INTERVIEW
STRiKE VACK.
2024.01.10UPDATE
2024年01月号掲載
Member:Tatsuki Nakanishi.(Vo)
Interviewer:山口 哲生
-ここまでお話しされてきた楽曲は、喜怒哀楽でいうところの怒が多いですけども、「i Miss you.」のような喪失感を歌ったミディアム・ナンバーもありますね。
僕、これまでバラードって書いたことなかったし、ラヴ・ソングも書いたことなかったんですよ。めっちゃ恋愛してるはずなんですけど、ラヴ・ソングを書こうっていう気持ちに全然ならなくて。ただでさえ歌詞を見られるのが恥ずかしいのに、ラヴ・ソングなんてもっと恥ずかしいじゃないですか。
-ご自身のリアルを書いているのであればそうなりますよね。
そうなんですよ。でも、ずっとうるさい音楽だけやったらダメやなとは考えていたので、"まぁ、アルバムの1曲ぐらいは......"と思って。僕はわりと楽曲先行で、楽曲の雰囲気から映像が浮かんできたり、その言葉が出てきたりするタイプなんですけど、曲がもうめっちゃそういうことを歌いたくなる感じやから、ここはもう思い切って書いてみるか! って。僕にはわりと長く付き合った彼女がいて、もう別れちゃって、それも結構前の話なんですけど、その子のことを失ったときにいろいろ思ったことがあったなぁっていうのを思い出しながら、今の自分の恋愛観も入れつつ書いていった曲ですね。
-初めてそういった感情を書いてみていかがでした?
入り込んでしまっていちいち悲しいという感じはなく、わりと作品として見れてますね。だから、わりといい歌が歌えたかなぁって(笑)。これからライヴでもそういう気持ちにならずに歌える自信もあるんですけど、聴いている方が重なるものがあれば重ねてもらいたいし、逆に僕にそう思ってもらえてるみたいな(笑)、そういう気持ちで聴いてくれてもいいのかなって思いますね。
-あと、「終焉」という楽曲もかなり強い決意と思いが綴られていて。
これはSick.をやめたあと、いったんソロでやろうと思っていたときに書いた曲ですね。歌い出しに"令和三年"って出てきてますけど、令和3年に出そうと思って令和2年に書いてました。これはもうコロナのことを歌っているんですけど。
-そうですよね。
最後の語りとかは、お金を持っている社長みたいな人たちがいる会にたまたま顔を出すことがあって、バンドをやりたいんですよねっていう話をしていたときに言われたことなんですよ。"バンドってさ、もうわりと終わっていってるよね?"って。"たぶんこういうことを考えているんだろうな"と思いながら"なんでですか?"って聞いたら、例えばK-POPとかもそうですけど、"もう楽器を持たないよね?"って。楽器って買うのにお金がかかるし、それを演奏するのも手間やし、機材費もかかるし、コスパが悪いっていう。だからもう無理やり続けているものだ、みたいなことを言っていて。それにチケット代もだんだん上がってきていて、お客さんも高いお金を払って観に行っている。要は、オーケストラとかと同じだよねっていうことを言っていて。まぁ、すっげぇムカついたんですよ。
-うん。
でも、その当時はバンドを実際にしているわけではなかったけど、やっぱりコロナ禍でバンドが打撃を受けていることはわかっていたし。そのことをどうにか歌にしたいなと思って。
-それで、タイトルはあえて"終焉"にしているんだけど、何も終わってねぇよという。
そうです。
-なるほど。たしかに、音楽とかアートを、コスパとかタイパで判断されてもなぁって思いますよね。割には合わないかもしれないけど、なんですべての価値基準をそこに置かなきゃいけないんだっていう。
うん。まぁ、いいんですけどね。アイドルとかも素晴らしいんですけど、作品を見ているような感じになっちゃうというか。例えばK-POPとかも観ていてすげぇ! って思うし、グループとして、塊としての個性はすごくあるのかもしれないけど、メンバーもいっぱいいるし、パフォーマンスを観ただけではメンバーそれぞれの個性が伝わりづらいところもあるんじゃないかなと思って。だから、僕はやっぱりバンドっていいなってなおさら思ってしまうというか。バンドってすごく個が出るじゃないですか。絶対にこっちのほうがいいと思うし、たしかに売れてないうちはコスパは悪いけど、ある程度認められてきたらもっと自由なことができるし、何をやっても無敵になれる。バンドのそういうところって、僕は素晴らしいと思います。
-そういう意味では、STRiKE VACK.のメンバーの個性は濃いんですか?
