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INTERVIEW

HAKEN

2020.08.25UPDATE

2020年09月号掲載

HAKEN

メンバー:Ross Jennings(Vo)

インタビュアー:菅谷 透

-前作に引き続き、ミキシングをAdam "Nolly" Getgood(ex-PERIPHERY/Ba)が担当していますね。彼との仕事はいかがでしたか?

とてもクールだったよ。旧友を訪ねるような感じだった。前作の続きだったから、彼と仕事するのも理に適っていたしね。今作は『Vector』と同じチームで作ったんだ。今回アプローチしたときも快諾してくれて、"今まで作ったアルバムの中でも、『Vector』はプライベートで繰り返し聴いている作品のひとつなんだ"って言ってくれた。素晴らしい褒め言葉を貰った気がしたよ。彼が普段はもっとヘヴィだったり、もっとスクリームが多かったりする作品を手掛けているのは知っているからね。彼自身も喜んで参加してくれたし、一緒に仕事していて最高だった。ギターのトーンの選び方とか、ドラムのサウンドへのこだわりとか、知識もすごく豊富でね。メタル・バンドとしての俺たちの最高の部分を引き出してくれたと思う。結果にもものすごくワクワクしているよ。

-彼の存在が2作の一貫性について大きな役割を果たしてますね。また、サウンド面では前作のヘヴィネスをキープしつつ、よりメタル的なリフやフレーズなどのアプローチを進めているように感じました。どのような意図を持って楽曲を制作したのでしょうか?

昔の要素を戻し入れておきたいというのもあったし、何より1枚ずつ個別に聴けるものでありつつも、最終的には2作のアルバムを連続して楽しんでもらいたいという意図があったんだ。そうしたら全体像が見えるからね。

-そういう意味では、ふたつのアルバムの橋渡しとなるのが1曲目の「Prosthetic」なのではないかと思うのですが、あれはスラッシーなリフが印象的な、強烈なオープニング・ナンバーですね。"Nil by mouth"や"Rorschach"など、前作から関連するワードも散りばめられていますが、この楽曲について詳しく教えていただけますか?

よく気づいたね。完全に繋ぐ曲として作ったんだ。歌詞的にも君が指摘したように前作の内容を散りばめているしね。内容としては主人公の前作での出来事を振り返っているんだ。精神施設に隔離されて治療を受けて......そういう出来事に対するリベンジ的な内容なんだ。これまでの作品はほぼすべて1曲目にはちゃんとイントロがあるけど、今回はいきなりリフから入っている。助走がないんだ(笑)。それも繋ぎとして見ることのできる理由だね。

-たしかに前作との始まりとは違う感じですね。理由がわかった気がします。

そう、いきなり走り出すような感じでね(笑)。

-続く「Invasion」は、ミドル・テンポでじわじわと展開していく様子が、さながらウイルスが侵食していくようです。バクテリオファージが登場するMVも衝撃的でしたが、どのようなテーマで制作したのでしょうか?

あれは俺たちと長い間コラボしてくれている制作会社のCrystal Spotlightと一緒に作ったんだ。『Affinity』のころから一緒にやっている。彼らは普段アニメーションの分野にいるんだけど、一緒に仕事をしてみて、ものごとの発展のさせ方にとても感銘を受けたんだ。今回はふたつビデオを依頼して究極のチャレンジを課したよ。君が言っていた「Invasion」と、もうひとつは「Canary Yellow」なんだ。俺がアイディアを書いて渡したときは自分でも"こんなの無理なんじゃないか"と思ったけど(笑)、彼らは見事に作り上げてくれた。(「Canary Yellow」の)核実験の村のシーンとかすごく印象深いよね。「Invasion」は俺個人が気に入っている曲のひとつで、じわじわ展開していく部分は単調な音の繰り返しみたいな感じだね。HAKENはものすごく複雑な曲を作ることで知られているけど、たまにはスケール・バックしてループっぽい音にするのもいいだろうと思ってさ。ミュージシャンとしては、同じことの繰り返しじゃなくて違うものにトライしてみないとね。あと、『Aquarius』(2010年の1stアルバム)や『Visions』(2011年の2ndアルバム)の時代を思わせる音をまた聴きたいと思ってくれているファンがいるのは知っているけど、残念ながらアーティストとは進化するものだから、時には彼らを不快にさせるようなこともやらないといけないと思うんだよ(笑)。

