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INTERVIEW

THE WINERY DOGS

2023.02.01UPDATE

2023年02月号掲載

THE WINERY DOGS

Member:Richie Kotzen(Gt/Vo)

Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子

俺たちは"バンド"のサウンドを作っているんだ。 誰がどのアイディアを最初に出したとしても、サウンドを形成するのは必ず3人だ


-「Xanadu」は、1曲目からいきなりの熱気を帯びたパフォーマンスが印象的です。最後にMikeがスティックを投げる音まで収められているのが面白いですね。

あぁ、あれは最高だよね(笑)! 俺が最初に歌詞をつけたのがあの曲だったんだ。数日間みんなでスタジオで過ごしていたんだけど、ある晩ふと俺がひとりでスタジオに入ってインプロヴィゼーションを始めた。思いつくままにね。そのとき頭にあったのは、パーフェクトな場所、パーフェクトなシチュエーションにいる人物の図だった。文字どおり"Xanadu"(桃源郷、ユートピア)の状態だね。そこに並列するようなシチュエーションで、誰かがそれを台なしにしようとする。現実世界でもあるよね。"どうした? 何か問題があった?"みたいに聞かれ続けていると、実際は何も悪いことなんてなくても、何か問題があるんじゃないかと思うようになってしまってさ。この曲はそんな感じで、自分の世界にいてすごくいい気分を味わっているのに......"Xanadu"な、パーフェクトな状態にいるのに、やがて誰かにイライラさせられて軌道から引き離されてしまう、そんなことを歌っているんだ。ヴォーカルをレコーディングしてから翌日ふたりを迎えに行って、ラフ・ミックスを聴かせたら、ふたりともとても気に入ってくれた。"いいね"と言われて、もっと書きたいと思ったよ。

-Track.2「Mad World」はMVが公開されたばかり(※取材は1月上旬)の楽曲ですが、様々な言語で絶賛のコメントが書き込まれていますね。歌詞がわからなくても伝わる部分があるでしょうし、わかる人にとっては歌詞の内容も音楽も素晴らしいと思います。

ありがとう!「Mad World」は俺にとって、ソウルというかモータウン的なフィーリングの大きい曲なんだ。実はFOUR TOPSの歌詞から引用して"look over your shoulder"(肩越しに見てごらん)と歌っている。あれは彼らの「Reach Out I'll Be There」の歌詞からまっすぐ来たものなんだ。オマージュみたいなものだね。面白いもので、俺たちの曲をよく聴いてくれている人たちでも、どこから影響されているのかわからないことが結構あるんだ。でも俺はソウル・シンガーをたくさん聴いて育っているから、R&Bの影響が大きい。シンガーとしてもね。「Mad World」にはその片鱗があるんだ。

-たしかにこの曲に限らず、あなたの声にはソウルフルなヴァイブがありますよね。曲の合間にセリフを投げ掛けるようなところにも感じられます。

そうだね。ほら、俺はフィラデルフィア郊外で育ったから、子供のころはTHE SPINNERS、THE O'JAYSといったようなソウルやファンクに接することが多かったんだ。俺にとっては昔から大きな一部だよ。しかも俺はPRINCEの大ファンだし――「Mad World」のMVで俺がマイク・スタンドを使ったアクションをやっているけど、あれはPRINCEやJames Brownの影響なんだ。そういうところに影響が表れているよ。

-ギター・テクニックのことも質問させてください。Track.4「Rise」はテクニカルなフレーズが随所に登場するアグレッシヴな楽曲です。特に後半の、Billyのベースとの絡みは圧巻ですね。

ああいう曲はベースがBilly Sheehanだと最高だよね。彼は何を書いてもプレイできるような人だから。あの曲で俺はフィンガースタイルのリフを弾いていて、それに重ねる形でBillyが弾いてくれているんだ。そうするとすごくクールでパワフルな効果がある。バンドのいいところってそれだよね。俺が何か弾いたら、他のメンバーはそれに対してどうすればいいかわかってくれているから。説明もいらないんだ。

-あなたもメンバーの良さを引き立てている感がありますしね。

そう、お互いうまく引き立て合っているんだ。この前Mikeがやったインタビューの動画を観たけど、"俺たち3人は誰か欠けたときにただ代わりを見つければいいってもんじゃない"と言っていたよ。3人で引き立て合うか、何もないかなんだ。それは結成当時から俺たちが合意していることで......俺たちは"バンド"のサウンドを作っているんだ。誰がどのアイディアを最初に出したとしても、サウンドを形成するのは必ず3人だ。

-Track.5「Stars」では往年のハード・ロックのような、長尺でアトモスフェリックなギター・ソロを披露しています。聴いているとまるで宇宙旅行に連れ出されたような感覚がありますが、ギタリストとしての面で工夫したことを教えていただけますか?

