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INTERVIEW

SLOTHREAT

2020.09.11UPDATE

2020年09月号掲載

SLOTHREAT

Member:KAZ(Vo) 克哉(Gt) 孝哉(Gt) 瀬希(Ba) SHINYA(Dr)

Interviewer:山口 哲生

日本のバンドとして、日本的な部分を出したうえで、海外でやれることも絶対にあるんじゃないか


-では、少し難しい質問になるんですが、アルバム収録曲の中で個人的に好きな曲を挙げるとなると、どの曲になります? もちろんどの曲もいいというのはあると思うんですが。

孝哉:どの曲も好きなんですけど、単曲でいうと「LIVE FREELY」ですね。アルバムの中でも「Daybreak」からの「What are we for?」、そこからの「LIVE FREELY」という流れは、本当に印象に残ります。

-ここの流れ、すごくいいですよね。「What are we for?」に関しては孝哉さんが作曲されていますね。

孝哉:『Allium』で、リード・ソングの前にSEを入れていたんですけど、今回のアルバムにもそういうものは絶対に必要だろうという話を克哉としていたんです。だから、最初は「ILLUMINATE」の前に何かをつける予定だったんですけど、なかなかイメージが沸かなくて。ただ、自分としてはバンド・サウンドのインタールードが欲しいなと思っていたんですよね。そのときに自分が作ろうと思っていたものと、克哉がイメージしていたものがほとんど同じだったので、ある程度は自分の裁量で進めて作って、最後に尺の長さをどうするか話し合って、あの形に至りました。あそこはいい流れになったんじゃないかなって思いますね。

-実際に「What are we for?」があることで、ラストが爆発的に盛り上がりますからね。

孝哉:ありがとうございます。これまで克哉が作ったもの以外がこのバンドにハマることってなかったんで、たかだか1分あるかないかぐらいのSE的なものだったとはいえ、ハマるかどうか不安はあったんです。でも、結果いい流れになったので、嬉しかったですね。

克哉:「ILLUMINATE」の前にSEを入れる案から切り替えた理由としては、「LIVE FREELY」だけがズバ抜けて明るいメジャー・キーの曲なので、すべてを眺めたときに、もう少し他の曲と馴染ませたかったし、もっと輝かせることができると思ったんです。マイナー調の「Daybreak」からメジャー・キーにきれいに転調して、それがなおかつ「LIVE FREELY」の流れを汲んだものであって、そのまま曲に入ったら、しかもそれが合唱系のSEだったら絶対にヤバい! と思っていたので、そういうところも諸々提案して組み上げた結果かなりうまくハマったんじゃないかなと。

-壮大さもあるし、個人的には重たいQUEENみたいな印象でした。

克哉:おぉー(笑)!

孝哉:まさにその話をしてたんですよ(笑)! 「What are we for?」もそうだし、「ILLUMINATE」の"Alone~"のところとか、「LIVE FREELY」はもはやQUEENみたいだ! って話してました。

-そうだったんですね(笑)。瀬希さんは好きな曲を挙げるといかがですか?

瀬希:僕的には「現人」とか、「氷面鏡」ですね。バラードとまではいかないけど、結構ゆったりしていて重い曲が好きで、普段からよく聴いているんですよ。メロディもめちゃくちゃいいですし、他の曲も好きですけど、この2曲が個人的には好きです。

-「現人」は、かなりプログレッシヴな展開もあって、弾くのが大変だったりしました?

瀬希:うーん......基本的に全部難しいんですよ(笑)。

-ですよね(笑)。

瀬希:『Allium』よりも、もっとテクニカルで何百倍も難しくなっているので、レコーディングのときは結構苦戦した記憶がありますね。中でも「ILLUMINATE」が断トツで大変でした(笑)。最初から最後までずっと難しいんですけど、ほぼギターとユニゾンしているところもあったので、この曲だけ1日かかっちゃいましたね。

-では、SHINYAさんの場合はいかがですか?

