INTERVIEW
甘い断頭台
2024.12.27UPDATE
2025年01月号掲載
Member:Minami Maria(Vo) Yuria(Gt) Hitomi(Gt) Hiko(Ba) Louis(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
激動のフランス革命時代に、ギロチンの露と消えたはずの乙女たちが......なんと、現代日本へと輪廻転生。しかも、ここに"甘い断頭台"と名乗り、ガールズ・メタル・バンドとしての活動を展開しているというのだから、摩訶不思議なのである。このたび発表される1stフル・アルバム『Memoire Rouge』も彼女たちの前世をモチーフとしたものに仕上がっているのだが、ワケあって彼女たちの記憶は未だ断片的であるらしい。どうやら、運命の車輪はここから大きく回り出していくことになるようだ。
首を斬られる激しい運命と直面しながらも、こうして現代日本に甦ることができた
-このたび1stフル・アルバム『Memoire Rouge』を完成させた甘い断頭台は、なんでも中世フランスに繋がる"背景"というものをお持ちなのだそうですね。
Maria:私たち、全員がフランス革命時代に斬首された者たちなんです。それぞれ現代の日本に甦り、今こうしてガールズ・メタル・バンドを一緒に組んでおります。
-発起人となられたのはフロントマンでありリーダーでもあるMariaさんだったそうですが、この5人が結集することになった経緯はどのようなものだったのでしょうか。
Maria:そこはとても現代的な集め方をしたんですよ。SNSを通じて直感的に"これは感じるものがあるな"と思った方たちに向けて、私からダイレクト・メッセージを送らせてもらいました。
-そのメッセージがどのような内容だったかを教えていただくことはできますか?
Louis:最初は面識も何もない状態でDMが来まして、文面的には、これこれこういうコンセプトのガールズ・メタル・バンドをやりたいと思っていますと書いてありました。あと、私はSNSやYouTubeに演奏動画を載せていたので、それを観て"ぜひ一緒にバンドをやりたいと思い、声を掛けさせていただきました"というふうにも書いてありましたね。そして、その段階ですでに甘い断頭台としてのデモ音源というのもできていたので、それもMariaから送ってもらいました。
-デモ音源というのは......?
Maria:1stシングルの「exe♡cute」と「執刀ルネサンス」(2023年リリース)の2曲です。この2曲をデモ音源として送りました。私が両曲とも作詞し、作曲に関しては私がもう1つ別にやっているバンド、ALICETOPIAのギタリストであるIchiの力も借りました。
Yuria:私の場合もMariaから突然メッセージが来て、そのデモ音源を聴かせてもらって参加をすることを決めたという流れだったんですよ。自分もちょうどメタル・バンドを新規で立ち上げたいと思っていたところだったので、タイミングがすごく良かったですね。それに、私はMariaの声や歌がとても好きですし、貰ったデモもしっかりメタルだなという印象があったので、一緒にバンドをやれるのは自分にとってすごく理想的な状況だなと感じました。ちなみに、私が入ったときにはすでにLouisとHikoが参加していたんですけれども、お二方のSNSやYouTubeを拝見したときにも演奏力の高さや、文章力、お人柄等......そういったところも"これは長くバンド活動を続けていけそうだな"と感じた大きなポイントでした。
Hitomi:その点、私はみんなとちょっとだけ加入の経緯が違ったんですよね。甘い断頭台が始動したときは正規ではなくサポート・メンバーとしてツイン・ギターのサポートをさせていただき、始動から半年が経ったタイミングで私のほうから"正式なかたちで一緒に活動していきたいです"と申し出ました。
-なるほど。ちなみに、LouisさんとHikoさんはどちらが先に参加されていたのです?
Maria:Hikoが最初に決まったメンバーでした。
Hiko:私もLouisやYuriaと同じく、Mariaから突然ダイレクト・メッセージでお誘いがありました。バンドとして表現したいもののヴィジョンがしっかりしていることはもちろん、音楽的にもデモ音源を聴いて一緒にやりたいと思いましたし、私もYuriaと同じく、Mariaの声がとてもいいなと感じたんです。
-かくして、甘い断頭台は2023年春に始動して以来ここまで活動を展開してこられてきたわけですが、音楽性の面では、ドラマチックにしてクラシカルなヘヴィ・メタルを主軸とされている印象があります。これはやはり、"全員がフランス革命時代に斬首された者たち"であるという背景を踏まえると、中世時代を彷彿とさせるクラシカルな要素が、重要なものになってくるということなのでしょうか。
Maria:はい、そういうことなんです。何しろ、私たちはいろいろなことがあって首を斬られる激しい運命と直面しながらも、こうして現代日本に甦ることができたわけなので、やはりそんな自分たちが表現したい音やすべき音はヘヴィ・メタルだと感じていましたし、実際にやってみるとこれしかないと思ったのですよ。
-ちなみに、これだけ世界観が確立されているとなると、甘い断頭台はライヴ活動の面でも独自の手法を展開されていそうですよね。
Maria:まず、甘い断頭台ではライヴのことを"処刑執行"と言っています。
Yuria:そして、お客さんたちの名称は"甘党"です。
Hitomi:甘党の方々はそこまで激しく暴れるというよりは、わりとシャイな人たちが多いかもしれないですね。でも、みんなそれぞれに拳を上げたり、曲によってはタオルを振り回したりしながら自由に楽しんでくれてます。
Louis:ライヴそのものとか、私たちのステージング自体に関しては"アグレッシヴだね"って言われることが多いです(笑)。
-なるほど。では、ここでもう少し甘い断頭台というバンドに対しての理解度を上げるために、楽器隊各人のキャラクターや役割についてもう少しお話を伺えますと幸いです。Mariaさんが首謀者でありヴォーカリストでありリーダーだとすると、例えばHitomiさんはどのようなポジションにあたるのでしょうか?
