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INTERVIEW

Bimi

2024.05.07UPDATE

Bimi

Interviewer:山口 哲生

人生の失敗からは逃げなかった


-「博徒街道」に関しては、今のご自身のモードがはっきり出てますね。

これはもう自分の人生でもありますね。3歳ぐらいから花札を教えられ、ずっと博打が好きだったし、ずっと博打と隣り合わせの人生だったんで、自分の人生を一番乗せやすいのは「博徒街道」なのかなって。

-「博徒街道」が収録されているメジャー1st EP『心色相環』は、喜怒哀楽をテーマにした楽曲や、ご自身の根底を描いた「babel」を収録されていて。今日のお話から察するにBimiさんの創作の根底にあるものは怒りが多かったんでしょうか。

怒りと、疑問もですかね。みんな考えたことあると思うんですけど、なんで俺らって生きてるんだろうなって。例えば、日本からもっと広いところを見ると、戦争してるやつがいたり、めちゃめちゃ金持ちがいたり、いろんなやつらがいて。でも、なんで俺ってここにいるんだろうって考えたときに、やるせなくなるというか。生まれた理由みたいなものって特に何もないと思うんですけどね。ただ地球に生まれて、ただ漠然とそこにいるだけなんですけど、それを考えられるのが人間だから、どうにも自分のうまくいかないことがあったりすると、身近なところから広いところまで全部ムカつくなと思っちゃって。そこに立ち向かうために自分が死ぬまでの膨大な時間を費やせるのが人間だから、それも美しいなと思いつつ、でもそうやって考えなきゃいけないのもムカつくな、みたいな(笑)。

-ぐるぐると。

そう、ループしてて。だからやっぱり怒りなのかな。でも、その怒りにもいろいろ含んでいるっていう感じですかね。それで"心色相環"っていうタイトルにしたんですよ。喜怒哀楽を色の度合いで表現するっていう。怒りにもいろんな度合いがあるじゃないですか。怒り80パーセントと、悲しみ何パーセントと、ちょっと楽天的なところ何パーセントみたいな。あとメジャー・デビューして初めてEPを出すとなったときに、自分の人生を振り返ってみたらいろんなものが入り混じっていたから、自分の人生を1回整理してみようって。四半世紀生きてきたセーブポイントみたいなものとして作っていた感じでした。

-偏見かもしれないですけど、例えばギターが弾けるようになってモテたい! とか、めちゃめちゃぶっ飛んだことしてやるぜ! っていうのが根本にある人って、Bimiさんが今お話しされているようなことをあまり考えていないと言うとおかしいけど......。

いや、そうだと思いますよ。考えてないっすよ、絶対。

-でも、Bimiさんってめちゃめちゃ考えるタイプの人ですよね。

そこに行き着いたって感じです。昔は俺も考えてなかったですもん。だけど、俳優の仕事をしていて気づくこともあったし、いろいろ失敗して、それを反省するのはしてきましたね。人生の失敗からは逃げなかった。それは「babel」でも言ってるけど、借金めっちゃあったし、身近な友達が亡くなったとか、そんなことを"でもまぁ、それは他人のことだからね"って感じじゃなくて、自分事として捉えてきたというか。そこは良くも悪くもなんですけど。バッドに入っちゃうときもあるんで。でも、そこにちゃんと向き合ってきて良かったなって。そういうのを込めたのが「babel」なんですよ。"向き合って得た 逃げたから見えたもの"って言ってるんですけど、逃げた部分ともちゃんと向き合えたというか。そこを反省できるようになったのは最近なんですけど。

-そうなんですね。

それまでは人が喜んだり悲しんだりするのはどんなことで、自分がどういうふうにしたら相手がそうなるんだろうって感覚が漠然としかなくて。でも、そういうのも全部ノリでいけるっしょ? って思っていたけど、アーティストとして曲を作るようになると、他人に伝えるために自分が漠然と思っている感覚みたいなものを言語化しなきゃいけない。それで初めてiPhoneのメモなりノートなりに自分の気持ちを書いたときに、俺はこんなふうに思ってるんだって自分を見つめ直せたというか。"こういうの良くないよな"とか。まぁ、未だに"ヤベぇ、やっちゃった"みたいなことはあるし(笑)、怒られることも結構あるんですけど、そういうふうになったのは最近です。だから、最初は何も考えてなかったですよ。

