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INTERVIEW

OLEDICKFOGGY

2023.03.30UPDATE

2023年04月号掲載

OLEDICKFOGGY

Member:伊藤 雄和(Vo/Mand) スージー(E.Gt/A.Gt/Cho) 三隅 朋子(Acc/Key)

Interviewer:杉江 由紀

バンドとして最高に脂が乗った状態になってると思う


-アコースティック・ギターの音色から静かに始まりドラマチックに曲が展開していく「仄灯 -HONOAKARI-」については、今作中において少し異色なテイストになっているように感じましたが、これはどのような経緯で生まれたものでしたか。

スージー:曲の造りとしては、Xの「紅」みたいに静かに始まって途中から速くなる感じにしたかったんですよ。実際、仮タイトルもこれは「紅」だったんです(笑)。

-ここで聴ける繊細なアコースティック・ギターの音は、スージーさんからしても"ひとつの聴かせどころ"だったのではないです?

スージー:ここで使ってるギター、石崎ひゅーい君からの借り物でめちゃめちゃ高いやつなんですよ。おかげですごくいい音で録れました(笑)。

伊藤:CDのブックレットにも、今回ちゃんと"Special Thanks"で石崎ひゅーい君の名前を載せてます(笑)。

三隅:あと、この「仄灯 -HONOAKARI-」はドラムとかベースにもそれぞれ見せ場がありますし、私もアコーディオンでソロを弾いているので、それぞれのメンバーが持っている"らしさ"を感じてもらえる曲にもなっていると思います。

-なお、「仄灯 -HONOAKARI-」の詞では少し他の曲たちとは一線を画する物語が表現されているように感じます。ここでのモチーフとなっているのは......

伊藤:いわゆる宗教2世について書きました。ニュースで見ていて、やっぱりかわいそうだなと思ってしまって。友達の家にも遊びに行けなくて、ひとりぼっちで部屋の中にいる光景を描いたのがこの詞ですね。

-それから、今作中でタイトル・チューンとなっているのは「残夜の汀線」です。日常会話で"汀線"という言葉がまず使われないように思うのですが、この言葉にフォーカスした理由はなんだったのでしょう。

伊藤:僕は前から汀(みぎわ)という言葉が好きで、それを使った歌詞も以前あったんですけどね。ここでは陸と海の交わる汀線を思い浮かべながら、月に照らされてキラキラしたり、新月のときには真っ暗になったり、あるいはそこに夜明けの光が差したりみたいな、幾つもの場面を人間の気持ちの移り変わりと、いろんなことやいろんな意味を重ね合わせながらこの詞を書いていきました。

-詞の内容や曲はもちろんのこと、まずは「残夜の汀線」という曲題が実に素敵です。

伊藤:レーベル側の作った資料の中に"OLEDICKFOGGYは今まで同様、ロックの「汀線」=様々な境界線を突破してゆく"っていう文があるんですけど、自分自身は今までそういうことってあんまり考えたことなかったんですよ。だけど、このアルバムが完成してみて、その言葉を見たときに"きっとその汀線は勝手に突破していくものなんだろうな"って感じたんですよね。昔はジャンルとかにこだわったり、音楽を作っていくうえで"これはOLEDICKFOGGYとしては違うんじゃないか"って凝り固まった考え方をしていたところもあったけど、ここまで20年やってきて"自分たちがいいと思って信じてやれば、どんな音もOLEDICKFOGGYのものにできる"っていう自信がついたんでしょうね。

スージー:「残夜の汀線」のレゲエっぽい感じも、今までのOLEDICKFOGGYではそんなにやったことなかったものですしね。これは新しく入ったベースの鹿児島(大資)君の影響も大きかったんですけど、僕もTHE POLICEとか好きだったし、ただそのままレゲエっぽくやるんじゃなくて、レゲエの要素を自分なりに消化したかたちでOLEDICKFOGGYの音に反映させることができたんじゃないかと思います。

-間奏でのギター・ソロからアコーディオン・ソロへとリレーしていくあの雰囲気も、非常に聴き応えがありますね。

スージー:間奏って言うと何かとギター・ソロってなりがちですけど、ウチはひとりだけに負担が集中しないように分担制で仕事を割り振ってるんです(笑)。

三隅:しかも、これはギターからリレー形式でアコーディオン・ソロになっていくんで、気持ちとしてはまさにバトンを貰って次の伊藤さんの歌のパートにまた自分もバトンを渡していく、っていう気持ちで弾きました。

-もっとも、三隅さんは今回「ゆらゆら」でメイン・ヴォーカルもとっていらっしゃいますよね。

伊藤:これは当初から彼女が歌うことを念頭に作った曲なんですよ。詞も、気持ち的には女の子になったつもりで書いてます(笑)。これ、本人はどういうつもりで歌ったの?

