INTERVIEW
Uz:ME
2024.12.13UPDATE
2024年12月号掲載
Member:田中 理恵(Vo) Patrik Leonheart(Gt) Simon Andante(Gt)
Interviewer:杉江 由紀
「PSYOP」のJasonさんは"FFXIV"のオフィシャル・バンド、THE PRIMALSでもゲスト・ヴォーカリストとして歌ってる方です
-恐らく、ここではその暗さが美しさを醸し出すファクターにもなっていますよね。
田中:それはほんとにそうですね。音楽としてはとても美しいなと私も思います。曲として完成したときには、この歌詞がすごく光ってくるなと感じました。
Simon:Majestic!
Patrik:あー、それだ。
田中:うん、言葉としてはMajesticが一番「無常」を表してるかもしれないです。
-4曲目の「i don't know myself when i'm with you」も、PatrikさんとSimonさんのお2人で作られたそうですが、こちらは作詞者としてもお2人の名前がクレジットされております。この曲の成り立ちはどのようなものだったのでしょうか。
Patrik:この曲はSimonがメインで作った曲ですね。
Simon:もう4年とか5年前? Uz:MEの始動前からあった曲なんですよ。
Patrik:今回のミニ・アルバムを作ることになったとき、俺が"あの曲めっちゃいいから、今回入れようよ。あのままにしとくのもったいないよ"って言ったんです。で、少しアレンジして重さも出しつつ今のUz:ME風にリメイクしたんですよ。
Simon:今回のこのかたちになって、曲としてはすごく良くなったと思います。サビはあえて歌詞を入れずにヴォーカルのサンプルが流れてるだけの構成になってて、それは今までのUz:MEからしたら斬新なことでもあるんですけど、そこが新鮮だなと感じてますね。
-また4曲目という位置でこの曲が果たしている役割が大きいですよね。クライマックスを前にした、嵐の前の静けさを感じさせるところがあるというか。
Patrik:俺もSimonも、曲順ってすごくこだわる方なんです。これも絶対4曲目じゃないとダメだよねっていうことを、作っているときに2人で話してました。ライヴ向けな「ELPIS」と「CHECKMATE」で盛り上がった後だからこそ、最後の曲の前にはちょっと落ち着いてクール・ダウンする場面が必要だったんです。
-ちなみに、「i don't know myself when i'm with you」は全編英語詞となりますが、その点について理恵さんはどのようにこの曲と向き合われたのでしょうか。
田中:Uz:MEで100パーセント英語詞なんて初めてだし、最初はこんなの歌えないな......って思ったんですよ。それで、今回は2人に、発音やニュアンスをレクチャーしてもらいながらレコーディングしていったんです。まぁ、実際に歌ってみたらテンポも速くないし、リフレインするところも多いので、そこまで難しくなかったからそこは良かったですね。
Simon:なるべく理恵さんが歌いやすいように、日本人のファンの方たちが分かりやすいようにと考えて、僕はできるだけ難しくないよう意識しながら歌詞を書きました。
田中:そういう心遣い、ほんとにありがたいです。これもライヴでどう歌うかで。できるだけお客さんたちに、リラックスして気持ち良く聴いていただけるように歌えたらいいなと思ってますね。あとは英語を間違わないように気を付けます!
-さて。今作のラストを飾る5曲目が、これまたUz:MEとしては初の試みがなされた、「PSYOP (feat. Jason Charles Miller)」となりますが、このコラボはいかにして実現したものだったのですか?
Patrik:Jasonさんは自分でもGODHEADというバンドをやってる方なんですけど、ゲームの"ファイナルファンタジーXIV"のオフィシャル・バンド、THE PRIMALSでも、たまにゲスト・ヴォーカリストとして歌ってる方で、日本でのライヴにも出たことがある方なんですよ。で、田中さんも"FFXIV(ファイナルファンタジーXIV)"には声優として出演しているんですね。その繋がりから知り合ったというか、もう詳しい経緯はあんまりちゃんと覚えていないんですけど(笑)、誰かの紹介で田中さんと一緒に彼の出てたライヴに行って、そこから仲良くなったのがもう数年前だった気がします。
田中:Jasonさんって、海外では声優さんもやってらっしゃるんですよ。
Patrik:しかも、GODHEADは、Marilyn Mansonの作ったPosthuman Recordsからリリースもしてるバンドなんですよ。で、そのJasonさんと"いつか一緒に何かやりたいね"という話は前からしていて、それが今回やっと実現したかたちですね。ただ、もともとはそのために全く別の曲を用意していたんですけど、途中でミニ・アルバムの内容とか流れを考えたら"この曲じゃないな"となって、急いで作った真新しい曲が「PSYOP (feat. Jason Charles Miller)」です。Jasonさんと田中さんの個性がそれぞれにより引き立つような曲という部分を意識しながら、なんとか1週間くらいで作りました。
-キーも声質も全く異なるお2人の声をバランス良く混在させる曲作りというのは、なかなかに難しそうです。
Patrik:Jasonさんにはカントリー歌手としての一面もあるし、声優としては低い声が有名だったりもするから、まずその2つの要素は必ず入れたかったですね。同時に、田中さんのクリアで高い声っていうのはやっぱりUz:MEの大きな特徴でもあるので、そこを上手くコラボさせていくように考えました。当初は時間もないし、さっき言ってたもともとあった曲でなんとかするしかないかなと諦めかけてたんですが、Simonが"大丈夫、俺に任せて。なんとか明日までにベースとなる部分を作ってくるよ"と言って、ほんとに次の日には曲の半分くらいまで作ってきてくれたんです。で、そこからまた僕がアレンジしながら作っていって、最後は2人で仕上げたんですよ。
Simon:ギリギリセーフだったね(笑)。
田中:私は曲を貰ったのがレコーディングの2日前でしたもん。いやー、あれには痺れました。私的には全然間に合ってない! ってブチ切れ寸前でしたよ(笑)。だって、本業は声優ですから。歌手じゃないんで、ちゃんとレコーディング前にしっかり練習する時間が欲しいよ! って言ってあったんですけどねぇ。
Patrik&Simon:すいません!