-「Carousel」は10分超の中で、ソフトなイントロからヘヴィなリフ、プログレッシヴなソロ・パートなど、目まぐるしく楽曲が変化していきます。この曲のアイディアはどのようにして生まれたのでしょうか? まさに回転木馬(Carousel)のような感じですが。

この手の曲はいつものHAKENに近いかな。セクションを積み上げていってからチルな場面にスケール・バックして、ヘヴィなソロもあって。アイディアが満載なんだ。それらを繋ぎ合わせていい流れにするのはチャレンジだけどね。結構難しいんだ。トライアル&エラーの繰り返しだよ。通常はベーシックなデモから始めて、そこにちょっとずつ新しいアイディアを注入して変化をつけていく。こういう多彩な曲を作るのはすごく手間がかかるんだ。説得力のあるものにするのもね。リスナーにはちゃんとしたものを届けたいと思うし。この曲を聴くことによっていろんなところを訪れる旅のような経験ができればいいと思うんだ。

-アルバムにはもうひとつ壮大な楽曲として、5つのパートに分かれたトータル17分の組曲「Messiah Complex」がありますね。HAKENのディスコグラフィでは同等かそれ以上に長尺な楽曲も存在していますが、今回はなぜ単一の17分の曲ではなく組曲という形式をとったのでしょうか?

聴いた人たちの間では間違いなくディベートのネタになっている曲だね。レビューを見てもそんな感じだよ。たしかに君の言うように、俺たちは過去にもっと長い曲を作ってきた。まぁシンプルに、それまでとはちょっと違う見せ方をしたかったという感じかな。今までやったことがなかったし、というのが今回のモチベーションだった。曲の構成的にも、俺たちが今まで書いてきたものより直線的なんだよね。最後のフェーズ(「Messiah Complex V: Ectobius Rex」)はテーマが戻ってくるから例外だけど、残りは繰り返しがなくてひたすらまっすぐ進むんだ。それで、特徴的なリフが出てくるところを新しいフェーズの始まりとして曲を区切った。そうしたら興味深いものになるんじゃないかと思ってね。それから歌詞的にも各チャプターで語っていることに特徴があるように思えたから、組曲にすることも理に適っているように思えたんだ。5曲目のタイトルにはイースターエッグ(隠しメッセージ)が隠れているよ。そういうのも曲を分けた理由のひとつなんだ。

-"Messiah Complex"というタイトルの意味や、各楽曲のテーマについて教えていただけますか? いろいろな意味が隠れているような気がしますが。

最終的には『Vector』の初めから追っているこのキャラクターが、政治的な暴君みたいな感じになってしまうんだ。彼のビジネスの仕方、他人の扱い方が、彼をナルシスト的な、メサイア(救世主)のような気分にさせてしまった。でもこの組曲のある時点で、彼は自分のやっていたことの過ちを知るんだ。今はあまりネタバレさせたくないけど(笑)、ちょっと政治的な領域にも足を踏み入れているような感じだよ。

-組曲ではムーディな「Marigold」、電子音からブラストビートまで振り幅が広い「The Sect」など、様々なアレンジがこれでもかと繰り広げられています。それでいておっしゃるとおり直線的に、流れに任せて聴けますね。作曲面ではどのようなことを意識しましたか?

俺に言わせれば、"俺たちの頭をカチ割って脳みその音楽的要素を覗いてみたら、こんな曲になる"と言ったところかな(笑)。いろいろなアイディアがそこら中に散らばっていて、俺たちがミュージシャンとして、どういう考え方をしているかを垣間見られる曲になっていると思うよ。

-「Carousel」は1曲に、「Messiah Complex」は組曲全体でと、どちらもミュージシャンとしてのいろいろな考え方が出ているんですね。両方がひとつのアルバムに入っているというのも興味深いです。

そうだね、それができたというのも達成感の一部になっているよ。ふたつのアルバムをこういうふうにまとめることができたのをとても誇りに思っているんだ。長い曲でまとめるのは初めから目指していたことだったしね。ミッション達成! といったところだよ。

-日本盤ボーナス・トラックには「Canary Yellow」のアコースティック・バージョンが収録されていますね。アレンジももちろんですが、ゲスト参加したBENT KNEEのCourtney Swainが女性ヴォーカルで日本語詞を歌うことで、オリジナルとは異なった雰囲気になっています。どういった経緯で制作されたのでしょうか?

