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INTERVIEW

Michael Romeo

2022.03.17UPDATE

2022年03月号掲載

Michael Romeo

Interviewer:菅谷 透 Interview interpreted and translated by 川原 真理子

SYMPHONY Xのオリジナル・メンバーであるギタリストのMichael Romeoが、ソロとして3作目となる最新作『War Of The Worlds, Pt. 2』を完成させた。2018年の前作『War Of The Worlds, Pt. 1』に続く"War Of The Worlds"サーガの第2弾となる本作は、SF小説を想起させるタイトルのとおり、壮大でプログレッシヴな、圧巻のスペース・オペラを見事に具現化した作品だ。そして日本盤には、ボーナス・トラックとしてあの「ゴジラのテーマ」のカバーが収録される(!)のも嬉しいポイントだろう。そんなSF愛が詰め込まれたアルバムについて、Michael本人に話を訊いた。

-本作からこの"サーガ"に触れるファンのために、まず前作の『War Of The Worlds, Pt. 1』についても簡潔にうかがえればと思います。同作は1994年の『The Dark Chapter』以来のソロ・アルバムとなりましたが、制作のきっかけはなんだったのでしょうか?

あのころ、バンドはちょっと休止していたから、"ソロ・アルバムを作ったらいいんじゃないか"と思ったんだ。SYMPHONY Xでずっと忙しくて、ソロ・アルバムはずいぶん長い間作っていなかったし、楽しく違うことをやりたいなと思ったんだよ。2017年か2018年のことだったけど、曲作りを始めると僕はいつだって必要以上の曲を書いてしまう。始めた途端、止まらないんだ。それで曲がたくさんできてしまったから、とりあえずは半分やって、残りは保留にして今後のために取っておこうと思ったんだよ。というわけで、『Pt. 1』と『Pt. 2』になることは最初からわかっていたんだ。どちらもほぼ同時期に書かれたものだからね。

-では、『Pt. 1』をリリースしたとき、『Pt. 2』もほぼ完成していたのですね?

そのころには9割がたできていたんだ。ただ、『Pt. 2』にまたいつ手をつけられるのかわからなかった。2020年にSYMPHONY Xのツアーが予定されていて、僕としては4月か5月になるだろうから、バンドがツアーに出掛ける前に『Pt. 2』をやればいいと思っていたんだ。ところが、コロナ禍のせいですべての予定が狂ってしまった。あれは変な時期だったよ。それで、すべてのペースが遅れてしまったんだ。当然ツアーはすべて中止になったからね。『Pt. 2』の作業にしても、ミキシングやマスタリングの手伝いをしてくれるイタリア人の友達、Simone Mularoniのスタジオもロックダウンされてしまったんで、手をつけるのが難しかった。でもツアーが中止になったから、焦る必要はなかったよ。それで、できあがっているものを見て"あと3曲足りないかな"と思った。すべてがシャットダウンして、せっかく時間があるんだから、もう3曲作ることにしたんだよ。アイディアはあったから、それを完成させた。でも、大半はかなり前にできあがっていたんだ。

-SYMPHONY Xとしての活動を経てのソロ・アルバムとなったわけですが、SYMPHONY Xとソロでの楽曲の方向性の違いなどは意識しましたか?

それはしたけど、ちょっと難しいね。どのみち僕らしいものになってしまうんだから。でも意識してバンドではやらないと思えるような、違うものにしようとは思ったよ。『Pt. 1』には、エレクトロニクスが多少入っていた。ギターと一緒にダブステップすらちょっと入っていたけど、あれはバンドでは絶対にやらないよ(笑)! 今回はまたちょっと違うことをやってみた。別の楽器を試してみたんだ。シンセやサウンド・デザインも使ったけど、ギターでさらにオーケストラルでシネマチックなものにした。バンドでも常にちょっと違うことをやろうとしているけど、曲作りやレコーディングの際にライヴでやることを常に念頭に置いている。でもここではギターをしこたま入れているし、アコースティック楽器やキーボードと、(※スタジオ内を指して)そこいらにあるものもたくさん入れている。なんの心配もしなくていいから、こういうことをやるときはクリエイティヴな面でより自由なんだ。

-おっしゃるように、『Pt. 1』ではEDM/ダブステップの実験的要素も導入されていましたが、本作はより映画音楽的なシンフォニック・サウンドを突き詰めていますね。アレンジメントではどのような点を意識しましたか?

曲作りはどちらもほぼ同時期に行われたから、僕からするとどちらも同じに感じるね。たしかに『Pt. 1』にはダブステップが入っていたかもしれないし、今回はシネマチックでオーケストラルな楽曲が多いかもしれない。またダブステップをやりたくはなかったんだ。すでにやったことだからね。楽しかったしクールだったけど、2度やる必要はなかった。だから今回は、シネマチックで映画音楽のような感じなんだ。John Williamsの"スター・ウォーズ"がちょっと入っているかな。あともちろん、ギターが満載だ(笑)。

-タイトルの"War Of The Worlds"はH・G・ウェルズの著名な小説("宇宙戦争")を想起させますね。それにもインスパイアされたのですか?