田中:もちろん、より良いものを作るためにって頑張ってるのは知ってたから、彼等も大変そうだなとは思ってましたし、結果的には素晴らしい曲になったと思うんでいいんですけど、とりあえずめちゃくちゃ痺れました。そして、"音楽の世界ってそういうものなんだな"ってことも、今回のミニ・アルバムを作っていくなかで理解し始めましたね。最低でも1週間前には台本があって、リハーサルVが3日くらい前にはいただける声優の世界とは、音楽の世界って全然違うんだなということがだんだん分かってきました。
Simon:この「PSYOP (feat. Jason Charles Miller)」は、英語の詞をどうするかっていう面でも時間がないなかでずっと悩んじゃってたんです。だから、理恵さんに迷惑を掛けることになっちゃいました。
-"PSYOP"とは日本語で心理戦のことを指すようですが、この詞の内容はリアルな現実ともかなりオーバーラップしているように感じます。
Simon:最近は特にそういう感じがしますよね。
Patrik:正式にはサイコロジカル・オペレーションと言われてるもので、様々なプロパガンダとか、メディアを使った洗脳とかも含めて"PSYOP"って呼ぶんですけど、別に僕等はここで何が悪いとか、どっちがどうとか言うつもりはないんです。
Simon:でも、この曲を受け取ってくれた人たちが、それぞれ自分で何かを考えるようなきっかけになってくれたらいいなとは思ってます。
-そうしたところも鑑みますと、この曲では理恵さんも、伝える側としての重要なミッションを遂行していく必要があったのではありませんか。
田中:それ以前に、この曲はそもそも今まで私が歌った曲の中で一番キーが高かったんですよ。まずはそこをクリアするのが大変でした。
Patrik&Simon:すいません......。
田中:それこそ"伝えるべきところ"が特に高かったんで、苦しみながらもなんとか歌い切ったというレコーディングでしたね(苦笑)。そして、私の後に歌入れをしたJasonさんも結構苦しんだらしいですよ。でも、あがってきた歌を聴いたら"さすが!"ってなりました。Jasonさん、すごい人だなって改めて感じましたね。
-理恵さんのハイトーンでクリアな歌と、Jasonさんの重厚な歌とヴォイシングにより、この曲は大変ドラマチックなものに仕上がりましたね。
田中:アルバム・タイトルの"SPEKTRA"にもぴったりな曲になったと思います。
Patrik:"SPEKTRA"っていうのは、英語で言うとSpectraのことなんですよ。例えば、太陽の光をプリズムに通すといろんな色に分かれるじゃないですか。Uz:MEもそれと同じでいろんな色を持っているんだよ、ということを伝えたくてこのタイトルを付けました。そして、"SPEKTRA"というスペルになってるのは俺とSimonがスウェーデン人だからですね。スウェーデン語での表記がこれなんです。
田中:へー、そうだったんだ! それは今知りました(笑)。
-ところで。今後もライヴが決定していらっしゃいますけれど、Uz:MEとしては今のところどのようなステージを作っていきたいとお考えですか。
Simon:まずはこれまでずっとライヴをやりたいと思っていたので、ようやくそれが実現するのが嬉しいですね。『SPEKTRA』が完成したことで曲数も増えたし、今回はライヴ向けな曲も入れられたので、これからはもっとたくさんライヴをやっていきたいと思っています。
Patrik:個人的には、激しいライヴにしていきたいです。恐らく、俺とSimonが前にスウェーデンでやっていたバンド(BATAAR)からファンでいてくれてる人たちは、ヘドバンしてくれると思いますしね。ただ、田中さんのファンの人たちはどうなんだろう? ノリ方とか分かんないですかね?
田中:ライヴに向けては"みんな頭振ってね!"って言ってるので、アニメ・ファンの人たちはきっと勉強してきてくれると思います。
Patrik:もしあんまり分かんなくても、Uz:MEがライヴの現場でみんなに教えるから大丈夫(笑)。
Simon:みんな、素直な自分になればいいだけです。
田中:結果的にみんなが"楽しかったな"って感じられるライヴにしたいですね。
-場合によっては、理恵さんの"煽り"も拝見できたりして?
田中:私、それやったことないんですよ。たぶん、そのへんは2人がしっかりやってくれるんじゃないでしょうか? 私も憧れはあるんですけど、できるのかなぁ。とりあえず、転がし(ステージの方向を向いている返しスピーカー)のところに足を上げながら歌うところからやっていこうと思います(笑)。