－リード・トラックの「Single Of The Week」は音楽業界でよく使われるSingle Of The Weekを冗談ぽく使ったとのことですが、歌詞は何かしら音楽業界に触れた内容だったりするんですか？

あるバンド・・名前は言いたくないけど、アルバムを聴いたらすべての曲がSingle Of The Weekみたいになっていて…クリエイティヴィティがないんじゃないか、誠意がないんじゃないかって思って名付けたんだ。だからといってシリアスに受け止めてほしくない。あくまでジョークの範囲だから。だって僕らもひょっとしたら意図せずにコマーシャルな曲を作っていたかもしれないしさ。

－ということは今回もアルバム単位での曲作りを心掛けたということでしょうか。

そうだね。シングルは冗談めかしているけど、アルバム全体としてはとてもダークでシリアスな感じだよ。新しいメンバーも入ったことだし、新しいディレクションで、テクニカルにもなっているし、技術面は以前よりも複雑になっているから曲をすべてマスターするのに1年半かかったんだ。今までに経験した財政的な問題や、多くのバンドが音楽業界で生きていく上で直面するような厳しい状況などをテーマに掲げていて、自分たち自身を勇気づけるようなアルバムになっているよ。

－今回３年ぶりの新作ということになりますが、2作目の『White Butterfly』ではレーベルのゴタゴタがあり、『Daydream Anonymous』では初めてのメンバー脱退、そして今回はメンバーが4人になって初のアルバムということになりました。つまり、あなた方は作品ごとに様々な節目を経験なさっていることになりますね。

（笑）たしかに、作品ごとにいろいろな変化があるよね。まぁ今回はレーベルもマネージメントも同じで、メンバーに関しても変わったというより増えたわけだし。長年セカンド・ギタリストを探していたけど僕たちのパワーに見合う人がなかなか見つからなくて、でもやっと僕たちのパワーに相応しいベンに出会えたことでこうしてアルバムリリースに至れたんだ。

－ひょっとすると多くのファンが感じていたことのように思うのですが、INMEはてっきりスリー・ピース編成にこだわっているのかと思っていたので意外なお答えだなと。

長い間３人組にこだわっていたのは確かだよ。ただ、今回のようなアルバムではセカンド・ギタリストの存在は不可欠で。それはライヴにおいてもそうだけど。僕ができないことをベンにやってもらったり、もちろん逆もあったりしたんだ。クリエイティヴィティを拡げるためにもセカンド・ギタリストが必要だったんだ。

－ひょっとして4人編成になる必要性というのは、プログレッシヴな音楽性が開花した前作『Daydream Anonymous』の頃から抱き始めたということはありませんか？

多分そうかもしれないね。僕とソングライティングを行っていたJoe Morganはもっとキャッチーでポップな音楽が好きで、僕はもっとプログレッシヴな音楽が好きだったから、それを合わせたような音楽を作りたかった。でも結局Joeとは方向性が違っていたから彼はバンドを離れて行ったんだ。Greg McPhersonもメタルやテクニカルな音楽が好きだし、Simon Taylorももちろんそう。今回加入したBen Konstantinovicも元々はロックやブルースが好きだったんだけど、今じゃスクリームするのは嫌いだけどプログレは好きになって勉強してくれているんだ。

－Benの加入の時期は昨年の夏ないし秋と言われていますが実際はいつになるんでしょうか？

Benの数学の授業が終わった去年の夏から一緒に演奏しだしたんだ。その時点で2~3曲を除いて今作用の曲は出来上がっていたから週に1~2回集まってリフの練習などを始めたんだ。さっきも言ったようにBenはスタイルが違ったから一緒に弾きながら学んで行ったって感じかな。で、Benがバンドに加入するかもって話が浮上したのが秋のこと。でも、はっきりと公に言わなかったのは、ひょっとしたら彼はツアーを回るのが嫌いかもしれないし、仲が悪くなるかもしれなかったから、様子見していたんだ(笑)。その後1月5日からレコーディングに一緒に入り、ショーケースのようなライヴ・ツアーを6日間行ったけど、たぶんその時が、オフィシャルでのベンの加入日ということになるんじゃないかな。

－ウィキペディアにはBenの加入時期が＜夏/秋＞となっているのを知っています？

まぁウィキペディアだからね(苦笑)僕たちからいつって明言していないんだ。ほら、恋愛関係と同じだよ。様子を見ながら関係を深めて、今はこうしてバンド・メンバーとして共にいるっていうさ。

－その6日間のショーケース・ツアーで、「よし、Benならバンド・メンバーとして迎えても大丈夫だ」って気持ちが固まった瞬間や決め手となった出来事はありましたか？

すべてにおいてそう思えたよ。ショーケースの前にリハーサルを2週間やって、新しい曲を練習し、古い曲をベンに教えたんだけど、ベンが入ったことによって古い曲に新たなレイヤーが加わってリフレッシュされたし、UKの人って皮肉屋や多いけど、ショーケースの後、誰1人としてBenの加入を悪く言う人がいなかったんだ。ブライトンで技術的な問題があった時も“新しく入ったメンバーのBenだよ”って紹介すると、みんな拍手で受け入れてくれた。あのツアーはスタッフの仕事も自分たちでやらなければならない大変なものだったから僕はライヴが終わると10～20分の休憩が必要だったんだけど、ベンはすぐファンに会いに行っていたほどベンがとてもツアーが好きだってことも含めてそう思えたよ。