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INTERVIEW

VIOLET ETERNAL

2025.06.03UPDATE

2025年06月号掲載

VIOLET ETERNAL

Member:Jien Takahashi(Gt)

Interviewer:フジジュン

"ライヴ盤フェチ"の自分が好きな作品群にも見劣りしない、ハイクオリティなライヴ・アルバム


-新作にも繋がる話で、ぜひ聞きたかったんですけど、JienさんはVIOLET ETERNALの曲を書くとき、MAJUSTICEや他の作曲活動との変化や違いって部分で、一番意識してるところはどこですか?

一番は"歌モノである"っていうことだと思うんです。MAJUSTICEはKelly SIMONZ(Gt)とVitalij Kuprij(Key/RING OF FIRE/TRANS-SIBERIAN ORCHESTRA)という超絶技巧を持ってる人たちがいて、HIBRIAで圧倒的ヴォーカリストだったIuri Sanson(ETERNITY'S END/ASHRAIN)がいるっていう、いわばスーパーグループ的なところがあるので。スーパーな人がスーパーであることをフィーチャーしてたってところがあるんです。
例えば、分かりやすいところで言うと、VIOLET ETERNALってMAJUSTICEと比べるとソロの尺が短いんです。「Sonata Black」はもともとMAJUSTICEで出してる曲だし、(VIOLET ETERNAL版音源には)GALNERYUSのYUHKI(Key)さんが参加してくださったので、"だったらこんだけ弾いてもらおう"っていうのがあったので例外として。「Under The Violet Sun」もギター・ソロは長すぎないようにしてるし、長すぎてもギターとヴォーカルの掛け合いがあるとか、あくまでIvanの歌をどう良く聴かせるか? ってことを考えているんです。
アルバムを出したとき、全てが全ての曲をIvanのために書き下ろしたわけじゃなかったんですけど、Ivanの歌を想定してチューンナップしていく段階でギター・ソロも削ぎ落とされていって。それは赤を目立たせたいのに、隣に青があると両方目に入っちゃうという話で、だったら青を減らしていかなきゃダメだなと思ったし、それを強く意識した「Under The Violet Sun」は、できあがってみてやっぱり一番手応えがあったし。そこが一番の違いじゃないですかね。

-意識的にIvanの歌ありきのアレンジにしていったんですね。

あとは収録曲ごとのコントラストというか。MAJUSTICEって、私とKelly SIMONZさんとTimo Tolkkiとソングライターが3人いたんですけど、VIOLET ETERNALのメイン・ソングライターは私だけって状況だったので、アルバム単位で見たとき、コントラストをはっきりさせようというか。速い曲はとことん振り切ったところでパワー・メタルとしてやろうとか、メロディアスな曲は軸足を据えてやろうとか、半端なものは作らないってところを意識して。歌モノであることを分かってもらえる作りにすることと、どんな曲か一発で分かってもらえる作りにすること。VIOLET ETERNALの曲を作るときに意識した部分は、この2点が大きかったと思います。

-それに加えて、Ivanなりの解釈や歌い方もあって、Jienさんが想像しなかったケミストリーもあったでしょうし。

おっしゃる通りです。ロックの歴史ってそういうもんだと思って。Yngwie Malmsteenの楽曲をコピーをされてる方って世界中にたくさんいて、Kelly SIMONZさんもその1人ですし、ALCATRAZZのJoe Stump(Gt)もYngwieの影響を前面に出されてますけど、その2人のギターも全然違うし、同じフレーズを弾いても全然違うわけですよ。というのも同じものを見聴きしても、見え方や聴こえ方が一致しないというのがあるからで。
Ivanの歌に関してもそういうのがあったのがVIOLET ETERNALだったし、Ivan自身も"VIOLET ETERNALを通じて自分の可能性をすごい感じられた"とか、"自分のこれからの人生を投資する価値がある"と言ってくれたし。Ivanと実際に過ごしたり作業したりしてみて、"今後こういう曲を作ってみてもいいな"や、"これはトゥーマッチだな"と思う部分もやっぱりあって。

-他の作曲者とは違った視点で自身の魅力を引き出してくれたのが、Ivanにとってもすごく刺激的だったでしょうし。

そうですね。だから、あのライヴが終わってからずっと自分が言ってるのは、"私の中でもかなり優先順位の高い事項として、Ivanの歌の素晴らしさをもっと広めていきたい"ということで、同じ価値観を持った人に良いと思ったものをもっと広めていきたいという気持ちがあって。それが伝わる歌モノが作れたら、Ivanの良さはもっと広がると思うんです。私は日本で生まれて日本の音楽を聴いて育って、日本の音楽が好きだったから、それは自然と出てくるし、それがIvanの歌声や考えてること、やりたいこととマッチして前回のアルバムができて。それを踏まえてどうしていくか? ってところで、いろんなことを見据えていけるタイミングが来たなと思っています。