-自分の言葉を紡いでいくにあたって、自分はどういう人間なのか見つめるようになったと。

あと最近は客観的な意見を取り入れるようになりましたね。昔は"お前ってこうだよね"と言われても、そうなのかぁみたいな感じだったけど、最近はそれを言われてもイライラせずに"それどっち? ポジティヴ(な意味)? ネガティヴ? ネガティヴだったら変えよう"みたいな。ただ、それは身近な人からの意見で、インターネットとかで変なやつに言われると"なんだテメェ?"ってなりますけど。そういうのはもう置いといて、自分が成功したあとに踏みつけてやろうかなと思ってます。まだ(自分は)低い位置なんで、踏みつけてもダメージ弱いから、もっと高いところから踏みつけてやろうって感じですね。"お前まだそこにいんのかよ"って言えるように、今頑張ってます。

-最新曲「Safe Haven」についてもお聞きしたいです。ご自身も出演されているドラマ"Solliev0"の主題歌になっていますが、作品に書き下ろすというのは今回が初めてですよね。取り組んでみていかがでしたか?

そんなに苦労しなかったですね。役者をやっていて良かったなと思ったのが、このドラマが何を伝えたいのかっていうのをわかっているから、その軸を持っておけばドラマにまつわることを言わなくても曲は作れちゃうんです。で、今回は何が伝えたいかっていうと、このドラマは異母兄弟が出てくるんですけど、ひとりが虐待をされたトラウマを抱えて、ずっといつか仕返ししてやるって思いながら生きてきて。で、もうひとりはその兄弟のことを信頼していたのに、いつのまにか関係がねじれていた、みたいな話なんですよね。なので、孤独や助けてほしい気持ちと殺してやるみたいな気持ちが入り混じっていて、それを問題提起している作品でもあるから、すぐできました。あとは最近流行っているNetflixのドラマみたいな導入にしたいなとか。

-そういった出発点から細かくいろいろと調整していって。

そうですね。CDジャケットも結構話しました。インナー・チャイルドというか、自分では開けない鉄の檻の中に自分の幼少期のトラウマを閉じ込めていて、それを解き放ってくれるやつを暗闇の中で探してる、みたいな。その檻をドラム缶とか箱に見立ていて、外から叩いて鳴らしてくるやつはいるんだけど、助けてくれるやつは誰もいない。誰か俺を止めてくれ、このままじゃ自分で自分を殺っちまうよ、みたいな。"Safe Haven"って"安全な避難所"という意味なんですけど、自分の心の奥の一番最後の部分、誰かに間違った使い方をされたときに壊れてしまう部分を考えて作りました。

-今お話しされていた"ドラム缶"のくだりが、結構ゾっとしたんですよね。

昔、ドラム缶の中に入ったことがあるんですよ。

-えっ......。

遊びでですよ(笑)? 中に入って外から叩かれるとめっちゃうるさいんですよ。全部が銅鑼みたいになっているから反響がヤバくて、耳が割れる! みたいな(笑)。そのイメージですね。いろいろなものから責められて、それが騒音になって、みたいな。あとは"レンジチンの音"とかは、虐待とまでは言わないけど、あんまり親の愛情を受けていないようなイメージだったり、"地団駄"は子供がするものだけど、大人になってもやっていて幼稚性があるっていうか。そういう感じですね。

-フローや歌い回しのバリエーションも多いですね。挑発しながらとか、叫ぶとか。そういったものは結構細かく考えたのか、自然と出てきたのか。

自然とですね。例えば、CDジャケットの少年に感情移入するのであれば、ずっと安心できる場所を求めていたけど、それは間違っていたと。ずっと(解き放ってくれる)君のことを探しているんだけど、もつれた糸が絡まっていくっていうか。だから"アンチ中島みゆき"みたいな感じっすよ。"縦の糸はあなた 横の糸は私"(「糸」)って、そんなきれいに布にはならないだろ? という。

-ははははは(笑)!

