INTERVIEW
ヱヰ十×ラッパ我リヤ
2025.03.25UPDATE
2025年04月号掲載
JR中央線沿線を中心に、ヘヴィなハードコア・サウンドを通奏させながら、ジャンルの壁を破壊する活動を展開してきた6人組バンド、ヱヰ十。3月26日にリリースされる約1年ぶりの新作「饗宴 (feat-ラッパ我リヤ)」では、これまでライヴで共演を重ねてきたヒップホップ・シーンのリヴィング・レジェンド、ラッパ我リヤを客演に迎え、抜群のコンビネーションでバンド・サウンドとラップのクロスオーバーを実現させた。今回はそんな2組の座談会が実現。缶ビールを片手にトークは弾んだ。
ヱヰ十:MARU(Vo) Kimihiro(Vo) 西(Gt) よしふみ(Gt) ハマ太郎(Ba) YYU-KING(Dr)
ラッパ我リヤ:Mr.Q 山田マン
Interviewer:サイトウ マサヒロ Photographer:藤咲千明
-ヱヰ十とラッパ我リヤは、毎年恒例となっている"ヱヰ十の日(8月8日)"の自主企画("EFFORT IS MAXIMUM")にて3年連続で共演しているんですよね。
西:そうですね。最初は新宿LOFTの店長が企画するイベントで共演させていただいて、それから交流があり、僕等の企画にもお呼びさせていただくようになりました。ヱヰ十のメンバーはそれぞれ好きなジャンルがバラバラなんですけど、ヒップホップは全員の共通項なので、以前からラッパーはよく企画に呼んでたんです。当初は身の回りにいる近い年代の若手MCに出演してもらってたんですけど、ちょっと冒険してみようということで、昔から好きだった我リヤ(ラッパ我リヤ)さんに声を掛けまして。
-憧れの存在だったラッパ我リヤとの共演はいかがでしたか?
西:もう、さすがでしたね。プロってこういうことなんだなと思いました。どの現場、どの客層、どの時間帯でも、絶対に沸かせてしまうので。
MARU:どこでやっても我リヤさんのスタイルで全部持っていっちゃいますから。ヱヰ十はならではのスタイルを確立できてるのかと時折不安になるんですけど、我リヤさんは自分のやり方を完全に確立している大先輩なので、見ているともっともっと俺たちも磨いていかないといけないなと思わされます。
-一方のラッパ我リヤから見たヱヰ十の第一印象はいかがでしたか?
Mr.Q:まずは、とにかく暴力的な音をしてるなと思いました(笑)。そして、自主イベントにヒップホップやレゲエのアーティストがいて、そのクロスオーバー感覚が面白い。
西:クロスオーバーは意識的に行っている部分もありますし、僕等の好きなアーティストを呼んだら自然にそうなったとも言えますね。
山田マン:僕は最初から好きになっちゃいましたよね。極太のグルーヴに、不協和音的なメロディと心に突き刺さるメッセージが乗ってるじゃないですか。もともとそういうのが好きなんですよ。僕もラップをやる前はギターをやってて、METALLICAやANTHRAX、SUICIDAL TENDENCIESとかを聴いてたので。
-その後は共演を重ねるなかで仲が深まっていったと。
山田マン:現場で一緒になって、そのまま打ち上げで飲んだりして仲良くなっていきました。うちらが出した「CHALLENGER feat. Spinna B-ILL」(2023年リリースのアルバム『CHALLENGER』表題曲)のMVにも、西君がちゃっかり映ってますからね(笑)。
西:打ち上げも最初はワーワーしてますけど、最終的にはめっちゃ音楽の話になりますよね。やっぱり突き詰めるとその話題になるんだなって。
Mr.Q:飲みすぎてて覚えてないな。"どこが感じるか"とか、そういう話ばっかりしてると思うけど(笑)。
山田マン:"昨日楽しかったな"、"いいライヴだったな"、っていう印象だけは残ってる(笑)。
-ラッパ我リヤはこれまでも様々なバンドとコラボレーションしてきましたよね。
山田マン:Dragon Ashや山嵐、亜無亜危異と一緒に曲をやったり、うちらのいたレーベル(走馬党Entertainment)から『MAD MAXX』(2000年2月)っていうミクスチャーのコンピを出したりしましたね。
Mr.Q:今回のヱヰ十とのコラボは、AGGRESSIVE DOGSとやったとき(AGGRESSIVE DOGS featuring ラッパ我リヤ名義で2001年にリリースしたシングル『ONE BONES WILL BE HARDEN』)のヴァイブスに近かったかな。
西:でも、ヒップホップとハードコアって密接な関係があるのに、同時にやる人は少なかったような気がするんですよね。SANDとANARCHYがコラボしたことはあったけど、もっとガンガンやってもいいんじゃないかなって。だからヱヰ十は、今日のライヴ(※取材は3月7日の"やなモン生誕祭〜四十六の春だから〜"開演前に実施)にも出てもらうIICEKRRとか、仲のいいラッパーをどんどんフィーチャーしてて。
山田マン:今日、IICEKRR出るの? 俺も一緒に曲(2024年リリースの『アキラメナイ』)やってるよ。
Kimihiro:もちろん聴いてます!
