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INTERVIEW

METALLICA

2016.11.17UPDATE

METALLICA

Member:Lars Ulrich(Dr)

-個人的にはライヴDVD作品『Quebec Magnetic』(2012年リリース)で聴いたときの方が、『Death Magnetic』の収録曲の魅力はより出ているように感じられました。このDVDは、Greg Fidelmanが単独でミキシングしていたわけですが、最新作のサウンド・プロダクションを考えるにあたって、そうしたことも実感しましたか?

それは間違いないね。Greg Fidelmanは、独自の手法を持っている人だ。Rick RubinにはRick Rubinなりのサウンド作りがある。Greg FidelmanがRick Rubinのもとを離れてからは、Rickの指示に従うことなく、Greg自身が感じているMETALLICAのサウンドを自由に作ることができるようになったんだ。

-すでにMETALLICAのキャリアは30年を超え、あなたも50歳を超えています。『Hardwired...To Self-Destruct』に漲るパワーと勢い、フレッシュネスに驚かされる一方、過去の作品にはない深みのようなものも感じました。人間として、バンドとして経験を重ねてきたことが、自分たちの現在の音楽表現にどのように影響していると思いますか?

35年だね。52歳になる(笑)。METALLICAに関しては、年齢を重ねていろいろ経験していくと自分たちがやっていることがよりうまくこなせるようになってくる。何がうまくいくか、うまくいかないかがわかってくるし、自分たちの境界線や限界点が見えてくる。僕らが健康で、元気であることは大事なことだし、お互いにうまくやっていくことも大事だ。やっていくうちにいろいろと状況が変わっていく。僕らは曲をたくさん書いてきたしマテリアルもいっぱいある。15~20年前は、みんなである曲のパートを"ああでもない、こうでもない"と口論してきたりもしたけど、今はそんなことをする必要も感じない。一番大切なことは、いい雰囲気を保つということ。僕らがこれからまったく曲を書かなくたって、これからのキャリアに困らないぐらいの曲はもうすでに書いてある。仲良く、いいエネルギー、いいヴァイブスを保ち続けることの方が大事なんだ。歳をとるにつれて、自分たちが仕事をしていくプロセスや、やり方みたいなものを重視していくので、今はお互いにうまくやっていい雰囲気を保つことが最も大事だったりする。そういう見方をするとすれば、問題点はマテリアルがあまりにも多すぎること。そのすべてのマテリアルをちゃんと見ていくのは、限りなく時間がかかるしクレイジーだよ。でもそれは幸せな悩みだな。まぁ、ベストを尽くしているよ(笑)。

-印象的なジャケット・デザインは、4人のメンバーが渾然一体となっているようにも見えますし、ある人間が悪魔に取り憑かれたり、人格分裂をしているようにも見えたりします。収録曲の歌詞のいたるところに、このイメージと重ねられる部分があるようにも感じましたが、このアートワークのコンセプトはどのようなところから生まれたのでしょう?

僕と妻の友人で、もう何年も前から知り合いのニューヨーク・ブルックリンのHERRING & HERRINGという2人組のファッション・フォトグラファーがいるんだ。彼らは何年か前に、僕らの結婚式のときに撮ったふたりの別々の写真を合わせて、ある作品を作ってくれたんだ。その作品をJamesに見せたら、"いつか、バンドの写真でやってもらったらいいんじゃない?"って言われてね。このアルバムのアートワークを考えるときに、僕ら全員の顔を重ねて作ってもらったらどうだろう? と提案したんだ。今年の夏に作ってもらって見せたらみんな気に入ってくれて......今やジャケットのデザインにもなっているし、Tシャツとかあらゆるもののイメージになっている。

-アルバム・タイトルが"Hardwired...To Self-Destruct"に決まった経緯を教えてください。

他のアルバムもそうやって考えていくんだけど、タイトルの候補がいくつかあったなかで、一番いい響きのアルバム名だったんじゃないかな? 10とか20ぐらいの選択肢があって、"これいいね"とか、"これはちょっと馬鹿げている"とか、そんな感じで"こっちがいい、あっちがいい"って言いながら、消去方で決めていくね。いいタイトルは、常にあまりはっきりとしない曖昧なもので、人々は自分たちでいろいろ解釈できるものがいいと思っている。

-Robert Trujilloは今作が2枚目のアルバム参加作品となります。彼は最新作では「ManUNkind」(Disc TwoのTrack.2)の作曲者としてクレジットされていますが、それ以外ではどのような形で関わっていますか? 加入当初と比べて、現在のMETALLICAにとってRobertという人間はどんな存在になったのでしょう?