SHINYA:たぶんこの質問はインタビューで聞かれるんじゃないかなと思って考えていたんですけど、瀬希に言われちゃいましたね(笑)。どの曲も聴いてほしいという中から、僕もあえて「現人」を選んだんですけど、ドラマー目線で言うと拍子が取りづらかったり、普通じゃ考えられないようなフレージングだったりがすごく入っているんですよ。

-僕も「現人」は、途中で何拍子になっているのかわからなかったです(笑)。

SHINYA:僕も最初わからなくて苦戦しました(笑)。

克哉:最初は4拍子で、ラジオボイスになるところで3拍子になって、アウトロで4拍子に戻ってますね。冒頭の流れからブレイク後バンドインして爆発するところがあって、あそこ付近が一番わけがわからないと思うんですけど、あそこも3拍子なんですよ。

-謎が解けました。まさにそこがわからなかったので(笑)。

克哉:冒頭の4拍子もわかりにくくしているというか、3拍子に聴こうと思えば聴こえる4拍子にしているんですよ。で、リムショットが入ると3拍子なのがわかりやすくなるので、次で戻ると見せかけて、実は戻ってないという。

-かなりトリッキーですね(笑)。KAZさんは自分の好きな曲を挙げるとするといかがでしょうか。

KAZ:アルバムをリピートして聴いていて、1曲前に戻りたいなと思うのが「氷面鏡」なんですよ。これは自分の歌に関してなんですけど、しっかりと繊細なところを表現できて、本当にうまく録れたんです。だから、自己満足じゃないですけど(笑)、聴いちゃいますね。

-繊細さもあるし、メランコリックな雰囲気もあるので、歌うのは大変そうだけど気持ち良さそうな印象もありました。

KAZ:この曲は、1音下げと1音上げのバージョンふたつが送られてきたんですよ。で、最初に1音下げのバージョンを歌ってみたら、自分のキー的にはちょうど良かったんですけど、聴こえ方的にちょっと暗すぎたんですよね。でも、1音上げのバージョンを歌ってみたら暗くなりすぎず、ミステリアスな感じの聴こえ方がしたんで、実際に歌うとものすごく高いんですけど、無理をしてでも、こっちのキーにしようと思って。

-ここは自分が頑張るから、曲の雰囲気を大切にしたほうがいいと。

KAZ:そうですね。最初は克哉と"いや、さすがにこれはマジでキツいわ"って話してはいたんですけど(笑)。

-(笑)個人的には、既発曲になってしまうんですが、「軀謳」が面白いなと思いました。哀愁があって、コード進行もおしゃれで、そこだけをピックアップして雑に言ってしまうとJ-POPみたいな感じがあるんだけど、音をえげつなくするとこんなに印象が変わるんだと思って。

克哉:SLOTHREATにはビートが一貫している曲があまりないので、どんな気持ちのときでも聴けるリズムの大枠がループしてる系の曲が欲しいなと思ったんですよね。それで、基本的には8ビートで、ゆったりした縦ノリ系で、あとはちょっとおしゃれな感じを出して、散歩しているときに聴いてほしいみたいな感じにしたんですけど、それをめちゃめちゃヘヴィにして、自分たちのアイデンティティを落とし込んでいきました。あの曲はギターの音色にもひと癖加えていて、コイルタップ(※ハムバッカーのふたつのコイルのうち、片方をキャンセルすること)して、シングルコイルの状態でずっと弾いてるんですよ。カリカリした感じプラス、コードの煌びやかな部分を出そうと思って。

-それであんなに歯切れがいいんですね。

克哉:タイトで、ブラッシングのような軽快な刻みの感じがより際立つし、たまに一瞬入っているロー弦との絡みもわかりやすくなるので。この曲は、意図的に他の曲とはひと味違う感じを出そうと思ってました。あとは、途中でゴスペル・チョップみたいなものを入れて。

SHINYA:再録前の段階で、克哉が作っている現場に立ち会って、いろいろ話していたのを汲み取ってくれたんですよ。あのゴスペル・チョップっぽいゾーンは、"自由に打ち込んでみて"って言われたんで(笑)、曲に合わせてちょっとおしゃれな感じにしようと思って。いろんな人に聴いてもらいたいという気持ちもあるので、ちょっと守備範囲を広げるために、あえてああいうものを入れてみたりはしました。

-かなり濃い曲が揃いましたけれども、"THEMIS"というタイトルはどういうところから付けられたんですか?