三隅:これだけまるまる1曲を歌うのは人生で初めてのことだったんで、とにかく"やるしかない!"っていう一心でしたよ。気持ちのうえでは、あゆ(浜崎あゆみ)を目指しました。

スージー:歌姫になって歌ったんだね(笑)。

伊藤:じゃあ、ライヴのときはドレスで歌うのかな(笑)。

三隅:真っ白なウェディング・ドレスみたいなの着たい(笑)。

-今後ライヴでの見せ場になっていきそうな曲であるという意味では、8曲目に収録されている「さよならセニョリータ」もすこぶる存在感の強い楽曲ですね。

伊藤:これはですね、Aメロの"どうですか宙描いた夢なんて/滑稽なあなたみたいな甘い罠"っていう部分を真っ先に思いついて、ノリとしては"誰が言ったか知らないが、言われてみれば確かに聞こえる"っていう感じにしたかったんですよ。

-先だって惜しまれつつ終わってしまった"空耳アワー"の、OLEDICKFOGGY版を作りたかったわけですね。

伊藤:思いついてからこうして完成するまで、2年かかりましたね。曲調はこのタイトル通り、メキシコを意識してます。

スージー:だけど、仮タイトルは"エクアドル"でした(笑)。

-「さよならセニョリータ」でも三隅さんは歌われていますが、ここでの役どころが実に最高ですよね。

三隅:私はお金を"ボる側"です。

スージー:コーラスの人のキャラがどんどん増えていって、曲が進むにつれ"ボラれる"被害者が増えていくんですよね(笑)。

伊藤:これもまた夜のドラマだということですよ。

-夜のドラマということであれば、アルバムの最後を飾る「デリバリーヘルスウィング」はある種その究極型と言えるかもしれません。

伊藤:最後にいよいよふざけだしちゃいました(笑)。

スージー:オチだよね、この曲は(笑)。

伊藤:もともとはジャズっぽい曲をやりたくて作ったんですけど、音を録って詞を書く段階で"自分がデリバリーヘルスの送迎ドライバーをやっていたときのエピソードを書こう"となりまして、リアルな経験を生かした歌詞を書きました。

-なんとも興味深いところですねぇ。"デリバリーヘルスウィング"というタイトル・センスも最高ですよ。

伊藤:曲がジャズだけにスウィングしてるんで、そこにデリバリーヘルスっていう言葉をかけてこうなりました。

スージー:ギターを録ってるときは、まさかこういう歌詞が乗ってくるとはまったく予想してなかったですよ(笑)。自分としてはDjango Reinhardtみたいなスウィングの王道ギターを目指したんですけど、こういう詞とタイトルになるんだったらギターもふざけておけば良かったなぁ、って完成してからちょっと思いました。

三隅:私はスウィング大好きなんで、この曲はとにかく楽しく思いっきり弾きまくりましたね。すごく面白い曲になったなって思います。

伊藤:タイトル的にはデリバリーヘルス ウィングっていうお店のことを意味してると思う人もいるかもしれないですし(笑)、そのあたりはまぁ自由に楽しんでください。

-こうなってくると、各曲を生で堪能できるであろう7月15 日の渋谷WWW X公演まで続く"OLEDICKFOGGY「残夜の汀線TOUR 2023」"のほうも楽しみですね。

三隅:自分でもライヴで弾いたときにどうなっていくのかが、とても楽しみです。各地でたくさん演奏してきたいと思います!

スージー:毎回、新しい作品が完成するたびに"いいのができたな"って思うんですけど、今回の『残夜の汀線 -ZANYA NO TEISEN-』は最高傑作になったなという自信があるんで、ツアーでもこの曲たちを最高の状態でパフォーマンスしていきたいですね。あと、自信があるだけにこれが売れなかったら引退しようかなと思います(笑)。

伊藤:僕もそれは同じ気持ちだな。我ながら今回の『残夜の汀線 -ZANYA NO TEISEN-』を作ったことで、OLEDICKFOGGYはバンドとして最高に脂が乗った状態になってると思うんですよ。当然、今回のツアーでもそういうことはいろいろ感じてもらえると思うし、これで仮にダメだったら引退っていうのは僕も考えますね。で、いよいよそうなったときはプロレスラーみたいに新しい団体でも作ろうかな(笑)。