いろんな人間がいる以上、こんがらがっていくと思うんで。ただ絡まった状態から、もとに戻りたいだけっていう。

-なるほどなぁ。面白い。

自分を守るために暴力的になってしまう人っているじゃないですか。それってきっと愛情を受けていないから、愛の伝え方を知らないからで。すぐ殴る親とか。自分のことがわからなくてすぐに暴力を振るうし、それを見ているガキがまたそれを真似するし。そんな暴力性みたいなものというか、助けてくれって言っているくせに加虐性があって暴力的な人間というか、そんなやつの歌を歌おうと思ってました。

-タイアップ曲として作品の軸は大事にしながらも、Bimiさんが過去に感じたことをしっかりと織り込んでいったと。

そこはアイデンティティとして入れないと、ただ迎合しただけのもの、誰にでも書けるものになってしまったらもったいないなと思って。せっかく主題歌のお話をいただいたので、Bimiらしさは失わないようにっていうのは考えてました。

-今後の活動についてですが、7月15日には品川プリンスホテル ステラボールでワンマン・ライヴ"Bimi Live Galley #03 -cosmic-"を開催し、8月28日にはEP『Snack Box』をリリースされます。今日のインタビューの中でもいろいろな目標や野望についてお話が出てきましたが、現時点で今目指しているものってあったりしますか?

マジでなくて。LADY GAGAが宇宙でライヴすると話してて、"いいなぁ、宇宙かっこいいな"って、それぐらいですかね。でも、海外に行けるようになりたいです。日本に海外のアーティストが来るような感じで、こっちから向こうに行きたい。グラミー賞を狙ってるとかは特にないんですけど、"あいつは日本でちょっと奇抜な感じのアーティストだよね"って呼ばれるぐらいにはなりたいなと。あとは、ずっと応援したいと思えるような、ステージの上ではカッコいいやつでいたいなっていうぐらいですかね。

-大事なことですね。

自分も音楽に救われたところがあるから、自分も誰かにとってそんな存在になれたらというか、ステージ上でめちゃくちゃなことをしているやつを観て感じ取ってもらえたらいいなって。その規模がデカくなったらめっちゃ嬉しいです。だからやっぱりまずはそこなのかな。いろんな人に観てもらうために規模をデカくしたい。そうすれば、どこに行きたいかっていうのも今後見えてくるだろうし、とりあえず今は止まらずにやるしかなくて、止まったときに初めて"あ、俺ってここまで積み重ねたんだ"って見えるものだと思うので、そこはあんまり決めずにやっていきたいなと考えています。

-今はとにかく突っ走るだけだと。

それに、今の俺がいきなり"世界に行くんだ!"って言っても全然説得力ないんで。日本で味方を増やして"じゃあ行ってきて!"って言ってもらえるような存在になれるようにならないといけないんで、ちゃんと地盤も固めつつ奇を衒ったこともしつつ、頑張っていけたらなと思います。

-果たしてどうなるか(笑)。それも含めて今後の活動も楽しみにしてます。

派手にやりたいですね。それこそ役者活動で出会った人たちをキャスティングするっていうのも、自分だからできることだと思うんですよ。役者だけじゃなくて仕事はそういうものだと思うんだけど、貰った案件に尽力して、どれだけポテンシャルがあったとしても、飛び抜けたことをすると迷惑がかかるからしないじゃないですか。逆に与えられた範囲内でベストのことをするのがポテンシャル、みたいな。だから、(呼んだ)役者がやってみたいと思っていることを"好きにやっていいよ"って、縦横無尽に暴れてもらいたいなっていうのもありますね。それが、僕がそっち側に対してできる恩返しでもあるのかなって。その人の新しい魅力を引き出すというか。その人にとってもギャンブルにはなると思うけど、そういう場所を提供できたらいいなって考えてます。