僕の中では個性的だなと思いますね。ギターのRaiちゃんはかわいいし(笑)、SEN君はすごく有能やし、ベースは社交的やし、ドラムはちょっと頭がイッてますけど(笑)。僕はすごく好きなメンバーです。
-そのあたりはライヴだったり、こういった取材の場でこれから見えてきそうですね。アルバムを締めくくるのが「Scars.」という楽曲で。どの曲もご自身のリアルを書かれていますが、この曲に関しては心のより深い部分というか、孤独とか、タイトルの通り"傷跡"を曝け出すものになっていて。この曲でアルバムを締めようと思ったのはなぜなんですか?
この6年間でいいことも悪いことも経験してきたんですけど、アルバムを作っていくなかで、基本的にはやっぱり自分との戦いが多くて。ひとり静かな部屋で歌詞を書いて、曲を作ってというのをやっていると、だんだん心が参ってくるし、これってなんのためにやっているんだろうと思ったときに、誰かにやらされているわけでもないし、自分がやりたくてやっている。なのにつらいってなんやねん、みたいな(笑)。そんな矛盾と戦いながら、自分ってなんなんだろうっていろいろ考えたときに、とりあえず一番ディープな歌詞にしたいなと思って。
-なるほど。
僕はあんまり人に"助けてくれ"とか言えないタイプなんですけど、そういう感情はヴォーカリストとして生きていく以上、どこかで作品に落とし込みたいと思っていたので。だから、自分の傷を自分でえぐるというか、そういう曲になってますね。アルバムの最後に持ってきたのは、例えば「NEVER ENDiNG STORY.」みたいな明るい曲で終わるのも良かったんですけど、最後はそれぐらいダークというか、ナイーヴな気持ちになってほしいなって(笑)。
-"なってほしい"なんですね(笑)。
はははは(笑)。"僕の苦しみを味わってくれ!"じゃないけど、最後に置いてみました。あと、「NEVER ENDiNG STORY.」を中盤に置いている理由も実はあって。"5曲目にこういう曲が来るんだ!?"って思ってもらいたかったっていうのがひとつあるんですけど。
-まさにそう思いました。
あとは、アルバムを作っている期間って自分の人生において、元気から始まってだんだん怒りに変わって、悲しみになって、みたいな感じだったんですよ。だからこの6年間の感情が、わりと曲順通りになっているところもあって。1曲目の「Shut up.」はEDMみたいな感じにしているんですけど、まさに人生の絶頂みたいな(笑)。
-はははは(笑)。アルバムの根底にはどの曲にも決意がありますけど、そこに綴られている感情は様々ですし、それに合わせて多様な楽曲が収録される形になりましたね。
13曲の曲調がほとんど被らないようにしたのも理由があって。どこをかいつまんでもリードっぽい曲にしたいと思っていたので、それは自己満だと言われたとしても、1曲ずつに個性を持たせたかったし、最初の1枚ぐらいはとにかくやりたいことをやろうかなって。最初は"これは受け入れられやすいかも"とか"これはウケないかもな"とかいろいろ考えたんですけど、そういったことは関係なしに、とにかく書きたいことを書いて、好きな表現をしようと思って作った曲たちです。あと13曲っていうのにも意味があるんですけど、"キングダム ハーツ"っていうゲームがあるじゃないですか。あれに"XIII機関"っていう敵が出てくるんですけど、ひとりずつ個性的なんですよ。そういう意味もあります(笑)。
-そうだったんですね(笑)。実際にどの曲にも個性がしっかりあるし、その流れも美しいし。
僕、セットリストを組むのがめっちゃ好きで。要は起承転結じゃないですけど、その流れを作るのがすごく好きやから、今からライヴのセットリストを組むのがすごく楽しみで。1月11日に初ライヴがあって、ライヴ当日の0時からサブスクで配信するのでぜひ聴いてもらいたいんですけど、この13曲はいろいろなパターンで組み立てられるというか。その日に伝えたいことによってセトリを組み立てたり、いろいろできるなと思っているので、楽しみですね。
-お話にあった通り、2024年1月11日にSHIBUYA THE GAMEにて初ライヴ"mosaic × STRiKE VACK.東阪共同主催 『SPVNiSH』"を開催されます。ここから一気に走り始めるわけですが、楽曲も揃いましたし、こういうステージにしたいという画は見え始めてきていますか?
