INTERVIEW
そこに鳴る
2017.02.07UPDATE
2017年02月号掲載
Member:鈴木 重厚(Gt/Vo) 藤原 美咲(Ba/Vo) 真矢(Support Dr)
Interviewer:吉羽 さおり
-また、ちょっと雰囲気の違う「星の行方」(Track.6)はどうですか。
鈴木:これは2012年くらいからある曲なんですけど、レコーディングする機会がなくて。でもいい曲やなって思っていたので、今回録ることになりました。
藤原:アレンジはどんどん変わっていって。やっと今回、しっくりきた感じですね。
-まさにこのバンドならではのアンサンブルの妙が楽しめるというか、構築的な曲ですね。
鈴木:昔の曲はそういうのが多いので、それがこの曲は一番出ているのかなって。このアルバムの中だと、浮いていて面白いかなと思いますね。
-こういった構築性はある種、メタルの様式美とも近い感じで、そこに鳴るとも親和性は高かったのかなと思います。もともと、歌モノではありながらも、サウンドへのこだわりは強いバンドですよね。
鈴木:僕、中学生のときはEvery Little Thing(ELT)しか聴いてなかったんです。ELT以外はクソやと思ってたんですよ。でもだんだんと、J-POPって同じ感じというか、2コーラスあって、落ちサビがあって、サビがあって、大サビがあるっていう、何回同じことをやんねんっていうのは、幼心にずっと思っていて。そういうなかで、高校生のときに9mm Parabellum Bulletが出てきて、"全部違う!"と。
-パターンが壊されたんですね。
鈴木:バス停で泣くほど感動して。そこから、そういう構築美的なものが好きなのかもしれないですね。それまでELTしか知らなかったから、びっくりしましたけど。
藤原:でしょうね(笑)。
-そこで1回、固定観念を壊されたから、自分の作るものも面白いものに向くようになったんですね。
鈴木:そうですね。
-ありきたりの進行をしていると、どこかで壊したくなってくるんですか。
鈴木:うん、でも結構ありきたりな進行にしてるつもりなんですけどね(笑)。
藤原:(笑)
鈴木:「星の行方」と「family」に関しては、ありきたりではないなと思うんですけど、他は普通じゃないかな? イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、落ちサビ、サビ終わりみたいな、構成的にはだいたいこの感じなんです。
-それをアンサンブルの絡みでどう面白く見せるのかっていうところですかね。
鈴木:そこで小難しく聴こえるのかもしれないですね。
-話を聞いていると、すごくシンプルに影響を受けたものから曲を作っていて、でもそれがひと言では言えないような曲になってるのがこのバンドの面白さだなと思うんです。自分では、変わったことをやろうという意識でもないんですね。
鈴木:うん、そうですね。意図的に変わったことをやろうとはしてないですけど、客観的に見て、変わってると思われることをやる方が自分には合っているなと思うんです。たぶん、学生時代に凛として時雨のコピーばかりしていたので、テクニカル寄りのフレーズになりがちというか、そういうフレーズの方がいいと思う思考回路になっているんです。それがひとつの武器というか。客観的に見て、ちょっと小難しい感じになるようには作っているんですけど、主観的には、難しいことをしているつもりではないんです。
-(凛として時雨の)TKさんに作曲時の話を聞くと、構築的に作っているというよりも、降りてくるみたいな話をするんです。自分に聞こえているものを、音に当てはめる感覚というか。
鈴木:すごいですよね、僕は降りてこないので。ずっとYouTubeを漁ってるんですよ(笑)。"あぁ、こんな感じいいな"とか考えながら。
-自分で引っ掛かるものとして、特徴はあるんですかね。
鈴木:グッとくるかどうかって言うんですかね。そこは感覚的なんです。ただ、自分の中で基準として持っているのは、プレイヤー目線でいいと思うものはあまり取り入れたくないというか。今、こうして楽器をやっているからこそ、見えてきた音楽の部分って大きくあると思うんです。でも、その価値観で作ってしまうと、たぶんポップにはならないなっていうのがあって。ELTしか聴いてなかったころの価値観にできるだけ自分を引き戻して、そのころの自分を9mmが感動させたのと同じようにしたいなと。だから、例えばジャズやフュージョンってプレイヤー寄りのものじゃないですか。それはきっと、中学生の自分には響かないなと思って、あまり入れなかったりはしますね。