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INTERVIEW

été

2024.09.11UPDATE

2024年09月号掲載

été

Member:オキタユウキ(Vo/Gt) ヤマダナオト(Ba) 小室 響(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

-サウンド的にはDjentっぽい面白さやノリがあって、メロディがスッと入ってくる感じがあるんですけど、だからこそこの"おまえをゆるさない"って言葉がぽんと飛び込んできたときに、重みというかインパクトがあります。

オキタ:曲としてはDjentと、ポップス的な形もあって、前作『IUTORA』で書いた「言ゥ虎pia (feat.オキタユウキ)」の方向性にも近いのかな。アフロビートのセクションが入ってたり遊びを入れているんですけど。歌詞としては怒りについてではあるんですが、比喩表現だったり、押韻でかなり聴き心地をよくしたというか。なのでこれもするっと聴いて、歌詞を読んで、また聴いてみてほしいですね。

-いろんなジャンルのテイストやモチーフは、普段音楽を聴きながら"これはいつか使ってみたいな"っていうのでストックしておくんですか。

オキタ:ジャンルとかはあまり絞らずになんでも聴くんですけど、僕はYouTubeのサジェストで海外のアーティストをハシゴしていくことが多いですね。だいたいMVが付いているので、ビデオと一緒に受ける印象って曲だけを聴いたときと違うなというのがあって。UKドリルだったら、団地で車でクルーがいてみたいな、どういうふうにその音楽が生まれたのかという文脈込みで入ってくるのもあるので、これいいなとか、アレンジとして今のところ面白かったなとか、そういうのでアイディアを取っておくというということはやりますね。

-そのオキタさんのアイディアだったり、聴いている曲は2人にもシェアするんですか。

オキタ:最終的に楽曲が仕上がって、根幹的な全体のモチーフ、空気感が伝わりやすい曲で、2人のルーツにはなさそうな曲であったら、このセクションはこういう曲のこういうところを、こういう理由で入れてるよっていうのは、アレンジ段階でシェアしていますね。

ヤマダ:意図が分かっていないと、あべこべなものを出してしまったりして、その分時間のロスにもなるので。言ってもらえるのはスムーズになっていいですね。

小室:特に打ち込みの曲ではリファレンスが多いんですけど、僕の場合は生でどうやって叩こうかっていうのを考えつつ、逆にそこまで細かく聴いてないかもしれない。それになりすぎないように、且つ曲に合うドラムを考えているので。

オキタ:そうだね。その上で、今生ドラムを入れてもらったけど、ここは打ち込みにしちゃおうとか。逆に手だけ生にして、キックは打ち込みでやっちゃおうとか。そういうのは多いかもね。

-アレンジがどんどんテクニカルに、クリエイティヴになっていて、情報量もたっぷりなんですが、ただ実験的で違和感があるだけではない、音楽的な心地よさっていうものがありますよね。そのバランスは考えますか。

オキタ:やっぱりアレンジ段階では実験的だったものも、最終的にパッケージングするときにはある程度ポップにというか、聴きやすいというのは絶対に必要だなと思っていて。そこのバランスですよね。トータルで言ったら聴きやすくはないんでしょうけど(笑)。

ヤマダ:(笑)そのための努力はしてるよね。

オキタ:そう。さっき話したようなアレンジのこだわりは、僕のこだわりでしかないので。僕はそれができあがったら満足はしてるから。それを聴いてくれっていうよりは、できあがったこの楽曲を聴いてくれっていう感じなんです。

-これは構築していくのが大変だったな、というのはありますか。

小室:「Faithlessness」がフレーズを作るのに一番時間がかかったかもしれない。これはなるべく3点、キックとスネアとハットだけで行きたかったので、結構キツかったですね。別にそんなことしなくていいんだけど(笑)。

オキタ:この曲はブレイクビーツなんですけど、生のドラムを抜いてもかなりビートが入っていて。キックとパーカッションとか、その隙間にドラムを入れ込んでいく感じだったんですよね。アクセントをどこに置くのかとかが大変だったんじゃないかな。

小室:そう。ベースとなるビートはあるから、ドラムはずっと同じことしなくていいから自由っちゃ自由なんだけど、それが逆に大変で。

オキタ:ずっとフィルを入れていくのだとまたグルーヴが出ないから、ちょっとアーメン・ブレイクっぽいリズムとかも大変だった曲かも。

ヤマダ:僕もフレーズを考えるっていうことで大変だったのは「Faithlessness」かも。デモを聴いたときに、ずっとフレーズを動かしていく曲だなと思えたので。フレーズのパターンをたくさん考えて、そこから切り貼りしたりとか、一番時間がかかったかな。

