FEATURE
THE DREAMING
2009.06.03UPDATE
Writer ムラオカ
元STABBING WESTWARDのChristopher Hall(Vo)率いる5人組。STABBING WESTWARDと言っても、2002年の解散から少し時が経ってしまっているのでご存知ない方も多いだろう。そこで簡単にSTABBING WESTWARDを説明したいと思う。STABBING WESTWARDはシカゴ出身の5人組。彼らはDEPECHE MODEのサポートで一躍有名になり、全米でゴールド・ディスクを獲得したりと、大活躍とはいかないものの、十分に成功した部類に入るバンドであった。STABBING WESTWARDは冷ややかなデジタル感覚溢れるインダストリアル・ロックとエモーショナルでゴシック・ロック的要素を持っているバンドであったが、今回ご紹介させていただくChristopherの新バンドTHE DREAMINGにもこれらの要素は少なからず引き継がれている。
それではTHE DREAMINGのバイオグラフィを簡単に書いておく。Christopherが他のSTABBING WESTWARDのメンバーと音楽性に相違を感じ、サポート・ドラマーであったJohnny Haroに相談し、元々仲の良い友人関係であった彼らは、思い描く音楽の方向性が全く同じ方向であることに気付き、THE DREAMINGとしてのキャリアをスタートさせた。
結成当時のメンバーはChristopher(Vo)、Johnny(Dr)、Jinxx(Gt)、Brent(Ba)の4人編成だったが、のちに元DEADSYのギタリスト、Carlton(Gt)が加入し現在の5人編成となる。バンド結成後、即EPをリリース。収録曲の「Beautiful」がJennifer Garner主演映画『Elektra』のサントラにEVANESCENCEやTAKING BACK SUNDAYの楽曲と共に収録され、瞬く間にTHE DREAMINGの名が浸透することになった。その結果、デビュー前からアメリカ国内では12の州でストリート・チームができ、計1万人のチーム・メイトまでになったそうだ。
その後2006年には、ワープド・ツアーに参戦、MYSPACE上では100万回のプレイ数とぐんぐん彼らの認知度は上がっていった。そして勢いそのままに2008年6月には待望のデビュー・アルバム『Etched In Blood』をリリース。リリース後、なんと1年間に280回のギグを行うという驚異のスケジュールで全米ツアーを行った。
そしてついに彼らのデビュー・アルバム『Etched In Blood』がここ日本でもめでたくリリースされる運びとなった。
アルバム『Etched In Blood』だが、挨拶代わりとばかりにTrack.1 の「Dead To Me」から3曲続けてアッパーなトラックで突き進んでくる。どのトラックもJinxxとCarltonのギター・コンビが放つザクザクしたギター・リフが気持ち良い。方向性としてはPAPA ROACHを髣髴とさせる部分もある。またどの曲もサビのメロディが強烈で、インダストリアルでありながらも、キャッチーなメロディが冴え渡っていたSTABBING WESTWARDでの経験が十二分に生きているのではないだろうか?
個人的なハイライトはTrack.5 の「Sticks & Stones」だ。アッパーなテンションの中、刹那的なギター・メロディが飛び交う様や、サビメロの尋常でない哀愁具合がたまらない。初期MY CHEMICAL ROMANCEを感じさせる部分もありスクリーモ的とも言えなくもないが、THE DREAMINGの真骨頂を見ることができるすばらしいトラックだ。
Track.4「Let It Down」、Track6「Bleed」、Track.8「Disconnected」はミドルテンポのトラックでひんやりしたメロディとほんのり感じるインダストリアルな感触が気持ち良い。こういったしっとり聴かせるタイプのトラックだとヴォーカルの力量が知れるものだが、感情豊かに歌い上げるChristopherの実力はこういったミドルテンポのトラックでも如何なく発揮されている。また80年代のオーセンティックなハードロック・テイストを新鮮に聴かせるTrack.10「What Do You Want」もキャッチー且つ、センスよくまとめられていて面白い。
彼らは影響を受けたアーティストとしてAVENGED SEVENFOLD、AIDENなどの最新型のメタル、スクリーモから、インダストリアル・ロックの代表格、NINE INCH NAILS、そして説明不要、伝説的ハード・ロック・バンドLED ZEPPELINまでと幅広い。これらの影響を咀嚼しながらも、それだけに止まらないTHE DREAMING独自の世界観を持っており、まさに一筋縄ではいかないバンドである。
ぜひサマーソニックやラウドパークなどのビック・フェスティバルで彼らの姿を見てみたいものだ。元STABBING WESTWARDという経歴も含め、彼らであれば必ずやフェスの大観衆を納得させるライヴを見せ付けてくれるであろう。
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