INTERVIEW
THE LURKING FEAR
2021.11.22UPDATE
2021年11月号掲載
Member:Jonas Stålhammar(Gt)
Interviewer:菅谷 透
AT THE GATESで知られるTomas LindbergとAdrian Erlandssonを始め、GOD MACABREなどのキャリアを経て2017年からはAT THE GATESにも参加するJonas Stålhammarや、SKITSYSTEMでTomasやAdrianと一緒に活動したFredrik Wallenberg、EDGE OF SANITYではギタリストを務めていたAndreas Axelssonという、スウェーデンのシーンを代表する面々が顔を揃えたスーパーグループ THE LURKING FEAR。彼らの2ndアルバム『Death, Madness, Horror, Decay』は、バンド名の由来でもあるアメリカのホラー作家 H・P・ラヴクラフトの作品や、彼の提唱した"コズミック・ホラー(宇宙的恐怖:超常的存在と対峙した人間が覚える恐怖や孤独感のこと)"を冷徹なデス・メタルで具現化した、聴くだけで背筋が凍るような圧巻の作品だ。バンドの成り立ちや新作について、Jonasに話を訊いた。
"30年前のデス・メタルを今に再現してみたい"というのが目的だったんだ
-今回激ロックに初登場となりますので、まずはバンドの成り立ちからうかがえればと思います。あなたはGOD MACABRE、Tomas Lindberg(Vo)とAdrian Erlandsson(Dr)はAT THE GATES、Andreas Axelsson(Ba)はEDGE OF SANITY、Fredrik Wallenberg(Gt)はSARCASM、SKITSYSTEMなど、それぞれ90年代初期からスウェーデンのエクストリーム・ミュージック・シーンで活動されていましたが、当時からお互いに面識はあったのでしょうか?
ああ、30年来の付き合いだよ。俺とTomasはそれ以上だね。TomasとFred(Fredrik Wallenberg)はさらに昔からの仲だ。幼馴染みたいなものだからね。
-同じフェスに出たことがあるなどの交流はあったのでしょうか。
特にそういうわけではないね。そもそも5人中3人、俺とAdrianとTomasがAT THE GATESで一緒だし、なんらかの形で一緒にやってきたんだ。俺の場合はFredとAndreasとやるのはこのバンドが初めてだけどね。
-その後2016年に、このTHE LURKING FEARを結成するわけですが、きっかけはなんだったんでしょうか。
俺は前からTomasといつか何か一緒にやりたいという話をしていたんだ。Adrianともそんな話をしていた。TomasとFredの間でもそういう話が出ていたから、"じゃあみんな一度に実現してしまおう"ということになってね。で、"ベーシストが必要だな。誰をゲットしよう?"という話になって、全員と仲のいいAndreasに声を掛けたんだ。一緒に音楽をやりたいという友情から生まれたバンドだよ。
-それぞれ考えていたプロジェクトを、ひとつにまとめたような感じなんですね。
そのとおりだよ。
-他のバンドですでに忙しいなか、2017年には1stアルバム『Out Of The Voiceless Grave』がリリースされています。この時点ではパーマネントなバンドとして活動していく考えはあったのでしょうか? それとも一時的なプロジェクトとしての意味合いが強かったのでしょうか?