「ManUNkind」では、オープニング・パートを彼が書いたんだ。とても良いオープニングだよ。彼はとてもしっかりとした性格の持ち主で、このバンドでは13年一緒に活動してくれていて、なくてはならない存在だ。バンドに安定性をもたらしてくれるし、バランスのとれた落ち着いた性格の持ち主で、いつも笑顔だし、信頼のできる周りにいてほしい人だね。彼がバンドにいてくれてとてもラッキーだよ。

-今後のツアーをどのようなものにしたいと考えていますか? すでに年明け早々に韓国と香港でライヴをやることがアナウンスされているようですが、日本にはいつ来てくれますか?

1月には香港、シンガポール、韓国、中国でショーをやる予定だ。その後は3月にメキシコと南米で何日かショーをやる。演奏する場所は無限大にあり、これから数年間のどこかのタイミングでこの惑星の今までやっていないすべての場所を回って演奏しようと思っている。今、スケジュールをいろいろ調整しているところで、日本に関してもわかり次第お知らせするよ。日本に行くのは待ち遠しい。2013年8月に大阪と東京の大きなフェスに出て(※"SUMMER SONIC 2013"のヘッドライナーとして来日)、日本に1週間ぐらい滞在した。できるだけ早く日本に行きたいと思っているんだよね。

-ヨーロッパの移民問題や、アメリカの大統領選、テロリズムなど近年の混沌とした世界の空気がこの作品にも影響を与えている部分はあると思いますか?

鋭く質問を変えたね......(笑)。ここ数百年の歴史を見てみれば、今起こっている多くの問題は、ずっと前から起こっていたことだ。人間社会の中では常に起こっているし、以前から混沌としていた。以前との違いは、それを世界に見せるメディアの役割が変わってきたことだ。シリアで起こっていることや難民問題とかを考ると、アフリカではもう50~100年以上も内乱が起こっている。アジアでも南米でも内乱はあったけど、報道が今のように広く行き渡っていなかった。今、世界がものすごく小さくなってしまったので、すべてが目の前に提示されているように見えてしまう。スマホの電源を入れるたびに悪いニュースが入ってくるように見えているけれど、以前よりも悪いニュースが増えたわけではない。コミュニケーションの仕方、情報の出方が変わってきているだけなんだ。そういったものが、僕らが作っているアートに何らかの影響を与えているのかもしれないけど。METALLICAに関しては、以前よりもそういう傾向が強くなったということはないね。僕らは周りで起きていることから常に影響を受けてはいるから。20年前も、40年前も、周りでいろいろな問題は起きていた。時代が変わっても問題はそんなには変わっていない。残念なのは、世の中の人々があまり仲が良くないということなんだよね(笑)。不平等であったり、力関係の問題だったり、そういったものはあまり変わっていない。

-デラックス・エディションには今年4月のRECORD STORE DAY(※CDやアナログ・レコードを手にする面白さや音楽の楽しさを共有する年に一度の祭典)に行なわれたライヴの音源も収録されていますね。『Kill 'Em All』(1983年リリースの1stアルバム)と『Ride The Lightning』(1984年リリースの2ndアルバム)のリイシューを記念して(※2016年4月に2作品のリマスター・デラックス・ボックス・セットがリリースされた)、初期2作品からのナンバーを演奏していますが、本作のレコーディング自体は去年からとはいえ、初期の自分たちの作品に向き合い直した経験は現在のバンドに何か刺激をもたらしたりしたのでしょうか? 今のあなたは、あの2作品をMETALLICAの歴史のなかでどのように評価し、位置づけていますか?

いい質問だね。刺激を受けたり、影響を与えてくれたりするものかもしれないね。年齢を重ねて作品が増えれば、リイシューとかは出していかなければならないし、過去に感謝しなければならないからね。この2枚は、METALLICAの歴史のなかで、僕らの存在を作る大事な作品だ。昨年このレコード作りでみんな集まって、前に進んで行こうと決めたとき、奇妙な感じがした。前に進んでいるのに、自分たちのことを鏡で見ているような感覚というのだろうか? 奇妙だけど、リイシューとかリマスターというのは、自分たちの存在の大事な一部ではあるし、過去の作品が新しい作品に何か影響を与えたりしているのかもしれないし、『Kill 'Em All』から比べると作品自体はより引き締まってまとまりのあるものになっているかもしれない。それが直接的な影響と言えるかどうかはわからないけどね。