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INTERVIEW

THE RAVEN AGE

2023.07.06UPDATE

2023年07月号掲載

THE RAVEN AGE

Member:George Harris(Gt)

Interviewer:井上 光一


今どきはみんな、Spotifyとかのストリーミング・プラットフォームでいろんな音楽を聴いているけど、僕たちは未だにアルバムを念頭に置いて曲を作っている。アートワークとかも好きだから、フィジカルがいい。


-本作でも長年タッグを組んでいるMatt Hydeがプロデュースを手掛けています。他のプロデューサーではなく、Mattとの仕事ならではの特別なケミストリーが生まれたりするのでしょうか。

そのとおりだね。だからこそ、ずっとMattとやっているんだよ。実は、今回のアルバムで他の人とやってみようと試してみたんだけど、いいサウンドでも、何だか僕たちらしくなかった。僕たち自身のサウンドは見つけていたから、それを失いたくなかったんだけど、それが少しだけ失われてしまったんだ。それで、Mattとまた一緒にやることにしたんだ。彼とは素晴らしい仕事の関係を築けていると思うよ。彼は、僕たちから最高のものを引き出してくれるんだ。あと、このアルバムは僕たちのプロデュースによる部分も大きいんだ。僕とシンガーのMatt James(MJ)が、Matt(Hyde)と一緒に曲のミックスを行なったんだけど、そのおかげで、プロデューサーのサウンドではなく僕たちらしいサウンドに仕上がったんだよ。

-ファースト・シングルの「Parasite」はまさにリスナーの目が覚めるような、ヘヴィなリフとアンセミックなメロディが際立つトラックですね。この曲にはFIVE FINGER DEATH PUNCHのAndy James(Gt)がゲストとして印象的なギター・ソロを披露していますが、どのような経緯でゲスト参加が実現したのでしょうか。

Andy Jamesとはしばらく前から一緒にやりたいと思っていたんだ。2017年に僕たちがヨーロッパでTREMONTIのサポートをしたり、Andyのバンド WEARING SCARSもサポートしていた時に出会って、それから彼を通じて彼らのツアー・マネージャー兼サウンド・エンジニアのLuke Di Stefanoとも友達になった。そこからLukeは僕たちのところで仕事をするようになって、2017年以降は僕たちのツアー・マネージャー兼サウンド・エンジニアなんだよ。彼はAndyと同じ町の出身ですごく仲がいいんで、僕たちはAndyに何度も会っていた。ライヴにも来てくれてたし、彼のことをよく知っていたんだ。それで"僕たちの曲でゲストとしてギター・ソロを弾かないか?"ってよく言っていて、彼も"ぜひ!"と言っていたんだけど、なぜかこれまで実現しなかった。それで、今度こそ実現させようと思った時に、「Parasite」がぴったりだと思ったんだ。ソロを弾いてもらいたいと思った箇所がかなりファストでヘヴィだったから、彼の素晴らしいテクニックがぴったりだってね。

-セカンド・シングル「Serpents Tongue」もヘヴィネスとメロディックな部分の絶妙なバランスが素晴らしい、あなたたちの魅力が凝縮されたような楽曲です。MVもまるでアダムス・ファミリーのようなホラー・テイストでおもしろいですね。バンドのキャラクター"レイヴン・キング"も登場しますし。メデューサが出てくるアイディアと曲のタイトルはやはりリンクしているのでしょうか。

そうだね。ファースト・ビデオ「Parasite」は、いつものビデオよりもうちょっと凝った設定にしてみたくて、ファンタジーっぽい感じにしたんだ。「Serpents Tongue」のために描かれたアートワークが"メデューサ"だったんで、"じゃあそれでいこう"と、メデューサを着想の原動力にしたんだよ。アダムス・ファミリーがパーティーしているようなものというアイディアは、確かシンガーのMJが思いついたんだと思う。いろんなアイディアが雪だるま式に膨らんでいって、別のキャラクターも入れようと思って、ミイラやオオカミ人間も登場させた。バカみたいなアイディアをどうやって実現させるかをたくさん考えたんだ。北イングランドで見つけたロケーションもかなり鍵になる要素だった。真っ白なカンバスみたいな光景を前に、やるべきことが山ほどあって、個人的には、音楽ビデオで一番大変だったんじゃないかな(笑)。もう少しで死にそうだったよ。でも、出来上がったものは曲に合っていてうまくいったんだ。「Serpents Tongue」はヘヴィだけどコマーシャルでキャッチーだから、あのビデオはダークだけどちょっと愉快な感じもあるんだ。

-5曲目の「Nostradamus」はタイトルからして意味深ですね。THE RAVEN AGEのメイン・ソングライターはあなただと思いますが......。

ファーストとセカンド・アルバムの曲は僕がほとんど作ったけど、Tony(Maue)とMJがバンドに加入してからはコラボレーションした曲が増えたんだ。『Blood Omen』ではさらにコラボ楽曲が増えているし、「Nostradamus」はシンガーのMJが持ち寄った曲なんだ。だから、歌詞も彼が書いていて、唯一僕が貢献したのは、ギター・リフだよ。"なぜこういう曲を書いたんですか?"ってみんなに聞かれるけど、しばらく前に、"これ、曲にするのにクールなコンセプトだと思うんだけど"と彼が言ってきたんで、僕は"そうだな! 考えさせられるものだ"と言って、予言ってすごく面白いから、単に聴くだけじゃなくて、考えさせられる曲にしたんだよ。

