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INTERVIEW

まみれた

2025.10.10UPDATE

2025年10月号掲載

まみれた

Member:伐(Vo) 隆世(Gt) かる。(Ba) 森田(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

"おもしろきこともなき世をおもしろく"との言葉を遺したのはかの高杉晋作であるが、今世界を面白いことに巻き込み出しているのは、TikTokで「もしもし」という曲をバズらせているまみれただ。"#もしもし"、"#まみれた"と検索すれば、様々な国の人々が電話をかけるポーズを取りながら「もしもし」という曲をそれぞれに楽しんでいる姿を見ることができるはず。また、その一方でまみれたは"嘘をついてない音楽"を追求するバンドでもある。ここではそんな彼等の真実に迫ってみよう。

-今年5月に発表されたシングル『もしもし』の表題曲が、現在TikTokで世界的にバズっているまみれたは、2025年1月に待望の復活を果たした"床下系4人組ヴィジュアル・ロック・バンド"になるのだとか。再始動してからはまだ9ヶ月程ですが、今年上半期の段階でこの状況を予想することはできていましたか?

伐:想像してなかったというか......今バズっている実感そのものがあんまりないんで、別に普通な感じはあるんですよ。本当にバズってるかも自分ではよく分かんないです。

-そもそも「もしもし」という曲自体は以前からあったそうなのですが、再始動後にリレコーディングされることになった理由はなんだったのでしょう。

伐:一番まみれたらしいコンセプトの曲をやり直したって感じですね。自分の納得のいくように作り変えました。

-"まみれたらしいコンセプト"が具体的にどのようなことを指すのか、ということもぜひ教えてください。それは"床下系4人組ヴィジュアル・ロック・バンド"というキャッチコピーと繋がるものでもあるのでしょうか。

伐:"床下系"っていうのは僕等が勝手に言ってるものなんですけど、バンドとしてのコンセプトは"日常"なんですよ。斜め上から見た日常です。

-たしかに「もしもし」は"電話をかけたら相手が留守電だった"というよくある日常的な光景を描いた楽曲ではありますものね。

伐:例えば、日常の中で、隣に住んでいる人がめっちゃヤベぇやつだったみたいな話って結構あるじゃないですか。付き合ってみたら実は恋人がヤベぇやつだったとか。みんなが住んでいるこの日常って、恐怖がいっぱいあるんですよ。

-実際、私の友人にも、"隣人のおじさんが毎日夜中になると女の名前を絶叫しだす"というひどい目に遭っていた人がいましたね。

伐:あー、その叫んでたやつはまさに"床下系"ですよ。

-あまりにも迷惑なので友人は引っ越しを検討していたのですけどね。幸い、おじさんのほうが先に引っ越していってくれたので事無きを得たようです。

伐:でも、またそいつの引っ越した先で次の被害者が生まれるわけじゃないですか。結局おかしな日常ってなくならないんです。僕等にとっての日常って、結構嫌なことばっかりなんですよ。

-ちなみに、伐さんのSNSアカウントを拝見しますと、そうした"嫌なこと"に対する忌憚のないご意見や、時にはシーン自体に対する不満を述べた投稿もあり、いつ炎上してもおかしくなさそうな雰囲気さえ感じます。怖くはないのですか?

伐:別に怖くはないです。炎上したとしても"まぁ、そうだろうな"って思うだろうし。たぶん、僕は人と違う日常を生きてるんでしょうね。

-なるほど。日常をテーマとしているとはいえ、日常の捉え方は人によっても様々ですので、伐さんにとっての日常=まみれたの世界なのですね。

伐:そうです。俺の中での平和とか平穏の象徴は青空なんですけど、それとも全然違う世界にいる俺たちは"床下系"、みたいな感覚で捉えているところがあるんですよ。青空を見るためには床上に出る必要があるし、床上には天井があって、さらに天井を1枚挟んだ先にあるのが青空なんで、僕等のいる床下は最下層にあたるというか。

