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INTERVIEW

THE RAVEN AGE

2023.07.06UPDATE

2023年07月号掲載

THE RAVEN AGE

Member:George Harris(Gt)

Interviewer:井上 光一

IRON MAIDENのベーシストにしてメイン・コンポーザー、Steve Harrisの息子、George Harris率いる5人組、THE RAVEN AGEが最新作『Blood Omen』でいよいよ日本上陸を果たす運びとなった。実はIRON MAIDENの来日公演で前座を務めたこともある彼らだが、過去の作品が国内未発売だったこともあり、バンドの全貌が日本ではなかなか見えづらかったのも事実だろう。今回、本誌にとっても初インタビューが実現。Georgeがバンド結成の経緯から最新作『Blood Omen』の制作プロセスまで語ってくれた。


父親は音楽をプレイすることを決して無理強いしなかったし、レッスンを受けさせることもなかった。"これを聴くんだ"といったことはなくて、僕はいたって自然に音楽に惹かれていったんだ。


-最新アルバム『Blood Omen』の完成おめでとうございます! 本作で待望の日本デビューを果たすということで、今の率直な感想をお聞かせください。

本当にエキサイトしているよ。僕たちにとって画期的な出来事だ。今回が初めてだからね。レーベルの話によると、日本の人たちのほうから興味を持ってくれてアルバムをリリースしたいと言ってきたんだって。だから、すごくクールだよ。僕たちにとって、素敵なサクセス・ストーリーだ。

-本誌では初めての取材となりますので、基本的な質問をいくつかさせてもらえますでしょうか。まずはご自身とバンドの紹介をお願いします。

僕はGeorge Harris。THE RAVEN AGEのギタリストのひとりだ。このバンドを始めてからしばらく経つけど、今回で3枚目のアルバムなんだよ。

-あなたは唯一のオリジナル・メンバーですよね?

まぁね。でも実は違うんだ。ベーシストのMatt Coxもオリジナル・ベーシストだけど、バンドを始めたのは僕と今のマネージャーのDan Wrightなんだ。

-マネージャーとバンドを始めるというのはわりと珍しいことだと思うのですが、どうしてそのようなことになったのですか?

彼がマネージメントに携わる前、僕たちはかなり若い頃に出会ったんだ。僕は18歳、彼は21歳で、ふたりとも同時期に彼女と付き合い出したんだけど、そのふたりがたまたま姉妹だったんだよ。そこで繋がっていたんだ。で、彼女たちのいとこの結婚式があって、僕とDanは結婚式の二次会に招かれたんだよ。それで僕たちはその町に行くことになって、僕はDanと1日中一緒だったんだ。彼とふたりきりで過ごしたのはそのときが初めてだったけど、好きな音楽の話をすると、ロックやメタルだってことで意気投合した。ギターを弾くことでも一致して、そこで絆が生まれたんだな。そうして、今度ジャム・セッションをしようということになったんだ。お互い曲のアイディアがあったんで、その最初のセッションで僕たちは曲を書いた。そこから始まったんだ。そのときから彼はバンドをやりたい、ツアー・ミュージシャンになりたいと言っていた。そして、ビジネス面に長けていた。どんなバンドにもああいう人間は必要だよ。彼はとってもきちんとしていて、ちゃんとチェックしてくれる。だから、うまくいったんだ。

-あなた自身がミュージシャンを志したのは、やはりお父様の影響なのでしょうか。

それは大いにあったけど、おそらく無意識のうちにだったんだろう。父親は音楽をプレイすることを決して無理強いしなかったし、レッスンを受けさせることもなかった。"これを聴くんだ"といったことはなくて、僕は至って自然に音楽に惹かれていったんだ。要は、生まれつき音楽を聴く耳を持っているかどうかを見極めることなんだよ。父親に影響されたことは間違いない。周りは音楽だらけだったから、小さい頃の僕は"僕もああなりたい"、"父親がやっていることをやりたい"と思ったよ。でも、同じ情熱を持っていないとできないよね。でないと、うまくいかない。父親は、むしろサッカーを推していたね。本人も若い頃、かなり本格的にサッカーをやっていたから、僕がサッカーをやる歳になると音楽よりもそっちを推していた。でも僕は音楽の道を歩むことに決めたんだ。

-影響を受けたギタリストやアーティスト、バンドがいれば教えていただけますか。

歳を取るにつれ、影響は変わっていった。若い頃、14~15歳の頃にハマったのはBULLET FOR MY VALENTINE、TRIVIUM、KILLSWITCH ENGAGE、PARKWAY DRIVEといったメタルコア・シーンのバンドだった。PARKWAY DRIVEのJeff Lingといったギタリストに憧れていたんだ。ギターを弾いてリフを覚えたいと思わせてくれたのはこういったバンドだったんだよ。ギターで最もインスパイアされたのはJeff Lingだと思う。特に当時のあのバンドはとってもヘヴィで、スクリーム・ヴォーカルのみで歌はなかったけど、ギターがものすごくメロディックだったんで、僕はそこに惹かれたんだ。彼のギター・プレイはテクニカルだけどとてもメロディックで、ほとんどギターに合わせてシンガロングできるほどなんで、僕はそこが好きなんだよ。

-THE RAVEN AGEはIRON MAIDENのオープニング・アクトとして2016年に来日していますよね。そのときの感想や日本の印象などがあれば聞かせてください。

素晴らしい国だよ。もちろん、日本全国を見られたわけじゃなくて東京だけだったけど、文化が僕たちが慣れ親しんでいるものとはものすご~く違うんだ。僕たちはヨーロッパもよくツアーしていて、各国には僕たちが慣れ親しんでいない独自の文化があるけど、そういったことを体験できるのはすごいことだよ。日本をとっても気に入ったんだ。食べものも人々もとても気に入ったし、(両国)国技館でのライヴなんて初めてだったからすごい体験だった。日本みたいな国を訪れることができてすごくクールだったよ。もっといろんな都市を回りたかったけどね。

-『Blood Omen』は前作『Conspiracy』(2019年リリース)から4年ぶりのオリジナル・アルバムとなりますが、2021年に『Exile』という作品がリリースされていますね。アコースティックを基調としたサウンドで生まれ変わった過去の名曲がかなり新鮮でしたが、やはりこういった作品が生まれた背景にはコロナ禍が大いに影響していたのでしょうか?