あぁ、あれね(笑)。あの曲はクールだよね。リフはBillyがプレイしていたもので、それをもとに曲を書くことにしたんだ。俺があのコーラスのパートを思いついて......でもミドル・セクションをああいうふうにしようと言ったのはMikeのアイディアなんだ。彼は俺に長尺のソロを弾かせたいと考えた。それでやることにしたとき、ただ弾くよりもひと味違ったアプローチにさせてくれと言ったんだ。初めはとても穏やかな感じに始まって、それからディレイを使った弾き方を経て、アグレッシヴなものへと発展していく。あれが実現したのはまさにコラボの成果だね。

-他のメンバーもアイディアを出してくれたんですね。

そうだね、そういうときもあるよ。バンドの素晴らしいところの一部だと思う。Billyの弾いたものに影響されて俺が自分の弾き方をちょっと変えてみることもあるし、Mikeがコンセプトを出したりサジェストをしてくれたりすることもあるし。Mikeは"Fulfill my music fantasy(俺の音楽的な妄想を満たしてくれ)"と言うことがよくある。どういう意味かというと"(最終的に)やらなくていいから、とりあえず5分くらい俺のアイディアを試してみてくれ。そうしたら気に入るかどうか俺が見極めるから"ということなんだ。まぁ、内輪のジョークみたいなものだけど(笑)、そうやることでクールなものが生まれることが多いよ。

-ヴォーカリスト的な質問に戻ると、Track.6「The Vengeance」では他の曲より高めのキーで、ファルセットを用いたエモーショナルな歌唱を聴かせています。特にギター・ソロに入る前は高くなりますが、ヴォーカリストとしての面で意識したこともうかがえますか?

あれは始まりが低めの声でどんどん高くなっていくよね。とてもドラマチックな曲だ。たぶんアルバムの中でも一番ドラマチックなんじゃないかな。歌詞的には結構フラストレーションを歌っている。フラストレーションを抱えた人がなんとかそれと付き合っていこうとしているんだ。ダイナミックで、爆発する曲だよね。コーラスが壮大で、そこから一気に小さなヴァースに入っていくから。いつかあれをライヴでやれたらクールだろうな。

-間違いないですね。Track.8「Gaslight」は、MOTÖRHEADを思わせるような疾走感のある楽曲です。

たしかに(笑)。あのドラムビートはいかにもMike Portnoyらしいよね。彼はあの手の高速ツーバス・リズムの達人だから。ああいうアグレッシヴなものが欲しいと俺たちが考えていたら、彼があのビートを叩き始めたんだ。そこに俺がリフを加えた。そんな感じだよ。

-Track.10「The Red Wine」はアルバムで一番の長尺曲で、即興的なセッション・パートも聴きどころです。

そう、あのエンディングには、いつもの俺たちのやり方が出ているね。曲の作り始めに思いついたものを辿りながら、本格的なインプロヴィゼーションをやっている。アルバムを締めくくるのには最高の手法だね。ライヴ方式の録音で、一緒にプレイしながら、お互いを引き立て合って。あと、この曲は俺たちに今までなかったアンセム・タイプの曲なんだ。これもライヴでやることになるだろうね。

-この曲もドラマチックですね。最後は宇宙空間に飛んでいくような感覚があります。ライヴでの再現がとても興味深いです。

そう、それを今から考えないといけないんだよな(笑)。お互いのプレイヤーとしての本能を信じることが大切になってくる部分が大きいと思う。スタジオ・バージョンを"再現"しようとするんじゃなくて、それに"近い"ものを生み出そうとすることだね。だからこの曲は毎晩少しずつ違ったものになるんじゃないかな。

-その違いも楽しみになると思います。バンドは来月から6月くらいまでツアーに出ますが、日本に来るチャンスはありそうですか? 2013年、2016年と来日公演を行っており、THE WINERY DOGSとしての初ライヴを行った場所でもありますよね。

そう、初めてのライヴが日本だった。今俺たちはもっと先のツアー日程を組もうとしているところで、現時点ではまだ何も発表できるものがないけど、今年中に日本に行ける可能性が出ているんだ。そうなることを楽しみにしているところだよ。

-過去のツアーから、何か印象に残っている思い出などはありますか?

そりゃああるさ! 日本で誕生日を過ごしたこともあるよ。初めて日本でライヴしたのが90年代半ばなんだけど、それ以来日本は俺にとってプレイするのに素晴らしい場所なんだ。日本は最高だよ。食べ物も大好きだし、俺たちが行くといつもみんなフレンドリーで優しくしてくれるしね。ビデオも撮ったよ。ソロ・バンドでライヴ・ビデオを撮ったこともある。2015年だったかな。THE WINERY DOGSとしても、初めて日本に行ったときにライヴ・ビデオ(2014年リリースのライヴDVD『Unleashed In Japan 2013』)を撮ったよ。

-最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

日本にまた行ける日を心から楽しみにしているんだ。特にこのTHE WINERY DOGSの新作の曲を早くみんなの前でプレイしたいね。前回からあまりに長い時間が経ってしまったし、日本が恋しくて仕方がない。今年こそはそっちに行ってみんなに会いたいと思っているよ!