-バンドとの共演で得られる刺激にはやはり特別なものがあるのでしょうか?
Mr.Q:俺はわりとロック・スターに憧れて生きてきたんですよね。だからライヴで共演するときはいつも、ターンテーブルとマイクでバンドを倒しに行くぞっていう心意気でやってるんだけど、いわゆる激ロック、激烈なロックの爆発力はかなりすごい。お客さんがダイブしたり、ガンガン歌ってたり、バキバキにヘッドバングしたり。それを肌で感じたことのあるラッパーとそうでないラッパーでは、全然経験値が違ってくる。The BONEZとDragon Ashのライヴに遊びに行ったときも、放心状態になったし。
山田マン:ヱヰ十を観た後も放心状態になるね。音がデカいっていうのもあるけど。
西:ビックリしただけじゃないですよね(笑)?
-ミクスチャー・ロックは2組の共通項なのかも?
Mr.Q:映画"ジャッジメント・ナイト"のサントラとか、LIMP BIZKITとか、あの頃の交ざり合ったカルチャーはヤバかったよね。ギター・サウンドの中に鋭いラップが乗ってて。
山田マン:大昔になっちゃうけど、RUN-D.M.C.とAEROSMITHの「Walk This Way」も、自分の中ではつい最近に感じるくらい衝撃だったね。お互いが"うるせぇな、この野郎!"とか言って壁をぶち壊して、そのままセッションしちゃうっていうPVも大好きだった。今回の俺たちのコラボもそういうイメージだよね。
YYU-KING:そういう意味では、自分はLil Wayneがカッコいいと思いますね。今もバンドでライヴをやったり、ギター弾いたりしてて。
山田マン:Lil Wayneはもうちょっとギターを練習してほしいよね(笑)。
西:ヒップホップのラップとミクスチャーのラップって別物だと思ってたんですけど、最近はその距離が段々近付いている気がします。ラッパーらしいラップをするバンドが増えているような。だからミクスチャーはこれからもっと盛り上がると思いますね。
-シーンもキャリアも異なる2組ですが、それぞれシンパシーを感じる部分はありますか?
西:お酒が好きなところですかね?
山田マン:あとは、一言で言うと全力でやってるところ。
Mr.Q:音楽を続けていくのは本当に大変なんだけど、それを好きでやってるっていうのは共感できるところですね。
山田マン:だから、タイヘンじゃなくてヘンタイだよね。
Mr.Q:で、このスタイルなのに一応モテようともしてるんですよね。カッコつけてモテていくっていうのは、この世界で重要なことだと思うんですよ。そういうところがかわいいやつらですよね。この髪の立て方も......。
西:スプレーが切れちゃって前髪を立てられなかったんですよ。いくら振っても出てこなくて。
-そこに共感するということは、お2人にもまだまだモテようという思いが?
Mr.Q:むしろそのためにしか生きてないね。
山田マン:俺は全くない。仲間と一緒に音楽をやる以外、ハッキリ言ってなんの興味もないし、儲かっても全部どっかに寄付するつもりだし。
-意見が割れましたが......。
Mr.Q:俺が言ってるモテるっていうのは、別に女性からだけじゃなくてさ。
西:人間として?
Mr.Q:そうそう。野郎たちに"ウォー!"と言わせるのもモテるってことだから。理屈じゃないんだけど、ラッパーでもバンドでも、ステージでカッコ良かったらイケメンじゃなくても自然にモテていくよね。
西:たしかにライヴを観てて一目惚れする瞬間ってありますよね。
