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INTERVIEW

HAKEN

2020.08.25UPDATE

2020年09月号掲載

HAKEN

メンバー:Ross Jennings(Vo)

インタビュアー:菅谷 透

7~80年代のプログレッシヴ・ロックからモダンなメタル、さらにはDjentに通ずるヘヴィネスまで様々な要素を融合したサウンドが特徴的な、UKロンドン発の6人組バンド HAKEN。現行プログ・メタル・シーンを牽引する存在になりつつある彼らによるニュー・アルバム『Virus』は、作品としてリンクしている前作『Vector』と同様にAdam "Nolly" Getgood(ex-PERIPHERY)がミキシングを担当。ヘヴィでありながら多彩なエッセンスが詰まった作品だ。奇しくも世界的パンデミックの最中にリリースされることとなった今作について、ヴォーカリストのRoss Jenningsに話を訊いた。


この大変な時期に、アルバムがみんなの気晴らしになるといいな


-激ロックに初登場となりますので、まずはバンドの紹介をお願いできますか?

俺の名前はRossで、HAKENというバンドをやっている。ほかにはRaymond Hearne(Dr)、Diego Tejeida(Key)、Richard Henshall(Gt/Key)、Conner Green(Ba)、Charlie Griffiths(Gt)がいるよ。俺たちは長い曲をたくさんやっているんだ(笑)。

-HAKENというバンド名の意味や、由来についてうかがえますか?

このバンドを始めたころはAがふたつ(HAAKEN)だったんだ。普通だったら"ハーケン"と読むと思うけど、俺たちは"ヘイケン"と読むことを望んだ。由来はいろいろあるんだけど、まず北欧の王様にHaakonという人がいたんだよね。そこからきている部分が少しある。ほかにも"選ばれし者"という意味があるらしいと知って、クールだと思ったんだ。そういえば、ずっとあとになって知ったんだけど、HAKENにはドイツ語で"フック"という意味もあるらしいよ。気に入ったから、最近は人に訊かれると"フックって意味なんだ"なんて答えるようにしているんだ(笑)。

-(笑)たしかに、ゲルマン系な響きのあるバンド名ですよね。

実は俺たちを一番受け入れてくれている国のひとつがドイツなんだ。バンド名から親しみを感じてくれているんだろうね。

-HAKENの音楽性は、往年のプログレッシヴ・ロックとモダン・メタルをかけ合わせたような、特徴的なサウンドになっていますね。メンバーそれぞれの音楽的なバックグラウンドを教えていただけますか?

メンバーの一部はクラシックの教育を受けている。特にRichardがね。お母さんがピアノの先生だからたくさんのスキルを伝授されたんだ。Ray(Raymond Hearne)もこのバンドではただのドラマーだけど(笑)、実はオールラウンド・プレイヤーなんだ。オーケストラでチューバも吹いているしね。そんな感じで、そういうバックグラウンドを持っているメンバーが結構いるんだ。俺自身は小さいころからギターをやってきたけど、歌は趣味みたいなものだったよ(笑)。だけどそっちのほうに本腰を入れるようになった。影響という意味では全員ある意味メタルヘッドだけど、みんな父親のレコードをよく聴いて育ってきた。PINK FLOYDみたいなイギリスのプログレとか――そういういろいろな音楽的バックグラウンドや影響があるんだ。

-影響を受けたアーティストや、好きなアーティストについてもうかがえますか?

俺個人の趣味は、今はすごく幅広いんだよね。でも音楽を本格的にやろうと思った高校生のころに一番影響を受けていたのは――そのころがターニング・ポイントだったと今にしてみれば思うんだけど、アメリカのスタジアム・ロックを聴いていることが多かったな。例えばAEROSMITHとかJOURNEYとかが大好きだったよ。それよりややソフトなやつ、U2やREMなんかもよく聴いていた。そういう音楽がしみ込んで、俺のフロントマンとしてのアプローチに影響しているんだと思う。今挙げたバンドはみんなフロントマンが個性的だし、ああいう感じのバンドを作りたいと思ったんだ。

