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FEATURE

METALLICA

2016.11.17UPDATE

2016年11月号掲載

ヘヴィ・メタルの歴史を繋ぎ、新たな夜明けを刻む、8年ぶりの新作がついにリリース!

Writer 吉羽 さおり

11月18日、METALLICAの8年ぶり11作目のスタジオ・アルバム『Hardwired...To Self-Destruct』がリリースされる。すでに発表されている「Hardwired」、「Moth Into Flame」、「Atlas, Rise!」を含む全12曲収録(CD2枚組/※デラックス・エディションはボーナス・ディスク付きの3枚組)で、アルバムは8月にリリースされたシングル「Hardwired」で幕を開ける。Lars Ulrichによるキレのいいドラムとギター&ベースのリフで始まる、超高速のスラッシーな1曲で、長尺のギター・ソロなどは極力カットされて3分半にも満たない。シンプルだがクセになる、鋼鉄のような硬質のリフを刻み駆け抜けていく、METALLICA史上最も短く、速い曲だろう。馬力あるサウンドに興奮するとともに、思わず襟を正して聴いてしまうような緊張感にも圧倒される。瞬時に、音量を上げて全身で爆音を浴びたくなる、そんな幕開けだ。


 
前作『Death Magnetic』からは8年。この間に、ロックの殿堂入りを果たし、また1年間で7大陸すべてにてライヴを行いギネス世界記録にも認定された。2011年にはLou Reedとのコラボレーション・アルバム『Lulu』をリリースし、2013年にはライヴ映画"メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー"が公開。日本では2010年にさいたまスーパーアリーナの2デイズのほか、2013年の"SUMMER SONIC"でヘッドライナーを務めた。もう8年も経っているのかと時の早さにゾッとするが、そんな個人的体感速度を差し引いても、アルバム『Death Magnetic』のタフさと鮮やかさは強烈なものだ。Def Jam RecordingsやAmerican Recordingsの創始者としてヒップホップからメタル、ロック、ポップスまでのアーティストを手掛け、名盤の立役者としてアメリカの音楽史にその名を刻んでいるプロデューサー、Rick Rubinとともに作り上げた『Death Magnetic』。そこでMETALLICAは自身の過去作とも向き合い、METALLICAがMETALLICAたる所以やルーツに触れ、いま一度、まっさらな状態で衝動感とクリエイティヴィティを掛け合わせてアルバムを作っていった。なるべくコンピューターを使わず、バンドの生の音やダイナミズムを捉えていくレコーディングだったという。現代的で精密な録音とは違う、オールドスクールな手法ながら、そのスリリングな生々しさや、迸る高い熱量が、タフで擦り切れない重厚なサウンドを生み出した。2000年代のヘヴィ・メタル・バンドとして最高の、そしてメタル・バンドの最高峰に相応しいリアリティ溢れるアルバムとなったのだった。
 
ニュー・アルバム『Hardwired...To Self-Destruct』は、前作『Death Magnetic』でエンジニア、ミックスを担当したGreg Fidelmanがプロデュースとしてクレジットされている。前作同様、奥行きのあるバンドのダイナミズムを収録しており、冒頭の「Hardwired」から痺れる音圧と振動で揺さぶる内容だ。「Hardwired」こそ(METALLICAとしては)短い曲だが、続く曲はいずれもグッとくる泣きのギター・ソロあり、クラシカルなユニゾン・ギターあり、タッピングあり、マシンガン的なリフに、一発で頭に刷り込んでいく極太なメイン・フレーズありと、ギターだけとってもフルコース。前作でも感じられた70年代のブリティッシュ・メタルの匂いであったり、時にLED ZEPPELINを感じさせるような雰囲気もある。ソリッドなサウンドの背景に、ブルースからハード・ロック、ヘヴィ・メタルへと脈々と続く流れ──様々なものを呑み込んで、轟々とうねりをあげて流れているような、どっぷりとした深みを感じる。Disc Oneでは、先行で発表された3曲のほか、細やかなビートと装飾的なリフで聴かせる「Now That We're Dead」や、ドロドロと粘度のあるダークなアンサンブルでヘヴィなパンチを決める「Dream No More」、そして「Enter Sandman」(1991年リリースの5thアルバム『METALLICA』=通称"ブラック・アルバム"収録)の始まりを思わせるようなギター・フレーズでニヤリとさせる「Halo On Fire」は、クライマックスのギター・アンサンブルの高揚感が凄まじい。この1枚でも、かなりたっぷり感のある濃厚な内容。それでいて、バンド・アンサンブルの心地よい空気感があるからか、時間としてはあっという間だ。
 
Disc Twoは、さらにグルーヴの密度を高めていく曲が揃う。荘厳且つ攻撃的な行進曲のようなリフによる「Confusion」で始まり、「Here Comes Revenge」などはミディアム・テンポの重たいビート感や、咆哮のようなギターでドラッギーに酔わせる。James Hetfield(Vo/Gt)による、陰鬱なメロディもまたサウンドに濃淡をつけて、リスナーを引っ張り込む。「Murder One」は、今作のなかでは今っぽくキャッチーさがあるが、それでもパンチのあるギター・ソロでドラマチックに響かせる曲だ。そしてラスト曲「Spit Out The Bone」は"これぞスラッシュ・メタルの真骨頂"とも言えるパワーで加速し、アイディアと十八番のリフで、今作を総ざらいするかのような壮大で鮮やかな音のタペストリーを編み上げていくという圧巻ぶり。とにかく、どの曲もそのイントロに胸が高鳴り、ソロに痺れ、構築的なアンサンブルや曲展開の巧みさに心を無にしてしまう膨大なエネルギーが込められている。ラウドロックでも、ヘヴィ・ロックでもない、"ヘヴィ・メタル"バンドとしての矜持を、1音、1曲に練りこんだ『Hardwired...To Self-Destruct』。約80分間、爆音でこのMETALLICAという怪物の咆哮を聴いてみてほしい。
 

 

METALLICA
ニュー・アルバム
『Hardwired...To Self-Destruct』
2016.11.18 ON SALE!!
[UNIVERSAL INTERNATIONAL]
 

【通常盤】SHM-CD 2枚組 UICR-1124/5/¥2,500(税別)
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【デラックス】SHM-CD 3枚組 UICR-1126/8/¥3,600(税別)
amazon | TOWER | HMV
 
[Disc One]
1. Hardwired
2. Atlas, Rise!
3. Now That We're Dead
4. Moth Into Flame
5. Am I Savage?
6. Halo On Fire
 
[Disc Two]
1. Confusion
2. Dream No More
3. ManUNkind
4. Here Comes Revenge
5. Murder One
6. Spit Out The Bone
 
[Disc Three (Deluxe Edition Only)]
1. Lords Of Summer
2. Riff Charge (Riff Origins)
3. N.W.O.B.H.M. A.T.M. (Riff Origins)
4. Tin Shot (Riff Origins)
5. Plow (Riff Origins)
6. Sawblade (Riff Origins)
7. RIP (Riff Origins)
8. Lima (Riff Origins)
9. 91 (Riff Origins)
10. MTO (Riff Origins)
11. RL72 (Riff Origins)
12. Frankenstein (Riff Origins)
13. CHI (Riff Origins)
14. X Dust (Riff Origins)

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