INTERVIEW
DON BROCO
2021.11.19UPDATE
2021年11月号掲載
Member:Rob Damiani(Vo)
Interviewer:山本 真由
-今作は、わりとラウドな方向に振り切っていて、それでいてDON BROCOらしいグルーヴ感やポップ・センスが生きているのが素晴らしいと思いました。サウンド的な方向性は、作曲するなかで自然とそうなっていったのでしょうか? それともこうしたいという青写真がすでにあったのでしょうか。
しっくりくるものをひたすら追求していった感じだね。前作で掘り下げることのできたヘヴィネスとエネルギーをキープしたいという考えはあったけど、そのくらいかな。どの曲もクレイジーなところから始まっていて、デモもみんな方向性がバラバラだった。4人の間ではクリエイティヴィティを推進して、どのアルバムのどの曲でも違うことをやろうとしているからね。だから"この方向で行こう"とか"このテーマをやるんだ"とかきちっと決めたことはなかったんだ。前のアルバムではフィーリングに任せてうまくいった気がしたから、その部分は変えたくなかった。自分たちの周りを"箱"で囲むのは嫌だったんだ。その結果、前よりさらにヘヴィな内容になったんじゃないかな。
-そう思います。
でも意図的にそうしたわけじゃなかったんだ。
-オープンなアティテュードを前作から継続した結果、さらにヘヴィなものに辿り着いたんですね。
そうだね。というか、前作よりさらにオープンになった気がするよ。それまでやっていなかったものをなんでも試してみようと思ったからね。音のテクスチャ、ドラムのサウンド、不思議または変だと感じられるものを見つけたらそれを手放さずにおいて、前面に持ってきたんだ。
-その結果1曲の中にもいろいろなダイナミクスがあって面白いできあがりになっていますね。自身では、どの楽曲がお気に入りですか? また、ライヴで披露するのが楽しみな楽曲は?
このツアーでセットリストに入れた曲のひとつが「Bruce Willis」なんだ。書き始めたころから"これはライヴでやったら絶対最高だ"という確信があってね。昨日(10月25日のニューカッスル公演)で初めてプレイしたんだ。
-そうだったんですね!
セットの中でもベスト・ソングだったよ! オーディエンスもみんなノッてくれていたし、その様子を見るのも最高だったね。長い間寝かせていた曲がついに日の目を見たんだから。自分たちにとってもフレッシュで目新しい曲だし、ファンにとってもフレッシュだし、オーディエンスが生み出してくれたエネルギーもとにかくものすごかったんだ。あれは僕としてもライヴでの大のお気に入りになるね。他にすごく気に入っているのは「Anaheim」、それから「Easter Sunday」もエモーショナルなところを掘り下げていくのが気に入っている。あれも僕たちにとっては新しい試みだったね。
-ミュージック・ビデオも、ひとつひとつストーリー性がある作品に仕上がっていて、観ていてとても楽しめました。特に「Endorphins」は、日本の特撮ヒーローものっぽい映像で、あなたが正義の味方に扮してモンスターの"わるもの"をやっつけて......と親近感がわく内容だったのですが、撮影は楽しめましたか?
あれね(笑)。あれはめちゃめちゃ楽しかったよ! 僕が小さかったころ一番ビッグだったテレビ番組のひとつが"パワーレンジャー"(日本のスーパー戦隊のアメリカ版として制作されたTVシリーズ)だったんだ。たしか日本の番組からの映像も使っていたんじゃないかな。"スーパーセンタイ"の。子供のときは気づかなかったけど、アクション・シーンもまるまる使っていたらしい。それと、アメリカのキッズがストーリーを演じる部分を組み合わせていたんだ。初代の"パワーレンジャー"はそういうふうに作っていた。その後、ビッグになったから、オリジナルのシーンを撮るようになったらしいけどね。ともあれ、初期の"パワーレンジャー"は子供だった僕の中でものすごく存在が大きかったんだ。大好きなテレビ番組だったね。「Endorphins」の歌詞にも(初代"パワーレンジャー"のタイトルに入っている)"Mighty Morphin"というフレーズが出てくる。あの歌詞ができた段階で、すでにその要素をビデオに入れようって決めていたんだ。撮影はすごく楽しかったよ。アルバム全体がサイエンス・フィクション愛をテーマにしているようなところもあるしね。あのジャンルに逃避して楽しみを見つけていたんだ。"パワーレンジャー"になるのは子供のころからの夢だったし、叶って良かったよ(笑)。
-スーパーヒーローの衣装を着ていかがでした(笑)?
最高だったよ! すごく楽しかった。
-お似合いでしたよ(笑)。
(笑)別人に扮するのは面白かったね。剣もちゃんと持ってさ。
-子供のころはパワーレンジャーごっことかやりました?
やったよ! 実はビデオの中で使っている短剣のひとつは、僕が子供のころに使っていたやつなんだ。
-えっ!? 本当ですか。
本当だよ! クリスマスに両親からプレゼントされたんだ。
-今まで持っていたとは!
大好きなおもちゃだったからね。たぶん7、8歳くらいのころだったと思う。そのくらいの歳で、大のお気に入りのおもちゃだったから、ずっととってあったんだ。ビデオ撮影のときは実家に取りに帰ったよ(笑)。
-いい話ですね! 日本でも11月に国内盤のリリースが決まっています。日本盤では、ボーナス・トラックとしてONE OK ROCKのTaka(Vo)が参加した楽曲が収録されますね。ONE OK ROCKとはライヴでも共演の経験がありますが、今回の共演はいかがでしたか?
