INTERVIEW
喜多村英梨
2014.05.14UPDATE
2014年05月号掲載
Interviewer:沖 さやこ
-それでメタルにのめりこんでいった。
特に北欧メタルが好きで、よく女性ヴォーカルを聴いていました。いちばん最初に好きになったのがUNSUNで。ピアノのラインとかメロディがどっしりしているけれど、ずっとラウドなわけではないところとかを聴いたり"あ、自分もこういうものを歌ってみたいな"と。そういうことをぼんやりと聴き手ながらも、こういう口ずさみたくなるところはいいなぁって。女性の華奢な声が、どっしりした音で厚さや高さが出るのが嬢メタルのいいところだなって。そこからネットをあさってWITHIN TEMPTATION、NIGHTWISH、DELAINとかも聴くようになって。といいつつもトランスとかテクノとかも聴くんです(笑)。でも、演技してるから余計にそう感じるんだと思うんですけど――スイッチが入りやすい音楽、としてはメタルというジャンルは壮大でドラマチックなセクションが多かったです。だから演技していることが生かしていければいいなと思って。わたしも幼い子や女性のキャラの役はやるんですけど、女性声優の中ではあんまり声が華奢なほうではないので、がなったりするようなハードな役柄をやらせていただくことも多くて。そういうところは音楽シーンにインスパイアされたことも成分として残ってるのかなと思ってますね。
-4月にリリースされたばかりのアルバム『証×明 -SHOMEI-』も、ラウドロックを基盤にしつつとてもバラエティに富んだ音楽性でした。それに加え喜多村さんはそれを歌いこなしてらっしゃる。どうしても声優さんにも受け身で音楽活動をなさるかたがいらっしゃると思うんですけど、喜多村さんがそういう想いのもとに活動されてるというお話を聞いて、そのクオリティの高さにも納得できました。
目標はまだまだ高くてその階段の先は見えていないんですけど、敷かれたレールを歩くよりは、自分でレールを敷いて進んでいった途中下車の駅というのはどういう駅なんだろう?というのは、自分で決めていきたいし、それが見えているタイプなので、やりたいことの明確なヴィジョンを持ちすぎてるんですよね。お芝居しているから余計に、自分で正解を作っていって、それを誰かに提示してOKをもらうという作業の意識が強くて。歌のときもデモの段階から"これは自分が通る道ではない"という仕分けはシビアで。『証×明 -SHOMEI-』も全部どメタルにしたかったというのもひとつの道としてあるんですけど......わたしには活動をする上で"時系列"と"自分のタイミング"と"自分の歴史年表"というものがぼんやりあるんです(笑)。
-へえ、それはどういったものなのでしょう?
順々にコントラストをつけていって引っ張っていきたいんです。だからアルバムも偏りなく。"重たい""エッジ効きすぎてる"というのはまだ入れないでおこうと。そういう足し算引き算をするのも好きで......だから2ndアルバムは"実はこれだけじゃないんだぞ"と消化不良なところもあるんです。でもこういう部分を持っているのは確かだから、名刺代わりのひとつとして、このパターンの喜多村も愛してください、みたいな(笑)。『証×明 -SHOMEI-』を作っている間に『掌 -show-』を作る話は上がっていたので、目指すべきところや見せたいカラーがどちらもしっかりわかっていたんです。だからアルバムで『掌 -show-』を食いたくないな、食ってしまったら寂しいな、という気持ちもあったからアルバムはそこまで『掌 -show-』寄りにしないようにして。
-ああ、そこまで考えられているんですね。
プロのミュージシャンのかたがたは"これで自分を表す""これで飯を食う"と考えている人の中で、実力はもちろん、更にタイミングや運があって第一線にいらっしゃるひと握りのかたがただと思うんで......この業界でその人たちにも失礼のない駒でいたいなとは思いますね。そういうかたがたから"自分とは違うけどこういう道もあるんだ"と言ってもらえるだけでもやる意味あるなと思っていて。それすらもないんだったら、(アーティスト活動をするのは)とても失礼なことだし。だから今すぐに打ち立てられなくても徐々に一歩ずつでもそういう未来になっていけばいいなと思います。1番寂しいのは"声優さんでしょ?"とか"女の子でメタル?"と言われることですね。ジャンルとシーンと自分の性別になめられたくないというのはおそらく皆さんが思ってることだと思うんで、わたしもわたしなりに"声優"という業界と"アーティスト"という業界の双方に泥を塗らないように、繊細にやっていきたいなと......ずるいことばっかり考えているんです(笑)。