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INTERVIEW

兀突骨

2023.12.19UPDATE

2023年12月号掲載

兀突骨

Member:高畑 治央(Ba/Vo)

Interviewer:菅谷 透

自分たちは世界で一番かっこいいバンドだって思うと同時に、世界で一番ダサいバンドだと思いながら、日々精進する姿勢を大事にしたい


-なるほど。ところで、先日SNSにMV撮影の様子がアップされていましたが、どの曲で制作したのでしょうか?

「血気ハヤラバ -When My Blood Boils-」という4曲目の、ロックンロール調のノリの曲ですね。あえてあの曲をプロモーション・ビデオにさせてもらいました。

-明るい曲調やロックンロールの要素だったり、シンガロングを誘うようなパートもあったりと、今までのイメージとは異なる挑戦的な曲ですよね。

おっしゃる通りで。新しいものに挑戦しないと、やっぱりロックじゃないなって思いまして。お客さんに好評か不評かはわからないですけど、こういう挑戦する姿勢を見せないと。おっさんミュージシャンにありがちな、自己模倣で済ませちゃうっていうのは嫌だなと思って、いつまでもいろんなことに挑戦していきたいなってこの曲を選ばせてもらいました。

-MVの内容はどのようなものになっているのでしょうか?

若者が爆発するという内容です(笑)。政府に対して、この世の中のいろいろなものに対して不満を持つ若者が、ある日突然怒りを爆発させるみたいな。いわゆる明治維新とか、ああいう国家転覆をさせてしまったひとつの要因で、怖い者知らずの若者の力とか、そういったものをテーマにさせてもらって作った曲なんですよね。

-歌詞にも表れていますよね。

いつの時代も若者の問題ってありますけど、そういう若者の怖さとか、逆におっさんから見たらそういうものに対するうらやましさとか、いろんなものを最近思ってたんで、曲にしてしまったんですが。気に入ってもらえたら嬉しい、若者よりもおっさんたちに聴いてもらえると嬉しいかなっていう気はしますね。

-ここからはいくつかの楽曲についてうかがいます。「百戦錬磨 -Battle-hardened-」は開幕からパンチを食らわすような感じの曲で、歌詞でも"タダ毎日ヲ戦イ続ケタイ"という部分があって、バンドのライヴへの信念というところにも繋がってるのかなと。

今まで世界各地――インド、ネパールとかでもツアーしましたし、いろんなところでライヴをしてきたっていう自信というか、自負といいますか。"俺たちはどんなところでもライヴやりますよ"っていう決意と、これまでやってきたことの大変さを自負してる歌ですね。自分たちはライヴに自信がありますよっていうことも同時に言ってるんですけど、あんまり謙虚すぎるのも良くないなと思って、自分たち賛歌じゃないけどこういう曲も作ってみようと。結局バンドをやるうえで大事なのは、謙虚さと自信だと思ってますんで。自分たちは世界で一番かっこいいバンドだって思うと同時に、世界で一番ダサいバンドだと思いながら、日々精進する姿勢というのを大事にしたいなと思って、こんな曲も書いてみました。

-続く「乱逆ノ燈 -Signal Of The Counterattack-」は、1曲目とは打って変わって重めに進んでいきつつテンポアップもある曲で、こちらもインパクトがあります。

この曲は当初1曲目にして、"兀突骨こう来るか"っていう意外性をみんなに示せたら面白いなとずっと考えてたんですけど、でも兀突骨の雰囲気が全部入ってる「百戦錬磨 -Battle-hardened-」のほうが挨拶代わりの1曲としては相応しいのかなと思って。急遽レコーディングが終わってから「百戦錬磨 -Battle-hardened-」が1曲目になったんですが、「乱逆ノ燈 -Signal Of The Counterattack-」も"1曲目にするぞ"って思って作った曲なんで、かなり力を入れたんですよね。実際、2018年に前作を出したあと、次のアルバムに入れるために最初に作った曲なんですよ。だから今までにない雰囲気で、新たな挑戦をしてみようと思って。この曲は自信作というか、兀突骨にとって頑張った曲ですね。

