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INTERVIEW

QUEENS OF THE STONE AGE

2017.08.21UPDATE

2017年09月号掲載

QUEENS OF THE STONE AGE

Member:Joshua Homme(Gt/Vo) Troy Van Leeuwen(Gt)

Interviewer:山口 智男

Markはバケーション中のギャングスタみたいな服を着てるんだ(笑)


-いや、大丈夫です。ちゃんと話題になっていますから(笑)。Markを起用したことを意外に思う人もいるかもしれないけど、ひょっとしたら彼とやることも、さっき言っていたリスクのひとつだったんですか?

Josh:そうかもしれないね。話題になっているってことは、状況を混乱させたってことになるのかな。Markと俺たちが組むと聞いたとき、みんな、こっちから来ると思っていたのと逆から来たと思ったんじゃないかな。そういうマジックが生まれるのもレコード作りの楽しさや美しさのひとつだと思うよ。期待をこっちで作っておいて、その期待を裏切るみたいな混乱を作り出すことが、俺たちは楽しいんだ。それにMarkもAlexに負けないくらい髪型がかっこいいだろ?

Troy:イカしてるよな。

-あぁ、たしかに(笑)。

Josh:しかも、あいつ、バケーション中のギャングスタみたいな服を着てるんだよ(笑)。

Troy:ハハハハ。

-さっき踊りたくなるようなドラムと言っていたけど、踊れるサウンドを作るという意味ではMarkは適役でしたね。

Josh:完璧だったよ。表面上は、"え、Markと組むの!?"と驚かれると思うんだけど、それはそれでいい。そこに狙いもあったわけだからね。だけど、現実的な話をすると、俺たちはすごくビート重視のバンドなんだ。しかもディテールにこだわるバンドでもある。Markもそうだろ? コミュニケーションに対してすごくオープンで、誰のアイディアであっても重んじる環境を、ちゃんと作って仕事ができるのも俺たちだし、Markなんだよ。みんな、意外だと思うかもしれないけど、そういう意味ではすべてにおいて相性は抜群だったんだ。

-例えば、どの曲の、どんなところにMarkの手腕が発揮されているんですか?

Josh:例えば、「Head Like A Haunted House」はバパパ・バパパパ・パパパパって、すごい勢いで走っている馬に引きずられてるみたいな感じの曲で、同じ軌道の上をぐるぐる回りながら展開していくんだよ。でも、サビは同じように聴こえて、繰り返すたび、微妙に形が変わっている。その感じ、Markも好きみたいで、すごく楽しんでいたよ。1回消えたと思ったらまた現れるっていう展開が好きなんだろうな。左の耳で鳴っていたベルが次の瞬間には右から聴こえる。そういうトリックをやりたかったのもMarkと組んだ理由のひとつだった。

Troy:Markとの作業は素晴らしかったよ。知識の豊富な人がそばにいて、信頼できることが、すごく居心地が良かった。僕らはあくまでもバンドでいればよかったんだ。彼がバンドの耳になって聴いていてくれるんだからね。そこまで誰かをすぐに信用するって、僕らなかなかないことだけど――

Josh:そもそも人と組むってことをしないもんな。

Troy:そうだな。あそこまでメンバーじゃない人間を信用して、一緒に組むってこと自体が何かを語っていると思う。Markと組んだことで、とにかく僕らは安心してレコーディングすることができたんだ。

-逆にMarkもQOTSAと一緒にやったことで、今後、ロック系の仕事が増えそうですね。

Josh:日本人って誰かに会うとき、必ず手土産を持っていくだろ。音楽における良好な関係にも同じことが言えると思う。俺たちは決してMarkを手ぶらで返したりしない(笑)。そこが音楽のいいところだよね。っていうか、敬意だよ。

-新作を象徴するものという意味で、ふたりそれぞれが気に入っている曲を教えてください。

Josh:「Feet Don't Fail Me」だな。その曲は、いろいろな意味でクロスロードなんだ。もちろんMarkとのクロスロードでもあるし、俺たちの古いサウンドとの境界線でもある。あの曲の頭の部分って、いかにも昔の俺たちみたいなサウンドだろ? それをいったん捨てて新しいサウンドになるっていう展開に、あの曲はなっているんだけど、それともうひとつ、Iggy Popとの出会いもそこにはあるんだ。実はIggyのアルバム『Post Pop Depression』用に考えていた曲なんだよ。

Troy:え、そうだったの!? 知らなかった。今初めて聞いたよ。

Josh:形はずいぶん変わったんだけどね。あれ、話してなかったっけ? 曲のタイトルになっているフレーズはIggyが書いたものなんだ。Iggyの曲としては完成できなかったから、今回、Iggyからの繋がりという形で生かしてみたんだ。あとは最近よく聴いているパウワウっていうネイティヴ・アメリカンの音楽の要素もちょっと入れてみた。そんなふうに、いろいろなものが美しくぶつかり合って、そこから散った火花みたいな曲だと思う。

-『Post Pop Depression』の話題が出ましたけど、そのアルバムをプロデュースしたJoshってすごいって、改めて思いましたよ。

Josh:ハハ。Iggyってすごいよな。あの人は自分に愛を寄せる人には手を差し伸べて、その人たちの助けを借りて、美しく飛ぶ人なんだ。大好きだよ。しかも、Iggyは彼に相応しい額縁の中にしか収まらない人なんだ。

-Troyが気に入っている曲は?

Troy:「Un-Reborn Again」だな。戦艦みたいな曲なんだよ。サウンドが堂々としているだろ? 新作の中でも大きな存在の曲なんじゃないかと思う。僕らが今回、新たに開拓したサウンドの要素もひととおり網羅されている。いきなりシンセ・サウンドで始まるところは、特に新しい。でも、曲の中で、まるで旅をするようにいろいろな展開を楽しめるような、すべてが詰まった曲だと思う。Markらしさが一番表れているんじゃないかな。彼の技術があったからこそ、あれだけ山あり谷ありの展開にできたと思うし、そのうえで空間が生かされている。彼のレコーディング・テクニックは驚きだった。それがよくわかる曲だと思う。

-最後にアルバムのアートワークについても聞かせてください。今回のアートワークを見て、『Songs For The Deaf』(2002年リリースの3rdアルバム)のアートワークを連想するファンもいるんじゃないでしょうか?

Josh:いるだろうね。ただ、すべてのアルバムのアートワークが方向性としては一貫しているんだ。どのアルバムも俺たちの人生のサウンドトラックだからね。ただ、今回、アートワークを手掛けたBonefaceとの繋がりは今までとはかなり違うと思う。今までは、アルバムができたら、それと繋がりがありそうな絵を描いてもらってたんけど、今回は、わざわざBonefaceにロンドンからレコーディングしていたロサンゼルスのスタジオまで来てもらって、アルバムの哲学や歌詞について話し合ったんだ。そこで伝えたアルバムの世界観を、彼が自分のものにしてインクに絞り出したものが今回のアートワークなんだ。

-これまでで一番かっこいいと思います。

Josh:俺たちも大好きだよ。もっとも、彼の絵がそもそも好きなんだけどね。あいつと俺の世界観って似ているんだよ。美しきビョーキとでも言ったらいいかな。明らかに病んでいるんだけど、治したいとは思わない。むしろ、治らないでいいやと思えるビョーキなんだよ。