INTERVIEW
Bounce out innocence
2024.03.29UPDATE
2024年04月号掲載
Member:Yuto(Vo) WATAL(Gt) K(Ba) die(Dr)
Interviewer:フジジュン
日々の怒りや絶望、後悔の中で、先に見える灯火のような仄かな光。名古屋を中心に活動する4人組バンド、Bounce out innocenceの記念すべき1stフル・アルバム『Moonlight Makes Shadow』が完成した。感情の機微を描く叙情的な歌詞をエモーショナルなメロディやポエトリー・リーディングで表現するYuto、その感情の起伏を具現化したWATAL、K、dieの激情的で攻撃的、且つ丁寧で繊細なハードコア・サウンド。コロナ禍の苦難や仲間との別れも経験しながら、現体制での新たなバンド・スタイルを確立した。アルバム1枚を通して見える物語を紡ぐ、アルバム完成に至る経緯や今作の収録曲について話を訊く。
-2月にアルバム『Moonlight Makes Shadow』をリリースし、現在アルバムを掲げてのツアー["Moonlight Makes Shadow" TOUR]真っ最中のBounce out innocence。名古屋の上前津Club Zionでツアー初日を行っての感想はいかがですか?
Yuto:地元だからというのもありますけど、"待ってました!"って感じがあって。アルバムを楽しみにしてくれてた人も多かったし、その気持ちをわかりやすくお客さんが見せてくれて、お客さんありきではありますけど、すごくいいライヴになったと思います。
die:今までやってた曲もあれば、初披露の曲もあって。初めて聴く人も多かったと思うんですが、ライヴではモッシュが起きたり、すごく盛り上がってくれて嬉しかったです。
WATAL:アルバムを出したのも初めてだったし、アルバムを出してのリリース・ライヴが今までで一番盛り上がったんで、バンドも勢いづいたし、アルバムを作って良かったです。この勢いで僕たちの存在やアルバムを全国に根づかせられたらと思っています。
-2021年リリースの2nd EP『Darkest Before the Dawn』以来のリリースで、"主要メンバーが復帰後、長い制作企画をライブ活動と並行して行った"と資料にありますが、前作からの3年間はバンドにとってどんな期間だったんですか?
K:コロナがあったんで、前作を出してのツアー("NEVER WITHER TOUR 2021")が(3回目の)緊急事態宣言の何日か前までで、ギリギリセーフで。今まで通りの活動ができないなか、自分たちがやれることをやってきた感じでした。今回はその集大成と言いますか、そのなかで生まれた感情ももちろんあったし、それも曲にして詰め込まれています。僕らは"それでも続けていく"というスタンスだったんですけど、周りには解散していくバンドもすごく多かったし、思うことはたくさんあって。
Yuto:みんないろんな考えがあってやめていったとは思うんですけど、僕はどんなことがあってもずっとやりたかったので、"続けていこう"と言ってくれるメンバーがいてくれてすごくありがたかったし、続けられることのありがたみも感じてました。
-"よりリスナーに詞を伝えたい"という思いもあって、本作から歌詞を日本語詞にシフトしたそうですが、そこにはどんな心変わりがあったのでしょうか?
WATAL:曲は基本的に僕が作ってて、そこからメンバーに投げてアレンジしてもらったり、歌詞をつけてもらったりしているんですけど、"英語で歌ってるのはなぜだろう?"とふと思ったんです。好きで聴いてたバンドが英詞だったり、憧れみたいなところはあったと思うんですけど、僕らが一番伝えたい相手は日本人なので、"そこをガラッと変えてみてもいいんじゃないか?"と僕がYutoに提案しました。
Yuto:書く側としてはありがたい提案でしたけどね。英詞だと一回書いたあと、言葉を調べるめんどくささを感じるところもあったんで(笑)。"じゃあ、これを機にちょっとやってみるか"と思ってやったら、ライヴでの想いの込め方も変わってきて。
die:何を歌ってるかわかるんで、僕らもより気持ちが乗るようになりました。
-日本語詞だから歌詞の内容も伝わってくるうえ、歌に込めた想いや感情の起伏をちゃんと演奏でなぞらえて音にできていて。一曲一曲がすごくドラマチックで激情的で、楽曲世界の奥深くまで誘ってくれました。
Yuto:伝えようという気持ちがより強くなったことで、ポエトリーの部分も増えたりして。曲に歌詞を乗せるとき、ヴォーカルが前に出るというのが一般的だと思うんですけど、僕は演奏の邪魔をしないようにというか、演奏と同じラインで出していきたいというのがありました。
-なるほど。あまりに歌詞と曲が合致してるから、テーマありきで曲を作ってるのか? ヴォーカルを乗せたうえで、改めてアレンジしていたりするのか? と疑問に思ってました。
die:改めてアレンジするというのは近いものがあって、原曲とは全然違うことをやってる曲はあります。もちろん、ライヴでやってるうちに解釈が変わってくるところもあるし。
-そうか、すでにライヴで演奏している曲も何曲かあるから。スタジオで完成した曲ばかりでなく、原曲からかなり変わっている曲もあるんですね。
K:はい。今回収録されてるほとんどの曲が、原曲ができたのが何年も前で。そこからライヴでブラッシュアップを重ねて、今の形になったという感じです。
WATAL:3曲目「Flashback」と5曲目「Ray of Light」がスタジオで練った曲で、あとはライヴでやってる曲なんですけど、レコ発ライヴでも「Flashback」のウケはすごく良かったですし、ここからブラッシュアップしていく可能性も全然あります。
-その新曲2曲は、アルバムを作るにあたってこういう曲が欲しい、と思ってできた曲だったんですか? それともすでにアイディアがあった曲だったんですか?
WATAL:僕は普段、ジャンルを問わずいろんな曲を聴いて、"これいいな"と思ったところからインプットしていて。一曲一曲、"こういう曲を作りたい"っていうのがあって作ってるので、アルバムに向けて曲を作るというのはやったことがないですし、考えなかったです。今回もアルバムを通して聴くと結構バランス良く仕上がりましたけど、実はまったく狙ってなくて、偶然こういう形になったっていうだけでした。
-そうなんですね! イントロダクション的な「with Regret」から「torch」、「Flashback」、「Orion」と続く前半の流れなんて、すごく物語性もありますけど。
WATAL:正直、全然狙ってないです(笑)。
K:そのへんは聴き手に委ねちゃってるところもありますね。聴いてくれる人がどういう心構えで今作を聴いてくれるか? っていうのもあります。