INTERVIEW
CRY VENOM
2017.04.19UPDATE
2017年04月号掲載
Member:Jacky Vincent(Gt)
Interviewer:山本 真由
-様々な音楽の要素を融合させたいとずっと前から考えていたという話でしたが、あなたがFALLING IN REVERSEを脱退した理由は、やはりこのような融合を目指していたからなのでしょうか。
たしかにそういう面はあるけど、なんと言っても俺がこの手のメタルに情熱を持っていたからだね。俺のいたFALLING IN REVERSEはうまくいっていたし、たくさんの人の前でプレイすることもできたし、素晴らしい体験だったけど、俺の中では大きな穴が残っていたんだ。虚しさがあった。俺はとてもアーティスティックな人間なのに、クリエイトすることができなかったからね。俺はいつでもクリエイトしていたいんだ。そうすることによって満たされる。子供のころからずっとそうだった。いつも絵を描いたり曲を作ったりしていたんだ。FALLING IN REVERSEは・・・・・・誤解しないでほしいんだけどね、大好きなバンドだったから。あのバンドにいたおかげで得られたチャンスがたくさんあるし、とても感謝しているんだ。後悔はまったくしていない。でも、ほとんどクリエイティヴな面で貢献できなかったんだ。あれは基本的にシンガー(Ronnie Radke)のバンドだからね。シンガーのベイビーだったんだ。それは理解していたしそれでよかったんだけど、俺はギター・ソロを入れるくらいしかできなかった。だからポップ寄りの音なのにソロがテクニカルだったんだよね。それは素晴らしかったしクールだったし、ギタリストとしてはとてもいいことだったんだ。だけどソロが十数秒しかないのもあったから、俺としてはもっと自分を出せる場が必要だった。と言っても脱退は意識的に決めたことじゃなくて、必然的にそうなったという感じかな。
-より自由なサウンドを追求したいと自然に熱望していたのでしょうね。でもさっきも話がありましたけど、Wyattはあなたのファンだったそうですし、FALLING IN REVERSEの経験があったからこそのバンドということで、いいことですよね。
そう、本当にそうだよ。
-デビュー・アルバム『Vanquish The Demon』の日本盤リリース、おめでとうございます。本国では昨年末にはすでにリリースされていますよね。
そうそう、2016年中に出すというのが俺たちのゴールだったんだ。あまり待たせたくなかったからね。というのも、このアルバムはクラウドファンディングで作ったんだ。アメリカにIndiegogoというサイトがあってね。そこでファンから資金を募ってアルバムを作った。最初から全部自分たちでね。DIY形式だった。そのあと日本でアルバムを出す機会に恵まれて、キングレコードから出すことになったんだ。とても光栄なことだよ。もちろんチャンスに飛びついた。日本でアルバムを出すというのは大きな目標のひとつだったからね。何しろ俺たちは日本の音楽に大きな影響を受けているから。日本のアニメ、日本のビデオ・ゲーム・・・・・・俺が一番好きな作曲家は、"ファイナルファンタジー"シリーズの楽曲を手掛けているノブオ・ウエマツ(植松伸夫)なんだ。俺にとってのナンバーワン・ミュージック・ヒーローだよ。彼のオーケストレーションや壮大な曲の作り方が好きでね。
-わかります。"ファイナルファンタジー"の音楽も、あなたのアルバムの壮大な曲展開に通じるものがあるかもしれませんね。
そう、そういうのに大きな影響を受けているんだ。それから日本のバンド。パワー・メタル系やヴィジュアル系。イギリス人もアメリカ人も"Wow!"って言ってるよ。俺たちのロック・ミュージックにはあまりヴィジュアル的な要素がないからね。俺たちは"仕事がない"とか社会情勢なんかを取り上げるけど、日本のそういうバンドはもっとファンタジー的でアーティスティックだと思う。そういうのを取り入れてみたいね。俺たちはX JAPANの大ファンなんだ。
-そうしてクラウドファンディングを経て作ったアルバムですが、周囲のバンドの反響やファンのリアクションはいかがですか?
ファンの多くはハッピーだね。アルバムをとても気に入ってくれているよ。でも、FALLING IN REVERSEとあまりに違うからショックを受けた人たちもいるね。彼らはFALLING IN REVERSEと似たようなものになると頭の中で思っていたんだ。もしくはA DAY TO REMEMBERとか、そういう感じのワイルドな音楽。もちろんそういう要素もここにはあるけどね。でもヴォーカル・スタイルも全然違うし、曲の構成も違うんだ。中には"どうも理解できない"と頭を抱えていた人もいたよ(笑)。日本の音楽シーンを外から見ていて勝手に思うんだけど、日本のファンはジャンルやヴィジュアルにあまり先入観がないというか、なんて言うのかな・・・・・・よそより幅広い音楽を受け入れる度量があるんじゃないかな。アメリカの音楽ファンは、小さな箱に音楽を閉じ込めたがる傾向があるんだ。これはこのジャンルだからこの箱、って入れておけば安心する。だからパワー・メタルと他の音楽の融合みたいなのを前にすると、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。怯えてしまうんだ。理解できないから思い入れを持つこともできない。おかしいよね(笑)。
-おっしゃるとおり、日本人は様々な要素が融合されたものが好きというのはありますね。bento box(お弁当箱)みたいなものですよ。bento boxってわかります?
(笑)わかるよ。俺はスシとか日本食が好きだから(笑)。......とにかく、日本の音楽ファンはオープンで、いろんなスタイルを受け入れる度量があると思うんだ。
曲全体をひとつの旅として楽しんでほしいんだ。ジャンルのことは気にしないで、ただ聴いてほしい
-そしてこのアルバムにもいろんなスタイルが入っていますね。疾走感溢れる楽曲にハイトーン・ヴォーカル、壮大な曲展開と、パワー・メタルの体裁をとりつつも、エレクトロ要素を入れたり、ブレイクダウンを入れたりメタルコア/ハードコアの表現も使うなど、モダンな仕上がりになっていますね。ご自身では、本作のどんなところに特に注目してもらいたいですか?
俺が注目してもらいたいのは......(しばし考える。沈黙)というか、ジャンルに注目してほしくないという感じかな。この部分はエレクトロニック、この部分はパワー・メタルだな、なんてふうに思ってほしくない。その曲全体をひとつの旅として楽しんでほしいんだ。でないと、曲がさっきの話の小さい箱に分かれてしまう気がする。とにかくジャンルのことは気にしないで、ただ聴いてほしい。
-全体の雰囲気を楽しむということですね。
そう。