INTERVIEW
MIYU × RAMI
2020.04.22UPDATE
2020年04月号掲載
MIYU RAMI
インタビュアー:長澤 智典
『Meta-Loid』は、MIYUちゃんの練りに練った罠にどっぷりはまりながら聴いてほしいアルバムです(RAMI)
-「Miss&Loid」はとても力強い歌詞ですが、RAMIさん自身はどんな印象を覚えました?
RAMI:美しい部分は美しいし、黒い部分は黒いしと、白黒はっきりした言葉へ芯のあるMIYUちゃんの性格が反映されてるなぁと思いました。
-MIYUさんの書く歌詞は、どれも力強くポジティヴですよね。
MIYU:ファイティング・ソングというのかな。自分の主張よりも、誰かの手助けや応援になる歌になればいいなといつも思っていて。でも同時に、自分の中の"嫌だ"と思う感情を発散させている部分もどこかしらあると思います。
-RAMIさんも語っていましたが、歌詞にはMIYUさん自身の気持ちも反映されているわけですよね。
MIYU:自分ではそこまで意識はしてないのですが、まわりから客観的に届く言葉を聞いてると"反映されてるんだろうなぁ"とは思います。ただ、私の場合、曲も歌詞も細かいところまですごく構築しながら作っています。むしろ、自分の中にセオリーがあるから、RAMIちゃんの書く歌詞を読むたびに、"よくあれだけ表現豊かな歌詞を書けるなぁ"と感心しちゃう。
RAMI:そこは、人と歌詞の書き方が違うのかもしれん。何も言葉のないまっさらな曲を貰うたびに、その曲に"こういう歌詞を書いてね"と言われてる感じがしてきて、勝手に物語が降りてきて世界観がバーッと広がっていく。
MIYU:まるで1本の映画を観てるようなというか、まさに、その感じがRAMIちゃんの歌詞には出てるよね。私は料理研究家のように、"立ち上がりはこうで、ここでこういう表現を乗せ、ここからバーッと急降下していく"みたいにジェットコースターに乗ってるような展開の歌詞を分析しながら書きがちなんです。そういうセオリーをぶち壊してくれるのが、RAMIちゃんの書く歌詞(笑)。ナチュラルな感覚であの歌詞を書けるのがすごすぎる(笑)。
RAMI:MIYUちゃんには、MIYUちゃんらしい世界観が出てるから、そこはお互いの色だよ。
-RAMIさんは、感覚や感性を大事に歌詞表現されている方なんですよね。
RAMI:そうしか書けない(笑)。曲を聴いたとき、自然と起承転結を持った世界観が浮かび上がり、その世界の説明をメロディに合わせた言葉として当てはめていくのが私の書き方。私は計算した書き方ができないから、逆にそこが羨ましい!
-「ALIVE」についての印象も聞かせてください。
RAMI:「ALIVE」の歌詞を読んだときに、"誰かを応援したい"、"背中を押したい"という彼女の強い心が言葉となって歌詞に表れていたように、そこにもMIYUちゃんらしさを感じてた。
MIYU:「ALIVE」は、私が人生で初めて書いたストレートなメタル・ナンバー。曲を書いたのは結構前になるんだけど、その頃からRAMIちゃんのようなメタル・ヴォーカルさんに歌ってもらいたいと思って書いていたので、この歌も彼女に託しました。
RAMI:託されました(笑)。もともと中音域を得意としている歌い手なので、「ALIVE」ではいい感じで低音域の歌声も出せたし、いい感じで歌えたから安心しました。
-『Meta-Loid』というアルバム自体、MIYUさんの個性はもちろんですが、それぞれのヴォーカリストの個性をどう導き出すかも大切に作り上げた作品ですよね。
MIYU:そうです。そのぶん、オムニバス盤のような一面も出つつ。そのうえで、"MIYUらしさ"となる軸を持って制作しているように、リスナーの方には、それが何かを探るように聞いてもらえたらなと思っています。
RAMI:私、"Miss&Loid"というタイトルがすごいと思った。あれを思いつくってすごいことだよね。
