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INTERVIEW

OMNIUM GATHERUM

2025.11.06UPDATE

2025年11月号掲載

OMNIUM GATHERUM

Member:Markus Vanhala(Gt/Clean Vo)

Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子

俺たちはまだ全然終わっちゃいない。今回のアルバムが今のところOGの最高傑作だと思っているんだ

-素晴らしい仕上がりになっていると思います。それから、コーラス・エフェクトの効いたクリーン・トーンのギターが、ニュー・ウェーヴやゴシックを思わせ、ご自身も参加している、スーパーグループのCEMETERY SKYLINEとの関連性も感じました。メロデスとゴシック・ロックという一見異なるジャンルに、共通する美学はあると思いますか?

あるのかもしれないな。俺はコーラス・エフェクトをギターに掛けるのが好きだし、AORも昔から大好きなんだ。プログレッシヴ・ロックも好きだし、DEF LEPPARDみたいなバンドも、TOTOやJOURNEYも大好きだ。音のレイヤーが素晴らしいバンドだね。そういうスタイルに影響を受けていて、それをOGやCEMETERY SKYLINEでやっている。INSOMNIUMでもやっているけど、OGやCEMETERY SKYLINE程ではないかな。 ともあれ、気付いてもらえて嬉しいよ。メロディック・デス・メタルではそんなによくあるスタイルじゃないからね。ディストーションの掛かったギター・リフとかクリーンなギター・リフとかも好きで、LAのどこかのスタジオがやっていた、そういうのがいっぱい出てくるドキュメンタリーを観るのが好きなんだ。DEF LEPPARDの『Hysteria』もそういう要素があったよね。俺はこの手のものに関してはオタクなんだ(笑)。

-分かります(笑)。メロデスにゴシックやAORを組み合わせることができる、数少ないアーティストの1人ではないでしょうか。

(笑)ありがとう。そういうことを狙っていたんだ。同じメロディック・デス・メタルの繰り返しは嫌だし、人と同じメロディック・デス・メタルをやるのも嫌だからね。もっとパーソナルで俺らしい個性を入れたいんだ。

-「The Last Hero」は強烈なファスト・ビートと勇壮なメロディが特徴的です。この曲の"ヒーロー"とは誰を指しているのでしょうか?

これに関してはJukkaに聞くほうがずっといい答えが返ってくると思うよ(笑)。あいつがいつも歌詞を書いているからね。「The Last Hero」は自分の権利や自分の意見のために闘うことのできる人のことなんだ。いい意味でね。自分の意志を通すために闘うということで。時には悪いふうにも転がって"おい、お前間違っているぞ"、"古いぞ"と言われたりするけど(笑)、画期的なことになる場合もある。MVではラップのヒーローがフードを被っていて、そこにOGのロゴが付いているんだ。そいつがストリートにOGのロゴをグラフィティで描いている。こいつはOGのために闘う最後の人物なんだ。最終的にはニューヨークのタイムズ・スクエアに辿り着く。いろんな人のるつぼみたいなところにね。そしてOGのヒーローは雑踏の中に消えていくんだ。"ラスト サムライ"みたいなものだよ(笑)。

-中間のシンセがゲーム音楽風ですが、意図的なものでしょうか。

キーボードのあの部分だね? Jukkaはいつもゲームのことを考えているのが好きなんだ。筋金入りのゲーマーだからね。歌詞にもゲームのヒーローが出てくることが多い。よく気付いたね。俺はあのパートはディスコみたいだなって思ったけど(笑)。

-(笑)たしかに!

でも美しいものはいつだってリスナーの耳の中にある。人それぞれの観点があることが大事だと思うんだ。どの解釈が正しくてどれが間違っているとか、そういうことはないからね。

-「The Darkest City」は今作最長の楽曲で、7分近くあるミドル・テンポの壮大なナンバーです。

現時点で俺が特に気に入っている曲なんだ。他の曲は短めでキャッチーなヘヴィ・メタル・アンセムな感じだけど、「The Darkest City」はもう少しディープでね。もっと長くて壮大なんだ。あの曲を書いたときは、OGのアルバム『Beyond』(2013年リリースの6thアルバム)のことを考えていた気がする。『Beyond』の壮大な音風景をここに落とし込みたいと考えた。歌詞的にはゴッサム・シティ("バットマン"に登場する架空の都市)みたいなダークな街のことを歌っている。悪がはびこっているような場所。Jukkaによるとその街は人間の身体のメタファーでもあるらしいんだ。血管がストリートで、心臓が街の中心。歌詞はダブル・ミーニングで2層になっているんだ。