-Ivanのヴォーカルのすごさってアルバムだけでも十分に伝わってきますけど、ライヴ盤を聴いてよりエモーショナルに胸に迫ってくる感があって、ものすごいなと思いました。

私もいろんなヴォーカリストとやってきましたけど、Ivanのヴォーカルって次元が違うんですよね。天才的というか、人の心を掴む声と技術が先天的にあって。そのすごさは一緒にライヴをやっていて痛感しましたし、ライヴ・アルバムも繰り返し聴いてますけど、"この曲ライヴのほうがいいんじゃないか?"って曲も結構ありました。もともとライヴ・アルバムが好きなので、自分の好きな作品たちに匹敵するというか、見劣りしないクオリティの作品が作れたと思いますし。自分の中でオーバープロデュースしない、つまり直しすぎないでクオリティの高いライヴ・アルバムが作れたとも思いますし。しっかり迫力のあるサウンドになったので、そこはDennis Wardにお願いして良かったなと思いますし。

-サウンド・ディレクター、マスタリングをお願いしたDennis Wardについても詳しく聞きたいです。

もう間違いなかったですね。今回ライヴ・アルバムを作るって話になったとき、Dennis Wardしかいないと思ってて。IvanはIvanで好きなサウンド・プロデューサーの方がいて、次の作品には彼を使いたいのかな? と思ったんだけど、"いろいろ考えたけど、次もDennis Wardでやるべきだと思う"ってIvanから言ってきたので、一致して良かったなと感じたです。今回Dennis WardがVIOLET ETERNALとHELLOWEENの新作を並行してやっていて、すごく時間がかかってしまったんですけど、彼が忙しいのは分かってることだし、できあがりを聴いても"やっぱり分かってるな!"という感じで。

-1stアルバムをやってVIOLET ETERNALを理解してくれてるのも大きいでしょうね。

そうですね。"ここがこいつらのいいところだ"っていうツボは分かってたと思うし。人によってはドラムの音作りをやりすぎちゃう人もいるんですが、Dennisはそういうことがなくて、生っぽさを残しつつ、聴き劣りしない感じに落とし込んでくれて。ミキシングのプロセスは、ベースのOllie(Bernstein)とDennisの2人に進めてもらったんです。EXODUSが去年、ライヴ・アルバム『British Disaster: The Battle Of '89 - Live At The Astoria』を出したんですが、それを聴いてすごく感動したので、"そういうものにしてほしい"と2人に伝えていて。それはEXODUSみたいなブルータルな感じってことじゃなくて、エネルギーを感じる音作りにしてほしいということなんです。あのライヴ・アルバムは私の中ですごく大きくて、今作の制作に拍車を掛けましたね。

-YouTubeでもライヴ映像が簡単に観られてしまう昨今、音源のみのライヴ・アルバムっていうもの自体が近年珍しくなっていて。EXODUSのライヴ・アルバムの話も出ましたが、Jienさんの中で、好きなライヴ・アルバムやぜひ聴いてほしいライヴ・アルバムも教えてください。

まず、VIOLET ETERNALのライヴ・アルバムを作るのに後押しをしてくれた、EXODUSのライヴ・アルバムが1つ。あと、自分の中でしっくり来たという意味でKISSの『KISS Alive Ⅲ』。これはノー・メイク期のKISSが最後に出したライヴ・アルバムなんですけど、あの頃しかやってない曲もいろいろあって。中でも「God Gave Rock 'N' Roll To You II」って(ARGENTの)カバー曲なんですけど、KISSバージョンがどえらくカッコいいのと、Bruce Kulick(Gt)が昔の曲を弾いてるのもすごくいいとか、この作品でしか聴けないものがいろいろあって。KISSのライヴ・アルバムって基本映像を作らないんですけど、それがいいんですよね。いろいろ想像させてくれるし、"あのままノー・メイクのKISSが続いてたらどうなったんだろう?"っていうのは思いますね。
あと、国内のバンドでTHOUSAND EYESが2024年に『GALLERY OF DESPAIR』ってライヴ・アルバムを出して、それが我々と同じSHIBUYA CYCLONEで録られた音源だったんですよ。なのであれを聴いて、"CYCLONEで録ったライヴ・アルバムってこんな質感になるの!?"って勇気付けられた部分があったのと。自分が高校生のときにリアルタイムで買って聴いてた『ENDLESS NIGHTMARE』の曲がライヴ版で聴けて、しかもすごいクオリティが高いのがライヴ盤フェチとして嬉しくて。日本のメタル・バンドがライヴ・アルバムを出すってあまりなくなっちゃったので、"こんなクオリティの高いアルバムが出せるなら、俺たちも頑張らなきゃ"と勇気付けられましたね。

