのメロデスの素晴らしさを伝えたい、という気持ちもあるわけです。
sawacy:僕はむしろ、メタルの歴史を順々になぞりながら聴いてきたようなところがあって。最初はJUDAS PRIESTから入って、SLAYERとかスラッシュ・メタルを聴くようになって、それから2000年代初頭のニュー・メタル、メタルコアとかに移行していって......。そういった流れでメロディック・デス・メタルに最終的に辿り着いたんです。