INTERVIEW
SHOW-YA
2021.09.01UPDATE
2021年09月号掲載
Member:寺田 恵子(Vo)
Interviewer:杉江 由紀
-ところで。今回の収録曲たちが出揃った段階で、寺田さんが何か感じられた手応えのようなものがありましたらぜひ教えてください。
いつもだったら、メンバーが書いてくる曲についてはだいたいの予想がついていることも多いんですけど、今回リズム隊のふたりがバラードを書いてきたのにはちょっとびっくりしました。いつもはリズムで遊んでいたり、歌メロが斬新なものだったり、いい意味でトリッキーな曲が多いんですよね。でも、今回の「DON'T RUNAWAY」はとても壮大なバラードになっていたので、私としては、英語であったとしてもしっかりと"想い"を伝えたいなという気持ちで歌いました。
-また、今作においては1曲目の「EYE to EYE」が先行配信曲になっておりますが、こちらの楽曲からはSHOW-YAの凄みと貫録を感じることができましたし、同時にこれまでにない新鮮な空気感も漂っているように思います。寺田さんにとって、この曲はどんな存在感を持ったものになりますか?
これは若井君の曲なんですけど、今回は曲順にしてもトータルで彼がすべてプロデュースをしてくれたんですね。そういった面で、まずこの曲からアルバムが始まることによって"これまでにない"雰囲気がここには生まれたと思います。SHOW-YAが今このタイミングで進化しているんだ、ということを伝えるうえで重要な曲になっているんですよ。特に、このリズムの感覚はかなり新しいですよね。キックの入り方とか音作りが、これまでのSHOW-YAにはあまりなかったパターンになってます。
-そういえば、先ほど今作では全編英語を使われたとのお話がありましたけれど、この 「EYE to EYE」には、一部"We're 哀 to 愛 We're 哀 to 愛"と漢字表記が使われているくだりがあります。ある意味、これはSHOW-YAが日本のバンドであることをさらりとアピールしたところになるのでしょうか。
いや、そこは別にそんなに意識はしてないんですよ。ただ、海外には漢字が好きな方も結構いらっしゃって、日本人から見ると謎な漢字のタトゥーを入れている人もいたりしますからね(笑)。今回のアルバムでは「TOKYO, I Scream」の"In Tokyo, 愛 scream"もそうだし、それ以外でも"Kawaii honey"、"like a ninja in the dark"って歌ってるところなんかは、ちょっとした遊び心を歌詞に入れた部分になるのかな。
-「TOKYO, I Scream」は、曲調もダンサブル且つ華やかで楽しい曲ですよね。
若井君いわく、この曲は80年代のバブルな頃の六本木をイメージして作った曲らしいですよ。曲に入る前のあの効果音とかも、わざわざ六本木まで行って録音したものを使ってますからね。ポジション的には、その昔KISSが「I Was Made For Lovin' You」を出したときに、"KISSがディスコに魂を売った!"みたいにいろいろ批判されましたけど、結果としてはめちゃくちゃヒットしたじゃないですか。これは、SHOW-YAにとってのそういうタイプの曲なんじゃないかと思います。
-当然、今作『SHOWDOWN』には他にもたくさんの楽曲が入っていますが、中でも寺田さんとして個人的な思い入れが強い曲はどちらになりますか?
それを選ぶのは難しいなぁ。英詞というのもあったし、ヨーロッパに向けてという面でいつも以上にメロディを重視して歌ったものが多いので、どの曲も苦労しながら録ったんですよ。だから、どれもこれも大事な曲たちで宝物たちなんです。だけど、それでも1曲挙げるということなのであれば「DON'T RUNAWAY」ですね。さっきもこの曲については触れましたが、とても歌い甲斐のある好きな曲です。でも、これはあえて選んだというだけだからね。ほんとは全部だよ(笑)。
-承知いたしました。それから、「HEAVY METAL FEMINITY feat. Dorothee Pesch」ではタイトル通りにドイツのメタル・クイーンであるDorothee Peschさんとのツイン・ヴォーカルが展開されておりますけれども、寺田さんとしてはこの勝負にどのような姿勢で挑まれたのでしょう。ライバル意識のようなものはあったりしたのですか?
