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INTERVIEW

été

2024.09.11UPDATE

2024年09月号掲載

été

Member:オキタユウキ(Vo/Gt) ヤマダナオト(Ba) 小室 響(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

EP『IUTORA』から約3年ぶりとなるニューEP『NRN.』をリリースするété。ギター・ヴォーカル、ベース、ドラムというシンプルな3ピースで、詩的でありながら鮮やかで想像的な映像世界にも似たエクスペリメンタルなサウンドを奏でていたétéだが、近年はより内なる感情を解き放ちながら、ますます先鋭的且つポップに、独自の進化を遂げている。EP『NRN.』では、ヘヴィ・ミュージックを基調にトラップ、ヒップホップ、ブレイクビーツ等の要素が組み込まれ、複雑で刺激的で、カオティックながらキャッチーさもある音色に、饒舌なフロウが冴える。そのサウンドはあらゆる情報が氾濫し、混沌とした社会や今そのもののようにも聞こえる。そこに身を浸しながら、何を思うのか。そんな問い掛けが形となったような作品だ。


許すことは気高い行為ではあるけれど 怒りを抱え続ける茨の道にも、気高さや凄みがあるんじゃないか


-EP『NRN.』はEP『IUTORA』(2021年リリース)から約3年ぶりとなりますが、制作としてはどんな感じでスタートしていったんですか。

オキタ:曲自体は結構まちまちで、2021年頃にできていた曲もありますし。

ヤマダ:レコーディングも結構前からだったからね、2年くらい前からレコーディングを始めていたので。

オキタ:「Fixed」という曲だけは、もともと僕のソロの曲として作ったものだったんです。その後、ライヴが決まっている状況で僕が指をケガしてギターを弾けなくなったことがあって、じゃあギターを弾かなくてもいいセットリストにしてしまおうと「Fixed」を組み込んだら、意外とバンドにも馴染みが良くてライヴ映えもしたので、今作に入れちゃおうかという感じでした。

-コロナ禍の時期もありましたが、この3年はバンドにとってどういう時間だったと思いますか。

オキタ:どうでしょうね? 特に変わらずなんです(笑)。

ヤマダ:ライヴをやりつつ、曲を作りつつという時間で。

オキタ:そういう点でのストレスみたいなものも、あまりなかったかなという感じでしたね。

-何か一まとまりとなる作品を出さなきゃという焦りもなく?

オキタ:そうですね。結構早い段階で「Viscous」、「Faithlessness」の2曲はレコーディングまで終わっていたんですけど、その時点では何か一まとまりの作品にしようという焦りや意図みたいなものはありませんでした。

-今回はより緻密で複雑なサウンドだなと思います。前作はバンド・サウンドによるフィジカルさが出ていたと感じますが、今回は打ち込み、エレクトロのアプローチも組み込まれた構築性の高いものになっていて。

オキタ:以前インタビューをしていただいた2ndミニ・アルバム『Burden』(2018年リリース/Skream! 2018年12月号掲載)とか1stフル・アルバム『Apathy』(2019年リリース/Skream! 2019年4月号掲載)とかはバンドっていう感じでしたね。もともとどんなジャンルの音楽も聴くし、好きではあるんですけど、シンプルにコロナ禍の期間で僕がトラックを作るのが上手くなったというか(笑)。ソロの曲も作っていましたし、作曲/編曲みたいなところのスキルが付いたのは大きいかなと思います。やれることがめちゃめちゃ増えたし、詰められるところを詰めるだけのテクニックが付いたというか。その分、みんなが大変そうというのはあるんですけど(笑)。

-デモの完成度も上がっているからこそヤマダさん、小室さんのリズム隊が、そこをどう解釈して、人力でやっていくか等はたしかに大変そうです(笑)。

ヤマダ:デモ段階で"もうこれでいいじゃん"っていうクオリティのものが来るので、そこから自分がやる意味を見いださなきゃいけないという部分が大変ですね。1曲の中でもいろんなジャンルが混じり合っているから、引き出しを増やしまくらないといけないっていう大変さもあるし。

