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INTERVIEW

THE WINERY DOGS

2023.02.01UPDATE

2023年02月号掲載

THE WINERY DOGS

Member:Richie Kotzen(Gt/Vo)

Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子

Richie Kotzen(ex-MR. BIG/POISON)、Billy Sheehan(MR. BIG)、Mike Portnoy(ex-DREAM THEATER)によるスーパー・グループ、THE WINERY DOGSが3作目となるアルバム『III』を完成させた。HR/HMシーン屈指のプレイヤーたちが結集したパワー・トリオとして活動当初から話題を呼んでいた彼らだが、前作から約8年ぶりとなる本作でもその魅力は健在。きらびやかな超絶テクニックに、ソウルフルなRichieのヴォーカルによって紡がれるアンサンブルは、さながらヴィンテージのワインのように芳醇なサウンドを奏でている。フロントマンのRichieに、アルバムについて話を訊いた。

-3rdアルバム『III』の完成おめでとうございます。約8年ぶりの新作ということで、今回初めてバンドのことを知る人のためにいくつかベーシックな質問もうかがわせてください。まずTHE WINERY DOGSはどういった経緯で結成されたのでしょうか?

結成したのは、たしか2012年ごろじゃなかったかな。正確に覚えているかはわからないけど(笑)。最初のアルバム(『The Winery Dogs』)を出したのは2013年だった。もともとはBilly(Ba/Vo)とMike(Dr/Vo)がパワー・トリオのフォーマットをやりたいと考えていたのが始まりだったんだ。Eddie Trunkというアメリカ人DJが俺に連絡するようにアドバイスしたらしい。もしかしたら興味を持つかもしれないなんて言ってね。それでロサンゼルスにある俺の家に3人で集まって、ちょっと話をしてから、自宅スタジオのリハーサル・ルームに入ったんだ。そのとき、誰からとなくアイディアを投げ合い始めてね。なんのプレッシャーもなく。この時点ではなんの曲もできていなかったけど、そのとき生まれたアイディアの中には俺たちにとってすごくエキサイティングなものがいくつかあったから、そのまま続けていくことにしたんだ。気がついたらアルバム1枚作るのに十分な数の曲ができていた。それを俺の家でレコーディングして......そうやって始動して、今に至るというわけさ。だからこのバンドができたのは本当に偶然だったけど、ありがたいことにすぐにケミストリーが生まれたから、こうして3rdアルバムを作ることができたんだ。

-BillyとはMR. BIG時代に一緒でしたが、Mikeとはこれ以前に知り合いだったのでしょうか?

いや。俺の記憶が正しければ、彼が別の仕事でLAにいて、俺がEddie Trunkに会いに行ったとき、ウェスト・ハリウッドのどこかのレストランでEddieからMikeを紹介してもらったことはあったけどね。彼に会ったのはそのときが初めてだった。でも、すぐに意気投合することができたよ。俺たちはユーモアのセンスが似ているし、相性は抜群といったところだね。

-まずBillyとMikeと集まったときにはどう感じましたか。

興味深いアイディアだなと思ったよ。ドアが開かれていて、あとは俺がそこを通るかどうかの問題という感じだった。その少し前、2011年に俺は『24 Hours』というアルバムを出して、ヨーロッパ中をたくさんツアーしていた。それが終わって帰ってきたとき、俺はとても疲れていてね。家族にこう話したのを覚えているよ。"ソロ・アーティストでいるのはすごく楽しいけど、他人とコラボする機会があってもいい気がする。一緒に荷馬車を引っ張ってくれる人がいたら"ってね。そう思っていたところにEddieから電話があって、"なぁ、よく聴いてくれ。ミーティングに参加する気はあるか?"と聞いてきたんだ。Billyとは俺が19歳のころからの付き合いでね。

-MR. BIG以前からということですか。

ああ。もちろんMR. BIGで一緒にやっていたわけだけど、その前にPat Torpey(MR. BIGのドラマー/2018年逝去)と彼と俺の3人でトリオ的なものをやっていたことは、ほとんど知られていない。いくつか曲を一緒に書いてね。そのうち1曲は、俺が1998年に出したソロ・アルバム『What Is...』に入れたんだ。「Locked Out」という曲で、BillyとPatのセッションから生まれた。そのときもパワー・トリオを結成するという案だったけど、結局実現しなかったんだ。MR. BIGが再結成したのもあったと思うし、

-ようやくパワー・トリオとして始動したのがTHE WINERY DOGSだったんですね。このバンド名の由来についてもうかがえますか?