ライバル意識はなかったし、今回はスタジオに一緒に入って歌うというかたちでもなかったんだけど、事前にDorotheeのことを調べれば調べるほど、"これは気合入れてかからないとダメだな"という気持ちにはなってました(笑)。歳も近いし、プロデューサーの若井君から聞いた情報なんかもふまえると、なんとなく私と生き方が近いところもあるような気がしたというかね。"Dorotheeに対抗できる日本のヴォーカリストは、寺田恵子しかいない!"と若井君から言ってもらったこともあり、その期待に応えなきゃというつもりでレコーディングに臨みました。こうして彼女と共演できたことはとても光栄ですし、Dorotheeと歌ったことで、日本にも彼女と同世代で頑張っているSHOW-YAというバンドがいるんだ、ということを新たに知ってもらえる機会になったらいいなと思ってます。そして、まだDorotheeと実際に会って話したことはないんだけど、この曲を通して彼女と私は気が合いそうだなって感じました(笑)。
-さらに、日本盤には、SHOW-YAにとっての代表曲のひとつとなる「私は嵐」の英語版セルフ・カバー「I am the storm / WATASHI WA ARASHI」が最後に収録されておりますので、今作は実に盛りだくさんな内容になっていると言えますね。
このセルフ・カバーに関しては、もちろん日本語で歌っているときの印象っていうのは、多くの方の中にもう埋め込まれていると思うんですよ。じゃあ、それが英語になったときにどうなるか? という面では"原曲となんか違うね"とは思われたくなかったんです。そこを超えていけるようなセルフ・カバーにしたかったので、私としては"英語になってもかっこいいね!"って言ってもらえるようなものを目指しました。歌詞を英詞にするときにも、かなり直訳な英語にしていったんですよ。
-この"SHOWDOWN"というアルバム・タイトルには、"決戦の時"という意味が込められているそうですが、最後まで聴き終わったときには誰もがSHOW-YAの完全勝利を確信するに違いありません。
SHOW-YAって、精神的には昔からあんまり成長していないバンドで今でも少女......というよりは、少年の心を持った熟女が集まってるバンドなんです(笑)。だから、35年間やってきました! みたいなことも意外とそこまでは思ってなくて、今でもずっと"もっとやりたいことはたくさんあるよね。何やる? どれやる?"っていうスタンスだし、再結成して以降のSHOW-YAの持ってるハンパない強さっていうのも、今回のアルバムにはすごく反映させることができたんじゃないかと思います。
-さて。このアルバムの発売日前日となる8月29日には、LINE CUBE SHIBUYAにて"SHOW-YA 35th Anniversary Live FINAL 『Get Over』"と題されたライヴが開催されることも決まっております。折角ですので、こちらに向けての抱負もぜひお願いできますでしょうか?
今度のライヴでは『SHOWDOWN』からも何曲かやろうと思ってるので、そこは自分でも今からワクワクしてるんですよ。幸い、SHOW-YAのライヴでは昔の曲だけで盛り上がるとかじゃなく、いつもファンのみなさんは新しい曲でもちゃんと受け入れてくれるんですね。そこは本当にありがたいなと思っているところなので、今度のライヴでも新曲たちをみなさんと楽しむことができるような空間を作っていきたいですし、配信もする予定なので、画面を通じても楽しんでいただけるライヴをしていこうと思ってます!
-最後にもうひとつ。現在の国内シーンでも様々なギャルバン、ガールズ・バンドが活動しているわけですが、長年にわたり女性アーティスト限定イベント"NAONのYAON"をオーガナイズしてきたSHOW-YAの一員として、寺田さんから後輩たちに対してのアドバイスは何かありますか?
どうだろう? 私に言えることがあるとしたら、それはバンドに対してというよりも周りのメディアとかのほうについてかな。だって、今の若手の女の子たちのバンドってみんなかわいいしスタイルいいし、演奏上手いし素敵な曲も作ってるし、歌も上手いでしょ。自分たちが20代の頃には持ってなかったものを、全部持ってるなって感じるんですよ。本当だったら、そういう彼女たちがもっと世の中に受け容れられてていいんじゃないかと私は思います。いいバンドがたくさんいるんだから、もっとメディアでもいろいろ取り上げてくれ! ってね。
-その度量の広さはさすがですね。
だけど、一方では若い子たちには負けたくない! っていう気持ちもあるんですよ。みんなのことは大好きだし、みんなと対バンとかして一緒にはしゃいだりしてるとすごく楽しいの。フレッシュなエネルギーも貰えるし。でも、大好きだからって"じゃあ、どうぞ。道は譲るよ"とは思わないですから(笑)。自分たちが築いてきた道は細いかもしれないけど、ちょっとずつ自分たちで踏み固めながら進んできた道なのでね。そこは絶対に、私たちの前には行かせない! っていう思いでずっとやってきてるんです。まぁ、それもいつかは踏み固める力が弱くなったり、前に進む速度が遅くなったりしてくるかもしれないけど、そうなるまではSHOW-YAとして先頭を走っていたいな。ほんと、熟女ながらに頑張ってるんでよろしくお願いします!