INTERVIEW
EXiNA
2019.08.20UPDATE
2019年08月号掲載
Interviewer:杉江 由紀
大胆不敵。EXiNAが今ここから表現していこうとしている音楽とは、時にヘヴィであり、時に奇想天外であり、時には未知なる要素をも含む実験的且つ斬新なものだと言えるだろう。もともとは、弱冠17歳でTVアニメ"艦隊これくしょん -艦これ-"のED「吹雪」をもってデビューした西沢幸奏(にしざわしえな)が、あえてその名を封印しソロ・プロジェクトであるEXiNAを始動させた最大の理由は、"もっと音楽を楽しみたいな"と思ったからだと言うが、その真髄が、このたび発表される1stミニ・アルバム『XiX』には凝縮されているように思える。自由に、熾烈に音を紡ぎ出すEXiNAの新しき未来は、まさに今ここから始まっていくのだ。
こうなったのは純粋に"もっと音楽を楽しみたいな"と思ったからなんです。より音楽を愛せるようになってきていると日々感じてます
-EXiNAは西沢幸奏さんのソロ・プロジェクトとして立ち上がったものになるそうですが、以前の個人名義時代に出されていた音源と、今回の1stミニ・アルバム『XiX』を聴き比べさせていただくと、かなりハード且つ前衛的な音づくりが前面に出ている印象を受けます。このEXiNAを始動させた理由とは、よりコアでディープな方向へと進みたかったという思いがあったからなのでしょうか?
たぶん、EXiNAの音に初めて触れる方はそういう想像をされる方が結構多いんだろうなとは私も思います。でも、実を言うと"もっと激しい音楽がやりたいから、私はもう西沢幸奏じゃいられねーな!"となったわけではないんですよね。もちろん、もっと激しいものがやりたいという気持ち自体はずっとあったんですけど、こうなったのはとにかく純粋に"もっと音楽を楽しみたいな"と思ったからなんですよ。そのために環境や体制を変えなきゃなと思った結果としての今がある、っていうだけの話なんです。
-音楽性についてもさることながら、まずは精神的な面や考え方の面での変化が先にあったわけですね。
私の場合もともとの性格的に、"いろいろなものに縛られている"と思い込みがちになってしまうところがこれまではあったんですね。
-つまり、それは実際に縛られているかどうかは別としてという意味でしょうか。
はい、そこは別だと思います。あるいは、もし実際に何かに縛られているんだとしても、人間って誰でも考え方次第でそこから自由になることはできるはずなんですよ。それなのに、私はつい"今の自分は縛られているんじゃないか......?"と不安になってしまいがちなところがあったので、そこを変えたかったんです。何よりも、そういう状態だとなかなか音楽を心から楽しむことができないんですよ。今思うと、"別にそこまで深く悩まなくても良かったよね!?"っていうことがかなり多かった気がしてます(苦笑)。今回の『XiX』には「OVERTHiNKiNG BOY」という曲が入っているんですけど、まさにこれは当時の自分自身のことを指したものですね。ただ、そういう"気がついたら考えすぎちゃってた"というのは何も私に限らず、ほかのミュージシャンやアーティストにも意外とよくあることだろうし、きっと普通に働いたり、学校に行ったりしている人たちでもあることなんじゃないかな? と思ったので、ここではあえてこういう曲タイトルにしたんです。
-そうした一方、リリックMVが先行公開されている「EQ」については、歌詞の最後に"激情放つ革命"という一節が見受けられます。受け手側としては、EXiNAがここから始動していくことで革命を巻き起こしていきたい、という姿勢を、あの言葉と叫びにも近い力強い歌から感じ取ることができるような気もしているのですが、実際のところその点について幸奏さんはどのようにお考えなのでしょう。
あぁ、そういうふうに捉えていただいたんですね。
-すみません、あくまでもこちらの勝手な憶測ではあるのですけれど。
いえ、そういう意見がいただけるのは面白いなと思います。あの「EQ」に関しては、ここにきてEXiNAを始動させたという事実とは、また別にコンセプトを設けて書いたものなんですよね。まぁ、だからといってEXiNAとまったく関係ないことを歌っているのかというと、正直なところ若干は繋がっているところもあって、イメージとしては過去の自分をロボットに例えて書いたのが「EQ」の詞なんです。
-そのヒントをいただいて改めて「EQ」の詞を見ていくと、いろいろ意味深な表現が含まれているように感じます。