面白い話があってさ。このバンドが1stアルバムを作り終わったころ、曲のミキシングも終わって、レコード会社との契約も決まったのに、まだバンド名がなかったんだ。何も思いつかなくてね。忘れられない出来事があってさ。ある夜友人と出かけたときに、俺が"バンド名がなかなか思いつかなくて困っているんだ"なんて話をしたら、そいつがふと俺のほうを見て"THE WINERY DOGSはどうだ?"と言ってきたんだ。俺が"すごくクールな響きじゃないか! どういう意味だ?"と返したら、"WINERY DOGS"というのはブドウ畑で使われている犬で、ブドウを食べそうな小動物を追い出すために飼われているらしい。すごくクールな名前だと思ったから、それで行くことにしたんだ。となると、次のステップはBillyとMikeを説得することだった。ちょっと時間がかかったけど、納得してくれたよ。

-そんなTHE WINERY DOGSにとって、約8年ぶりとなるニュー・アルバムが完成した心境を教えていただけますか?

本当にハッピーだよ。早くみんなにチェックしてもらいたくてワクワクしているんだ。俺たちが最後に新曲を出してからあまりに長い時間が経ってしまったし、中身もとても誇りに思っている。俺たちの今の状態を素晴らしい形で表していると思うからね。

-おっしゃるとおり前作から期間が空いており、その間はみなさん別の活動で忙しかったと思いますが、メンバーとTHE WINERY DOGSの今後について話し合う機会はあったのでしょうか? 2019年にはアルバムを伴わないアメリカ・ツアー"Who Let The Dogs Out"を開催していますが、これはどういった流れで行われたのでしょうか。

あのツアーは俺の提案で、とりあえずアメリカ国内でツアーに出ていくつかショーをやってみようという話になったんだ。3人全員が揃う時期があったしね。もとの計画はたしか、そのツアーから新作づくりになだれ込むというものじゃなかったかな。でもご存じのとおりパンデミックが起こって、すべての調子が狂ってしまった。ようやくまた集まれるようになって、ここLAの俺の家で2回集まったんだ。それで新曲が生まれた。まぁ、タイミングの問題だね。ただ当初は、俺自身はあまり長い間バンドとして姿を見せないことは望んでいなかった。だから2019年にあのツアーをやったときは、とにかく外に出て、みんなに"このバンドはまだ存在しているぞ! どこにも行かないから、新しいアルバムを作るまで待っていてくれ"という意思表示をするのが目的だったんだ。

-それぞれの活動をしている間、THE WINERY DOGSとしては活動休止期間だったと。

そうだね。解散したことは一度もないよ。というか、俺の場合、1歩引いてソロ活動に戻ったのはソロが恋しくなったからなんだ。俺は基本的にずっとそうやって生計を立ててきたからね(笑)。自分で曲を書いて、ツアーして、自分の音楽をプレイしてきた。そういう生活に少し戻ってみたいと思ったんだ。そうしたらバンドに対しても確実に新しい視点を得ることができるし。俯瞰してみたら、すべてが収まるべきところに収まった気がするね。曲を書くまでに長い休止期間があったけど、いざ一緒に書き始めたらすごくいい曲ができたと思う。人生のこのステージにいる自分たち自身をいい形で描くことができた。ものの流れっていうのは、時にはなるべくしてなることがあるんだ。今はこうやって3rdアルバムができてとにかくハッピーだよ。

-今回のアルバムを制作するにあたって、"Who Let The Dogs Out"ツアーは何か影響を与えましたか?

いや、与えたとは言えないかな。ツアーから、やっと曲を書ける状況になるまで間が空いていたしね。だから直接的なコネクションはないと思うけど、強いて言えば、俺たち3人が一緒にプレイすることの尊さ、そしてそれが俺たちひとりひとりにどんな意味を持っているのかを、あのツアーが再認識させてくれたと思う。だからあのツアーはとても重要なことだった。新作の曲を書く前にツアーしたというのも重要だったと思うね。間が空きすぎてしまったから、あのツアーがアルバムに直接的な影響を与えたわけではないけど、あのツアーをやったおかげで、俺たちが何者であるかを再認識することができたし、新作を作るための背中を押してもらえた気がするよ。

-そうすると、アルバムの制作を始めたのは2020年から2021年のあたりでしょうか?

そのあたりだね。2021年に2回集まったんだ。そのときは音楽的なところを詰めて、それから俺が歌詞やメロディを考えて完成に持っていった。だから結構なプロセスだったよ。アルバムなんて一夜にしてできるもんだなんて思っている人がたまにいるけど......そりゃそうやって作れる人もいるだろうけど(苦笑)、俺はどう歌ってどうアプローチするかをもっと慎重に考えるタチなんだ。

-ご自身で書いた歌詞を歌う場合は特に、自分にとって意味のあるものにしたいでしょうしね。

まさにそれだよ! それに、書く題材もちゃんとしたものがないとね。それはまた別問題なんだ。出来事の数は限られているしね。ちゃんと生活していないと新しい視点も生まれない。

-パンデミックの間も3人ともとても忙しかったですよね。あなたは50曲収録のソロ・アルバム『50 For 50』のプロジェクトや、Adrian Smith(IRON MAIDEN/Gt)とのSMITH/KOTZENもありましたし、BillyとMikeはSONS OF APOLLOに参加して、BillyはTALAS、MikeもLIQUID TENSION EXPERIMENTやTRANSATLANTICなどで活動していました。スケジュールを合わせるだけでも苦労したのではないかと思いますが、いかがでしたか?

