INTERVIEW
ANTHEM
2015.10.22UPDATE
2015年10月号掲載
Member:柴田 直人(Ba)
Interviewer:荒金 良介
-取材は前作『ABSOLUTE WORLD』(2014年10月リリースの15thアルバム)以来になりますね。あのときは新しいスタートを切るような、フレッシュな心境でしたよね?
燃えに燃えてるタイミングでしたからね(笑)。ヴォーカル(森川 之雄)とドラム(田丸 勇)が新しいメンバーになったタイミングだったし、前作も自信がありましたからね。今年はデビュー30周年ということで、1stアルバム(※1985年リリースの『ANTHEM』)や『ABSOLUTE WORLD』の完全再現だとか、そういう企画をずっとやって、夏にANTHEM主催の"HEADSTRONG FES."というメタル・フェスをやりましたからね。前作以降、怒濤の1年で振り返る暇もなかったです。
-本当にフル稼働してますよね。
過去のアルバムの完全再現を今のメンバーでやったり、フェスでいろんなバンドと共演する経験を通して、今のラインナップで良かったと改めて思います。前のラインナップで10年ぐらいやったあとのメンバー・チェンジでしたからね。衝撃的なメンバー・チェンジだったという声もたくさんありましたけど、信念を貫き通すのがロック・バンドですからね。やりたいことを抑えたら、将来があるとは到底思えない。とにかく、やりたいメンバーと徹底的にやりたいことをやろうと。
-なるほど。
彼らと一緒に音楽をやることが楽しいし、リハーサルをやっても刺激的ですからね。よく言うことかもしれないですけど、アマチュアのころにバンドを組んで練習するのって面白いじゃないですか。その感覚が未だにあるんですよ。
-へぇー、そうなんですか。
"たぶん、俺たちこれぐらいはできるよね?"と思うよりも、"このスピードで進んだらどうなるんだろう"と思う方がワクワクするじゃないですか。そういう気持ちが強いんですよ。"ベテラン"とよく言われるんですけど、大人のロック・バンドという感覚はないですね。毎日集まって、悪フザケしてるような感覚です。
-ははは、最高です。過去作を完全再現することで、当時のことを思い出すことはありましたか?
個人的には、過去を振り返りたくない性分なんですよ。今年の頭に現メンバーで1stアルバム完全再現の映像を録ったんです。当時のメンバーは僕しかいないんですけど、面白いんですよ! ああ、1stアルバムのころからANTHEMはANTHEMだったんだなと。歌い方やフレーズも好きにプレイしていいよと言って、自由にやりました。改めてあの時代にこの曲を作ったのはすごいねと自分たちで言い合ったりしてね(笑)。
-そうなんですね。
今回はKING RECORDS時代の6、7枚目のアルバム(1990年リリースの『NO SMOKE WITHOUT FIRE』/1992年リリースの『DOMESTIC BOOTY』)を完全再現したライヴ・アルバムになるんですけど。お客さんを入れてライヴハウスでやるので、失敗できないとかいろいろ考えるところはあったんですけど、開き直って荒々しくやろうぜと。そしたら、本当に楽しくて。特にその2枚は解散する手前の作品なので、制作当時はちょっと暗くてつらかった記憶があるんですよ。メンバーもピリピリしていたし、日本のロックも90年代初頭は転換期でもありましたからね。このまま"ANTHEM"という名前でロックできるのか?と思いながら作ってました。
-グランジ/オルタナ系シーンが盛り上がるころですもんね。
そうですね。まったく違う文化のロックが嵐のように近づいてくる感じでしたから。特にその2枚はできれば振り返りたくない時代だったんですけど、やってみると、どのアルバムにもANTHEMがいるなと客観的に思えたんですよ。たまたま当時のヴォーカルが戻って、若いドラマーが加わって、こういう企画をやることでようやく当時の思いを自分の中で消化できた気がしますね。30周年を機にこういう企画をやって良かったなと思います。
-"どのアルバムにもANTHEMがいる"というのは?
自分たちのルーツがアルバムごとにいろんな形で入っているな、と再確認できたんですよ。過去のアルバムに対して、そういう見方をしたことがなかったものですから。その都度ギリギリまで自分たちを追い込んで、真剣に作ってきただけなのでね(笑)。特に『DOMESTIC BOOTY』は解散したアルバム(※ANTHEMは1992年に『DOMESTIC BOOTY』をリリース後、1度解散を経験している)なので、作ったあとに聴くこともなかったんですよ。