初めから"バンド"にするつもりで、"プロジェクト"という意識はなかったんだ。1枚だけアルバムを作ったら消えるとか、そういう考えはまったくなかった。2枚以上作りたいという気持ちが初めからあったんだ。1stからあまり経たないうちに2ndを出せることになって良かったよ。
-初めからパーマネントにするつもりだったんですね。
そう、みんな他のバンドがあるけど、できるところまでやってみたいと思ってね。
-こうやって集まったということは、メンバー全員アメリカの作家 H・P・ラヴクラフトの作品や"コズミック・ホラー"という概念のファンなのでしょうか。バンド名の"THE LURKING FEAR(潜み棲む恐怖)"まで彼の作品名に由来しています。
バンド名をこれに提案したのはTomasじゃなかったかな。"30年前のデス・メタルを今に再現してみたい"というのが目的だったんだ。30年前もこんな感じの音楽をやっていたし、H.P.ラヴクラフトの存在は昔から大きかったからね。それで、この時代にも彼を取り上げてみようと思ったんだ。ラヴクラフトの占める割合は大きいよ。子供のころから夢中だったしね。
-バンドをやる前から。
ああ。俺が初めてラヴクラフトの作品を読んだのはたしか12~3歳くらいのころじゃなかったかな。"指輪物語"とかより好きだったよ。
-彼はスウェーデンで一般的に人気の作家だったのでしょうか。
そうだね。特にデス・メタル・シーンでは。ラヴクラフトや、クライヴ・バーカー(※イギリスの小説家/脚本家/映画監督)も大人気だった。"ヘル・レイザー"(※クライヴ・バーカーが監督/脚本を手掛けた映画)や"死霊のはらわた"(※サム・ライミ監督によるホラー映画)みたいな80年代のスプラッター映画や、彼らふたりのような作家が、スウェーデンのデス・メタル・シーンでは大人気だったんだ。
-そういう作品からネタを引っ張ってきたバンドが多かったんですね。
彼の作品はそもそもタイトルがすごくクールだったから、ストーリーなんかを引っ張ってくるのに便利でもあったんだ(笑)。
-"THE LURKING FEAR"は最高のタイトルになりましたね(笑)。
そうだね(笑)。バンド名のネタを探していたときに、まだ誰も使っていないことに気づいたんだ。
-このバンドは"30年前のデス・メタルの再現"とのことですが、単なる焼き直しに留まらず、オールドスクールなスウェディッシュ・デス・メタルのサウンドをモダンにアップデートしたようなスタイルになっていますね。
うーん、モダンにアップデートしたというより......何しろもう16~7歳じゃないからね(笑)。長年の間にソングライティングについてもたくさん学んできたし......俺自身に関して言えば、デス・メタルの曲を書くとき、もはやスウェディッシュ・デス・メタルの影響を受けていないんだ。俺にとって、THE LURKING FEARの曲作りは初期のMORBID ANGELとかSLAYERとかそういうのに影響を受けていることが多いね。
-なるほど。ではスウェディッシュ・デス・メタルではなくて......。
というか、スウェディッシュ・デス・メタルよりもアメリカのバンドの影響のほうが強いんじゃないかな。
-たしかに、SLAYERなどが影響元であればそうかもしれませんね。
ああ。
-いわゆる"Buzzsaw"(※Bossのエフェクター"HM-2"を用いた、ザラザラしたギター・サウンド)のようなサウンドは、その中でもスウェーデン的な要素を残そうとしてのことだったのでしょうか。
今回はHM-2をまったく使っていないんだ。1stアルバムではFredが使ったと思うけど、俺はまったく使っていない。もう何年も前からね。あのペダルを使うとリフがあまり生きないような気がするんだよね。まぁ、昔のペダルだよ。俺が使い始めたのは14歳くらいのころだったからね。今はもう使っていないんだ。ごくたまに、彩りをプラスするためにほんの少し使うことはあるけど。あれを使うとたしかにオールドスクールなスウェディッシュ・デス・メタル・バンドになるけど、俺はリフもやらないといけないからね(笑)。あのペダルに依存することにはあまり興味がないんだ。他のメンバーもね。それに、俺たちはスウェーデンのバンドというよりアメリカのバンドみたいになりたかったから(笑)。
-それもあって、オールドスクールに留まらない音になっているのかもしれませんね。
そうだね。
-と言いつつも、お気に入りのスウェディッシュ・デス・メタル・バンドの作品があれば教えていただきたいのですが。
うーん......まずはもちろん、このバンドのメンバーのアルバムだね。GRAVEの初期の2作(1991年リリースの『Into The Grave』、1992年リリースの『You'll Never See...』)も素晴らしい。メンバーの作品の中ではEDGE OF SANITYのアルバムが特に好きだね。CARNAGEは......実際のアルバム(1990年リリースのCADAVERとのスプリット・アルバム『Dark Recollections / Hallucinating Anxiety』)はちょっとがっかりだったけど(笑)。
-(苦笑)
プロダクションが好きじゃなくてね。突貫工事で作ったような感じがするんだ。スプリット・アルバムだったのも気に入らなかった。(CADAVERは)まったく違うバンドだからね。それでもCARNAGEは今も好きだな。デモとかはとても良かったし、お気に入りのバンドだったよ。
-メンバーのバンドのことはリスナーとしてもファンだったのですよね。
ああ。お互いのバンドが好きだよ。それぞれが長年の間にやってきたことをお互い尊敬し合っているんだ。