KAZ:みんなでいろいろ案を出し合っていたんですけど、最終的に克哉が第1案で提案してくれたものになりました。

克哉:このタイトルが、自分たちの意志を一番シンプルに伝えられるんじゃないかなと思ったんです。"THEMIS"は(ギリシャ神話に出てくる)法律、秩序、正義の女神のことで天秤を掲げているんですけど、僕らは自分たちの音楽に対して絶対的な信念と意志を持ってやっていて。1stフル・アルバムってそういったものが一番具現化されているものですし、なんなら『THEMIS』のリリース日が、僕らの生まれる日ぐらいの気持ちでいるんです。本当の始まりはここだと思っているので。そういったメッセージをストレートに伝えたいと思って、この言葉を選びました。

-ものすごく意志が漲っているし、1stフル・アルバムにしてかなりハイクオリティな作品になりましたが、ここからどういう活動をしていきたいですか?

克哉:まずはこのアルバムがしっかり広がってくれればと。次に作る音楽に関しては日々考えていて、もっと想像できないことをやろうと思っています。ただ、そういったクリエイトのほうはひとまずいいとして、今はこういう情勢なのもあって、どうやって活動していくのかは、まさにメンバーや会社と話し合っているところではあるんですけど。

-ご時世的にライヴがなかなかできないので、どう活動していくのか見えにくくなってしまっている状況ではありますからね。

克哉:ただ、とにかくこの状況には絶対に負けないし、何よりもとにかく世界中の多くの人に聴いてほしいと思っていますね。

-世界というのは目標としてあるんですね。

克哉:これはメンバー全員あると思います。

瀬希:そうですね。SLOTHREATの音楽が世界中に広がっていけば嬉しいなと思います。

孝哉:自分はオーストラリアのバンドとかがすごく好きですし、ヨーロッパも興味があります。アメリカにも大好きなバンドがいっぱいいるので、将来的にはそういったバンドと一緒にやっていけるようになれたらいいなと思ってますね。

SHINYA:まずは国内の多くの人に聴いてもらいたいというのは間違いないんですけど、やっぱり自分らでも曲がめちゃくちゃいいと思っているし、いろんなジャンルのエッセンスが入っているから、メタルが好きな人も受け入れてくれると思うし、日本っぽい音楽が好きなヨーロッパの人たちも、聴いてもらったら好きになるんじゃないかなと思っているんです。なので、どこの国とかを問わず、世界中の人たちに聴いてもらいたいです。

-例えば、「現人」はほんの少しだけですけど、日本というよりはオリエンタルみたいな感じが一瞬出るじゃないですか。ああいうニュアンスって海外の人が好みそうですよね。

克哉:たしかにそういう感じしますね。あの曲のフレーズに、ちょっとなんとなくですがジブリっぽい音階出てきますし(笑)。

-ジブリでしたか! あと「明滅する記憶の代償」や、「氷面鏡」のメロディ・ラインって、それこそ日本産みたいな印象もあって。実際にどう支持されるのかはわからないところもあるんですが、海外に出ていくにあたって、日本発であることがわかるのは大切なのかもしれないなと思うんですが、いかがでしょうか。

克哉:これはあくまでも持論で、僕は海外の人じゃないから、リアルな気持ちはわからないけど、個人的には、海外の人が作る音楽って現地の言葉で聴きたいと思ってしまうんですよ。なので、僕らは日本のバンドとして日本的な部分を出したうえで、海外でやれることも絶対にあるんじゃないかなと思っているんですよね。何も英語じゃないと海外では支持されないっていう決まりがあるようにはあまり思っていないので。

KAZ:そういうところも含めて、日本語で歌うということに信念を持っているんですよ。

-別に英語じゃなくてもいいんじゃないかと。

KAZ:そうですね。日本にはそういうバンドがありふれているというか。もちろん日本語詞と英詞で歌っているバンドもいるけど、ここまでいろいろ極めているバンドは僕らしかいないと思っているので、さらにいろんなことに挑戦していきたいし、僕らの音楽が世界でどのくらい通用するのかは、やっぱり試してみたいですね。