素晴らしかったよ。"一緒に"はできなかったけどね......。でも彼がヴォーカル・トラックを日本から送ってくれたんだ。スタジオで顔を合わせて作ることはできなかったけど、この曲には本当にワクワクしているんだ。僕たちの大好きなヴォーカリストのスーパー・チームが参加してくれているようなものだからね。こういうできあがりになって本当にハッピーだよ。曲にメンバー以外の人をフィーチャーしたのは初めてだったしね。いつもDON BROCOだけで誰とも一緒にやっていなかった。で、今回このアイディアが出てきたとき、"それなら大好きなヴォーカリストを全部入れちゃおう"なんて話になったんだ。Takaは本当に素晴らしいよね。あんな声が出せるなんて信じられないよ。僕たちもライヴではいろんなヴォーカリストと共演したことがあるけど、アルバムを聴くと素晴らしいのに、ライヴだとそのエネルギーを再現できない人って結構いるんだ。初めて日本に行ったとき......どこだったっけ......大阪だ! そこでONE OK ROCKに初めて会ったんだ。"すごい、アルバムだけじゃなくてライヴでもこんなに素晴らしいなんて"と感動したよ。そしてTakaのヴォーカル・レンジの広さもすごい。
-幅広いですよね。
そう! しかもステージ上でバック転までするんだよ! 演出がすごくクールなんだ。ダイナミックで素晴らしいパフォーマーだよ。彼に電話して、"あのさ、この曲にぜひ参加してほしいんだ"とお願いしたら、自分のパートをものすごい早さで返してくれたんだ。しかも最高の内容で。とんとん拍子のプロセスだったよ。彼には"やりたいことをやってくれ"とだけ言ったんだ。"君だったら素晴らしいものにしてくれるってわかってるから、この曲に合っていると思うものがあったらなんでも好きなようにやって"ってね。おかげで曲に新鮮で素敵なフレーバーがプラスされたよ。
-彼もトラックから強いインスピレーションを受けて、それですぐ自分のパートができたんでしょうね。
人によってはスケジュールを調整してもらうのに時間がかかったけど、彼の場合はジャーン! という感じであっという間に仕上げてくれたよ。
-昨今はフィジカル・リリースに重きを置かないアーティストも多いですが、こうして特別な楽曲をボーナス・トラックとしてつけた日本盤をリリースしてくれるのは、日本の熱心なロック・ファンにとっては嬉しいことです。
僕たちにとってもボーナス・トラックは大切なんだ。それにフィジカルが大好きだしね。僕自身CDやヴァイナルを買って育ったから、形があってずっととっておけるものがあるのはいいことだと思うんだ。今でも気に入った作品はフィジカルで買っているよ。アートワークがあるのも大好きなんだ。
-これから音楽活動を続けていくうえで、もっとこういう面白いことをやっていきたい、などといったアイディアはありますか? 例えばグッズですとか。
ひとつ、実現するにはどうしたらいいかわからないアイディアがあるんだ。あ、本当はたくさんあるんだけどね(笑)。今回のアルバムにはBaby Dino(ベイビー・ダイノ)という名前のマスコット・キャラクターがいて、ミュージック・ビデオやアートワークにちょこちょこ登場しているんだ。あの子を使っていろいろやるのが好きだから、ぬいぐるみとか作ってみたいね(※すでにTシャツは販売されている)。実現するかはわからないけど、あったらきっと楽しいと思うから、ぜひ作ってみたいとは思っているんだ。と言っても、今作のツアーに間に合うかどうかはわからないけど、将来的に考えてもいいしね。
-あなたの出したグッズを使って育った人が20年後に自分のミュージック・ビデオにそれを持って登場するかもわかりませんしね。
(笑)そうなったらクールだよね! そうなったら最高だよ!
-これからは、また規模の大きなライヴ活動もどんどんできるようになってくると思いますが、海外で入国規制が緩和されたら、日本も含めたワールド・ツアーなどは視野に入れていますか?
ぜひやりたいね。今も毎日のようにブッキング・エージェントと連絡を取り合っているよ。"いつになったらまた海外に行ける?"なんて聞いているんだ。特に日本! もともとは今回のツアー・サイクルでも早い日程に日本を入れたいと思っていたんだ。というのも、まだ日本では単独公演をやったことがなかったからね。
-言われてみればそうでしたね。これまでは日本のアーティストとの共演でした。
ONE OK ROCKともMAN WITH A MISSIONとも最高の時間を過ごすことができた。僕たち史上最高のサポート仕事の部類に入るね。あれほど素晴らしいリアクションを貰ったことはなかったよ。東京と大阪で、僕たちの音楽を知らない人たちの前で演奏したわけだけど、信じられないくらい素晴らしかった。僕たち史上最高の思い出に残るショーだったね。そういうこともあって、そっちにまた行きたくて必死なんだ(笑)。そっちに行っていい状況になったらすぐに行くよ! 来年は行けるように、全員全力で祈っているんだ。
-来年には来日公演もやりやすい状況になるでしょうから、ぜひ来てくださいね。最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
僕たちのバンドを聴いてくれて......僕たちの音楽を聴いてくれてありがとう。温かく迎えてくれて本当にありがとう。今や世界中のいろんなところでプレイ経験を重ねてきたけど、日本ほどスペシャルな思い出ができた場所はないんだ。それから、この1年間も僕たちの音を聴いてくれてありがとう。大変な日々だったと思うけど、もし僕たちの音楽がそれを乗りきる手助けになっていたら、バンドとしてはこれ以上素晴らしいレスポンスはないと思う。新作を気に入ってもらえますように。早くそっちに行ってみんなのために新曲をプレイしたいね!
-ありがとうございます。全英ツアー頑張ってくださいね。
こちらこそありがとう! 今週はいよいよツアーが本格化するし、頑張るよ。新曲をプレイできるのが本当に楽しいんだ。インタビューしてくれてありがとう!