そうなんだ。ああいうものを作ろうというアイディアはかなり前からあったけどね。曲がとてもメロディックだから、別バージョンに作り替えられるんじゃないかと思っていたんだ。ツアー中にアコースティック・ギターを持っていってたんで、そこでたまに遊びで曲のアコースティック・バージョンをやっていたんだよ。"これ、結構うまくいってるから、いつかやったらいいんじゃないかな。ストリングスやピアノを入れたら、超クールなものができるはず"って思うようになったんだ。でも、なかなか時間がなかったんだよ。ツアーや次のアルバムに専念していたんで、スケジュールがそれを許さなかった。でも(コロナで)時間が無限にできて、いつ平常に戻るかもわからなかったんで、"じゃあ、あれをやろう"ということになったんだ。あれができたら最高だなっていつも思っていたからね。それで、あのアルバムに専念することにしたんだ。僕たちがやりたかったのは、単に曲のリメイクをするだけじゃなくて、おとなしめの曲に合った「Wait For Me」と「No Man's Land」という新曲を2つと、あとはライヴ・パフォーマンスを入れることだった。このバンドらしさから完璧に離れたものにはしたくなかったんだ。このバンドを聞いたことのない人が『Exile』を聴いたら、THE RAVEN AGEとは全然違うものになってしまうんで、万が一のことを考えてライヴ音源も入れたんだ。でも、あのアルバムを作って楽しかったよ。

-『Blood Omen』のリリース前にあなたたちはミュージック・フォー・ネイションズと新たに契約しました。レーベル契約までの経緯を教えていただけますか。

アルバムをレコーディングして、アートワークもどういったものにしたいか分かっていた。あとはレーベルを決めるだけだったんで、マネージャーがいくつかのレーベルをあたっていたんだ。そして、ミュージック・フォー・ネイションズが一番僕たちに合っていると思ったんだよ。彼らは、僕たちが目指しているもの、このバンドのやり方を理解してくれているようだったんで、ミュージック・フォー・ネイションズに対して良い印象を抱いたんだ。そして彼らが興味を示してくれたんで、そこに決めたんだよ。いろんなレーベルがあったけど、最終的にあそことうまくいったんだ。素晴らしいよ。とても新鮮な体験だった。以前のレーベルだと、目立たない存在であまりフィードバックを得られないこともあったけど、ミュージック・フォー・ネイションズの戦略はちょっと違う。彼らはあんまりたくさんのバンドと契約しないし、同じジャンルのバンドばかりとも契約しないんで、重ならないんだ。僕たちは自分の立場を死守するために戦う必要がないし、レーベルは僕たちに時間をかけてくれているんで、マネージメントの延長のようなものなんだ。というわけで、今のところとてもうまくいっているよ。

-最新作『Blood Omen』はコロナ禍の鬱憤から解き放たれたような、強力な作品となりましたね。過去の作品と比べても確実にネクスト・レベルへと達した手応えはありましたか。

あったね。一段階上がったって、メンバー全員思っているよ。これまでのところ、このバンドが作った最高のアルバムだと思っている。これまでのアルバムが良くなかったと言っているわけじゃないけど、全体として今はこれでいいんだという気がしている。どのバンドもやっていくうちに成長したり変化したりするけど、僕たちは曲作りとパフォーマンスのすごくいい絆を見つけたと思っている。このアルバムをとても誇りに思っているんで、みんなも楽しんでくれると嬉しいな。

-『Blood Omen』のレコーディング・プロセスについて教えてください。アルバムの構想はいつ頃から生まれたものなのでしょうか。

ミュージシャンというものは、絶えず曲作りをしているものだ。少なくとも僕たちはそうだよ。アルバムをリリースして数ヶ月待ってから次の曲作りを始める、なんてことはなくて、絶えず作っているんだ。これはこの間他のメンバーにも確認したんだけど、僕たちの前回のツアーは2019年の冬にALTER BRIDGEとSHINEDOWNと一緒にヨーロッパで行なったもので、その時僕たちはバスの後部座席で曲をたくさん書いたんだ。アコースティック・ギターが何本かあったんでね。"そうだ、このサビはバスの中で作ったんだ!""このフレーズは階下の冷蔵庫のそばで作ったんだ!"なんて思い出したよ(笑)。あのツアーから戻って今度はプロモーション・ツアーでアメリカに行ったけど、(コロナのせいで)すべてキャンセルになって帰国した。それで、このアルバムに専念したんだ。"この曲をまとめて、しっかり改善していこう"ってね。実際そうすることで、かなりいいレベルにまで達したんだ。でもその時『Exile』をやろうということになったんで、それが終わってから『Blood Omen』に戻ったんだよ。というわけで、ここに収められているアイディアの中には何年も前からあったものもあるけど、かたちになったのはパンデミックが終わるころだったんだ。