-それもまた、今作を出すに至るきっかけになっていたんですね。

あと、SAXONが6月にライヴ・アルバム(『Eagles Over Hellfest』)を出すんですけど、先行公開されてる曲がめちゃくちゃ良くて。先日も来日してて全部観たんですけど、"現在が一番いいよな!"と思わされたんです。約50年やってるバンドが現在が一番いいってすごいことなんですけど、本当にそうなんですよ! ALCATRAZZもライヴ・アルバムを出しててめちゃくちゃ良かったし、Diamond Headも6月にライヴ・アルバム(『Live And Electric』)を出すし。オールドスクール言ったらなんですけど、ベテランのバンドがこれだけ頑張ってんだから、若手ももっとライヴ・アルバム出せよ! と思っちゃいますよね(笑)。

-ライヴ・アルバムには映像にない、頭の中で想像させてくれる面白さがありますからね。

そこで最近話してて知ったことなんですけど、Ivanがライヴ・アルバムを出すのが今回初めてだって言っていて。"あのVISION DIVINE にいたIvan Gianniniが、ライヴ・アルバム出したことないってどういうことだよ!?"って。もうIvanはVISION DIVINE をやめちゃったんで、VISION DIVINE時代のIvanの歌声を聴くことはYouTubeでしか叶わなくて。"もったいねぇ。オフィシャルで残しておけば良かったのに!"と思いながら、ちゃんと宣伝に繋げると(笑)。
今回のライヴ・アルバムには、Ivanが歌うVISION DIVINEの「Angel Of Revenge」が唯一、オフィシャルのライヴ音源として残ってます。あの時点では、IvanがVISION DIVINEをやめることが決まっていなくて。

-そうか、タイミングによっては歌えなかったかも知れない?

いや、でも7月のライヴでもやりますよ。というのも、VISION DIVINEをやめた後に、IvanはVISION DIVINEの曲を歌うのが嫌かな? と思って聞いたんですよ。そしたら、"俺は、日本のファンにVISION DIVINEとしてのIvan Gianniniを見せずにやめてしまったから、その罪を償う義務がある。だから、VIOLET ETERNALでは歌い続けるし、7月のセットリストに入れないなんてことを言わないでくれ"って。

-うわぁ、本当に誠実な人ですね。

歌声そのままの人です。前回ライヴでやったときも"もしかしたら日本には君のファンが世界で一番いるのに、そのファンが君の歌うVISION DIVINEをずっと聴けてないのは不公平だ"と話したら、"その通りだ"って言って「Angel Of Revenge」を歌うことになったんですが。Ivanが歌うVISION DIVINE時代の楽曲を残せたという意味でも、今回のライヴ盤は本当に残しておいて良かったと思いますね。

-そして今回、アルバムのアートワークもJien さんが手掛けています。

変な話なんですが、実は『Reload The Violet』ってIvanに声を掛ける前からアートワークができていて。というのも、自分はもともとデザイナーになりたくて、隙間時間に作っていたアートワークがあって、それといくつかのデモ曲をIvanに送って、"そんなマルチな才能を持ってるお前と、俺はやるべきだ"ということになったという経緯があるんです。前回のライヴの物販も全部自分でやってて、今回のアートワークも自分でやろうとなったとき、ライヴで作って好評だったデザインがあって、前回のライヴの象徴的な部分という意味で今回のジャケットが生まれたんですよ。 自分の好みの話になるんですが、自分の好きなライヴ・アルバムのジャケットって、メンバーの写真が写ってないんですよ。だから、そこを踏襲しようと思って、額縁の中に女神が閉じ込められていた前作に続いて、アイコンとしての芸者を置いて、背景にはライヴ会場だった渋谷CYCLONEがうっすら写ってというジャケットになりました。あと、裏ジャケやブックレットの中にはライヴやリハの風景、プライベートな写真もいっぱい載ってるんで、面白いと思います。

-ファンの皆さんには今回のライヴ盤をしっかり聴き込んで、7月のライヴに向けて気持ちをアゲていってほしいですね。

7月のライヴまでインターヴァルが1ヶ月くらいしかないですけど、これを聴いて、"こんないいライヴやってるなら一度観に行こう"と思ってくれるのが一番理想なので。タイミングによっては、VIPチケットがソールド・アウトして、"これを読む頃には私はこの世にいません"みたいなことになってるかも知れませんが(笑)、ライヴに遊びに来ていただいて、2ndアルバムにも期待していただきたいです。