MIYU:あのタイトルへ行き着くまでめちゃくちゃ時間はかかってる。最初は"アンドロイド"からスタート。しかも、ケータイのAndroid表記をしていたから、その時点で表記ミスをしてたんだけど(笑)。うちの師匠であり、プロデューサーである大村(孝佳)さんが"人の真似や、人と同じことは絶対にするな"という信念を持つ方だから、検索したとき一番にひっかかる言葉も含め、"Miss&Loid"へ辿り着くまで半年くらいはワードを探してました。"Miss&Loid"は、人間と人形の中間のようなイメージで生み出したタイトル。アルバム・タイトルの"Meta-Loid"も、メタルとアンドロイドを掛けてあり、この言葉を生み出すまでにも期間を要しました。さらに言うなら、今回のアルバムは、RAMIちゃんが歌った楽曲が先にあり、そのうえで広がりを持たせたように、RAMIちゃんの歌った2曲が、アルバムの軸にもなっています。
RAMI:まさか、自分の歌った楽曲がアルバムの軸を成してたなんて......。歌で参加できただけでも嬉しいのに、メインになっているなんて、なんかお恥ずかしい限りです(笑)。
MIYU:私自身、RAMIちゃんの歌声がめちゃくちゃ欲しかったからね。
-人の真似事を絶対にしない姿勢が、MIYUさんの独自性を作ってきたんでしょうね。
MIYU:それはあると思います。そこは、本当に師匠に鍛えられました。うちの師匠は、人と同じことや似たような表現をしている曲や歌詞には、次々と厳しく駄目出しをしていく方。以前など、20曲近く出して全部ボツになったこともあったくらい。もう何度、涙を流して挫けそうになったか。
RAMI:私だったら、とっくに挫けてしおれるどころか、枯れてるわ。
MIYU:今回のレコーディングでも、ヴォーカルのレコーディングまで終わっているのに、マスタリングに出すギリギリまで細かい部分でギターのアレンジをし直していました。収録した中には、ライヴで3年も4年も演奏してきたのに、CD音源化するにあたり、ソロ・パートのリフを少しだけ変えた曲もありました。時には、"これはださいぞ"というひと言を告げられ、それで試行錯誤をするなど、本当にギリギリまで師匠とはディスカッションを繰り返しながら、このアルバムを作り上げた形だったからね。
RAMI:その厳しい環境でよくやってこれたように、彼女は、本当に強い精神の持ち主なんです。ホント、メンタルは強いよね。
MIYU:私、これまで厳しい人にしか出会わなかったんですよ。最初に、師匠のローディからスタートしたんですけど。師匠も参加したMarty Friedmanさんのリハにローディとして観に行ったときなんか、みなさん、5時間とか7時間ノンストップで弾いてるんですよ。その間ローディは何をするわけでもなく、直立したままずっとリハーサルを観ているだけ。1週目は楽しいんですよ。だけど、それが3週も4週も続くとね。でも、そういう方々の現場ばかりを観てきたから、むしろ、それが当たり前の感覚になってる(笑)。
RAMI:私、感性でやってきた人だから、絶対に無理やわ(笑)。
-お互い、正反対だからこそ、このいい関係性が築けているんでしょうね。
RAMI:なんか、性格も合うんですよ。久しぶりに会っても、"あっ、久しぶり"とはならず、まるで昨日も会ってたような感覚で会話をしているように、不思議と心の絆や繋がりが強い気がしてる。
-改めて、アルバム『Meta-Loid』の手応えを聞かせてください。
MIYU:『Meta-Loid』には、メタル、ロック、サブカルと3つの要素を揃えた曲たちを収録しています。中でも「KAKUREMBO」は、初めてギター・ソロのない曲として作りました。この曲に関しては、ライヴでめちゃくちゃ煽り、暴れてもらおうと思い、そうしています。先にも語ったように、『Meta-Loid』はオムニバス盤のような感覚のもと、それぞれのヴォーカリストの歌声と楽曲の持つ親和性を楽しんでもらいたいのと、そのうえで"MIYUってこうだよな"という部分を探ってほしいなと思っています。
RAMI:MIYUちゃんは、作品を作るたびに計画を練りに練っていく人。つまり、MIYUちゃんが練りに練った計画の罠にどっぷりハマりながら、みんなも聴いてください。
MIYU:その言葉、よく言ってくれた! ホント、その通り。今回の『Meta-Loid』には、今までやったことのない挑戦も全部詰め込んで、いろんな仕掛けもいっぱい施しているので、まずは一度ヘッドホンを使い聴いてほしいんです。そうすると、音の隅々からいろいろ見えてくると思いし、きっとゾクッとしてくれると思いますから。