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INTERVIEW

THE LURKING FEAR

2021.11.22UPDATE

2021年11月号掲載

THE LURKING FEAR

Member:Jonas Stålhammar(Gt)

Interviewer:菅谷 透

-ところで、あなたがAT THE GATESに加入したのはこのバンドが始まってからでしたね。

そうだね。THE LURKING FEARを始めてから7~8ヶ月経ったころだった。6ヶ月だったかな。そのころAnders Björler(Gt)がAT THE GATESをやめることになったんだ。彼の後継者候補を絞っていたときにTomasが俺を推薦してくれた。あいつもAdrianもすでに俺とプレイしていたし、ウマも合ったから、AT THE GATESにもパーフェクトだと思ってくれたらしい。単なる上手いやつじゃなくて、一緒にやっていけるようなやつを探していたから、出会ってすぐに意気投合した俺がぴったりだったんだ。

-気は合うしギターは上手いとわかっているしで。

ははは(照笑)。

-そうして、メンバーの5分の3がAT THE GATESということになりましたね。AT THE GATESも今年新作『The Nightmare Of Being』を発表しましたし、掛け持ちでとても忙しいと思いますが、それぞれのバンドで活動をしていくうえで良かった点や難しい点があれば教えていただけますか?

アルバムのレコーディングはなんの問題もないよ。最大の問題はショーをやるときだね。AT THE GATESが一番ツアーが多いから、その合間を縫ってということになる。THE LURKING FEARは同じ日にフェスに出るのが関の山といったところかな。ショーの合間に何時間か空いていればなんとかなるからね。1stではそういうふうにやったんだ。いくつかフェスに出たとき同じ日にプレイしたよ。AT THE GATESが何もない日が1週間続くとか、そういうことがあれば独自の日程を組むかもしれないけど、実際そういう機会はほとんどないからね。一番大変なのはそれだな。

-時間や物理的な問題ですね。音楽的には違うことをやっているので分けやすいといったところでしょうか。

こっちでは俺とFredとAndreasが曲を書いているけど、AT THE GATESでは俺はソングライティングに参加していないんだ。次のアルバムではもしかしたら書くかもしれないけど、Jonas(Björler/Ba)が全部書いているから。俺は他のバンドでも曲を書いているけど、それもまた全然タイプが違うんだ。もっとプログレッシヴ・ロック寄りだから、デス・メタルと被ることは特にないね。アルバムを作るときは俺が4、5曲、AndreasとFredが2、3曲ずつアイディアを持ち寄る感じなんだ。今回はコラボして作った曲が多かったね。前回はそういうのがまったくなかったけど。(今回は)FredとAndreasが2曲、俺とFredが1曲一緒に書いたんだ。

-らしいですね。そのせいか、前作に比べて、作品により統一感が出たような印象を受けました。

まったくそのとおりだね。と言っても、レコーディングは一体となってできなかったけど(苦笑)。

-パンデミックのせいで。

そう。Adrianはイギリスでドラムスをレコーディングしたんだ。レコーディングは同時進行でやって、あいつが1、2曲ドラムスの音を送ってくれるとこっち(スウェーデン)で俺たちがその曲のギターを考える、みたいな感じにやった。2ヶ国で同時にレコーディングしていたんだ(笑)。

-それぞれの国のスタジオに同時に入って作業していたんですね。

そのとおりだよ。打ち合わせはSkypeなどを使ってね。あいつがドラムスのトラックを送ってくれたらすぐにそこにギターを重ねていったんだ。1週間くらいで終わったよ。

-1週間ですか。それは早かったですね。

そうだね。30年前だったら不可能だったよ。

-そうしてできた2ndアルバムですが、タイトルの"Death, Madness, Horror, Decay"の由来について教えていただけますか?

最初に完成したのがそのタイトルの曲だったんだ。タイトルを思いついたのはTomasだったけど、これもまたとてもラヴクラフト的というか。彼の著書にありそうなタイトルだよね。メンバーもみんな気に入った。その数日後、アルバムも同じタイトルにしようという話になったんだ。デス・メタルのすべてが詰まっているようなタイトルだからね(笑)。"ぜひそうしよう"ということで決まったんだ。制作のかなり初期段階だったね。

-まずあの曲ができて、それからそのタイトルをアルバムにも使うことになったのですね。

そうだね。

-「Death, Madness, Horror, Decay」の曲自体も2ndアルバム全体を網羅したような感じの音になっていますよね。前作よりもさらにリフの攻撃性を増しつつ、その一方ドゥーミーでサイケデリックな要素も取り入れるなど、聴いているだけで一気に心拍数が上がるようなおどろおどろしい作品に仕上がっていますが、「Death, Madness, Horror, Decay」はつんざくようなトレモロ・リフ、緩急をつけて突き進むビートなど、まさに今作を象徴するような楽曲です。この曲がアルバムの方向性を決めたのでしょうか?

ああ、そう思うね。あの曲はFredが書いたんだ。リフは全部あいつ。あいつと俺とAndreasで、あいつの家に集まって曲をまとめた。俺とAndreasはFredよりアレンジが得意だから、"あー、そのリフ半分にして、一部こっちに持ってきて。テンポは......"なんてアイディアを出していたよ。コラボ度がとても高かったね。それもあってアルバム全体の雰囲気が定まったんだ。

-ちなみにこのタイトルは音楽用語の"Attack、Decay、Sustain、Release"との関連はあるのでしょうか?

