FEATURE
A NEW REVENGE
2019.04.04UPDATE
2019年04月号掲載
Writer 井上 光一
Tim "Ripper" Owensと言えば、無名のアマチュア・ミュージシャンから、Rob Halford(Vo)の後釜としてJUDAS PRIESTに加入、一躍トップ・バンドのシンガーとして有名になり、以降はICED EARTHやYNGWIE J. MALMSTEEN'S RISING FORCE等々、一貫してヘヴィ・メタル畑でそのキャリアを積み重ねてきたヴォーカリストである。そのサクセス・ストーリーは"ROCK STAR"という映画にまでなったほどなのだが、2019年の今年、Ripperは3つのバンド名義でそれぞれの新作をリリースした。Ripperを含めて3人のヴォーカリストが在籍するTHE THREE TREMORSと、Chris Caffery(Gt/SAVATAGE etc)や現TESTAMENTのSteve Di Giorgio(Ba)、Mark Zonder(Dr/ex-FATES WARNING)といった強力な面子で結成されたSPIRITS OF FIREの2バンドは、どちらも重厚且つ正統派なヘヴィ・メタルを聴かせてくれるが、今回紹介するのは、多くのバンドを渡り歩いてきたRipperのキャリアの中でも珍しいタイプの音を鳴らす、A NEW REVENGEである。
現NIGHT RANGER/SLASH'S SNAKEPITのKeri Kelli(Gt)、QUIET RIOTやWHITESNAKEといったバンドでプレイしてきたRudy Sarzo(Ba)、KINGDOM COMEのオリジナル・メンバーにして元SCORPIONSのJames Kottak(Dr)という、歴戦の兵たちが揃うA NEW REVENGEが鳴らす音は、80年代テイスト満載のハード・ロックや王道のヘヴィ・メタルを軸とした、驚くほどストレートで爽快なサウンドだ。オープニング・ナンバーの「The Distance Between」からして、適度なヘヴィさを持ったグルーヴ重視のギター・リフに導かれ、わかりやすい楽曲展開とメロディで魅せる、からっとしたアメリカン・ハード・ロックなナンバー。 先行シングル曲のTrack.2「The Way」においても、軽快なリフと押し引きを弁えたリズム隊に支えられ、シンプルながら覚えやすいメロディを歌い上げるRipperの歌唱は非常に新鮮だ。得意のハイトーン・シャウトも織り交ぜながら、いかにもヘヴィ・メタルと言わんばかりの重厚さはあまり感じられず、いい意味での暑苦しさも控え目というのは、Ripperというヴォーカリストがメタル一辺倒のシンガーではないということを、如実に物語るものであろう。イントロのシンセにも耳を奪われる、同じく先行シングルのTrack.3「Never Let You Go」が持つ、どこかモダンな切なさを感じさせるサビのメロディ・ラインも聴きどころ。若々しく疾走し、ストレートな歌詞とメロディが胸に突き刺さるTrack.4「Glorious」は、ライヴでの大合唱が目に浮かぶようなキラー・チューン。ベタなギター・ソロも、こういう曲にはこういうソロがあって然るべきなのだ、などと思わず納得してしまう。物悲しげなピアノが効果的なロック・バラード、Track.7「Only The Pretty Ones」にしても、ハードにドライヴするギター・リフに燃えるTrack.9「Here's To Us」にしても、どの楽曲にもキャッチーなフックが、メロディが惜しみなく盛り込まれており、ソングライティングを手掛けたKeriのセンスと共に、Ripperのシンガーとしての新たな魅力が浮き彫りになった作品と言えるだろう。アルバム全11曲とコンパクトに仕上げた潔さもいい。名手たちによる小細工なしの直球勝負。ぜひ正面から受け止めてほしい。
▼リリース情報
A NEW REVENGE
デビュー・アルバム
『Enemies & Lovers』
KICP-1933/¥2,600(税別)
[KING RECORDS]
NOW ON SALE!!
amazon TOWER RECORDS HMV
1. The Distance Between
2. The Way
3. Never Let You Go
4. Glorious
5. The Eyes
6. Fallen
7. Only The Pretty Ones
8. Enemies & Lovers
9. Here's To Us
10. Scars
11. Killing You (Bonus Track) ※ボーナス・トラック
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