小室:この一瞬のために、このジャンルを聴くとかもあるしね(笑)。

ヤマダ:あるある。一瞬のために、長時間の研究が必要になってる。

オキタ:2人はそれをやってくれるからすごく頼もしいんです。いい感じにしてくれるだろうし、絶対にデモ以上のものになって返って来るのが分かるので。大変そうだけど、心配はしてないかな。

-étéとしてはジャンル等に縛られず、自由な発想のもとでやっていこうという思いが強いですか。

オキタ:アレンジの根本としてはヘヴィ・ミュージックだったりが中心にあるんですけど、何をやっても"étéっぽいね"と言われるので。最初の頃もそのétéっぽさはあったんですけど、ちょっと探り探りというか。まだ追いついてなかったのかな、スキルもそうだし。

ヤマダ:最初の頃はとりあえず作りまくらなきゃっていう時期でもあったしね。

オキタ:今のほうが、これは僕らの音楽だなみたいなことは強く感じます。特に前作『IUTORA』あたりからその感じがすごく強いかなと思う。

-歌詞、フロウにしてもそのスタイルができてきた感じがあります。しかも歌詞の量を見るたびにびっくりするというか、これをこの複雑なリズムやスピード、サウンドに乗せてやっていて。リスナーの頭の中がカオス状態になるような、膨大な情報量が詰まった音楽になっている。そこから何を拾うか、何に引っ掛かるのかっていう音楽にもなっているなと思います。

オキタ:もともと僕らは足し算の音楽としてやってきて。歌詞や僕らの演奏、アレンジ、曲の構成を含めて全部が面白いっていうのが、一番いいなって思うんです。歌詞に関しては、僕は歌詞だけを読んでも面白みがあるものが一番だと考えているので。そういう意味では全部詰め込んで、そこから何を感じ取ってもらうかはリスナー次第だし。その分、何回聴いても違った楽しみができるのかなと思うんです。

-どの曲もそれぞれに熱量が高い曲ですが、今回のEPとして中心になるようなものができたなというのは、どの曲でしたか。

オキタ:最初にレコーディングしたのが「Viscous」と「Faithlessness」で。初めは、それぞれにシングル・カットしてもいいなという感じで進めていったんですけど、スケジュールのずれとかもあって、じゃあEPとして出そうという話になったのが昨年あたりでした。「NRN.」もその頃にできていて。ただ、これをEPで出すならもう1曲こういう曲が必要かもしれないと思って、それで書いたのが「おまえをゆるさない」だったんです。わりとこの曲が入ったことでEPの方向性が定まった感覚がありました。

-それぞれの曲で歌詞のテーマ等はあると思うんですが、作品を通してとにかく沸々と湧き上がっている思いが描かれています。自分ではどういうムードが、歌詞への背景になったと思いますか。

オキタ:そうですね。2022年の頭にウクライナ侵攻が始まって、そこから最低の気持ちになったし、嫌になってしまったというか。他にもどんどんいろんなことが世界中で起きていて、それに伴って人々もそうだし、目に触れる範囲だとインターネットとかもよりグロテスクなものになっていっているのを感じて。そのなかで、自分がどういうスタンスで生きていくのか、どんなスタンスで物事を見て何かを感じるかっていうのに、1本芯がないといけないとずっと思っていたんです。ああしろ、こうしろということではなくて、曲の中では、僕はこう考えているっていうのを伝える立場でいたいなというのはあります。