-たしかに今までにない雰囲気ながら、ノリやすさも非常にあるのかなと。

キャッチーだし、展開もなかなか複雑だけど難解さは出さないようにとか、いろいろ注意しながら大事に大事に作った曲なんですよね。この曲もぜひ聴いてもらいたいなと思ってます。

-「悪ノ霊魂 -Malevolent Souls-」は、「血気ハヤラバ -When My Blood Boils-」からの流れで聴くとガラッと変わって刺激的な曲ですよね。歌詞も昨年話題になった出来事が題材になってますが......。

そうですね(笑)。曲としてはデス・メタル的な、そういう不穏な雰囲気の曲にしたいなと思って展開を作りました。90年代のデス・メタルってとにかくごちゃごちゃしてたんで、ああいう感じのサウンド・プロダクションで1曲作れんかと思って。かといってあまりやりすぎちゃうと現代には合わないし、うちの色でもないなってことで、結構苦労しながら書いた曲でしたね。リフも今までの王道的なものをあえて外すっていうような形でやったんですよ。サビの入り方とか。デス・メタルのころって、そういう今までのメタルにあった王道のパターンをすべて排除した風潮があって、当時それを聴いてかっこいいと思っちゃった自分がいたもんですから、ちょっと初心に戻ってみようと。

-カウンター・カルチャー、王道への反発というか。

それってすごいロックだなと。裏を返せば、ロックってのはルールはないんだぞっていうところでもあるし、まさにロックなわけであるし。そういうアティテュード的な部分で考えてみた曲なんですけども。聴いてもらえる方々に気に入ってもらえるかどうかってところですね。

-「彷徨ウ首 -Severed Head On The Prowl-」はこちらも挑戦的な楽曲で、呪術的なクリーン・ヴォーカルや、ニューメタル的な要素も含まれていますが、兀突骨らしさっていうところも入っている曲だなと思ったんですけれども。

兀突骨を結成する前から、ああいう感じの構想はあったんですよね。ああいう曲のイメージはずっと温め続けてて。兀突骨を始めて、兀突骨でもこういう曲をやりたいなと思ってたんですけど、デス/スラッシュ・メタルとしてあるまじき曲だなっていう認識も持ってたので、なかなか作品としては世に出せなかったんです。でも兀突骨も6枚目になったんで、いろいろ挑戦しなきゃいけない時期でしょうっていうことで。

-バンドのパブリック・イメージも固まってきたタイミングで。

あと自分の作曲能力も当時と比べれば良くなってきて、技術的なものもわかってきたと思うんで、イチから考えてみてあの曲をリリースしてみたんですけど、結果良かったですね。不思議な感じ、新しい挑戦というか、なお且つ兀突骨らしさも入れられましたし。自分としてはすごく満足した1曲ですね。

-海外のファンにも刺さりそうな楽曲ですよね。

そうですね。ただ、ああいう曲は初めてなもんですから、ちゃんと聴いてくれるかなと(笑)。スキップしなきゃいいなとか。新しいことをやるといろいろ不安というか、そういうものがありますけど、でもこれがロックなんだっていうふうに思ってやっております。

-スラッシーな曲調の「疫神 -God Of Plagues-」は、歌詞でコロナのことを歌ってると思うんですけど、まさに当時の怖さが蘇ってくるような曲だなと。

デス・メタル・バンドによる歴史の記録というようなイメージで作りました。コロナ禍を生きたバンドじゃないと、ああいう曲は書けないだろうなと思ったんで。逆にそういうことを書かないほうがいい、コロナをあえてネタにしちゃいけないっていう人もいると思うんですけど、うちは"こんな美味しいことないよ"って。こんな生きるか死ぬかわかんない中で生きてきたんだから、曲にさせてもらいますよっていう感じで作りました。

-歴史においても疫病は重要なテーマのひとつになってますが、過去の文献なども参照されましたか?