そうだよ。僕の場合、物語とか、ヴィジョンの助けになるアイディアがあるとうまくいくんだ。SYMPHONY Xでも同じことで、『Paradise Lost』(2007年リリースの7thアルバム)にしても『The Odyssey』(2002年リリースの6thアルバム)にしても、それぞれの音楽がどういうものになるべきかがわかるよね。だからこのアルバムを始めたとき、ギターをたくさん入れたいことはわかっていたし、オーケストラルでシネマチックなものにしたいこともわかっていた。サウンド・デザインやシンセも多少入れてね。要は宇宙を扱った大作、ホルストの「惑星」のようなものにしたかったんだ。そのためにはどんな本や映画からヒントを得たらいいかなと思っていたところ、古典である"宇宙戦争"を思いついた。少なくとも、これを音楽のガイドラインにしようと思ったんだ。歌詞については、物語仕立てにはしたくなかったね。むしろ、"僕たち対彼ら"ということで、何にでもあてはめられる。だから火星人についての曲もあれば、僕たちの周りで毎日起こっている紛争についての曲もある。SFにもなり得るけど、それ以上のものにもなり得る。僕にとって一番重要なのは音楽だから、どういう音楽にしたいかははっきりとわかっていたんだよ。

-では、一貫したストーリーはないということですね?

そういうこと。そんなことをしたら、3曲もしたらネタ切れになってしまうんじゃないかな(笑)。"エイリアンがやって来て、火星人が宇宙光線で襲来する。さて、4曲目はどうする?"ってことになるよ(笑)。

-先ほど"スター・ウォーズ"の話が出ましたが、あなたのプレイスルー動画を拝見したとき、テーブルの上に"スター・ウォーズ"関連のグッズが置かれているのを見ました。これらもまたインスピレーションなのかなと思いましたが、いかがでしょうか?

ここにいろいろあるよ。あそこにダース・ベイダーもいるし、もうひとつあっちにある。いろいろあるんだ。僕はSFものが大好きなんだよ。モンスターとか、ファンタジーものが好きなんだ。"スター・ウォーズ"は、何よりも音楽が好きなんじゃないかな。John Williamsが僕のお気に入りなんだ。映画も素晴らしいけど、僕の心に一番訴えるのは音楽なんだよ。だから僕は、"スター・ウォーズ"の大ファンなんだ。

-なるほど。"スター・ウォーズ"あり、"宇宙戦争"ありなんですね。

そう、いろんなものがちょっとずつ入っているんだよ。

-『Pt. 1』の時点で『Pt. 2』の9割がたは完成していたということですが、残りはパンデミックの最中に制作されたんですよね?

そう、初期のころだった。いや、その前だったかな。2020年の初めから再開するつもりだったから、そのころから曲作りを始めていたんだ。3月ごろに追加のドラムを終えようとしていたから、すべてがおかしくなる直前のことだったよ。

-John"JD"DeServio(Ba/BLACK LABEL SOCIETY)とJohn Macaluso(Dr)によるリズム・セクションのレコーディングは、『Pt. 1』の時点ですべて終えていたのでしょうか?

あとから作った3曲以外はね。

-その3曲というのは?

ここでまたちょっと違うことをやりたかったんだ。あと3曲やるわけで、これまでにオーケストラルなものがあって、いろんな楽器の曲があるわけだから、あとは何ができるかなと思ったときに、これまで弾いたことのなかったもので7弦ギターがあることに気がついたんだ。それで、7弦を使って何曲かやろうと思ったんだよ。1曲目は「Destroyer」だったと思う。あれは間違いなく7弦だ。あの曲では、サズやウードといった民族楽器も使われている。「Hybrids」でも7弦を使ったと思う。何か違うことをやりたいと思ったときに、7弦を使うことを思いついたんだ。

-『Pt. 1』ではRick Castellanoがヴォーカルを務めてましたが、今回は現在WHITESNAKEでバッキング・ヴォーカル/キーボードを務めるDino Jelusickが起用されています。彼を起用した経緯をうかがえますか?

今作を始めようと思ったとき、『Pt. 1』で歌ったRick Castellanoは僕の友達でね、無名だった彼にチャンスを与えたいと思ったんだ。そして彼は素晴らしい仕事をしてくれたよ。でも今回はちょっと違うことをやってみようと思ってね。1曲ずつ別のシンガーにやってもらおうかとさえ思ったけど、やっぱりそれはやめようと思った。それで、他に誰かいるかなと考えていたところ、イタリアの友達のSimoneと話をしていたときに、彼が友達のDinoを推薦したんだ。"Dinoはきっと喜んでやると思うから、彼に連絡してみろよ"と言われて、彼と話をしたら"素晴らしい! ぜひやりたいよ!"と言ってくれたんだ。そして彼に何曲か送ると、そこに歌を入れて送り返してきた。それが素晴らしかったから、とてもうまくいったんだ。

-先ほどもおっしゃったように、本作も随所にテクニカルでクールなギター・ソロが織り込まれていますが、ご自身で気に入っているソロはありますか?

う~ん、お気に入りねぇ......。全部お気に入りだよ。あとになってから書いたうちの1曲、「Hybrids」かな。あの曲は完成していなかったけど、2020年の時点でその断片はあったんだ。それで、あのリフをループにして繰り返しながらジャムっていたら、"もっと長いギター・ソロ・セクションを入れたらどうかな"と思いついた。1本のギターを使って、それからまた別のギターを使って、取っ替え引っ替えやってみたらどうかなってね。だから、これがクールだと思う。あれは、その場でやったソロなんだ。僕はたいていのソロは作り込んで、それからダブリングする。一方で、インプロヴァイズする場合もある。ラッキーだと、いいものができあがるんだ。あの曲では、クールなことがちょこちょこ起きている。二度と起きないかもしれないけどね(笑)。

-逆に、制作に苦労したソロはありますか?

まぁ、ある意味どれも苦労したよ。でも、すごくクレイジーなものなんてあったかな。いや、なかったね。ただすべてを、できる限りエキサイティングなものにしようとしただけだ。フレージングやヴィブラートに注意したし、曲に合ったもの、しかるべき曲でしかるべきソロをやるよう心掛けた。だから、そんなにとんでもないものはなかったと思うな。まぁ、どのみちどれもクレイジーなんだけどね(笑)。