INTERVIEW
まみれた
2025.10.10UPDATE
2025年10月号掲載
Member:伐(Vo) 隆世(Gt) かる。(Ba) 森田(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
まみれたのライヴに触れることで、嘘をついてない音楽に慣れていってほしい
-伐さんはどのような音楽に親しんでこられたのでしょうか。
伐:それが、入りはJanne Da Arcだったんですよ。でも、そこからいろいろ聴いていくうちに蜉蝣、メリー、MUCC、cali≠gari、人格ラヂオってどんどん暗い感じの音が好きになっていきました。洋楽で言うとKORN、MARILYN MANSONとかも好きになっていって、聴く音楽の幅も広がっていったんですけど、最初に好きになったのがヴィジュアル系だったのは自分にとって大きいんで、今もこうしてヴィジュアル系をやってます。
-さて。ここからは再始動後のまみれたについてのお話も伺ってまいりましょう。動機としては、何を成し遂げていくためにまみれたは再び動き出したのですか?
伐:それこそ俺がXで発信してることを見てもらったら分かると思うんですけど、俺は今のヴィジュアル系に不満があるんですよ。あいつらの音楽ってつまんないじゃないですか。みんな一緒で、見た目だけ取り繕って、嘘ばっかりで。俺はそういう今の流れを昔のヴィジュアル系に戻したいんです。蜉蝣とかが全盛期だった頃に。
-2000年代初頭の雰囲気を取り戻したいということですか。
伐:あの頃ってライヴハウスもバンドもヤバかったんですよ。今でも俺はライヴで納得いかないことがあるとお客さんに"帰れよ"とか言うんですけど、当時はそれが当たり前だった時代ですからね。なんでもありみたいな。それって、ヴィジュアル系の音楽にも相通じてるところだと思うんです。本来、ヴィジュアル系は音楽的になんでもありのはずじゃないですか。それなのにみんな同じようなことやってるし、しかも弱いやつを騙す音楽をやってるんですよ。
-弱いやつを騙す音楽?
伐:本心ではそんなこと思ってもいないのに、"自分はクソでダメなんだ。君と一緒なんだ"みたいなことを歌うやつ多くないですか? 要は、自傷しちゃうようなメンヘラの子たちを引き入れようみたいな感じで曲を作ってるんですよ。
-日々の暮らしの中で傷ついている人たちや弱っている人たちに対して、寄り添う姿勢を見せているということなのだと思いますけれどね。
伐:そう見せかけてるけど、あいつら本当は弱者から搾取してるんです。少なくとも俺はそう感じるんですよ。だけど、俺が好きなヴィジュアル系は本当の意味で寄り添ってくれたし、背中を押してくれてましたから。特に蜉蝣はそうでした。だからこそ、俺はそういう時代に戻したいんです。本気でヴィジュアル系やって、本気で弱者に寄り添うバンドがもっと増えたらいいなって思ってます。
-「もしもし」がバズっているなかにあって、これを取っ掛かりに"もっと売れたい!"というような野望はありませんか。
伐:まぁ......自分たちの目指してる、"今の流れを昔のヴィジュアル系に戻す"っていうことを実現するための手段としては、売れないといけないと思ってる感じです。
-まみれたはそれだけの覚悟を持って活動されているわけですね。これは褒め言葉として受け取っていただきたいのですが、例えば「もしもし」を聴いたときに感じた"気持ち悪さと気味悪さ"は、まみれたの個性そのものだと思いますし、そこに面白さまで感じさせるところも独特の手腕だと感じます。それらはきっと、ここからまみれたにとっての大きな武器になっていくことでしょう。
伐:俺等は床下系なんで、そうやって気持ち悪いとか言ってもらえると嬉しいです。
森田:気持ち悪いはむしろ褒め言葉ですね(笑)。
-ところで。ここでひとつ「もしもし」の歌詞についての質問をさせてください。これは伐さんにとってノンフィクションですか? それともフィクションですか?
伐:どっちもですね。半々で交ざってます。というか、たぶんみんなも留守電に繋がったら"お前じゃねぇ/いつまで君はお留守なの?"って感じたことあると思う。
-やけにリアルな世界が描かれている「もしもし」は、MVのほうも非常に秀逸な仕上がりです。こちらのプロットもメンバーの皆さんで作られたのですか?
