DISC REVIEW
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ノルウェイジャン・ブラック・メタルの代表格、4年振りとなる最新作である。通算では9枚目となる本作においても基本路線は近年の作風から大きく外れることはなく、ミディアム・テンポの楽曲を中心に構成され、彼らにしては珍しく哀愁漂うギター・フレーズ、さらにはサックスやストリングスの導入といった要素もあるが、軸となるのはフロントマンSatyr(Vo/Gt/Ba/Key)による、この世の憎悪をすべて吐き出すが如きカリスマティックなヴォーカルと、単なるブラストビート連打、といったようなドラマーとは次元の違うグルーヴを生み出すFrostのドラムスだ。荒涼とした、寒々しい夜を現出せしめるSATYRICONならではの世界観は、凡百のヘヴィ・ロックには絶対に宿らない、静かな狂気を生み出すのである。 井上 光一