Hitomi:私はギターの他に歌も得意なのと、新メンバーとして新しい風を吹かせたいというところでコーラスを積極的にやってますね。レコーディングでは、いわゆるクワイア的な合唱パートも曲によっては私が頑張って重ねながら録ってます。
-一方で、Yuriaさんはギター以外にデスボが得意でいらっしゃるそうですが、甘い断頭台の場合、ツイン・ギターの割り振りはどのように決められることが多いのですか。
Yuria:基本的に、今はだいたいリード・パートが同じくらいになるようにアレンジすることが多いです。どっちがリード・ギターで、どっちがリズム・ギターという分担は特に決めずに、ツイン・リードといったかたちでやってます。
Hitomi:だから、このアルバムに関しては1曲の中に2人それぞれの魅せ場が入ってますね。
Yuria:Hitomiが加入する前からあった曲に関しても、2人で弾くようになってからはお互いに話し合いをしながらリアレンジをしていきました。
-ドラマーであるLouisさんは、ライヴの場で皆さんを後ろから見守っている立場ではないかと思いますが、ご自身がこのバンドで担っている役割とは、どのようなものだと自覚されていらっしゃるのでしょう。
Louis:私はドラム以外の部分だと、デザイン関係の仕事を担当してるんですよ。今回のアルバム『Memoire Rouge』については、ジャケットは絵師さんにお願いしているんですが、歌詞カードは私が作りました。あとはTシャツとかフライヤーとかもいろいろ作ってます。
-バンド内でそこを賄えるのはとても心強いですね。それから、Hikoさんのバンド内におけるポジションもしくは役割についてもぜひ伺わせてください。
Hiko:私は音楽的な面で主にオーケストラ部分を担当しています。甘い断頭台の曲にはシンフォニック・メタルの要素を持ったものが多いので、そのオーケストラ部分を打ち込んでいます。
-となると、Hikoさんはそもそも音楽の勉強をきちんとされている方なのですね?
Hiko:学生時代に小規模なオーケストラでの活動をしていたことがあります。ミュージカルのオーケストラだったんですけど、作曲や編曲を担当したり、指揮棒を振ったりしておりました。
-もともとロックよりもクラシックのほうがたしなまれるのは先だったとか?
Hiko:親がクラシック好きで、姉と妹もピアノをやっていたので、環境的にはクラッシックに耳が慣れていたというのはあったと思います。
-そんなHikoさんが、のちにメタルに興味を持つことになられたとは面白いですね。
Hiko:メタルも大好きだったんです。音楽はその他にもいろいろ聴くんですけど、メタルもメロディのきれいなものが私は好きですね。
-そういった意味では、甘い断頭台のサウンドも相当にメロディの美しさを重視していると言えそうです。せっかくですので、ここからは、1stフル・アルバム『Memoire Rouge』の内容についても伺ってまいりましょう。今作では各メンバーが作曲のみならず作詞も手掛けられているようですが、このスタンスは始動当初からだったのですか?
Maria:そこは自然とこうなってきた感じですね。
Louis:みんながスキルを持ってたのと同時に、誰に言われるでもなく、このバンドに対して曲を作りたいっていう気持ちになっていった結果だと思います。
Yuria:本当に最初の頃に「不滅の花」のデモ曲をみんなに送ってみたら"いいね"って言っていただけて。それ以来こういう今のスタンスになってるんですよ。
-なお、今作の1曲目となる壮大なSE「-The Ceremony of Decapitation-」は、Hikoさんによる力作です。プロローグとしてこれはきっと必要なものだったのでしょうね。
Hiko:これはライヴで私たちが登場するときに流すSEとして想定しながら作ったもので、断頭台への改段を上がり、まさに今首を落とされるといった物語の始まりを告げるような曲として構成も考えていきました。