-では、そんな"床下系"を自称されているまみれたの皆さんは、もとを辿るとどのようにして集った4人なのですか。

伐:俺が山口県から上京してバンドを組もうとしたとき、こっちには誰も知り合いがいなかったし、バンドをやっている人はもちろんですけど、ヴィジュアル系が好きな人を探すのも難しかったんで、まずはメンバー募集掲示板みたいなのに、"どのパートでもいいんで入れてください"って出したんですよ。

-ヴォーカリストである伐さんが"当方ヴォーカル。メンバー求む"ではなく、あえて"どのパートでもいい"と発信されたのはなぜだったのです?

伐:いきなりこっちから"ヴォーカルなんでメンバー募集します"とか書いちゃうと、知らない人からしたら"なんだよこいつ。お前にちゃんと歌えんのかよ?"みたいに思われそうかなって。

森田:その気持ちはちょっと分かりますね。ヴォーカルってバンドの顔なわけだから、それを見ず知らずの人から唐突に選ぶというのは、楽器をやってる側からしても難しいだろうなって伐は考えたんだと思います。

伐:まさにそれ。だって、もし俺が楽器やっててバンドを組むってなったら、よく分かんねぇやつとは一緒にやりたくねぇもん。

-"どのパートでもいいんで入れてください"と掲示板に出した後、そこからはどうなったのです?

伐:ベースのかる。さんがやってたDIR EN GREYとlynch.のコピーバンドに、ドラムで入ることになりました。かる。がいて、他にヴォーカルとギターがいて、俺はドラムでスタジオに入ったら、それがすごく楽しかったんです。初回から。

-歌ではなく、ドラムで参加していたというのが気掛かりな点ではありますけれどね。

伐:でも、とにかく"これでライヴができるぞ"っていうのが嬉しかったんです。見るからに俺が楽しそうにしてたらしくて、かる。からは途中で半笑いしながら"ドラムの人、すごく楽しそうっすね"って言われました。で、そのときに勢いで"実は俺、ヴォーカルなんだけど俺のバンドに入ってくんね?"って言ったんですよ。

-かる。さんからの回答は?

伐:"いいよー"って。かる。さん軽かったっす。

-その際、かる。さんはどのような心境だったのです?

かる。:ちょっとこの人、頭おかしいのかなとは思いました。でも、面白そうだなとは感じたんです。その時点では伐がどんな歌を歌うのかも知らなかったですけど、つい"いいよー"って答えちゃいましたね。

-その後、森田さんとはどのように出会われたのです?

伐:それがですね。かる。さんとやってたコピーバンドはわりとすぐ終わったんで、そこから新しいメンバーを探すことになったんですよ。でも、かる。さんは別のバンドも並行してやる感じになってたから、"メンバー探しといて"って言われたんです。

かる。:僕のほうは伐さんとバンドをやるって決める前に、もう別のバンドで動くことが決まっちゃってたんですよ。でも、伐さんとも何かしらの形ではやりたいなと思ってたんで、僕としては"他で武者修行をしてくるから、ちょっとメンバーは探しといて"って感じだったんですね。

伐:ってことで、俺はまた掲示板でメンバー探しをしたわけです。今度は自分がヴォーカルっていうことで。そうしたら、森田のいたコピーバンドに拾ってもらえたんですよ。ただ、ほんと森田がおかしかったんです。バンド内のグループLINEで"この曲やりましょう"とかみんなで会議してるところに、いきなり"地球を○○したことありますか"とか書いてきて、画像も送られてきたんですよ。他のメンバーはみんな既読スルーしてましたね。でも、俺はそのときに"こいつヤベぇな。こいつとバンド組もう"って思ったんです。

-いやはや。かる。さんとも、森田さんとも、ある種の常識を超えた出会いをされたことになりますね。こうなってくると、隆世さんとの出会いについても気になってきます。

伐:森田のいたバンドで俺がヴォーカルになって、とりあえず継続的に活動していったなかで対バン相手として出会ったのが隆世でした。ライヴハウスで俺と森田がケタケタ笑いながら騒いでたら、隆世のほうから"楽しそうですね"って声を掛けられたんですよ。で、そのときにも俺は"こいつヤベぇな"って感じたんです。

-すなわち、波長が合ったわけですね?