-情報を取捨選択したり、自分でどれが正義かを見極めていくのも大事であるし、でもこの状況にどこかちょっと諦めも入っているような感覚も滲んでいますね。

オキタ:そうですね、でも何事にも慣れてはいけないなと思っていて。どんな不条理でも、他者の痛み、自分自身の痛みにも、鈍感になってはいけないって。ただそうすることってとても疲れるというか、エネルギーがいることで。なので、許してしまうっていうのがあると思うんです。自分には関係ないことだと切り離したり、別にいいかなみたいな達観したスタンスだったり。それはかっこいいことではないと考えているんです。2曲目が"おまえをゆるさない"というタイトルなんですけど、許すっていう言葉ってすごく美徳として捉えられていて。実際に気高い行為ではあると思うんですけど。もしその気高さがあるんだとしたら、許さないということを選択する、ある種怒りを抱え続ける茨の道ということにも、気高さや凄みっていうのもあるんじゃないかなと。僕は、トピックにもよりますけど、そういうスタンスでいることもいいんじゃないのかなって思いましたね。

-エネルギーがいるって言いましたが、思考だけでなく、さらに言葉としてアウトプットして、音楽で構築していくって相当なエネルギーが必要ですよね。

オキタ:確かに歌詞を書くのは大変ですね。でも面白いし。曲もそうですけど、やりたくてやっていることなので、それはそれとして。ただ一番気を使うのが、僕は誤解を生みたくないというか。自分自身がこう思っているっていうことをアウトプットする以上、"そんなことは言ってないのに"って捉え方をされたくないので。ひらがな1文字にしても、間違ったイメージとか、"こうとも捉えられてしまうかもしれない"みたいなことにはかなり気を使って歌詞を書いていくので、そこで時間がかかるかなっていう。

-2人はその曲に込められたエネルギーも感じながら、アレンジであったり、プレイに活かしていくというのはあるんですか。

ヤマダ:僕らが演奏する段階ではまだ歌詞がないので、その曲そのものにエネルギーを感じて、このセクションは今こういう状態だから、こういうのが必要だなっていうのは考えたりしますね。

小室:僕は結構引いた感じで作っているところはあるかもしれない。ヤマダのベースが結構歌う感じの箇所もあるけど、ドラムはそういう感じではなく。

オキタ:隙間に打ち込んでいくみたいなイメージだよね。2人のアレンジができあがって、スタジオでそれに合わせながら、ここのキメはベースに合わせたほうがいいねとか、逆にドラムがこうだからそのベースじゃないほうがいいねとか、そういう作業もしっかりやっている感じです。

-緻密なサウンドになっているけど、データでのやりとりでデスクトップ上で作り上げていくのでなく、最終的にはスタジオでバンドで作り上げていくんですね。

オキタ:僕があまりデータでのやりとりが好きじゃないんですよね、時間もかかるし。あとはやっぱり、スタジオでのほうが伝えやすいですし。2人の送ってくれたデモ上ではいい感じだったものが、実際に叩いてみると印象が違うこともあったり、逆にデモ時点ではよく分からなかったけど、叩いてもらったらこっちのほうがいいねとか。そういう意味でも仕上げではそういうプロセスを挟むことが多いですね。

ヤマダ:"バンド"だからね。あとは、ライヴも想定してやっているので。

-先程名前が出ましたが、タイトルが並んだ中で"おまえをゆるさない"というタイトルが目に飛び込んできたときはびっくりする感じがあったというか、ひらがなで書かれたことで、より怖さも感じるところもあったんですが。この曲はどんなふうにできていったんですか。

ヤマダ:僕らも仮タイトルだと思っていたから、これ採用されてるんだって思いましたけどね(笑)。

オキタ:もともと、この"おまえをゆるさない"っていうサビのフレーズとメロディがあって。それがベースにあったので、タイトルは決まっていたんです。常々、さっき言ったようなことは感じていたので、こういう言葉が出てきたのかなって思うんですけど。そこから曲を作っていって。ちょっとある種リード曲みたいなものを作りたいなと思っていたので、そういう狙いはありながら曲は作ったんですけど、歌詞を書いたときに想像以上に濃くなったなというか。