－制作をしていくなかで、何か難しかったところはありましたか。

バンドだと、制作の段階では一方通行のまま完結することがほとんどなんですよ。各パートが、自分の仕事をしていけばいいだけの話なので。ところが、ソロだとすべてが一度は自分のところに戻って来るんですよね（笑）。ドラムをこうするならベースをこうしよう、ベースがこうならギターはこうした方がいいし、そうなればメロディもこうするべき、っていうふうに。

－手間も掛かれば、広い視野も必要になってくるのではありませんか。

今回の制作に関して言うと、僕は歌詞の部分で特に悩むことになりましたね（苦笑）。部分的には、歌詞を乗せるためにメロディを変えたところもありました。

－「CALL MY NAME」は全編英詞ですが、そうした理由は？

その方がサウンド的に好きだったんですよ。それと、正直なことを言うと照れ隠しの部分もありました（苦笑）。

－やはりそれもありましたか（笑）。AKIさんは、なかなかシャイですねぇ。

矛盾はしてると思うんですよ。自分が言いたいことを形にするためにやっているこの音源制作で、わざわざ日本語じゃない歌詞を乗せるというのは。でもたぶん、そこも含めての自分らしいところがよく出ちゃっているのがこの「CALL MY NAME」なんです。

－今作における英詞は相当わかりやすくまとめられているではありませんか。この形であれば、英語が得意ではないという方にもきっと意味合いやニュアンスは必ず伝わるはずです。リアルなAKIさんの本音がこもっていますものね。

だから、「CALL MY NAME」の歌詞は書き上がるのも早かったんですよ。詞を書きながら、歌い方の面でも"ここはシャウトにしよう"とか"ここはオクターブ落とそう"ということを想定しながら書けたので、やりたいことをできる限り詰め込めた感じでした。

－なお、「CALL MY NAME」についてはゲスト・ギタリストとしてBREAKERZのSHINPEIさんが参加されているそうですね。

共通の知り合いを通じて、1年くらい前に紹介していただいたんですよ。そのときに、"今度ソロ・プロジェクトを始めるんです"というお話をさせていただいて、わりと軽いノリで"もし良かったら、弾いてくださいよ！"と頼んだことがあったんですけど、その後、改めてオファーをさせていただいたら快諾していただけたんです。

－そうなんですね。一方で、今回のレコーディングにおいてベーシストとしてのAKIさんは、どのような立ち位置をとることが多かったのでしょう。

曲によってはそこはまちまちでしたね。Sadieでは、アルバムを作るたびに1枚を通してのトータリティを重視することが多かったんですけど、今回はベーシストのソロ作品であるという前提に甘えさせてもらう形で（笑）、曲によってそれぞれ遊ばせていただいちゃいました。好き放題できて楽しかったです。

－それにしても、このEPは実に多角的ですね。曲によって、トーンがだいぶ異なるところが聴き手を飽きさせません。

そこは意図的に、曲の雰囲気をばらけさせたところがありましたね。ライヴのことを想定しながら、例えばこのEPの曲順どおりにやったとしても、15分ステージのイベントのときであればこの流れで1本のライヴが成立するくらいの流れにしたい、と思いながら作った音源でもあったんです。

早く"AXESSORYの AKIです"という自己紹介がしっくりくるところまで、いきたいですね（笑）

－そういうことでしたか。これだけ充実した『CALL MY NAME』が完成した今、AXESSORYの未来は明るそうですね。

んー、でもそこはどうなんでしょうね？ まだ自分の周りは決して明るい光に照らされているわけじゃなくて、本当の意味で今ある枠の中から抜け出していくのは、もっとここから先の話になっていくと思うんですよ。それこそ、あとから時間が経ったときに、"あのタイミングであいつが壁をぶち破ったよね"ってなるタイミングが音楽シーンには今までもいっぱいあったと思うんですけど、僕がここから始めていく活動もできればそういうものにしていきたいですからね。そのためにはもっと上手く歌いたい、とかもっと上手く弾きたいっていう気持ちが出てきているのも事実です。

－"向上心上等"ではないですか。新月も真っ黒なところからのスタートなわけですから、AKIさんのおっしゃる"ここから先"はどんどん明るくなっていくはずです。

全部をいったんぶち壊して、新しい始まりを作っていくこの始まりは、僕だけじゃなくみんなにとっての始まりでもあると僕は思ってます。ただきれいに聴こえる音楽とは違う、普通のヴォーカリストはできないことを表現しながら、自分が歌うことの意味をここから掘り下げていきたいです。あとは、レコーディングはしましたけど、まだ僕はセンターに立って歌うということはしたことがないですからね。そうなったときの自分がどこまでいけるのかも、多少の不安もありながら自分でも楽しみです。早く"AXESSORYのAKIです"という自己紹介がしっくりくるところまでいきたいですね（笑）。