伐:ロケハンとかはせずに、その場に行って"こんな感じで良くね?"ってそのまま撮っていきました。
-屋外の電話ボックスでのシーンはともかく、スタジオ撮影をされているシーンもあるじゃないですか。それも当日その場でいきなり撮ったということですか?
伐:小道具として"もしもし"だから電話機だけはいっぱい買って持ち込みましたけど、あとは俺のフィーリングで全て決めてった感じです。
-背景にたくさん貼ってある筆文字もその場で書かれたのですか?
伐:あれは俺以外のメンバーが書いてくれました。俺は字が下手なんで。
-個人的には伐さんが下駄を履いていらっしゃるところもツボでした。
伐:やりたいのは"あの頃のヴィジュアル系"だから、当然ああなります。
-まみれたならではの"あの頃のヴィジュアル系"ぶりは、ライヴの場でも今後さらにいかんなく発揮されていくことになると思いますが、2026年1月21日には、渋谷WWWでのワンマン・ライヴ"「着地ノ無イ身投ゲ」"が決定しております。タイトルからは不穏な空気も感じられますが、ここに込めたのはいかなる想いとなるのでしょう。
伐:人が高いところから身投げをするときって、どうやらものすごい量のアドレナリンが脳内で放出されるらしいんですよ。でも、それって実際には体験することができないじゃないですか。これは1つの例えみたいなタイトルで、飛ぶ覚悟はあるしもう飛んでるも同然なんだけど、着地しなければ決して死ぬことはないわけだから、俺たちがまみれたをやってることはつまり"着地ノ無イ身投ゲ"であるという意味ですね。俺はこれを一生やってくつもりなんです。
-そのライヴと連動する形で、現在12月5日までの期間限定で、"床下留守番電話サービス"というものも開始されているそうですね。
伐:激ロックさんには今回こうして載せていただけましたけど、今って俺等みたいなバンドを扱ってくれる雑誌媒体は少ないんですよ。だから、まみれたでは自分たちで"月刊魔見れた"っていう雑誌を作って物販で売ってるんですね。"秘密の覗き穴"という質問コーナーでは、いつも"誰も質問しないようなことを質問してください"って募集をしてるんですが、"床下留守番電話サービス"は、電話でその質問を皆さんから受け付けますという企画なんです。渋谷WWWでのライヴでは、その質問に答えるだけの一冊を"月刊魔見れた"として販売する予定ですね。良かったら電話して質問してください。
-承知いたしました。最後に、"「着地ノ無イ身投ゲ」"に向けた意気込みをお1人ずつお願いいたします。
森田:私としては、今度のワンマンはまみれたにとっての通過点だと思っておりまして、まだまだもっとやってやるぞ! という気概を持っております。でも、その通過点をどれだけいいライヴにできるかというのも大事なところなので、よりたくさんの方々に観ていただくべく、ここからの一本一本のライヴを通して、いろいろな方たちに"ワンマンを観てみたいな"と思っていただいたり、まみれたにさらなる興味を持っていただけるよう、1月21日に向けて今まさに精進していっている次第です。
かる。:ベースのかる。です。ここからもっと頑張ります。以上です。
隆世:1月21日のワンマンは、まみれたにとって復活から実質1周年のタイミングでもあるんですよ。そういう意味で、今度のワンマンは、この1年間でまみれたが成長してきたところを皆さんに感じてもらえるようなライヴにしていきたいと思います。
-現段階では「もしもし」のインパクトが強いだけに、まみれたに対して、"なんだか面白そうなバンド"というくらいのイメージだけを持って、ライヴに来られる方たちも出てくるかもしれません。その点について伐さんはどのように受け止めていらっしゃいますか。
伐:「もしもし」から好きになったとか、まみれた=面白いバンドっていう認識で来てもらっても全然いいです。好きなら来たらいいじゃんっていうスタンスですね。だけど、俺たち自身は本気でやってますから。まみれたのライヴに触れることで、嘘をついてない音楽に慣れていってほしいなって思います。俺はそれを全力で分からせにいきます。