-なるほど。曲的には少しプログレ的な要素があるような気がします。

そう、そこが気に入っているんだ。というかそれが狙いだった。ストーリーテリングができるような曲にしたかったからね。ミドル・セクションのビートのように聞こえるところは、心臓の鼓動みたいな感じかもしれないな。アルバム全体の中でも気に入っている箇所だよ。まさにアルバムの真ん中のセクションだしね。アルバムの心臓なんだ。 それに、これはアルバムの中でたしか最初に書けた曲だったんだよね。さっきも話したけど、このアルバムは曲を書くのに本当に苦労したんだ。『Origin』よりいいアルバムを作らなきゃいけないというプレッシャーが強かったから、ちゃんとインスピレーションを活かすことがなかなかできなかった。「The Darkest City」がその状況を打破してくれたんだ。クリエイティヴな考え方が本調子になってきて"よし、これでミッションを遂行できるぞ"と思えた。アルバムのプロセス的にも本当に重要な曲になったよ。

-それで軌道に乗ることができたんですね。

ああ。曲を書くのはいつも難しい。俺はたくさんバンドをやっているし、いつも曲を出しているから楽勝だろうって思っている人たちもいるけど、簡単なんてとんでもない。そんなことは一切ないよ。いつも大変だ。自分自身との競争だから。俺は自分の一番厳しい批評家だし、常に自分の前の作品を超えるものを作らないと気が済まない。同じことの繰り返しは嫌だしね。いつも苦しいプロセスだよ。もうこれ以上無理だと思ってどん底まで落ちてしまうことも多いけど、そこからなんとか這い上がって......まぁでも、曲を作るにはそういう苦しみがあるべきだとは思うね。楽であってはいけないと思う。そうすると価値を失ってしまうからね。俺が目指しているのは使い捨ての音楽じゃないから。この曲を作るために苦しんだからにはね。

-そうやって産みの苦しみを味わった結果、こういうアルバムができあがったと。

なんかアーティスティックな言い方をしてしまったけど、本当のことだからね(笑)。

-「Walking Ghost Phase」は依存症をテーマにした楽曲とのことですが、ハイテンションなギャング・コーラスと妖しいインスト・パートの対比が印象的です。この曲についても教えていただけますか?

この曲はアルバムの中でもハード・ロック色が濃いやつだね。ストレートにガツンとくる曲だ。「The Darkest City」みたいなプログレッシヴな曲の後は、ストレートなやつがいいと思ってね。先週この曲を、スペインのマヨルカ島の"Full Metal Holiday"で初めて演奏したんだ。ライヴのオーディエンスに速攻性があったよ。間違いなくライヴ・アンセムだね。"Walking Ghost Phase!"なんて感じで(※拳を突き上げ)みんなシャウトできる。ストーリーは依存症や、路上のジャンキーたちについて歌っているよ。同時にこの曲は......チェルノブイリの原子力発電所は知ってるよね?

-はい。

80年代に爆発事故が起こったところだ。緊急作業員たちが致死量の放射能を浴びてしまったわけだけど、数日間気付かなかった。致死量の放射能を浴びていたからすでに死んでいたようなものだったけど、最初は症状が出なかったから気付かなくて、そこから無事に出てきたと思っていたんだ。でも残念ながら、出てから死んでしまった。 Jukkaはそれに依存症の人たちを重ね合わせている。依存症が重症の人はもう死んでいるようなものだからね。自分でも気付かないうちに墓場に向かっているのに、堂々と胸を張って歩いているんだ。身体には毒が回っているのに。......というわけで結構ダークなストーリーがあるんだ。でも曲はアップビートで高揚感がある。そこにパラドックスがあるんだ。原発の中で歩きながら、数日後には死んでいることに気付かずにいる。歌詞と音楽の奇妙なコンビネーションだよ。

-そのひねりが利いているところもいいと思います。「Ignite The Flame」は荘厳なシンセのイントロや、切れ味鋭いビートが印象的な楽曲です。

内容的には、壮大なアイディアが浮かんだときに、行動を起こすためのひらめきを得ることについてなんだけどね。"Ignite The Flame(炎を灯せ)"とは、自分のひらめきを信じろという意味なんだ。"君ならできる。君ならストリートから栄光を掴むことができるんだ"みたいな感じ。心の中のひらめきを大事にして、決して降参するなと。バンド内、ブラザー同志で叫びながら励まし合っているような感じでもある。

-テーマの"大きな夢を持つ"に繋がっているような気がしますね。

間違いないね。曲調はオールドスクールなOGにかなり似ている。このアルバムの中では一番メロデスらしさが出ているかもしれないな。アップビートなドラムと、ものすごくトリッキーなギター・パートがあって。プレイするのがすごく大変だったよ(苦笑)!

