INTERVIEW
SLASH
2024.05.22UPDATE
2024年06月号掲載
Interviewer:Generic Interview 2024 Translator:内堀 文佳
Brian Johnson(AC/DC)、Billy F Gibbons(ZZ TOP)、Iggy Popら、超豪華ゲストと奏でるブルースの名曲たち
-ここからは1曲ずつについて教えてください。まずは「The Pusher Feat. Chris Robinson」。
STEPPENWOLFの素晴らしい曲で、すぐにChris Robinson(THE BLACK CROWES /Vo)が思い浮かんだよ。
-次に「Crossroads Feat. Gary Clark Jr」。
あぁ、「Crossroads」はGaryと一緒に仕事をするいい口実だったんだ(笑)。いや、もともとはRobert Johnsonの「Cross Road Blues」をやるつもりだったんだけど、もう少しアップビートにしたかったからCREAMの路線で行ったんだ。
-では「Hoochie Coochie Man Feat. Billy F. Gibbons」について。
Billy F Gibbons(ZZ TOP/Gt/Vo)は俺の長年のいい友人のひとりで、俺のギターに最も影響を与えたひとりでもあってね。Muddy Watersの曲をやりたくて何曲か候補があったんだが、最終的に「Hoochie Coochie Man」を選んで、"歌うならBillyだな"と思ったんだ。
-「Oh Well Feat. Chris Stapleton」はいかがでしょう。
それはもう少し面白い話がある。俺は今までこの曲を演奏したことがなかったんだが、1977年頃だったかに初めて聴いてから、ずっと好きな曲のひとつなんだ。いつかこの曲をやりたいと思っていたのが今回のアルバムでやっと叶ったよ。それで今まで何度か一緒にショーをしたことがあるChris Stapletonが思い浮かんで、彼のような声がこの曲に乗ったら最高だと思ったんだ。
-「Key to the Highway Feat. Dorothy」。
これはBLUES BALLの定番曲だったんだ。90年代にメンバーとクラブでジャムったりしていたときの曲で一番に思い浮かんだもので、俺たちが演奏するバージョンが好きだったんだよ。ほかの誰のものとも全然違ってね。少しアップテンポで、Freddie Kingのバージョンに近い感じで。とにかく、俺にとってBLUES BALLといえばこの曲だったんだ。
-「Awful Dream Feat. Iggy Pop」。
これはIggyが選んだんだ。唯一のシンガー自身が選んだ曲だよ。誰かからIggyがブルース・アルバムをやりたいと思っていると聞いたから、なんの曲がやりたいのか連絡したらLightnin' Hopkinsの「Awful Dream」って具体的に言うんだ。それで聴いてみたら良かったから、会って俺とIggyのふたりだけで丸椅子に座ってセッションしたんだ。クールだったよ。
-「Born Under A Bad Sign Feat. Paul Rodgers」。
「Born Under A Bad Sign」は前からやりたいとは思っていたけど、たくさんの人がやってるから少し気乗りしないところもあったんだ。でもポピュラーな曲だけど、死ぬほどやりつくされているというほどでもないし、このリフを弾くことは俺にとって大事なことだからやることにした。そしてPaulに頼むことに一切迷いはなかったね。初めて彼と仕事をしたのは彼のMuddy Watersトリビュート・アルバム(『Muddy Water Blues: A Tribute to Muddy Waters』)での「The Hunter」だったから、これが彼にぴったりだってわかっていたんだ。
-「Papa Was a Rolling Stone Feat. Demi Lovato」。
彼女はすごくいい仕事をしてくれたよ。すごく心がこもっている。彼女にこの曲のことを連絡したときに、歌詞に共感していたんだ。彼女の過去に何かこの歌詞と関連することがあったんだろうね。詳しくは聞かなかったけど、間違いなく心と魂がこもっていたよ。
-「Killing Floor feat. Brian Johnson」。
これもずっとやりたかったけどその機会がなかった曲だったから、このバージョンができて楽しかった。しかもギターを始めたときからAC/DCとAEROSMITHが好きでBrian(AC/DC/Vo)とStevenは俺にとってのヒーローだったから、この曲に参加してくれるなんて本当に光栄だったよ。
