INTERVIEW
EXiNA
2019.08.20UPDATE
2019年08月号掲載
Interviewer:杉江 由紀
-激ロック読者の興味を強く引きそうな曲としては、イントロでスラップ・ベースが炸裂する「KATANA」も強い存在感を持っていますよね。
そうですよね。ああいうベースのフレーズって、激しい音楽が好きな人は好物なことが多いですもんね! 私も大好きです。この曲が好きって言ってくれる人とは、全力で握手したい! ほんとカッコいいんですよー。
-「KATANA」は歌詞の"いつまでも子供じゃないわ"というフレーズも、効果的なスパイスとしてピリリと利いていますね。これはもしや、幸奏さんご自身の本音であったりして?
まさに、これは自分の素直な言葉です(笑)。私は1997年生まれで22歳なんですけど、これはいわゆる自分も含めた"さとり世代"のことを書いている詞で、今ちょうどこの世代は新社会人になったばかりくらいの人も多いと思うんですよね。この詞はこれからの未来を担っていくことになる、同世代のみんなに捧げる気持ちで書きました。そんなみんなに向けて"KATANA"を託したい、みたいな内容ですね。
-"さとり世代"とは、2013年の"新語・流行語大賞"にエントリーされていた言葉になるそうですが、一般的にはいろいろなものに対しての欲がない、または欲が薄い世代のことを指すらしいですね。
何に対しても、冷めているところがあるんですよ。"熱血とかバカじゃん?"っていうふうに物事を捉えがちというか。だけど、常にそういうスタンスでいると上の世代の人たちとのギャップがすごくあるんですね。たぶん、私たちの世代はそこで混乱を感じた経験が誰でもあるんじゃないかなと思います。例えば学校の先生から熱く怒られたりしても、正直あんまり響かなかったりしましたもん。一番わけわかんなかったのが、"やる気出せよ!"みたいなやつでした。
-根性論が大好きな層というのは一定数いますからねぇ(苦笑)。
自分たちからすると、"やることはやってるんだからそれで良くない?"ってなっちゃうんですよ。自分の言葉で発信できる立場の私としては、そういう同世代のみんなに向けてのメッセージ・ソングを、ここで書いておきたかったんです。今って、どうしても自分のことでいっぱいいっぱいになっている人が多くなっているようにも見えますからね。でも、自分で行動を起こさなければ何も変わらないのは確かな事実なので、もっと自分の感覚を研ぎ澄まして自分の言いたいことを言って、やりたいことをやっていこうよ! という気持ちをここには込めたんです。
-なるほど。"今世界に立ち向かえ"というフレーズには、きっとその思いが凝縮されているのでしょうね。
悟ること自体は全然いいことだと思うんですよ。ただ、自分にとっての明確な目標を持つとか、自分にとっての好きなことがなんなのかとかくらいは、ちゃんと自覚したうえで悟ったほうが、おそらく人生って楽しくなるんじゃないかなと私は思います。実際、私自身も、"もっと音楽を楽しみたいな"という気持ちを持ってEXiNAとしての活動を始めてからは、より自由に音楽を愛せるようになってきていると日々感じてますね。
-素晴らしいことですね。
私もだし、周りのスタッフやみんなも、今回の『XiX』を作っていくうえでは言いたいことを率直に言い合ったんですよ。もちろん、時にはバチバチにぶつかり合うこともあるんですけど、そこがすごく楽しくて。"あぁ、こんなふうに本音でぶつかり合いながら音楽を作っても良かったんだ!"っていうことにやっと気づけた感じがします。
-バチバチに意見がぶつかった場合、話の落としどころはどのようにして見つけていくケースが多かったのでしょうか。
そこはやっぱり、最後はEXiNAをやっている本人である私の判断に委ねてもらいました。周りの意見に圧されそうになっても、そこは勇気を持って"こうしたいです!"って決断しましたね。
-なお、今作には、ヘヴィ・ロックとオリエンタルなニュアンスが絶妙に混在した「BERSERK」という楽曲も収録されておりますが、こちらも激ロック読者の琴線に触れそうな音になっていますね。
一聴すると、これはストレートなメタルだと思います。でも、それを女性ヴォーカリストが歌うとこうなるんだぜ! というかたちを明確に打ち出すことができましたね。歌的にも囁きのようなアプローチから始まって、ラップっぽい展開もありつつ、そのあとにはシャウトもあったりして、これも我ながらほんとに面白いと思える曲になってます。ライヴでやるときには、観ている人にも叫んでもらいたいですね。それはこの曲に限らずではあるんですけど、今回のアルバムには叫びの要素が結構いろいろ入っているので、そこはぜひみなさんも一緒に声を上げてもらえると嬉しいです。
-それにしても、幸奏さんはクリアなハイトーンから、野太いと表現しても過言ではないワイルド・ヴォーカリゼーションまで、ずいぶんといろいろなパターンの声色を使い分けることができる方なのですね。ここまで持ち駒の多いヴォーカリストでいらっしゃっただなんて、これまでは正直なところ知りませんでした。
そこは今回篤志さんに引き出してもらったところなんですよ。レコーディングのときに、"もっとこういう声は出せない?"とか"そこはこんな感じで歌ってみてよ"という提案が、それぞれの曲の中でたくさんあったので、これまでやったことがなくても、それにすべて挑戦してみたんです。そういう初めての感覚も自分にとっては新鮮だったし、とても面白かったですね。"いや、それはできません"ということは1回もなかったので、その成果としてこれだけのバリエーションを歌で表現できたんじゃないかと思います。それこそ「BERSERK」なんて、"ここは宝塚の男役っぽく歌ってよ"って言われて、トライしたところもありました(笑)。
-1曲の中で次々といろいろな情景が繰り広げられていくという意味では、「NEON」もそのタイトル通りに色とりどりな歌声が聴ける感じですね。
ありがとうございます。この曲はあの展開が結構実験的で、曲が進んでいくごとに"この曲がどんな曲なのか"が、どんどんよくわからなくなっていく作りになっているんですよ。バラードなのかな? と思わせつつもイントロ以降はダンサブルになって、Aメロではバンドっぽくなって、そこからさらにラップ来た! セクシーなベース・ソロもある! だけど、繊細な......って自分で言うのもなんですけど(笑)、女性ヴォーカルらしいところを生かした感じにもなっていくので、そこの目まぐるしさを楽しんでほしいですね。それだけに、どこの部分を切り取るかによって、この曲に対する印象はまったく変わってくるかもしれません。あと、この詞についても説明しておきますと、これはネオン管を擬人化した内容になってます。
-なんと。かつては"艦隊これくしょん -艦これ-"のED「吹雪」を西沢幸奏の名義で歌われていた幸奏さんが、ここに来てネオン管まで擬人化してしまいましたか!