見えてはいるんですけど、まだちょっと模索したい部分もあって。僕らはもともとヴィジュアル系のシーンでやっていたんですけど、ヴィジュアル系ながらメタル・シーンで勝負したりしたこともあったんですよね。そのときに思ったのは、ノリも違うし、受け入れられ方も全然違っていて。もちろんいいと言う人もいれば、ダメと言う人もいたんですけど、でもそういうのってまどろっこしいなってちょっと思って。だからもし次にバンドをやるのであれば、ジャンルとかはもうどうでもいいから、とにかく自分たちを出そうと思っていたんですよね。ただ、どんなファン層で僕たちのライヴが構成されるのか、まだちょっとわからなくて。
-これまでのキャリアを考えてみると。
そうです。ヴィジュアル系をやっていたこともあったからバンギャもいるだろうし、それこそオタクと呼ばれる人もいるだろうし、ロック・ファンもいるだろうし。だからどんなライヴになるのか、そこはやってみて見えてくるものがあると思うんですけど、ただ僕らは2024年12月12日に渋谷CLUB QUATTROでワンマンをすることになっていて。それに関しては別にビビってないし、埋めてやろうっていう気持ちでいっぱいなんですけど、それを背負って1年間活動をしたいと思っているので、1月から"(渋谷CLUB)QUATTROでやるから来てくれ!"ってずっと言い回ったろうと思ってるんですよ。"無理やろ"って思われていても、逆にそれが叶ったときって一番かっこいい瞬間やと思うし、この1年間はその勝負に賭けようと思ってます。それでQUATTROのときに、僕のこの思いがちゃんと伝わって、お客さんで埋められたときはどうなっているのかなと想像してなんとなく思うのは、きっとすごく一体感のあるライヴにはなるんじゃないかなって。最初はいろんな客層の人がいるかもしれないけど、結局は僕らのことを好きな人たちが集まってくれるわけなので、自分たちが望むようなライヴができるんじゃないかなと思ってます。
-ちなみに、バンド名になっている"strike back"には、反乱だったり反撃という意味があるわけですけど、Tatsukiさん的に、どのタイミングで"strike back"が達成すると思います?
僕がこれまでステージに立ってきた中での最高地点が渋谷公会堂なんですよ。そこでバンドでワンマンができたら、"strike back"したかなって。
-なるほど。それ以降はどんな活動をしていきたいですか?
そこからは世間に対しての"strike back"になってくると思いますね。7月にUVERworldが日産スタジアムでライヴ("UVERworld premium THE LIVE at NISSAN STADIUM"、"UVERworld KING'S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72000")をしたんですけど、あの場所が今日本で一番お客さんを入れられるライヴ会場らしくて。僕も観に行ったんですけど、やっぱりすげぇなと思ったので、そこをまずは目指したいと思います。ただ、すごく時間がかかると思うし、ここから長いことやっていくにあたってメンバーにムカついたり、ケンカしたりすることもあると思うんです。だけど、このバンドに関しては、すでにもう付き合いの長い人たちと一緒にやるから、ケンカ別れしたりすることはないんじゃないかなと思っていて。やっぱりそこを目指すためにはひとりだけでは無理なので、これから先、メンバーと一緒にどこまでも目指そうかなと思います。