INTERVIEW
AllS
2017.11.22UPDATE
2017年12月号掲載
Member:MAKI(Vo) 沁(Gt) 陽佑(Ba) NIKKY(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
『Do or Die』は新しくてシンプルな潔い音が必要だった
-とはいえ、「DRIVEN」などでのバキバキとしたベースの音からは、なかなかの強い主張を感じましたけれどね。
陽佑:あれはまぁ、部分的にスラップが入っていたりするのでちょっとそういうふうに聞こえるのかもしれないです(笑)。でも、だからって曲の中でずーっと前にいたいわけではないですし、美味しいフレーズを弾くのはここぞっていうときだけでいいんです。
沁:ギターが前に出ているときはベースが一歩引いて、ベースが出ているときはギターが一歩引く、みたいなバランスも今回のアルバムではうまいこといったと思いますね。どちらかといえば、今回は自分がベースの方に寄っていく形だったんですけど、任せるところは任せるみたいなその役割分担が、思っていた以上にしっくりいきました。
陽佑:前と比べると、音が全体的にシンプルになりましたよね。
MAKI:沁は、放っておくといつまででも音をいじったり重ねたり詰め込んだりするクセがあるんです(笑)。これまではそのあとにベースとドラムを重ねていたんですけど、今回の場合はみんなでシェアしていった感じだったんですね。まずは、ベースが先に土台を作っていくところから始めたので、沁も"やりすぎない"レベルで音をまとめられたんだと思います。もちろん、そこは賛否両論があるとは思うんですよ。昔みたいに作り込んだ音の方が良かった、という方もいるでしょうし。個人的な感覚でいけば、僕自身も本当はそういう凝っていて複雑の音の方が好みではあるんです。ただ、今回の『Do or Die』についてはタイミング的なことでいっても、こういう新しくてシンプルな潔い音が必要だったんだと思うんですよ。
沁:思い切りとかポジティヴな諦めというのが、今回のレコーディングではいい結果に繋がりましたね。音なんてこだわりだすとキリがないし、あとで冷静になって比べてみたときに、いじったぶんだけものすごく良くなっているのか? というと、意外とそうでもないこともあったりしますからね(笑)。"これで良し!"と思ったら、そこで思い切ってもうそれ以上何もしないっていうことを今回は学びました。
MAKI:沁は、ゲームとかやっていてもとにかくアイテムを集め続けるんですよ。"もう、ええやろ。先行ったら?"となっても、あるものはぜーんぶ集めないと本人の気が済まないみたいなんです(苦笑)。
陽佑:レベル99を目指すんでしょ(笑)。
NIKKY:アイテムをコンプリートしてね。
沁:そうそう。それで勝たないと、なんか気持ち悪い(笑)。
MAKI:僕なんてほとんど集めないのになぁ。勝てればいいわけですから(笑)。
NIKKY:わかる! ストーリーをクリアしたら、"もういい!"ってなる(笑)。
-なるほど。ゲームにもレコーディングにも、それぞれの性格というのは何かと出てしまうのですね。
沁:それだけに、今回はそこを意図的にいろいろと変えていくことでより目指したい音に近づくことができたんですよ。
-だとすると、そんなAllSとしての新しい音像を背景にヴォーカリストとして歌っていく際、MAKIさんはどんなことを感じていらしたのでしょうか。
MAKI:音がシンプルになったことによって、歌うのはむしろ難しく感じたところが多かったかもしれないです。バックの音がスッキリしてくると、それだけヴォーカルの存在感は浮き彫りになってきますからね。ここにきてヴォーカリストとしての責任は、より強くなってきたなと感じてます。
-では、ここからはせっかくなので『Do or Die』に収録されている個々の楽曲に関する解説も、みなさんからいくつかいただければと思います。まず、今作はSEとしてのインストゥルメンタル「Transmigration」で幕を開けることになりますが、こちらはあらかじめ用意してあったものだったのでしょうか。それとも、すべての楽曲の骨格ができあがってから録りまとめたものだったのでしょうか。そのどちらになるのかを、まずは教えてください。
沁:このアルバムの最初のSEは、2曲目の「Memories」に繋がっていくものとして作ったんですよ。やっぱり、アルバムを作る以上は冒頭にSEを入れたいっていうのが昔から感覚としてずっと変わらないところなので、今回はそこも継承しました。
-それに続く「Memories」については、もともとどんなコンセプトを持って作った楽曲だったのですか?
沁:当初、これはわりとバラード的な立ち位置で考えていた曲でしたね。サイズがミニ・アルバムだとしても、全曲を激しい曲だけで埋め尽くしてしまうと自分自身が聴き飽きてしまうので(笑)、必ず1曲くらいは"これは少し毛色が違っているな"という曲が欲しいんです。そして、おそらく普通だとそういうタイプの曲はアルバムの真ん中くらいに持っていくことが多いと思うんですけど、そこも今回はあえて新しい切り口を見せたくてこういう形にしてみました。
-「Memories」は、イントロのギターのアルペジオがとても美しい楽曲だと感じます。しかしながら、全体像としてはベタなバラードという印象はそこまで感じなかったのですが、この完成形に至るプロセスはどのようなものだったのでしょうか。
MAKI:最初はもっと、いかにもなバラードだったんですよ。でも、やっていくうちにだんだんとエモい要素が加わってきてしまって。気がついたときには、いわゆるバラードではなくなっちゃってました(笑)。でも、アルバム全体のバランスを考えるとこのくらいのトーンが実は正解だったんじゃないかと思いますね。
沁:そうそう。結果的に、他の楽曲の激しさとか力強さに引っ張られてこうなった感じなんです。
-こちらは、リズム隊の放つ疾走感がとても心地よい楽曲でもありますよね。
NIKKY:僕も、この曲をバラードとはまったくとらえていなかったんです(笑)。サビでスネアのロールを入れたいという希望も聞いていたので、その時点で重視するのはまさに疾走感だろうなと思ってましたね。
MAKI:こういうアプローチの曲は、今までやったことがなかったので歌うのは少し難しかったです。これはAllSになって初めて出てきた面ですし、個人的にはLINKIN PARKのことを少し意識していた曲でもありました。