-あなたの声はこの手のジャンルにおいては特にユニークですよね。声がクリアなので言いたいことがストレートに理解しやすいといいますか。そこがとても素晴らしいです。

(照れながら)嬉しいね。ありがとう。実は、自分自身ではメタル・シンガーだと思っていないんだよね。だからかもしれないな。アリーナ・ロックを聴いていた時期を過ぎてからは、ヴォーカルとしての影響はインディー・ロックから受けている部分が大きいんだ。例えばRADIOHEADのThom Yorkeとか、ELBOWのGuy Garveyとか、MUSEのMatt Bellamyとか。歌という意味では彼らから影響を受けていると思う。

-ニュー・アルバムの前に、作品としてリンクしているという前作『Vector』(2018年リリースの5thアルバム)についても少しうかがえればと思います。同作ではどのようなことをテーマに掲げたのでしょうか?

『Vector』はアルバム2作にわたるプロジェクトの第1弾だった。リリースした当時はそのことを明かしたくなかったから、その1作のものだということになっていたんだ。2作の計画は、実はそれよりさらに前のアルバム『The Mountain』(2013年の3rdアルバム)に由来するキャラクター、"Cockroach King"が中心になっているんだよ。

-『The Mountain』には「Cockroach King」という曲が収録されてますね。

そう。それを発展させて、それ――"彼"でも"彼女"でも"それ"でもいいけど、そいつにバックストーリーを与えたいと思ったんだ。なかなか面白かったよ。その曲で描かれている"Cockroach King(ゴキブリの王)"は資本主義のメタファーみたいな感じで、アメリカン・ドリームの幻想を表現したようなものだったけど、俺たちの中ではキャラクター化している楽しいものだったんだ。それで、この人間化した生き物の話を発展させたら面白いんじゃないかと思ってね(笑)。で、そいつは精神病院みたいなところで治療ミスをされて狂気へと転落してしまう。そういうひどいキャラクターが精神的なトークを始めたのが『Vector』かな。

-ということは『Vector』を作った時点ですでに『Virus』が頭にあったんですね。

そう。『Vector』はクリフハンガー(※続きが気になるような終わり方をする手法)のように作ってあるんだ。実際そのあたりを指摘したファンは多かった。アルバムが終わっていないような気がする、短いんじゃないか、みたいにね。それが狙いだったから俺たちはほくそ笑んでいたんだけど(笑)。『Virus』は「Messiah Complex」という壮大な曲で集大成を迎えるんだ。この曲が両方のアルバムをまとめている。

-『Vector』はいくつかヒントを残して終わっていたんですね。そしてその答えが今回のアルバムだと。

そう、そのとおりだね。アートワークにもヒントがあるんだよね。そっちのほうがわかりやすいかも(笑)。

-赤(『Vector』)と黄色(『Virus』)のアートワークですね。資料ではケチャップとマスタードの関係なんて書いてありましたが(笑)。

そうそう(笑)。

-サウンド面では、前作はDjentにも通ずるようなグルーヴを持った、キャリア史上最もヘヴィな作品だったと思います。こうした音楽性へと変化したきっかけはなんだったのでしょうか?

さっきの話になるけど、俺たちにはヘヴィ・メタルへの情熱がずっとあったからね。俺たちはプログレッシヴ・ロック・バンドとしてずっとやってきたような気がするけど、ヘヴィな部分はいつも少し入れてあったんだ。それが俺たちの特徴になっていると思う。あのアルバムではそのヘヴィなほうにもう少し傾こうと思ったんだ。1枚だけ独立させた状態で聴いたときに、一貫してヘヴィなものにしようってね。『Virus』の場合はその路線を続けつつ、今まで俺たちが知られてきたような要素も少し戻し入れたような感じかな。ソフトでちょっと奇抜な面をね。気に入ってもらおうともらえまいと、『Vector』はヘヴィさが一貫した作品なんだ。『Virus』ではヘヴィなものもよりヘヴィになっているよ。そっちの面もさらに追求しているんだ。

-では、ニュー・アルバム『Virus』についてうかがいます。たしかリリース日が何度か延期になって、UKでは7月24日なんですよね。

そう、残念ながら何度か延期になってしまってね。それに関しては正直なんとも言えないよ(苦笑)。

-日本では8月26日にCDがリリースされます。

日本はそうだったね。延期はフラストレーションが溜まるものだけど、世の中には対処すべきもっと大きな問題があるから。アルバムが出たら、聴いた人がそのことを忘れてくれるといいんだけど。いつかは聴いてもらえる日がくるだろうから、この大変な時期に、みんなの気晴らしになるといいな。