-「Living For The City Feat. Tash Neal」。
実はTashと俺はロサンゼルスのブルース系のフェスみたいなライヴに出たときに出会ったんだ。すごいアーティストがたくさん出ていて、彼もそのひとりでね。それまで会ったことも聞いたこともなかったんだけど、歌を聴いて"彼は何者なんだ?"となったんだ。それでショーのあとに会ったらすごくいいやつで。2019年に(SLASH FEAT. MYLES KENNEDY & THE)CONSPIRATORSで前回のアルバム(2018年リリースの『Living The Dream』)のツアーを回ったときにTashのバンドにオープニング・アクトをやってもらって、最高だったよ。それでこのブルース・アルバムを作ることになって、"Tashにも参加してもらおう"ということになったんだ。
-「Stormy Monday feat. Beth Hart」。
あぁ、それは実はリハーサルのテイクなんだ(笑)。俺は録っていることすら知らなかったよ。スタジオに入って、その日の最初の曲だった。メジャーの原曲を、Bethの要望でマイナーにアレンジし終えたばかりで、スタジオに彼女も到着すると歌い始めたんだ。Jeff Beckの告別式からそのまま来ていたからとても感情的になっていて、録ったのはその1テイクだけだったけど、それですべてを出し切って、歌い終わると崩れ落ちてしまった。
-最後に「Metal Chestnut」。
今回のアルバムのために書き下ろした曲だよ。プリプロダクションをほとんど終えてスタジオに入るというところでプロデューサーのMike Clinkが"オリジナル曲はあるのか?"と聞いてきたんだ。俺は"いや、それはあまり考えていなかったが、少し待ってくれ"と言ってスタジオに戻って、ちょっとしたメロディを作った。自然と直感的にできた、一発録りのような曲だよ。ブルースっぽいけどブルースではない、俺が俺らしくしてるだけだね。
-このアルバムで特に気に入っている曲はありますか?
俺はいつも"いや、特に気に入っている1曲はないな"と言うタイプなんだ(笑)。とはいえ、例えばDOROTHYが最高な歌を乗せてくれた「Key To The Highway」みたいにセンチメンタルな思い入れがある曲もある。あの曲が、今回のアルバムで一緒にやっているメンバーと繋げてくれたんだ。だけどどの曲も俺にとって個人的な意味があるよ。
-今の音楽シーンで興味を惹かれる部分はありますか?
ブルース・シーンは今活気づいていて最高だよ。ロック・シーンもそうだったら良かったんだけど(笑)、今のブルース・シーンは今後が楽しみなプレイヤーがたくさんいるんだ。たくさんの若者が自分の力でロックンロールをやっててね。レコード会社や、90年代~2000年代にあったくだらない問題から離れたところで、自分のために音楽を作っているんだよ。誰も金儲けしようとしていないし、誰も大型レコード契約を狙ってないし、誰もリムジンや女みたいな、そういう野心を持っていない。何よりも作品が最優先なんだ。ロック・シーンの復活にもこれが重要だと思うし、ロック・シーンはいつだって復活しうるはずなんだよ。まぁ、とは言ったけど最近俺が聴いているのではTHE BLACK CROWESの新作(『Happiness Bastards』)やQUEENS OF THE STONE AGEの新作(『In Times New Roman...』)なんかが良かったから、特にすごく新しい人たちというわけではないけど、新作は聴いているよ。
-今年の夏には自らブルース・フェスを開催して、ツアーを回りますね。こちらについても教えてください!
あぁ、"S.E.R.P.E.N.T Festival"だね。アメリカで7月から始まって、俺のほかにEric GalesやSamantha Fish、Christone "Kingfish" Ingram、Warren Haynesとか、いろんな人が出るフェス形式で開催するんだ。各地の野外円形劇場を回る、とても楽しいものになるはずだよ。これが成功したら毎年やるつもりで、海外での開催も考えるかもしれないね。
-今後の予定などは決まっていますか?
まずはこのフェスがあって、そのあとは次のCONSPIRATORSのアルバムを完成させて、それからGUNS N' ROSESで集まって次のアルバムをどうするか話すことになるよ。
-最後にファンにメッセージをひと言お願いします。
(笑)やぁ、SLASHだよ。俺の新しいカバー・アルバム『Orgy Of The Damned』のプロモーションをしているんだ。きっと気に入ってくれると思うから、楽しんでくれ!