ある意味、原点に戻りました。主人公は夜の街で光っているネオン管で、時には隣で壊れていくネオン管のことも見ているわけなんですよ。自分もいつかはそうなっていくのかな、それはイヤだよ! っていう話なんです。最後には、ひとつの決意をネオン管がするストーリーになってます。ちょっとシリアスな内容なんですけど、全部がネオン管の思っていることだというのがわかると、意外と笑えるんじゃないでしょうか。
-ここで最後に収録されている「PERiOD」についてもお話をうかがいましょう。奇想天外で大胆不敵な楽曲が多い中にあって、これは唯一ニュートラルな質感を持ったものだとも言えそうです。なぜこの曲だけがそのようになったのかも教えてください。
実は、この曲だけEXiNAが始まる前からできていた曲なんですよ。西沢幸奏としてライヴでも歌っていたので、今までの私を知っている人からすると、"こういうかたちで音源化するんかい"と感じていただけるかもしれないし、ここで最後に安心感を抱く方もいるかもしれません。これは過去との決別の歌になってます。
-EXiNAの1stミニ・アルバム『XiX』に、この「PERiOD」をあえて入れた意味は大きそうですね。
前に進むためには、それまでの流れを1回終わらせることが必要だなと思ったんです。自分の中でひとつのピリオドを打つことによって、ここから新しいことを始めたいという気持ちをここには込めました。
-それから、このアルバムに"XiX"というタイトルを冠したのがなぜだったのかも、教えていただいてよろしいでしょうか。
"XiX"というのは、幸奏という名前を"XIENA"という表記で書いたものと、"EXiNA"というプロジェクト名の両方を掛け合わせて付けたものなんです。それと同時に、Xというのは未知なるものを意味してもいますし、iというのは自分自身のことでもあるんですね。つまり、"EXiNA"というのは未知なるものと隣り合わせの自分というものを表しているし、アルバム・タイトルの"XiX"は未知なるものに挟まれている自分を表したものになっているんです。ということで、これは私が新しい場所でどういうことをしたいかというのを明らかに示した作品である、ということになります。あともうひとつ。"XiX"のiの部分をローマ数字に置き換えると、19になるんですよ。2019年はやったるぜ、ここから私は変わったんだ! という記録にもなってます。
-隙がないですねぇ。ただ、これは少し乱暴な言い方にはなってしまいますけれど......本誌、激ロック読者の中には、ともすれば"もともとアニソン歌手だった人がなんか激しい音楽をやり出したの?"というふうに捉える方もいらっしゃるかもしれませんので、ここは幸奏さんとして、EXiNAのことを再度アピールしていただけますでしょうか。
とにかく、曲を聴いていただければすべては一聴瞭然だと思うんですよ。これまでのイメージとかキャリアについては、今さら言葉で説明してもしょうがないことだし、今の私ができることはすべてこの『XiX』の中に詰め込みましたし、どこに出しても恥ずかしくない作品にすることができたと自信を持っているので、あとはこの音を聴いて判断していただければと。まずは、YouTubeで公開しているリリック・ビデオ「EQ」を入口にしていただくのも、ひとつの方法でしょうね。そして、少しでもEXiNAのことが気になったらライヴにも来てください。
-8月25日に新宿MARZにて開催されるEXiNAとしての初ライヴ[EXiNA SHOW CASE LiVE 2019 "XiX"]のことですね。
音源としての『XiX』もすごく激しいんですけど、これをライヴの場で表現していったときには、よりとんでもないことになっていくだろうな、という強い予感が今からしているんですよ。言葉では表せないほどの凄みのあるライヴになっていくと思うので、それを一緒に体感していただけたら本当に嬉しいです。
-ちなみに、幸奏さんはもともとギターも弾かれるそうですが、ライヴではそのお手並みも拝見できたりするのでしょうか。
もちろん! 今からそのへんも頑張って準備してます。表現者としては弾かないほうが魅せられる場というのもありますし、弾けるからといって終始ずっと見せびらかすということをするつもりはないんですけど、それでも"ここは弾きたい、これは弾いたほうがいい"と思う曲はちゃんと自分で表現したいので、なんとかやれるようにしたいんですよ。だからライヴではバリバリに弾きます! そして、ライヴでは私が支配者としてその空間でみんなのことを思い切り巻き込みます!