-あなたが書く歌詞のアイディアはどのように生まれるのですか。

個人的には、本を読んだり映画を観たりすることで生まれるんだ。なんでもありだよ。雑誌を読んでも生まれるし、曲とは何の関係もない本を読んでいても、とある言葉が引き金になってひらめくこともある。「Tears Of Stone」は、僕が読んでいた本の中の短い物語にインスパイアされたし「War In Heaven」はギリシャ神話についてなんだ。ひとつに絞り込むことはできないよ。なんでもありなんだから。でも、たいていは物語やファンタジーといったものだね。

-本作は随所に盛り込まれたダイナミック且つ美しいストリングス・サウンドも特徴的です。これまでCOLDPLAYやMUSE、FOO FIGHTERSなどのストリングス・アレンジを手掛けたAudrey Rileyとの仕事はどうでしたか。

素晴らしかったよ。本当に良かった。彼女はすごいよ。音楽を聴く彼女の耳は天下一品だ。本当にクールなんだ。彼女はFOO FIGHTERSといった大物を手掛けてきたんで、僕たちのアルバムを彼女が手掛けてくれて夢が叶ったよ。僕たちのアルバムにはかねてから生ストリングスを入れたいと思っていたんで、その機会が巡ってきて嬉しかった。ロンドンのスタジオでカルテットが生録音するのを見られてすごかったよ。生ストリングスにはまた違ったフィーリングがあるんで、曲がもっと盛り上がるんだ。

-2022年に加入したギタリスト、Tommy Gentryも見事な仕事ぶりですね。あなたとのコンビネーションも素晴らしく、アルバム制作に大いに貢献してくれたのではないでしょうか。

そうだね。Tommyはアルバムのレコーディングのかなり最後のほうでやってきたけど、僕は彼の能力を知っていた。素晴らしいミュージシャンだし、素晴らしいピアニストでもある。彼のギター・ソロは、TonyがやっていたことにTommyなりのやり方を加えた、2つがミックスされているものと、Tommy自身がやったものとがある。あれは、アルバムに花を添えたと思うな。特に「Serpents Tongue」のソロのワンテイクで、「これどう思う?」って訊かれたんで"それだ!"って言ったよ。あれは傑作だと思うな。

-映画のサウンドトラックのような「Changing Of The Guard」がオープニング・トラックに配置されていることで、リスナーは『Blood Omen』の世界に自然と入り込めますね。アルバムの1曲目にイントロダクション的なトラックを持ってくるというアイディアをあなたたちは好んで取り入れていると思うのですが、アルバム全体の流れを重視している結果なのでしょうか。

そうなんだ、僕とDanから来ているんだよ。Danは映画音楽も大好きなんで、あれが彼にとっては自然な曲作りのスタイルなんだ。ファーストとセカンド・アルバムでああいうことをやったんで、それをそのまま続けたんだよ。ライヴでも同じことをやっている。どんどん盛り上がっていって「Parasite」みたいなヘヴィな曲に突入していくとうまくいくんだ。

-ラストの「Tears Of Stone」の終わりはそのままオープニングへと繋がっているような作りですよね。音楽が曲単位で消費されがちなサブスク全盛の現代において、個人的にはひとつの作品としてのアルバムというフォーマットの価値を非常に大切にしているように感じました。

そうなんだ、僕たちは未だにそれを大切にしているんだよ。今どきはみんな、Spotifyとかのストリーミング・プラットフォームでいろんな音楽を聴いているけど、僕たちは未だにアルバムを念頭に置いて曲を作っている。アートワークとかも好きだから、フィジカルがいい。「Tears Of Stone」のメロディがイントロのきっかけになったんだ。同じようなメロディでアルバムを始めて、一巡するような感じにしたらすごくクールじゃないかってね。Audreyや生のストリングスの助けを借りて、今こそそれをやるのにうってつけのタイミングだと思ったんだ。

-今はツアーの真っ最中だと思いますが、本作の曲もすでに披露していますよね。オーディエンスの反応はどうですか?

おととい英国のドーバーでライヴをやったんだけど、そこで初めて新作からの曲をやったんで、ほとんどの客は初めて聞いたんだ。気に入ってくれたことを願うよ(笑)。ライヴ後に会ったファンはみんな新曲を気に入ってくれたみたいなんでね。7月7日にアルバムが出るけど、その前後で新曲をやることになる。みんなライヴで聴いて、アルバムでも聴いて、気に入ってくれると嬉しいね。

-本作を引っ提げて、日本での単独来日公演の予定などはあるのでしょうか。

話はしたよ。特に日本ではこの新作に対する興味があるみたいなんでね。ヘッドライナーでヨーロッパを回るようになったんで、日本でもそうしたいと思っている。いつになるかはわからないけど、今レーベルと話をしているところなんで、じきに行けたらと思っている。

-最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

すでにファンになってくれた人たち、このバンドを聴いて気に入ってくれてどうもありがとう。ストリーミング・プラットフォームに日本からのリスナーが大勢いることは知っているよ。まだ一度しかそっちに行っていないけど、2016年の来日はとってもクールだった。そしてアルバムが7月7日に出るから、またできるだけ早く日本に行きたいと思っているよ。