うーん、意図的にそうしたわけではないね。タイトルを読んでからアルバムを聴いてもらえれば、まさにタイトルどおりだってわかってもらえると思う。ブルータルなデス・メタルだし、邪悪さもホラーも朽ちていく様子も描かれているしね。おどろおどろしくて"はぁ......"とため息が出るような(笑)。

-(笑)ニュー・アルバムを制作するというアイディアはいつごろからあったのでしょうか?

曲を書き始めたのはパンデミックの前だったね。表題曲はFredの誕生日パーティーのときにできたんだ。

-パーティーで(笑)!

その日なら全員集まれるからね。こじんまりしたパーティーだったよ。コロナ禍が始まってから2ヶ月後くらいだったかな。その時点でアルバム作りはもうスタートしていたんだ。レコーディングは去年の終わりにするつもりでいたけど、AT THE GATESのアルバム作りに時間がかかってしまって後回しになった。でも今年は出したいと思ったから、遅くとも今年の春にはレコーディングを終えておかないといけなかったんだ。そのくらいになってようやくできあがったよ。

-ということは、AT THE GATESの新作と本作が同じくらいのころに作られていたのでしょうか。

そうだね。あっちの歌詞もかなりラヴクラフト度が高いんだ。Tomasがうまいことを言っていたよ。あいつは両方の歌詞を同時進行で書いていて、AT THE GATESの曲のテーマにあったペシミズムをこっちにブレンドしたりしていたから、THE LURKING FEARのアルバムをAT THE GATESの新作の"邪悪なステップ・ブラザー(継父や継母の連れ子)"なんて呼んでいたんだ(笑)。

-あはは(笑)。本作のアートワークも邪悪ですよね。凶兆のメタファーである"蝕"や邪神 クトゥルフを想起させるような触手が描かれていますが、こちらのテーマをうかがえますか?

触手は1stにも描かれているんだ。そのテーマを継承している感じだね。当時はTシャツに使うようなロゴを持っていなかったし、今回も作らないことにした。ちゃんとしたロゴを持たないほうが、アートワークがバンド名やタイトルより引き立つと思ったんだ。ちなみにアートワークのアイディアもTomasが考えたものだよ。俺たちはメタル以外の音楽もいろいろ聴いていて、メンバーのほとんどがBAUHAUSというバンドが好きなんだ。彼らのアートワークに月食みたいなものがある(1982年リリースのアルバム『The Sky's Gone Out』)。太陽から炎が出ていてね。そこからヒントを得て、もっと作り込んでいったんだ。Stefan(Thanneur/デザイナー)が触手のアイディアを思いついた。彼は1stのアートワークも手掛けてくれた人なんだ。同じ人にやってもらえて良かったよ。

-表題曲が全体のトーンを決定づけたとのことでしたが、今作には何か全体的なコンセプトがあるのでしょうか?

コンセプトというか、タイトルの4つの言葉がアルバム内の楽曲のタイトルや歌詞にたびたび登場しているんだ。

-あぁ、たしかに。

音楽的にも前回より幅広いと思う。1stはその場のノリで書いた部分が大きかった。みんなエキサイトしていたし、アイディアがどんどん飛び交っていてね。今回はもっとじっくり腰を据えて作って......俺自身はもっと聴きやすい曲を作りたいというのがあった。ヒットしやすそうという意味ではなくて(笑)、一貫性を持たせたかったんだ。俺は"リフができたからこれで曲を作ろう"というタイプじゃなくて、"こういうアイディアがあるから、それに沿った感じの曲を作りたい"という感じなんだ。例えば最後の曲「Leech Of The Aeons」は、最後の曲にするために書いた。そうやって意図して作るのが好きなんだ。"よし、これは最後から2番目の曲にしよう"みたいな感じでね。"この曲はアナログ盤だったらA面だな"とか。そうしたほうが聴きやすくなる気がするんだ。ただ曲をドカッと投入するんじゃなくてね。

-たしかに作品の中に"流れ"を感じます。特に最後の「Leech Of The Aeons」は、緩急があってリフがあちこちに出てくるところなど、集大成的な感じですよね。

ああ、そのとおりだね。俺はアルバムがちゃんと繋がっているのが好きなんだ。最後の曲を聴けば"なるほど、こういうことだったのか"とアルバムの全体像が見えてくるはずだよ。アルバムを結論づけるような感じだね。あの曲で最初にできたのはオルガンのイントロなんだ。俺はハモンド・オルガンやメロトロンをよく弾くから、あの曲ではオルガンで不気味なイントロを作りたかった。"ノートルダム・ド・パリ"(ヴィクトル・ユーゴーの小説)みたいな感じで、教会にいるような雰囲気を出したかったんだ。ドラマチックで壮大な感じにね。ちなみにアナログ盤では溝がエンドレスなグルーヴになっているんだ。レコード針泣かせだよ(笑)。

-アナログ盤を買った人は、自分のレコード・プレーヤーが壊れているのではと思ってしまうのでは(笑)。

このアイディアはSLAYERの『Reign In Blood』(1986年の3rdアルバム)がもとになっているんだ。あれも雨や雷の音がエンドレスなグルーヴになっているからね。俺のお気に入りのアルバムには他にもそういうエンドレスなグルーヴのあるレコードがいくつかあるんだ。とてもクールで不気味だと思う。

-そうですね。

レコード会社のスタッフには"うわっ! 不気味すぎる、というかムカムカするよ"と言っていた人もいたけどね(笑)。

-それは褒め言葉では(笑)。

俺もそう思っているよ(笑)。