うーん、俺のスケジュールは例えばMikeのほど立て込んでいなかったと思うよ。俺はRichie Kotzenとしての(ソロ)活動以外はあまりやっていないからね。『50 For 50』を作って。Adrian(Smith)と俺は断続的に曲を書き続けていて、パンデミックが始まる直前にレコーディングしたアルバムが最終的にデビュー・アルバム(『Smith/Kotzen』)になったんだ。あのアルバムのリリースはタイミングありきだったね。ロックダウン中にミキシングして、2021年にリリースしたんだ。俺の記憶が正しければ。でもそれ以外はあまり活動していないんだ。Richie Kotzenとしての活動と、Adrianとのプロジェクトと、そしてもちろんTHE WINERY DOGS。その3つがあれば俺にとっては十分と言える。

-今回はたくさん集まる必要がありましたか?

いや、必要があったのは2回だけだね。2回俺の家に集まったときに、ふたりは自分たちが必要なことを全部やってくれたんだ。そのあとで俺がギターや歌とか、俺の仕事になっている部分をやった。そのあと去年の11月にまた集まったけど、その時はMVを作ったりフォト・セッションをやったりしたんだ。

-今回のアルバムで目指したサウンドや、方向性などはありますか?

いや。俺たち個人個人のやり方が、このバンドでは自動的に方向性を決めていったような気がする。"こういう音にするべきだ"なんて話をした記憶がないんだ。一緒にプレイしていると、自然にああいうサウンドになっていく感じかな。

-たしかにTHE WINERY DOGSとしての独特のスタイルがあるように感じます。今回は過去の作品よりさらにレベルアップして、音の幅が広がったり高みに近づいたりしているような印象がありますが、ご自身では、過去のアルバムとどのような点が異なっていると考えていますか?

(※少し間を置いて)ある意味、今までよりもフォーカスのあるアルバムな気がするね。俺たちがパワー・トリオであるということによりフォーカスしていると思う。というのも、1stアルバムでは俺がピアノも弾いているし、2ndアルバム(2015年リリースの『Hot Streak』)ではオーバーダブを多用したりピアノを入れたりしている。今回は3ピースのロック・バンド、つまりギター&ベース&ドラムスであることにもっと専念しているんだ。それが以前よりいいことなのか、悪いことなのか、そういうことはともかくとして、そのおかげで各曲が強力になったと思う。いわゆるフィラー(穴埋め)的な曲は一切ないと思うしね。どの曲も理由があってアルバムに入っていると感じているよ。

-そのとおりだと思います。ひとつ興味深いと思ったのが、プレス・リリースでは"どうやってライヴでやるのかはまったく考えない"と、自分のヴィジョンをどのようにスピーカーから出てくるようにするのかに専念しているということをおっしゃっていますが、本作ではライヴや一発撮りに近いような非常に生々しい空気感が詰まっているように感じました。これはひょっとして、パワー・トリオであることにフォーカスした結果なのでしょうか。

そうだね。というか、今君が言っていたことは、俺がかねてから言っていたことなんだ。俺がスタジオにいるときは"スタジオにいる"ことだけを考えている。ライヴのことはまったく考えない。現実問題として、ライヴでやらずに終わる曲になるかもしれないからね。俺はいつもその瞬間に集中しているんだ。アルバムを作っているときに俺が考えているのは、その曲にとって何がベストなのか。トランペット・ソロを入れるのがいいと思ったらトランペット・ソロを入れる。俺はそういうメンタリティなんだ。いったん曲を書いてレコーディングしてしまえば、ゆっくり考えることができる。"よし、この曲はライヴでいい感じに解釈できそうだ。じゃあ曲を覚えて、命を吹き込んでみよう"と思うようになる。そういうやり方が正しいとか間違っているとか言うわけじゃなくて、単に俺のアプローチがそういうものだってことなんだけどね。

-これらの曲はライヴでの様子が想像しやすいのですが、それはここ数年満足にライヴが行えなかった影響も反映されているのでしょうか。

それはもちろんあったよ(即答)! 俺たち3人ともライヴが恋しかったね。俺は去年1ヶ月半くらいソロ・バンドでアメリカ国内をツアーすることができて良かったけど。3人ともこのアルバムを引っ提げてツアーするのをとても楽しみにしているんだ。