-しかもライヴでやらないといけませんし、もっと大変ですね(笑)。

ああ(笑)。この曲はアルバムに入るまでとても骨が折れたんだ。最初はボツにするつもりだった。俺は完全に投げていたけど、ドラマーのAtte(Pesonen)とベースのMikko (Kivistö)が俺の作ったスケルトン状態のデモを聴いてケツを蹴飛ばしてきてさ(笑)。"捨てるなよ。この曲の新しいバージョンを作ればいいじゃないか。いい曲なんだから"と言ってきたんだ。絶対に入れようなんて言うもんだから、10バージョンは作ったよ。そうしたらやっとしっくり来た(笑)。今は大好きな曲だけどね。しっくり来るまでの闘いが大変だったよ。ようやく"暗号が解明"されて、いい曲だと思えるようになった。このアルバムにはやっぱりこういう高速のガンガン行く曲が必要だからね。

-「Barricades」ではクラシカルなギター・フレーズと高速のスラッシュ・ビートが秀逸ですね。

あれは昔のEUROPEが念頭にあったんだ。John Norumとかね。初期の『Wings Of Tomorrow』を思い出していたよ。あとはYngwie Malmsteenとか。パワー・メタルにも近いネオクラシカルな感じ。すごくギターが強い、高速のメロデス・ソングだ。アウトロ前の最後の曲らしい感じだね。アウトロに向かって行進していく感じだし。人々がバリケードを作って、自分たちの権利を主張しながらストリートを行進しているんだ。

-オープナーの「May the Bridges We Burn Light the Way」と、クローザーの「Road Closed Ahead」は、共にインスト曲になっています。旅の終わりと始まりを暗示しているように感じますが、インスト曲を配置した意図を教えてください。

このアルバムはストリートを行進していくように話が流れていくんだ。俺はオールドスクールだから、アルバムを全体で1つのものとして考えるのが好きでね。今みたいに単独で曲を聴くようなストリーミング文化はあまり好きじゃない。アルバムがシリーズものだとしたら、エピソード3だけ観ているようなものだしね。俺にとってのアルバムというのはフル・ストーリーありきなんだ。アルバムは映画やテレビのシリーズものみたいに考えている。だからシネマチックである必要があるし、ドラマがないといけない。 イントロの曲はニュース速報みたいなものなんだ。変なシンセで始まっている。"速報です"みたいな感じでね。実際にAI音声でアナウンスを入れたんだよ。それまで使ったことがなかったけど入れてみた。でもCentury Media(Records)に"それは入れられない"と言われて、その部分は削除しないといけなかったんだ。今は変な音から始まる。それがアナウンスの代わりなんだ。そしてアルバムの始まりを告げている。 「Road Closed Ahead」は自己完結している感じだね。ストリートや道の話だから。アウトロで、夜ドライヴしているんだ。ところが"Road Closed(通行止め)"ということで壁が立っていて、そこから先には進めないから、静かになっている。その先は想像次第。ドライバーは壁をぶち破ってもいいし、そこで車を止めてもいい。一晩中運転していたっていいんだ。聴き手の考え方次第だね。

-アルバム・タイトルは、キャリアの中で音楽性を果敢に変化させてきたOGの歴史にも重なるように感じます。10作目を経て、今後の活動の展望について教えていただけますか?

日本に関して言えば、俺が10代の頃から大好きなバンド、BON JOVIの曲に「Tokyo Road」っていうのがあったと思うけど......。

-あぁ、ありましたね!

俺たちにとっての"Tokyo Road"が開かれていることを願うよ。永遠にね! 俺たちはまだ全然終わっちゃいない。まだまだエネルギーに溢れているし、今回のアルバムが今のところOGの最高傑作だと思っているんだ。そう信じているし、強い気持ちで前へ進んでいくつもりだよ。日本にもこのアルバムで絶対に行きたいね。叶うかどうかはこれから分かるけど(笑)。

-この後他の地域でツアーが控えていますし、ぜひ日本に足を伸ばしてくれることを願っています。そしてバリケードをぶち破って何度もアルバムを出して、日本にも何度も来てください。

日本の人たちにはいつも本当に良くしてもらっているし、ぜひまた行きたいね。この素晴らしい曲たちを引っ提げて、素晴らしいみんなに会いに行くんだ。楽しく過ごしたいね(笑)。

-最後に、日本のファンへメッセージをお願いできますでしょうか。

アルバムのタイトルに近いものがあるけど、決して諦めないで、人々に足を引っ張られても心を折らないで、ひたすら自分を信じるんだ。このアルバムをぜひチェックしてくれ。願わくは、このアルバムからパワーを受け取ってくれるといいね。俺たちの心と魂がそのまま注ぎ込まれている、とても正直なアルバムなんだ。楽しんでくれますように。アリガトウ!