小室:演奏が大変だったのは「おまえをゆるさない」だけどね。

ヤマダ:あれも無限に時間がかかったよね、レコーディングが。

小室:今も終わってない気分(笑)。

-「Faithlessness」でもそうですが、étéのラップとかフロウって独特ですよね。最初の頃はもう少し語るという印象が強かったと思うんですけど、よりラップ的なノリが生まれてきて──とはいえただラップというのともまた違う、独特のスタイルになっているように思います。

オキタ:僕の声のトーンもあるかもしれないですね。ラッパーのトーンではないというか。ヒップホップも好きなんですけど、ヒップホップをやりたいわけではないので。それもいろんなルーツとか文脈ありきで、全部を混ぜ込んで仕上げたいなというのがあるかもしれないですね。

-自分なりのノリっていうのができてきた感覚はありますか。

オキタ:ありますね。ラップのスタイル自体は2ndミニ・アルバム『Burden』の「ドルシネア」という曲あたりからあまり変わってないというか。2021年の「Gate」もそうだし。結構UKドリルが台頭してきてから跳ねるフロウというか、言葉だけでめちゃめちゃリズミカルなものが面白いと思って。日本語だとそういうのってちょっとムズいじゃないですか。

ヤマダ:そうだよね。

オキタ:じゃあどうすればリズム感が出るのかなっていうのは、結構意識しているかもしれないですね。どこで韻を踏んだら面白いのか、どこにこの文字数の言葉を入れたら気持ちがいいかなとか。最終的には内容を重視しているんですけど。それと並行して、そういうところも意識しながら書いてるかな。

-なかなかこのサウンドにこの感じのフロウを乗せてるバンドもいないですね。

ヤマダ:見たことないですよね(笑)。

オキタ:特に「Faithlessness」とかが一番そうかもしれない。いなさそうっていうか、人力ブレイクコアで(笑)。

-タイトル曲となった「NRN.」はどうですか。

オキタ:コンセプトとしてはUKドリルとポストロックの掛け算というか、そういうのはまだないなと思ったので。タイトル曲になるとは思ってなかったかもしれないですね。これもアレンジが大変だったかも。

ヤマダ:大変だった。

オキタ:これをバンドに落とし込むにあたって、2人がどこまで何をするか。そのマナーに則ったら、ベタッと打ち込みのキックが前にあって、シンベ(シンセ・ベース)が鳴っていて、そこにさらにギターを重ねていたので。それ以上バンド・サウンドに寄せるのは難しいなと思ったので、ドラムに関してはキックを打ち込みに任せて、乾いた感じのドラムを上に重ねてもらって。ベースもシンベが鳴っていて、結構ああいう曲のベースって休符が大事というか。なのでその休符を埋めない程度で、ベースを差し込んでいくみたいな。この曲は、無限にリテイクしちゃったかもしれない(笑)。

ヤマダ:レコーディング当日もリテイクがめちゃくちゃあったよね。やっぱりこうしようとか。

-"NRN"というのは"No Response Necessary"、返信不要の略語で、「NRN.」も"返事はいらない"というフレーズで始まって、思いを綴っていく内容になっていますが、この"NRN."という言葉が作品のタイトルにもなったのは?

オキタ:EPのタイトルをどうしようかと考えたとき、各曲でかなり言いたいこと言ってるなというか、全部言いたいことを詰め込んだので(笑)。それ以上、何かタイトルを付けて別の意味を持たせてしまうとか、実はこの曲たちはこういう意図で作りましたとか、余計な意味で修飾したくなかったから、なるべく意味のないタイトルにしたいなっていうのがあって。それで"NRN."が一番近いんじゃないかなと。あとは字面も良かったですね。

-バンド名"été"もそうですが、シンメトリーにもなっていて。

オキタ:そうですね(笑)。前作で"IUTORA"っていうタイトルを付けて、あれも造語だったんですけど、あの感じがちょうど良かったんですよね。パッと見たときの印象や字面もそうだし、ちょうどいい意味のなさがあって。

-記号的でもあり、なんだろう? ってなりますしね。

オキタ:久々のリリースなので、とにかくいろんな人に届いたらいいなというか。聴く人のリアクション自体はすごく楽しみなんです。こういうタイトルにはしているんですけど、僕は別に"これを聴け、以上"というつもりはなくて。聴いた上でいろんな人の感想も見たいし、聞きたいと思っているし。ただそれ以上に踏み込んだ何か、批評だったりはいらないかなって。

-それは歌詞にも描かれます。

オキタ:そうですね。自分の感想っていうものを世にアウトプットするなかで、第三者の目を気にしていると、それは純粋な感想ではなくなってしまうというか。あらゆる批評もそうだし、最近だとSNSで発することっていろんな人に見られる前提で何かを言っているから、ちょっと意味が足されているというか、余所行きな感じがある。そういうものが僕らに向けられるのは、ちょっとノー・サンキューという感じです(笑)。