そうくるか(笑)。BENT KNEEとは何度かツアーしたことがあるんだ。ヨーロッパで1回、アメリカで1回だったかな。俺たちは間違いなくBENT KNEEの大ファンだし、特にCourtneyの声に惚れ込んでいるんだ。音に一切間違いがないし、聴いていてすごくいいんだ。パフォーマンスもとても情熱的だしね。人柄もラヴリーだよ。このボーナス・トラックの話がきたとき......実はまだこの曲については公に話したことがないんだけど(笑)、曲が余っていたわけじゃなかったんだよね。それで、この曲の日本語バージョンを作ったらすごくクールなんじゃないかって思ったんだ。初めは全部日本語でやろうと思ったんだけど、それじゃ俺にとってはチャレンジがすぎると早々に悟ったんだ(笑)。じゃあ代わりにゲスト・ヴォーカルを迎えよう、日本語のわかる人に手伝ってもらおうという話になった。Courtneyは日本人とのハーフだから、歌詞を解釈して、日本語でうまくいくようにすることができると思ったんだ。話を持ちかけたら大喜びしてくれたよ。それでコーラスの部分を日本語で一緒に歌ったんだ。彼女が関わってくれて本当に嬉しいよ。早くみんなにも聴いてもらいたいね。

-日本語詞は彼女自身が訳したのでしょうか。訳詞が英語のニュアンスを完璧に再現していて、なお且つ音数や音節もぴったりしていたのが素晴らしいと思いました。

うん。彼女には歌詞と、それから曲の意味も少し説明したものを送ったんだ。彼女は日本語バージョンの逆翻訳も作ってくれた。むしろそっちのほうが、状況説明が優れているんじゃないかと思ったよ(笑)。最高に嬉しかったね。

-非日本語圏のファンが聴いても気に入るでしょうね。

うん。このバージョンならではの美しさがあるよね。歌詞がわからなくても。俺もよく外国語の曲を聴くし、いつも意味がわかるわけじゃないけど、それでも美しさを感じることはできるから。

-まだ計画を立てるのは難しい状況だと思いますが、今後の活動予定を教えていただけますか?

今はまだ決まっていないことばかりだけど、これが出るからにはもちろん2021年を前向きに考えているよ。そのころにはどんなニュー・ノーマルになっているかわからないけど、ツアーでスケジュールが埋まっているといいな。途中で中止になってしまったところからやり直したいし。うまくいくことを願っていてほしいよ。そのためにも、みんなには無事でいてほしい。もっとも、それがもう少し長い間ステイホームすることを意味するんだったら、文句は言えないけど(笑)。音楽より大切なものも少しはあるからね。ともあれ、早く仕事に戻れる状態になることを願っているよ。

-ぜひ日本に行く機会もできるといいですね。このアルバムをライヴで聴けたらきっと素晴らしいことになると思うので。

そうだね。日本は俺にとって、ただ行くだけでも"バケットリスト(※死ぬまでにやりたいことのリスト)"に入っている場所なんだ。プライベートでも行ったことがないからね。ぜひ行ってみたいと思っているよ。しかもパフォーマンスもできたら夢が叶って最高だよね!

-最後に、読者に向けたメッセージをお願いします。

読者のみんな、サポートをありがとう! まだHAKENを聴いたことのない人も、ぜひ俺たちにチャンスをくれ。絶対がっかりさせないからね。早くみんなの住む国に行って、みんなの前でプレイできるようになるのを楽しみにしているよ。受け入れてもらえますように。それまでぜひ俺たちの音楽を楽しんで......そして、無事でいてくれ!