前までは、素直に従うことを是としていた自分がいたんですよ。人の意見を受け入れることが正義だと思っていたし、ものを作っていくうえでは人のアドバイスを尊重していくべきだって、当時はずっとそう思っていたんですけど......今になって考えると、それはちょっと受け身すぎたところもあったのかなと。そういう昔の自分を自分で皮肉って、ロボットに例えたのがこの詞なんです。つまり、この"Electric Queen is back"という詞の中の"Electric Queen"というのは、当時そうなってしまっていた自分に対する怒りと、私をそうさせていた人たちに対する爆発的な怒りの化身だということですね。それと同時に、"Electric Queen"はみんなを巻き込んでいくような存在でもあるので、"お前たちもそうだろ? マシーンのように、ロボットのようになっちゃってるんじゃないのか? みんな、私が電気の力を与えるから人間だった頃のことを思い出せよ!"とここでは訴え掛けているんです。そこは、"共鳴起こす覚醒"という言葉を使って表しました。
-現実とSF的なフィクションがこの詞の中では交錯しているのですね。
自分の過去を否定するつもりはないんですよ。むしろ気持ちとしては全然前向きで、"もっとこうだったら楽しいのに!"という思いを詞にしたらこうなりました、という感じに近いんですよね。一時期の自分はその気持ちをどう行動に移していいのかわからなかったりもしたんですが、今回EXiNAを始動させるにあたっては、周りの信頼できるスタッフが"いいんじゃない? やってみようよ"と協力してくれることになって今に至っているということなんです。そういう経緯の中から「EQ」という曲は生まれました。
-かくして、この『XiX』においては全曲の歌詞を幸奏さんが作られております。そして、作曲とアレンジについてはすべてを篤志さんという方が担われているようですが、この方がどのような方でいかなる出会いから共同制作をするようになったのか、ということについても教えていただけると嬉しいです。
篤志さんは、EXiNAとして"SACRA MUSIC"でやっていくとなったときに、プロデューサーから紹介してもらった方なんですよ。最初は実験的に曲を作っていったんですけど、その段階から私としては"ぜひ、ここから一緒にやっていきたい"と感じまして、今回は全曲をお願いしました。何しろ、篤志さんが作る曲はどれも奇想天外なんですよ(笑)。私はそこがすごく大好きなんです。
-たしかに『XiX』の収録曲たちは方向性こそ各曲によって違えど、どれも斬新でアヴァンギャルドなアプローチのものが多いですものね。
そもそもEXiNAは、"もっと音楽を楽しみたいな"という気持ちからスタートしているものなので、これだけ奇想天外で想像もつかなかったような音を表現していくのは、本当に面白くてしょうがなかったですね。みんなの期待に応える音楽というのもそれはそれでいいと思うんですけど、私がEXiNAでやりたいのはみんなが驚くような音楽であり、みんながこれまで知らなかったような音楽なんですよ。もっと具体的に言えば、ライヴでやったときにみんなが普通に拳を振り上げるような曲ではなくて、みんなで一斉に激しく頭を振って盛り上がれるような曲をやりたかったんです。
-ある意味、これはかなり激ロック的な音楽を体現していらっしゃると言えそうですね。メロディひとつをとってもキャッチーさは漂うものの、決してポップではありませんし。それどころか、どの曲も相当マニアックで尖った作りになっていると感じます。
そうなんですよね。私もだいぶわかりにくい音楽だと思いますよ。でも、そこがメチャメチャ面白いんです。そして、この期待を裏切る感じで音楽をやれているという今の状況が楽しくてしょうがなくて。自分でやっていてもワクワクするし、もう自然とニヤニヤしてきちゃうんです(笑)。音もそうだし、ヴィジュアル・イメージにしても、EXiNAではみんなの予想の斜め上を行くような遊び心を、ここから大事にしていきたいと思ってます。
-『XiX』は非常に刺激的な作品に仕上がっていますね。先ほども少し話題に出ました「OVERTHiNKiNG BOY」に関しても、先鋭的な今っぽい音とオールドスクールなロックのニュアンスが同居していて、実に興味深いです。
良かったー。そう言っていただけると、めっちゃ嬉しいです! サビなんかはそれこそオールドな雰囲気があるんですけど、全体的には実験的なことをいっぱいやっていますからね。最初のほうにはいきなりラップっぽいものも入れてあったりするし、自分としてもこの曲はすごくセンセーショナルでした。自画自賛みたいにはなっちゃいますが(笑)。