INTERVIEW
COURAGE MY LOVE
2014.03.12UPDATE
2014年03月号掲載
Member:Mercedes Arn-Horn (Vo/Gt)
Interviewer:ムラオカ
-今作のサウンド・コンセプトがありましたら教えてください。
特にこれっていうサウンドが頭にあったわけではなかったし、ステップに関してもいつも手探りだったの。前のアルバムからの変化は自然に起こったもので、曲作りをしている途中は気づかなかったのよ。アルバムを通して聴いて初めて、あぁ随分違うな、と気づいたような感じ。2つ歳をとって、少しは賢くなって......いるといいな(笑)。当時自分たちが経験していたことをうまくとらえられたような気がするわ。例えば『For Now』を書いたときはツアーにも出たことがなかったし、本格的なスタジオに入ったのも初めてだったし、レコード会社と契約もしていない頃だったから、いろんなことが起こる前だったのよ。だから何をやるのもウキウキしていたの。今もウキウキしてるけど、あの頃は何もかも初めての体験だったから。『Becoming』を書いたときは既にツアー経験もあったし、レコード会社との契約も1年経っていたし、いろんな人々との出会いがあった反面、たくさんの友達にさよならをしなければならなかった。ツアーに出るということは楽しい冒険がいっぱいあるけど、ある程度自立していないとできないことだから。家にもいられないし、家族や友達ともさよならしないといけないからね。だから『Becoming』の内容の多くは、そういう辛い決断をすることについて書いているの。1人の自立した人間になって、自分自身のことをよく知ることね。それを成長って言うんだと思うけど。『For Now』が青春のサウンドだとしたら、『Becoming』は......もちろんまだ20代だから全然若いけど、前よりサウンドが大人になっていると思うわ。
-そうですね。今作の音楽性ですが、前作で見せたポップ・パンク感は減退し、より成熟したラウドロックやエモ、スクリーモ色の濃い作品だと感じましたが、実際制作側としてそういった点は意識していましたか?
成長を織り込むことは意識したわ。Phoenixと私は色んな音楽を聴くんだけど、『Becoming』の曲作りでは、今までの概念から離れたところで曲を書きたい気持ちが強かったの。居心地のいいクリエイティヴな"箱"の中で曲を書いているとワン・パターンになってしまうから。今回は敢えて新しいものに挑戦しようという感じだったわ。当時は必ずしもやっていて心地良くはなかったものもトライしてみたの。居心地の良さを感じる範囲を広げていった感じだったのよ。やって良かったと思ってるわ。やっていた時は多少無理があった気がするけど、自分も強くなれたし、アルバムにも深みが出たと思うから。私たちのハートから生まれたことが分かる作品になったと思うわ。
-いろいろな経験をして、新しいことを試す余裕が生まれたのかも知れませんね。
そう思うわ。今年中に新作を出したいから今も曲を書いているところなんだけど、既に新しい変化が見えているのよ。意図的に変化させたものもあるし、あまり意識していなくても自然に起こったものもあるしね。経験を積んだし、歳も重ねたからだと思うわ。ジャンルの興味も広がっているし。進化できるバンドというのはいいことだと思うわ。同じものを何曲も作ってもしょうがないしね。
-"Becoming"というアルバム・タイトルが意味するところを教えてください。"大人になる"、"音が深くなる"、みたいな感じなのでしょうか。
その通りよ! 進化や、個人的な成長のメタファーなの。音楽だけじゃなくて、人間的にも。自立しなければならなかったしね。独りになると自分のことがよく見えてくる。Phoenixと私は、自分のことは自分で面倒をみないといけないから。初代のベーシストは、アルバムを作っている途中で脱退しちゃったの。彼とは今も友達だし仲もいいけど、彼がいなくなって目が覚めたところがあるわ。私たちが自分たちだけで成長していかなくちゃならなくなったから......。ダークだけど、ポジティヴな面もあるのよ。自分のことをよく知ると自信もつくし。多分、80歳になっても自分のことを模索して、自分について学び続けているんじゃないかなあ。だから『Becoming』なの。まだその境地に達していない、今も成長し続けている途中だってことね。実は『For Now』も同じ理由でつけたのよ。"今は (For Now)はこういう感じだけど、今後はどうなるか分からない"という意味合いだったの(笑)。
-前作はあなたと双子のPhoenixの2人で作曲、作詞をしていたとのことですが、今作の制作スタイルは前作を踏襲したものですか?
ちょっとだけ違うの。『For Now』は私が全部曲を書いて、Phoenixが全部歌詞を書いたんだけど、今回は逆のことも多かったのよ。1人が作詞作曲の両方を試してみたって感じね。すごくうまくいったと思うわ。バランスの取れたアルバムになったと思う。私たち両方のパーソナリティや物事の考え方が出ているからね。あと、2人で40曲くらい書いたの。日本盤はそこから13曲入れられたから良かったけど、カナダ盤は8曲しかないから、本当にいい曲を選ぶのが大変だったわ。でも、自分でも歌詞を書いたことで、前回よりもアルバムとの結びつきを感じるの。Phoenixも自分の感情を音にすることができて、同じことを感じていると思うわ。