-今作のタイトル"Virus"の由来を教えていただけますか? 今のパンデミックとは無関係だというのは知っていますが、そもそもなぜこの名前になったんでしょうか。

そう、コロナとは断然無関係だよ(苦笑)。タイトルを決めたのは2018年の初めだからね。そのころ2作のアルバムの構想を始めたんだ。タイトルは初めから決まっていた。"Virus"にした理由はいくつかあって――『Vector』との関係で言えば、ウイルスを媒介する生物のことを"Vector"と言うんだ。

-そうなんですね! 知りませんでした。

"Vector"が"Virus"のキャリア(保菌者)になるということだね。

-なるほど! タイトルも繋がっているんですね。

そう、繋がっているんだ。"Virus"にした理由はもうひとつあってね。『Vector』は"V"、『Virus』は"VI"で始まるだろ? つまり、ローマ数字で5作目と6作目のアルバムということなんだ。

-本当ですね!

(笑)最後の由来はメタファーで、このアルバムの中で歌っている、人間のネガティヴなふるまいに関するものなんだ。当時は"パーフェクトなタイトルだ!"なんて思っていたけど、歴史はそう思わなかったみたいでね......(苦笑)。残念な状況になってしまったよ。

-でも今となっては前作と繋がっていたことが明らかになるわけで、パンデミックとの繋がりはないことをみんな理解してくれるのではないでしょうか。

タイトルは変えたくなかったしね。俺たちがプロダクションに入ったころ、パンデミックのほうが世界的な大問題になり始めて、俺たちはそれに対して同情的になって、ボツにすべきかどうかを考えないといけなかった。でも放り出したくなかったんだよね。ここ2~3年のアーティスティックな表現の賜物だし、単に"Vector 2"なんて呼ぶのももったいないと思ったんだ。それでは同じインパクトは出ないしね。

-"Vector 2"ではしっくりこないですよね。前作『Vector』のテーマについては先ほどうかがいましたが、今作ではどのようなテーマを設けたのでしょうか? 資料によると、『Vector』の20年後が舞台のようですが。

プレイスルー・ビデオで「1985」(2016年の4thアルバム『Affinity』収録)を改めて演奏したから、そう思った人が多かったみたいだね。俺としては必ずしも20年後じゃなくていい気がするけど、『Vector』よりあとなのは確かだよ。特定の時期が決めてあるわけじゃないんだ。ただ、「1985」を改めて演奏したとか、そういう偶然からファンがいろいろ想像してくれるのはすごく楽しいよ。言われてみればすごく筋が通っているし、ファンがストーリーを発展させてくれているようなものだよね。聞いていると"それもありじゃないか?"と思うから(笑)。

-リリースの発表を受けて、周りやファンからはどのような反応がありましたか?

"これってジョーク? 遅ればせのエイプリル・フールじゃないのか?"みたいなことを言われたよ(笑)。前のアルバムからあまり時間が経ってなかったというのもあったから、その間これを作っていたなんて、と驚かれたね。みんなには内緒にしていたから。それにタイトルがタイトルだから、悪いジョークだと思われたみたいでさ。まぁ、理解はできるよ(苦笑)。最初の反応はそんな感じだったけど、シングルを出したら大反響でね。すごくいい形で受け入れてもらえたから、俺たちも喜んでいるんだ。

-初めはタイトルのこともありますし、誰も水面下で起こっていたことを知らなかったからみなさんショックだったんでしょうね。でも曲がすべてを物語ってくれて受け入れてもらえていると。

そうだね。それは間違いない。1stシングルでもみんな驚いたみたいだけど。「Prosthetic」はすごくヘヴィだからね。あの曲は俺たちの好きなメタル・バンドの影響が大きいんだ。GOJIRAとか、FEAR FACTORYとか、あの手のサウンドが欲しいと思って作ったけど、ショッキングだったらしい(笑)。ファンのリアクションも楽しかったよ。