めちゃめちゃ参照しました。日本では天然痘とかコレラですよね。奈良時代とか、あのころの文献なんかを読むと、やっぱりコロナの蔓延に似てるんですよ。病気になった人がいたけど、みんなで最初は隠して、隠して、みたいな。感染が爆発するとなんだか変な噂が立って、どこどこの神社でお札配ってるから、それを買えば病気が治るとか。昨今のコロナでも、SNSとか見るといろんな話があるじゃないですか。コロナはないんだっていう人もいれば、マスクをするべき、しないべきだっていう論争とか。そういうわけわかんないこと――病気よりもそういうことのほうがちょっと異常に感じたんで。

-コロナを発端にした騒動や混乱がありましたね。

コロナが流行ると儲かる人がいるとか。それ奈良時代にもあったんだよなって思うと、なんか不思議。人間は変わらないなって。とにかく今回のコロナでは作曲家、作詞家としてすごくいろんな影響を受けましたね。良かったんだか悪かったんだかわかんないですけど、こういう経験を今後に生かせていけたらなって。まさにこの「疫神 -God Of Plagues-」は、2020年代にコロナでこんなことがあったんだぞって、後世のメタル・ファンが見て知ってもらえたら嬉しいなっていう感じで書きました。歴史の1ページです。

-歴史に残るような出来事だったっていうところは間違いないですよね。

いろんなバンドのコロナをテーマにした歌を聴いてみたいですね。すごく面白いと思うんですよ。

-最後のタイトル・トラック「黄泉ガヘリ -Back From The Underworld-」は、先ほどお話されていた出来事も影響していると思うんですが、聴いていて本当にドラマチックだなと感じまして。でもスラップも入りつつ、キャッチーさもあるなと。

リフをキャッチーにしたかったんですよね。いろんな人が聴いて印象に残るような曲にしたいというのと、それでいてドラマチックで、アルバムの最後を飾る曲に相応しい何かがないといけないなって思って。最後に作ったんですけど、そんなに苦労はしなかったですね。すんなりと、すごくいい感じでサクサクできた曲でした。あえてこうしようというのはなく、キャッチーでドラマチックな展開っていうことだけを考えて作った曲です。

-たしかに、長尺ではあると思うんですけどいい意味でそれを感じさせない、スムーズに聴ける楽曲ですよね。

今までのアルバムって、最後の曲がすごい長いんですよね(笑)。自分があまりにもドラマチックにしようとしすぎちゃうと、曲が長くなっちゃうんですよ。それで何が大変かっていうとレコーディングが大変で、それをライヴでやるってなるとまた大変で。だから、あんまり長くなりすぎない曲を作るっていうのも、今回の全体的なテーマで考えてたんですね。最後の「黄泉ガヘリ -Back From The Underworld-」含め、まぁうまくいったかなと。自分の作曲能力まだまだ上がるんだなと、自分の進歩を見たアルバムですね。

-ライヴのお話も出たところで、今後の予定についてもうかがえればと思いますが、12月にはCRYPTOPSYとのライヴ("Cryptopsy Tokyo Show 2023")が控えてますよね。

5日に香港でCRYPTOPSYとやりまして("Cryptopsy LIVE IN HONG KONG")、12日に東京でまたライヴがあります。アルバムをリリースしたら、ワンマン・ライヴ(["兀突骨 / 黄泉ガヘリ" Release GIG Back From The Underworld - BTH NIGHT Vol,5])を1月13日にWildSideTokyoでやります。2月に入ってからは国内ツアーがちょこちょこあって。海外のほうは、アルバム出るんでいいツアー入れてくれよっていう話をプロモーターにしてるところでして。うまくいけば夏くらいには行けるかな。コロナのときにヨーロッパと中国ツアーがキャンセルになっちゃったんで、そのぶんを取り返さなきゃいけないなと、ぜひとも実現させたいと考えてます。

-最後に、激ロックの読者にメッセージをお願いします。

兀突骨の高畑と言いますけれど、激ロックに初めて載せていただくことになりまして。兀突骨という激しい和風メタルをやっておりますので、何かありましたらライヴに遊びに来ていただいて、あとCDも買っていただいて、もちろんTシャツも買っていただいて。今後とも何卒よろしくお願いしたいです。ありがとうございます。