伐:そうっす。背も高いし、イケメンだし、波長も合うんだったら誘うしかないみたいな。で、"俺とバンドやろうよ"って今のまみれたみたいなことをやりたいんだと言ったら、それに対しては"ごめん。俺はAcid Black Cherryみたいなバンドをやりたいんだ"と言われて断られました。

-まみれたとAcid Black Cherryでは方向性がだいぶ違いますものねぇ。

伐:"そうか。俺じゃ一生無理だね"ってことで、話は一応そこで終わったんですよ。でも、その後も一緒に遊んだりすることはよくあったんですね。そして、あるときコピーバンドで俺の友達とライヴをやることになって、そのときは森田とかる。と1人ギターのやつも誘ってたんですけど、そいつが3日前になって飛んだんですよ。そこで急遽"手伝ってくれ"って隆世に連絡したら"いいよ"ということで、そのときは今のまみれたの4人+俺の友達の5人でライヴをやりました。

-きっと、そこから運命の歯車が動き出したのでしょうね。

伐:そうなんですよ。そのライヴが終わったとき、隆世から"すごく楽しかった。やっぱ俺、伐とバンドしたいわ"って言われたんです。で、"一生Acid Black Cherryみたいなのはできないけどいい?"って聞いたら"いい"ということになりました。

-隆世さんは伐さんのどのようなところに惹かれたのです?

隆世:最初に伐から誘われたときはまだ新潟から上京したばっかりで、どうしても自分の理想を追求したいっていう気持ちが強かったんですよね。でも、だんだんとやっていくうちに、音楽性も大事なんだけど、それ以上に精神的な部分とかパッションの部分で合う人とバンドをやりたいなって気持ちが強くなっていったところがあって、そんなときに伐たちとライヴをやってみて、"こういう楽しい感じいいな"と思ったのが大きかったです。それで一緒にやることにしました。

-なお、今のところ具体名として出てきているアーティスト名はDIR EN GREYとlynch.、そしてAcid Black Cherryの3組になりますが、4人それぞれの音楽的バックボーンについても少し伺わせてください。

伐:うちは4人ともバラバラなんですよ。

森田:私はもともと中学、高校と吹奏楽をやっていたので、ルーツとしてはクラシック系の音楽になるんですかね。社会人楽団にも所属していたことがあって、伐と出会った頃には高校に吹奏楽を教えに行ってたこともありましたね。

-かなりの吹奏楽ガチ勢でいらしたのですね。

森田:ただ、打楽器ができるということで、高校生のときは学園祭でJanne Da ArcとかL'Arc〜en〜Cielなんかを叩くこともありました。個人的に好きだったのは、マキシマム ザ ホルモン、ZAZEN BOYS、SYSTEM OF A DOWN、SLIPKNOTとかです。

かる。:僕はギャ男なのでネオヴィジュアル系が大好きです。the GazettE、アリス九號.、NIGHTMARE、メリー、MUCC、Plastic Treeあたりをずっと聴いてました。

隆世:自分の場合、ギターを始めたとき、ヴィジュアル系は全然知らなかったですね。BUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとか9mm Parabellum Bulletとか、その辺をよくコピーしてました。ヴィジュアル系は友達から誘われて最初にやったのがX JAPANで、そこからthe GazettEとかもやりつつ、Acid Black Cherryと出会って"自分がやりたいのはこれだ"となったんです。まぁ、実際に今やってるのはまみれたなんですけど(笑)。