INTERVIEW
喜多村英梨
2014.05.14UPDATE
2014年05月号掲載
Interviewer:沖 さやこ
-ああ、そうなんですか。それで共作と。
河合さんも"実際現場にいる人だからこそ見える成分がいっぱい入っていたほうがいいから、是非クレジットを一緒に載せましょう"とおっしゃってくださって。でも河合さんの意思も尊重したいんで、ブラッシュ・アップするにあたって"河合さんから"シドニアの騎士"の印象や、ここだけは譲れない漢字や単語はありますか?"と訊いたんです。そしたらこの作品で"掌位を組む"というのが印象が強かったとおっしゃって。"じゃあタイトルは河合さんのものにして、歌詞の大枠は掌で掴む闘志を重視してほとんど書き換えちゃいます!"と言って(笑)。河合さんも1stシングルからのお付き合いなので喜多村をよく知ってくれてるので、そういう意味でもお父さん的な感じでOKしてくださったので......いい意味で我儘に、隅々まで作ることができました。データのやり取りからわたしがGarageBandで仮歌を入れたりして、自分のやりたい歌いかた、見せたい言葉選びもすっきりやれました。
-声優としての作品への愛情、アーティストとしての音楽への愛情がどちらも高い状態で結びついたんですね。あと、これは喜多村さんの楽曲全部に言えることですけど、どの曲もとてもライヴに合うと思います。
作業用BGMでも嬉しいんですけど、その先までいきたいなと思ってます。スルメ曲になってほしいなと思うから、そういう意味でもライヴでも、という意識はありますね。このイントロで暗転してスモーク焚いて......というイメージは「掌 -show-」にもあって。聴いている人が"こいつの生歌聴きたいな"とか"この曲カラオケで歌いたいな"とか、そういう躍動感に繋がるところはセクションごとに意識したいところですね。
-隅々にまでポリシーが貫かれている。
自分、我儘ですから(笑)。
-いやいや(笑)、表現者はそれくらいで丁度いいんだと思います。LedaさんやBULL ZEICHEN 88の淳士さんとIKUOさんが参加なさっているc/wの「Greedy:(cry)」も、そんなポリシーが貫かれたヴォーカルが印象的です。遊び心があって。
これもずっと自分の引き出しにあった、いつかやりたいことのうちのひとつで。自分のギミック盛りだくさんで、かつエゴエゴなものですね。どうしてもこの仕事をしていると、コーラスとか合いの手とか......そういう素材が入るものは萌え系や電波系が映えたりするんですよね。自分はブラック・メタルなほうが好きだし、そういうものを楽しく共有してもらいたいなというのは強く思っていて。"シドニアの騎士"の世界観からも影響を受けているので、『掌 -show-』という1枚のシングルの世界観として成立させたかったんです。"シドニアの騎士"でわたしが演じているのが仄姉妹という、まったく見た目が同じの女の子を3人、ニュアンスを変えて演じているんですよね。だから1曲の中で自分の声が入り乱れていく感じをもっと突き進めたくて。この曲ではヒステリックなメタルをやろうと思ったんです(笑)。悲痛な叫び、悲しみ......途中にシンフォニックなミサ・コーラスが入るんですけど、これも6線くらい自分でハモりを入れたりして。そういう意味でもかなり厚みのある楽曲に仕上がったなと思っています。
-そこまで強い思いを入れて1曲を作り上げてくださるのは、リスナーとしても嬉しいです。
これだけのアーティストのかたがたがいる中で、どれだけ自分の色を出せるかも、喜多村の価値かなと思っているので。ここまでこんなギャー!って言う声優アーティストさんも、まだ女性ではいないんじゃないかな......って、ひとつニヤリとできる部分ではありますね。c/wとかタイアップがないとかも関係なく、全曲一生背負っていくものなので、プライドや責任感はあります。声優さんの音楽は"可愛い""元気""みんなで""ありがとう"......そういう要素も必要だと思うんです。今の市場に嫌われるかもしれないけど、やらせてください!と。捨て曲は絶対に作りたくない!と思ってやっていますね。
-これからの制作も、どんどんご自分の希望が叶いそうですね。
そうですね。声優アーティストとしての喜多村英梨は、ジャンルとしてアニメタルがいちばん近いと思うんです。そういうところでも、アニメタル・アーティストの1人として言われたいな、という希望もありますし......アニメのタイアップだからこそ持っている詞の世界観によって、見えかたや聴こえかたも変わってくるなって。そういう意味でも声優アーティストというジャンルは面白いなと思います。そういうところで誰かひとりでも振り向いてくれたら、とても幸せだと思います。